第4話 アカネの開花
ー/ー 慌てて、ぼくもその場から逃げ出した。
振り返る余裕もなく、走りはじめる。
爆音が響いた。
地面が——いや、空気が揺れる。
背中から暴風が吹きつけて来た。
ぼくの体が、空中を舞った。
熱風がぼくの体を包み込む。
そして、地面に叩きつけられた。
ごろごろと、転がる。
下が土じゃなかったら——そして、装備を入れているバックパックを背負っていなかったら、もっと酷いことになっていたのかもしれない。
アリアンフロッドならば、ストレージというスキルがあり、そこから武器や防具、または他の探索に必要なものを虚空に収納しておける。
けど、ぼくはまだ、天賦を目覚めさせていないので、バックパックを用意しておかなければならないのだ。
下が土じゃなかったら、もっと酷いことになっていたのじゃないだろうか。
ようやく、体の回転が停まり、ぼくは手足を伸ばしたまま、横たわった。
「ちょっと、ジンライ……大丈夫なの?」
チカが、ぼくの顔を覗き込んできた。
「大丈夫……でもないけどね」
起き上がろうとすると、肩のところに痛みが走った。
思わず、顔をしかめる。
フェザー・ジャケットの左肩が切り裂かれ、そこから傷跡が覗いていた。
出血はそれほどでもないが、腕を動かそうとすると、鋭い痛みが走る。
「あぁ、もう! 怪我をしてますわね。治療をしませんと」
チカがストレージから、ドラッグ・ショットを取りだした。
それを、ぼくの肌に当てようとする。
「勝手なことは、やめてもらいましょう」
ギンゲツが、チカの手を掴んだ。
「痛っ」
その手に握られていたドラッグ・ショットが、転がり落ちた。
ドラッグ・ショットは、騎士団やアリアンフロッドの間などで使われている装備のひとつだ。
様々な戦闘用ドラッグを直接、体内へ送り込むためのもので、ポーションなどよりも携帯しやすく、より即効的な効果を肉体に及ぼすことができる。
その円筒型をしたドラッグ・ショットを、ギンゲツが取り上げた。
「見習いを治療するため、といっても、これは小隊の財産です。使用の可否は、わたしが判断します」
「そのドラッグ・ショットは——」
ギンゲツが、チカを振り返った。
「まだ、何か?」
ぼくは、チカの腕を掴んだ。
首を横に振る。
チカの言いたいことは、わかる。
そのドラッグ・ショットは、チカがもともと、持っていたものだ。
だから、それは小隊の財産ではない、と言いたいのだろう。
ギンゲツも、そのことは知っているのだろう。
だって——そのドラッグ・ショットには、チカの手作りのストラップが下がっているのだから。
だけど、今はギンゲツとトラブルを起こすのは、拙いのだろう。
態度はどうであれ、ギンゲツたちがいなければ、あの首吊りの樹を撃破できなかった、ということは明白なのだから。
チカの悔しさは、痛いほど、ぼくにもわかる。
ぼくだって、ここが塔のなかでなかったら、殴りかかりたいぐらい、怒っているのだから。
でも、ぼくたちの目的はとにかく、塔から生還することだ。
三人とも、大きな怪我を負うことなく無事、帰還しなければならない。
考えるのは、それからだ。
ぼくとチカ、ギンゲツが首吊りの樹のところ——というか、既に招魂獣は爆発して、姿形ごと、なくなってしまっているのだけど——その、えぐれた丘のところまでやって来ると、ウォーレンとエルランジュが、騒いでいた。
ついにやったな、とか、これでアリアンフロッドの仲間入りだな、などの声が聞こえてくる。
「ジンくん! お姉さん、やったよー」
アカネがにこにこと、笑顔を浮かべて、ぼくのほうへと近づいて来る。
「えへへ。あたしね、天賦に目覚めちゃったみたいなのー」
「え……本当?」
「うん! って、あれ? ジンくん、もしかして、怪我してるの。大変、治療しないとー」
「怪我はいいよ。そんなに重傷じゃないから」
「ううん。それは、だめだよー。塔の攻略はいつだって、命がけなんだからー。油断したら、どんなベテランのアリアンフロッドさんだって、わからないんだからねー。でしょ、隊長さん?」
