第3話 チームワークって、大切……だよね?
ー/ー『汝はすべての害を乗り越えたり。勝利の賞を得んがため、いかなる損傷をも防ぐ守護の力を支援せよ!』
背後から、チカの声が聞こえてきた。
チカは、ぼくとアカネのように、アリアンフロッド見習いではない。
彼女だけは、先に王都のアリアンフロッド機関に所属していて、活躍していたのだ。
集中しているから、なのだろうか——チカの声はいつもより、よく通っているような気がする。
ぼくの体が、金色の光で一瞬、包まれる。
着用している、革鎧をベースにしたフェザー・ジャケットと肉体、その両方が呪工されたことがわかる。
防御力を上げるのと同時に、筋力もあがったので、首吊りの樹に与える打撃の量も強化されたのだろう。
「おい! スキルなしの支援は後回しだ! こっちを早くしろ」
ウォーレンの怒鳴り声が響いた。
スキルなし、とはアリアンフロッドたちが、自分たち以外の人間を指す隠語のようなもので、あんまりいい言葉ではない。
少なくても、ぼくたちをガードするはずの小隊のメンバーが使う言葉じゃない。
ウォーレンはもうずっと前から、スキルなしとぼくのことを呼んでいるのだけど、小隊長のギンゲツは注意する素振りすら見せていなかった。
つまり——この小隊はそういう人間たちの集まりってことだ。
彼らにしたら、アリアンフロッド見習いの面倒なんて、したくなかったのかもしれないが、それにしても酷い話だ。
ウォーレンの声に、チカが萎縮するのがわかった。
チカは兎の特性を宿した獣人だ。
白尾の族と呼ばれており、白と赤で着色された神官服に身を包んでいる。
その神官服は、夢と死の女神、リフトラシルのもので、コモンだけでなく、獣人にも広く、信仰を広げている。
彼女は、自分が獣人であることをあまり、目立たせたくないらしく、セリカ姉譲りの銀髪は背の中程まである、長いベールで隠し、獣毛に覆われた肘から先は長手袋を嵌めていた。
尻尾も神官服のなかに隠し、ヒースネインの特徴である、長く尖端が少し垂れた外耳も、半透明のベールで遮られて、露にはならずに済んでいる。
獣人は、身体の成長がぼくたちよりもずっと早く、十代半ばでもう、成人として認められることが多い。
チカは実の姉であるセリカ姉の手ほどきを受けて、アリアンフロッドとして先に活躍していた。
もっとも、彼女は「千秋の轍」の隊員、ということではなく、ゲストとして参加しているのだった。
「どけ!」
ぼくが首吊りの樹に、次の一撃を振るおうとした時、ウォーレンが迫ってきた。
そのまま、斧を振り回すと、ウォーレンに当たりそうになるので、ぼくは仕方なく、首吊りの樹から退いた。
『勝利を確信する勝ち鬨を以て、光輝の賞を我、此方に招来せんと願う。戦と武の神、ヒューランスよ。敵対する者どもを踏みにじらんがために、諸力を我が剣に宿せ!』
ウォーレンが呪句を唱える。
その体の周りを、呪符がくるくると回っている。
呪符は、アリアンフロッドが得た、呪文の力を封じたカードで、それを使うことによって、戦闘能力を強化したり、回復させたり、または特殊な効果を生み出すことができる、というものだ。
ウォーレンが唱えた呪句により、舞っていた呪符の一枚に爪で切り裂かれたような跡が付き、そして、風に巻かれるようにして、消えていった。
と同時に、ウォーレンの片手半剣から、ぼくはぴりぴりとしたものを感じた。
呪符で、剣が強化されたのだろう。
「アカネちゃん! ふたりで挟み込むぞ」
ウォーレンが指示を飛ばす。
ぼくには冷たいのに、ウォーレンはやたらと、アカネに親しげに、話しかけたりしている。
アカネは美人だし、スタイルもいいので、わからないでもないけどね。
紅葉色の、三つ編みの髪をなびかせ、ガーディアン・ジャケットの胸の部分を下から突き上げるようにしている、大きな胸は、義理の弟ではないぼくからしても、つい目で追ってしまうだろう。