ギンゲツが、じろりとアカネを見た。
まるで、先程のぼくとチカ、ギンゲツのやり取りを見ていたかのような、口ぶりだ。
しかし——ギンゲツはそれ以上、何も言わずに、ストレージに収納していたドラッグ・ショットを取り出した。
それを、ぼくに向かって無造作に放る。
受け取ると、ストラップがきちんとついていることを、確認する。
兎の毛とビーズで作った、チカのお手製のストラップだ。
チカがドラッグショットを、ぼくから取り上げた。
それを、ぼくの肩に軽く、押し当ててきた。
円筒型のケースの横に並んでいる緑色のゲージがひとつ、減る。
と同時に、痛みが退いていく。
肩口の傷跡があっという間に塞がり、皮膜に覆われていった。
あとで水で傷口を洗えば、ほぼ、怪我を負う前の、元の状態となる。
「うん。これで、大丈夫だねー」
チカが、自分のストレージにドラッグ・ショットを戻すが、ギンゲツは特に何も言わなかった。
「それより——姉さん。さっき、天賦に目覚めたって言っていたみたいだけど?」
「あー、うん。そうみたい」
アカネが、自分のエーテル・リンケージを取り出した。
かつてはドリフテッド・シングスのひとつだったもので、今はアリアンフロッドの間で携帯型の情報端末として、使われている。
折り畳み式で画面と入力用のパネルからなり、アリアンフロッドならば、それを通してスキルの登録をしたり、敵と交戦中、小隊のメンバーとリンクして特殊な攻撃を加えたり、できるらしい。
もちろん、ぼくたちは、アリアンフロッドでも何でもないので、機能は制限されている。
アカネは操作をしてから、画面をぼくとチカに示してみせる。
そこには、戦技盤が表示されていた。
戦技盤とは、アリアンフロッド個人のハウス・スロットと経路を視覚的に捉えられるようにしたものだ。
本当は、他人に見せてはダメなんだけど……まぁ、アカネらしいといえば、らしいんだけどね。
中心のスロットはアセンダントと呼ばれているが、どのアリアンフロッドでも共通で、天賦に目覚めると同時に、開眼することになっている。
スロットの数も九つで共通しており、経路とスロットの配置だけが異なっている。
アカネの戦技盤は、中心以外は真っ黒に塗りつぶされている。
だけど——ひとつだけ、とは言え、天賦が開眼したのと、しないのとでは、天地もの差がある。
「じゃ、次はジンくんの番だねー」
のんびりと、アカネが笑いかけてくる。
「もうすぐだよー。ジンくん、頑張っているんだからねー」
——そうだった。
落ち込んでもいられない。
気をしっかりと持って、これからも探索を続けないと。
振り返る余裕もなく、走りはじめる。
爆音が響いた。
地面が——いや、空気が揺れる。
背中から暴風が吹きつけて来た。
ぼくの体が、空中を舞った。
熱風がぼくの体を包み込む。
そして、地面に叩きつけられた。
ごろごろと、転がる。
下が土じゃなかったら——そして、装備を入れているバックパックを背負っていなかったら、もっと酷いことになっていたのかもしれない。
アリアンフロッドならば、ストレージというスキルがあり、そこから武器や防具、または他の探索に必要なものを虚空に収納しておける。
けど、ぼくはまだ、天賦を目覚めさせていないので、バックパックを用意しておかなければならないのだ。
下が土じゃなかったら、もっと酷いことになっていたのじゃないだろうか。
ようやく、体の回転が停まり、ぼくは手足を伸ばしたまま、横たわった。
「ちょっと、ジンライ……大丈夫なの?」
チカが、ぼくの顔を覗き込んできた。
「大丈夫……でもないけどね」
起き上がろうとすると、肩のところに痛みが走った。
思わず、顔をしかめる。
フェザー・ジャケットの左肩が切り裂かれ、そこから傷跡が覗いていた。
出血はそれほどでもないが、腕を動かそうとすると、鋭い痛みが走る。
「あぁ、もう! 怪我をしてますわね。治療をしませんと」
チカがストレージから、ドラッグ・ショットを取りだした。
それを、ぼくの肌に当てようとする。
「勝手なことは、やめてもらいましょう」
ギンゲツが、チカの手を掴んだ。
「痛っ」
その手に握られていたドラッグ・ショットが、転がり落ちた。
ドラッグ・ショットは、騎士団やアリアンフロッドの間などで使われている装備のひとつだ。
様々な戦闘用ドラッグを直接、体内へ送り込むためのもので、ポーションなどよりも携帯しやすく、より即効的な効果を肉体に及ぼすことができる。
その円筒型をしたドラッグ・ショットを、ギンゲツが取り上げた。
「見習いを治療するため、といっても、これは小隊の財産です。使用の可否は、わたしが判断します」
「そのドラッグ・ショットは——」
ギンゲツが、チカを振り返った。
「まだ、何か?」
ぼくは、チカの腕を掴んだ。
首を横に振る。
チカの言いたいことは、わかる。
そのドラッグ・ショットは、チカがもともと、持っていたものだ。
だから、それは小隊の財産ではない、と言いたいのだろう。
ギンゲツも、そのことは知っているのだろう。
だって——そのドラッグ・ショットには、チカの手作りのストラップが下がっているのだから。
だけど、今はギンゲツとトラブルを起こすのは、拙いのだろう。
態度はどうであれ、ギンゲツたちがいなければ、あの首吊りの樹を撃破できなかった、ということは明白なのだから。
チカの悔しさは、痛いほど、ぼくにもわかる。
ぼくだって、ここが塔のなかでなかったら、殴りかかりたいぐらい、怒っているのだから。
でも、ぼくたちの目的はとにかく、塔から生還することだ。
三人とも、大きな怪我を負うことなく無事、帰還しなければならない。
考えるのは、それからだ。
ぼくとチカ、ギンゲツが首吊りの樹のところ——というか、既に招魂獣は爆発して、姿形ごと、なくなってしまっているのだけど——その、えぐれた丘のところまでやって来ると、ウォーレンとエルランジュが、騒いでいた。
ついにやったな、とか、これでアリアンフロッドの仲間入りだな、などの声が聞こえてくる。
「ジンくん! お姉さん、やったよー」
アカネがにこにこと、笑顔を浮かべて、ぼくのほうへと近づいて来る。
「えへへ。あたしね、天賦に目覚めちゃったみたいなのー」
「え……本当?」
「うん! って、あれ? ジンくん、もしかして、怪我してるの。大変、治療しないとー」
「怪我はいいよ。そんなに重傷じゃないから」
「ううん。それは、だめだよー。塔の攻略はいつだって、命がけなんだからー。油断したら、どんなベテランのアリアンフロッドさんだって、わからないんだからねー。でしょ、隊長さん?」
ギンゲツが、じろりとアカネを見た。
まるで、先程のぼくとチカ、ギンゲツのやり取りを見ていたかのような、口ぶりだ。
しかし——ギンゲツはそれ以上、何も言わずに、ストレージに収納していたドラッグ・ショットを取り出した。
それを、ぼくに向かって無造作に放る。
受け取ると、ストラップがきちんとついていることを、確認する。
兎の毛とビーズで作った、チカのお手製のストラップだ。
チカがドラッグショットを、ぼくから取り上げた。
それを、ぼくの肩に軽く、押し当ててきた。
円筒型のケースの横に並んでいる緑色のゲージがひとつ、減る。
と同時に、痛みが退いていく。
肩口の傷跡があっという間に塞がり、皮膜に覆われていった。
あとで水で傷口を洗えば、ほぼ、怪我を負う前の、元の状態となる。
「うん。これで、大丈夫だねー」
チカが、自分のストレージにドラッグ・ショットを戻すが、ギンゲツは特に何も言わなかった。
「それより——姉さん。さっき、天賦に目覚めたって言っていたみたいだけど?」
「あー、うん。そうみたい」
アカネが、自分のエーテル・リンケージを取り出した。
かつてはドリフテッド・シングスのひとつだったもので、今はアリアンフロッドの間で携帯型の情報端末として、使われている。
折り畳み式で画面と入力用のパネルからなり、アリアンフロッドならば、それを通してスキルの登録をしたり、敵と交戦中、小隊のメンバーとリンクして特殊な攻撃を加えたり、できるらしい。