とは言え、そういう目で見られてしまっていることに、何だかぼくとチカの三人の関係に土足で踏み込まれてしまっているようで、面白くはなかった。
『実に叢を食らいつつ、炎の歯は食餌を求めるなり。汝の光輝をして、一切の諸力は赤刃を以て、包容せよ!』
チカが、呪句を唱える。
走り込むアカネが手にした刀身が、炎に包まれた。
こうなってはもう、ぼくの出番はないのかもしれない。
斧を構えて、ふたりの攻撃を見守った。
「おまえたちだけに、いい顔はさせないぜ」
「千秋の轍」のもうひとりの隊員、エルランジュが、わざとなのだろう、背後からぼくにぶつかりながら、首吊りの樹に迫っていった。
既に強化済みなのだろう、振り上げた戦鎚に青い光が宿っている。
首吊りの樹を中心にして、大地が揺れた。
地面の下から、木の根のようなものが飛び出してくる。
それが、アカネとウォーレン、エルランジュを襲う。
エルランジュの体が宙を舞った。
吹き飛ばされ、怒声をあげる。
が——アカネは刀を閃かせて、木の根を切断した。
「おりゃあ!」
ウォーレンが雄叫びをあげた。
木の根が束となって、迫る。
が、ウォーレンは意に介さず、その木の根ごと、剣で薙ぎ払った。
切断された木の根が舞う。
と、首吊りの樹、全体がぶるぶると震えはじめた。
『汝が息吹の力をして、上昇せしめよ。灼熱によりて、その致命所を貫け……』
ギンゲツの呪句を唱える声が聞こえる。
首吊りの樹からまた、あの鼓膜を揺らすような、人間には出しようのない音が響く。
「やべぇ……退避するぞ」
ウォーレンが腰を低くすると、アカネに抱きついた。
そのまま、前転をするように、転がる。
『……ヒュメイン、炎の象徴よ。ここに宣言す、彼らの頭を両列に牙の並ぶ顎によりて、咬合せよ!』
ぞわり、とぼくの背筋に冷たい氷で触れるような感覚が走った。
首吊りの樹から樹皮が剥がれ、紫色の肉のようなものが現われる。
内部に巨大な魔力の塊が生じ、それが炎へと変換されていく。
あっという間に、首吊りの樹は炎に包まれていった。
これは——もしかしなくても、ヤバい奴だ!
背後から、チカの声が聞こえてきた。
チカは、ぼくとアカネのように、アリアンフロッド見習いではない。
彼女だけは、先に王都のアリアンフロッド機関に所属していて、活躍していたのだ。
集中しているから、なのだろうか——チカの声はいつもより、よく通っているような気がする。
ぼくの体が、金色の光で一瞬、包まれる。
着用している、革鎧をベースにしたフェザー・ジャケットと肉体、その両方が呪工されたことがわかる。
防御力を上げるのと同時に、筋力もあがったので、首吊りの樹に与える打撃の量も強化されたのだろう。
「おい! スキルなしの支援は後回しだ! こっちを早くしろ」
ウォーレンの怒鳴り声が響いた。
スキルなし、とはアリアンフロッドたちが、自分たち以外の人間を指す隠語のようなもので、あんまりいい言葉ではない。
少なくても、ぼくたちをガードするはずの小隊のメンバーが使う言葉じゃない。
ウォーレンはもうずっと前から、スキルなしとぼくのことを呼んでいるのだけど、小隊長のギンゲツは注意する素振りすら見せていなかった。
つまり——この小隊はそういう人間たちの集まりってことだ。
彼らにしたら、アリアンフロッド見習いの面倒なんて、したくなかったのかもしれないが、それにしても酷い話だ。
ウォーレンの声に、チカが萎縮するのがわかった。
チカは兎の特性を宿した獣人だ。
白尾の族と呼ばれており、白と赤で着色された神官服に身を包んでいる。
その神官服は、夢と死の女神、リフトラシルのもので、コモンだけでなく、獣人にも広く、信仰を広げている。
彼女は、自分が獣人であることをあまり、目立たせたくないらしく、セリカ姉譲りの銀髪は背の中程まである、長いベールで隠し、獣毛に覆われた肘から先は長手袋を嵌めていた。