もちろん、ぼくたちは、アリアンフロッドでも何でもないので、機能は制限されている。
アカネは操作をしてから、画面をぼくとチカに示してみせる。
そこには、戦技盤が表示されていた。
戦技盤とは、アリアンフロッド個人のハウス・スロットと経路を視覚的に捉えられるようにしたものだ。
本当は、他人に見せてはダメなんだけど……まぁ、アカネらしいといえば、らしいんだけどね。
中心のスロットはアセンダントと呼ばれているが、どのアリアンフロッドでも共通で、天賦に目覚めると同時に、開眼することになっている。
スロットの数も九つで共通しており、経路とスロットの配置だけが異なっている。
アカネの戦技盤は、中心以外は真っ黒に塗りつぶされている。
だけど——ひとつだけ、とは言え、天賦が開眼したのと、しないのとでは、天地もの差がある。
「じゃ、次はジンくんの番だねー」
のんびりと、アカネが笑いかけてくる。
「もうすぐだよー。ジンくん、頑張っているんだからねー」
——そうだった。
落ち込んでもいられない。
気をしっかりと持って、これからも探索を続けないと。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
慌てて、ぼくもその場から逃げ出した。
振り返る余裕もなく、走りはじめる。
振り返る余裕もなく、走りはじめる。
爆音が響いた。
地面が——いや、空気が揺れる。
地面が——いや、空気が揺れる。
背中から暴風が吹きつけて来た。
ぼくの体が、空中を舞った。
熱風がぼくの体を包み込む。
ぼくの体が、空中を舞った。
熱風がぼくの体を包み込む。
そして、地面に叩きつけられた。
ごろごろと、転がる。
ごろごろと、転がる。
下が土じゃなかったら——そして、装備を入れているバックパックを背負っていなかったら、もっと酷いことになっていたのかもしれない。
アリアンフロッドならば、ストレージというスキルがあり、そこから武器や防具、または他の探索に必要なものを虚空に収納しておける。
けど、ぼくはまだ、天賦を目覚めさせていないので、バックパックを用意しておかなければならないのだ。
アリアンフロッドならば、ストレージというスキルがあり、そこから武器や防具、または他の探索に必要なものを虚空に収納しておける。
けど、ぼくはまだ、天賦を目覚めさせていないので、バックパックを用意しておかなければならないのだ。
下が土じゃなかったら、もっと酷いことになっていたのじゃないだろうか。
ようやく、体の回転が停まり、ぼくは手足を伸ばしたまま、横たわった。
ようやく、体の回転が停まり、ぼくは手足を伸ばしたまま、横たわった。
「ちょっと、ジンライ……大丈夫なの?」
チカが、ぼくの顔を覗き込んできた。
「大丈夫……でもないけどね」
チカが、ぼくの顔を覗き込んできた。
「大丈夫……でもないけどね」
起き上がろうとすると、肩のところに痛みが走った。
思わず、顔をしかめる。
フェザー・ジャケットの左肩が切り裂かれ、そこから傷跡が覗いていた。
思わず、顔をしかめる。
フェザー・ジャケットの左肩が切り裂かれ、そこから傷跡が覗いていた。
出血はそれほどでもないが、腕を動かそうとすると、鋭い痛みが走る。
「あぁ、もう! 怪我をしてますわね。治療をしませんと」
チカがストレージから、ドラッグ・ショットを取りだした。
それを、ぼくの肌に当てようとする。
「あぁ、もう! 怪我をしてますわね。治療をしませんと」
チカがストレージから、ドラッグ・ショットを取りだした。
それを、ぼくの肌に当てようとする。
「勝手なことは、やめてもらいましょう」
ギンゲツが、チカの手を掴んだ。
「痛っ」
その手に握られていたドラッグ・ショットが、転がり落ちた。
ギンゲツが、チカの手を掴んだ。
「痛っ」
その手に握られていたドラッグ・ショットが、転がり落ちた。
ドラッグ・ショットは、騎士団やアリアンフロッドの間などで使われている装備のひとつだ。
様々な戦闘用ドラッグを直接、体内へ送り込むためのもので、ポーションなどよりも携帯しやすく、より即効的な効果を肉体に及ぼすことができる。
様々な戦闘用ドラッグを直接、体内へ送り込むためのもので、ポーションなどよりも携帯しやすく、より即効的な効果を肉体に及ぼすことができる。
その円筒型をしたドラッグ・ショットを、ギンゲツが取り上げた。
「見習いを治療するため、といっても、これは小隊の財産です。使用の可否は、わたしが判断します」
「見習いを治療するため、といっても、これは小隊の財産です。使用の可否は、わたしが判断します」
「そのドラッグ・ショットは——」
ギンゲツが、チカを振り返った。
「まだ、何か?」
ギンゲツが、チカを振り返った。
「まだ、何か?」
ぼくは、チカの腕を掴んだ。
首を横に振る。
首を横に振る。
チカの言いたいことは、わかる。
そのドラッグ・ショットは、チカがもともと、持っていたものだ。
だから、それは小隊の財産ではない、と言いたいのだろう。
そのドラッグ・ショットは、チカがもともと、持っていたものだ。
だから、それは小隊の財産ではない、と言いたいのだろう。
ギンゲツも、そのことは知っているのだろう。
だって——そのドラッグ・ショットには、チカの手作りのストラップが下がっているのだから。
だって——そのドラッグ・ショットには、チカの手作りのストラップが下がっているのだから。
だけど、今はギンゲツとトラブルを起こすのは、拙いのだろう。
態度はどうであれ、ギンゲツたちがいなければ、あの首吊りの樹を撃破できなかった、ということは明白なのだから。
態度はどうであれ、ギンゲツたちがいなければ、あの首吊りの樹を撃破できなかった、ということは明白なのだから。
チカの悔しさは、痛いほど、ぼくにもわかる。
ぼくだって、ここが塔のなかでなかったら、殴りかかりたいぐらい、怒っているのだから。
ぼくだって、ここが塔のなかでなかったら、殴りかかりたいぐらい、怒っているのだから。
でも、ぼくたちの目的はとにかく、塔から生還することだ。
三人とも、大きな怪我を負うことなく無事、帰還しなければならない。
考えるのは、それからだ。
三人とも、大きな怪我を負うことなく無事、帰還しなければならない。
考えるのは、それからだ。
ぼくとチカ、ギンゲツが首吊りの樹のところ——というか、既に招魂獣は爆発して、姿形ごと、なくなってしまっているのだけど——その、えぐれた丘のところまでやって来ると、ウォーレンとエルランジュが、騒いでいた。
ついにやったな、とか、これでアリアンフロッドの仲間入りだな、などの声が聞こえてくる。
ついにやったな、とか、これでアリアンフロッドの仲間入りだな、などの声が聞こえてくる。
「ジンくん! お姉さん、やったよー」
アカネがにこにこと、笑顔を浮かべて、ぼくのほうへと近づいて来る。
「えへへ。あたしね、天賦に目覚めちゃったみたいなのー」
「え……本当?」
アカネがにこにこと、笑顔を浮かべて、ぼくのほうへと近づいて来る。
「えへへ。あたしね、天賦に目覚めちゃったみたいなのー」
「え……本当?」
「うん! って、あれ? ジンくん、もしかして、怪我してるの。大変、治療しないとー」
「怪我はいいよ。そんなに重傷じゃないから」
「ううん。それは、だめだよー。塔の攻略はいつだって、命がけなんだからー。油断したら、どんなベテランのアリアンフロッドさんだって、わからないんだからねー。でしょ、隊長さん?」
「怪我はいいよ。そんなに重傷じゃないから」
「ううん。それは、だめだよー。塔の攻略はいつだって、命がけなんだからー。油断したら、どんなベテランのアリアンフロッドさんだって、わからないんだからねー。でしょ、隊長さん?」
ギンゲツが、じろりとアカネを見た。
まるで、先程のぼくとチカ、ギンゲツのやり取りを見ていたかのような、口ぶりだ。
まるで、先程のぼくとチカ、ギンゲツのやり取りを見ていたかのような、口ぶりだ。
しかし——ギンゲツはそれ以上、何も言わずに、ストレージに収納していたドラッグ・ショットを取り出した。
それを、ぼくに向かって無造作に放る。
それを、ぼくに向かって無造作に放る。
受け取ると、ストラップがきちんとついていることを、確認する。
兎の毛とビーズで作った、チカのお手製のストラップだ。
兎の毛とビーズで作った、チカのお手製のストラップだ。
チカがドラッグショットを、ぼくから取り上げた。
それを、ぼくの肩に軽く、押し当ててきた。
それを、ぼくの肩に軽く、押し当ててきた。
円筒型のケースの横に並んでいる緑色のゲージがひとつ、減る。
と同時に、痛みが退いていく。
と同時に、痛みが退いていく。
肩口の傷跡があっという間に塞がり、皮膜に覆われていった。
あとで水で傷口を洗えば、ほぼ、怪我を負う前の、元の状態となる。
あとで水で傷口を洗えば、ほぼ、怪我を負う前の、元の状態となる。
「うん。これで、大丈夫だねー」
チカが、自分のストレージにドラッグ・ショットを戻すが、ギンゲツは特に何も言わなかった。
「それより——姉さん。さっき、天賦に目覚めたって言っていたみたいだけど?」
「あー、うん。そうみたい」
チカが、自分のストレージにドラッグ・ショットを戻すが、ギンゲツは特に何も言わなかった。
「それより——姉さん。さっき、天賦に目覚めたって言っていたみたいだけど?」
「あー、うん。そうみたい」
アカネが、自分のエーテル・リンケージを取り出した。
かつてはドリフテッド・シングスのひとつだったもので、今はアリアンフロッドの間で携帯型の情報端末として、使われている。
かつてはドリフテッド・シングスのひとつだったもので、今はアリアンフロッドの間で携帯型の情報端末として、使われている。
折り畳み式で画面と入力用のパネルからなり、アリアンフロッドならば、それを通してスキルの登録をしたり、敵と交戦中、小隊のメンバーとリンクして特殊な攻撃を加えたり、できるらしい。
もちろん、ぼくたちは、アリアンフロッドでも何でもないので、機能は制限されている。
もちろん、ぼくたちは、アリアンフロッドでも何でもないので、機能は制限されている。
アカネは操作をしてから、画面をぼくとチカに示してみせる。
そこには、|戦技盤《エニア・チャート》が表示されていた。
戦技盤とは、アリアンフロッド個人のハウス・スロットと経路を視覚的に捉えられるようにしたものだ。
本当は、他人に見せてはダメなんだけど……まぁ、アカネらしいといえば、らしいんだけどね。
そこには、|戦技盤《エニア・チャート》が表示されていた。
戦技盤とは、アリアンフロッド個人のハウス・スロットと経路を視覚的に捉えられるようにしたものだ。
本当は、他人に見せてはダメなんだけど……まぁ、アカネらしいといえば、らしいんだけどね。
中心のスロットはアセンダントと呼ばれているが、どのアリアンフロッドでも共通で、天賦に目覚めると同時に、開眼することになっている。
スロットの数も九つで共通しており、経路とスロットの配置だけが異なっている。
アカネの戦技盤は、中心以外は真っ黒に塗りつぶされている。
だけど——ひとつだけ、とは言え、天賦が開眼したのと、しないのとでは、天地もの差がある。
スロットの数も九つで共通しており、経路とスロットの配置だけが異なっている。
アカネの戦技盤は、中心以外は真っ黒に塗りつぶされている。
だけど——ひとつだけ、とは言え、天賦が開眼したのと、しないのとでは、天地もの差がある。
「じゃ、次はジンくんの番だねー」
のんびりと、アカネが笑いかけてくる。
「もうすぐだよー。ジンくん、頑張っているんだからねー」
のんびりと、アカネが笑いかけてくる。
「もうすぐだよー。ジンくん、頑張っているんだからねー」
——そうだった。
落ち込んでもいられない。
気をしっかりと持って、これからも探索を続けないと。
落ち込んでもいられない。
気をしっかりと持って、これからも探索を続けないと。