尻尾も神官服のなかに隠し、ヒースネインの特徴である、長く尖端が少し垂れた外耳も、半透明のベールで遮られて、露にはならずに済んでいる。
獣人は、身体の成長がぼくたちよりもずっと早く、十代半ばでもう、成人として認められることが多い。
チカは実の姉であるセリカ姉の手ほどきを受けて、アリアンフロッドとして先に活躍していた。
もっとも、彼女は「千秋の轍」の隊員、ということではなく、ゲストとして参加しているのだった。
「どけ!」
ぼくが首吊りの樹に、次の一撃を振るおうとした時、ウォーレンが迫ってきた。
そのまま、斧を振り回すと、ウォーレンに当たりそうになるので、ぼくは仕方なく、首吊りの樹から退いた。
『勝利を確信する勝ち鬨を以て、光輝の賞を我、此方に招来せんと願う。戦と武の神、ヒューランスよ。敵対する者どもを踏みにじらんがために、諸力を我が剣に宿せ!』
ウォーレンが呪句を唱える。
その体の周りを、呪符がくるくると回っている。
呪符は、アリアンフロッドが得た、呪文の力を封じたカードで、それを使うことによって、戦闘能力を強化したり、回復させたり、または特殊な効果を生み出すことができる、というものだ。
ウォーレンが唱えた呪句により、舞っていた呪符の一枚に爪で切り裂かれたような跡が付き、そして、風に巻かれるようにして、消えていった。
と同時に、ウォーレンの片手半剣から、ぼくはぴりぴりとしたものを感じた。
呪符で、剣が強化されたのだろう。
「アカネちゃん! ふたりで挟み込むぞ」
ウォーレンが指示を飛ばす。
ぼくには冷たいのに、ウォーレンはやたらと、アカネに親しげに、話しかけたりしている。
アカネは美人だし、スタイルもいいので、わからないでもないけどね。
紅葉色の、三つ編みの髪をなびかせ、ガーディアン・ジャケットの胸の部分を下から突き上げるようにしている、大きな胸は、義理の弟ではないぼくからしても、つい目で追ってしまうだろう。
とは言え、そういう目で見られてしまっていることに、何だかぼくとチカの三人の関係に土足で踏み込まれてしまっているようで、面白くはなかった。
『実に叢を食らいつつ、炎の歯は食餌を求めるなり。汝の光輝をして、一切の諸力は赤刃を以て、包容せよ!』
チカが、呪句を唱える。
走り込むアカネが手にした刀身が、炎に包まれた。
こうなってはもう、ぼくの出番はないのかもしれない。
斧を構えて、ふたりの攻撃を見守った。
「おまえたちだけに、いい顔はさせないぜ」
「千秋の轍」のもうひとりの隊員、エルランジュが、わざとなのだろう、背後からぼくにぶつかりながら、首吊りの樹に迫っていった。
既に強化済みなのだろう、振り上げた戦鎚に青い光が宿っている。
首吊りの樹を中心にして、大地が揺れた。
地面の下から、木の根のようなものが飛び出してくる。
それが、アカネとウォーレン、エルランジュを襲う。
エルランジュの体が宙を舞った。
吹き飛ばされ、怒声をあげる。
が——アカネは刀を閃かせて、木の根を切断した。
「おりゃあ!」
ウォーレンが雄叫びをあげた。
木の根が束となって、迫る。
が、ウォーレンは意に介さず、その木の根ごと、剣で薙ぎ払った。
切断された木の根が舞う。
と、首吊りの樹、全体がぶるぶると震えはじめた。
『汝が息吹の力をして、上昇せしめよ。灼熱によりて、その致命所を貫け……』
ギンゲツの呪句を唱える声が聞こえる。
首吊りの樹からまた、あの鼓膜を揺らすような、人間には出しようのない音が響く。
「やべぇ……退避するぞ」
ウォーレンが腰を低くすると、アカネに抱きついた。
そのまま、前転をするように、転がる。
『……ヒュメイン、炎の象徴よ。ここに宣言す、彼らの頭を両列に牙の並ぶ顎によりて、咬合せよ!』
ぞわり、とぼくの背筋に冷たい氷で触れるような感覚が走った。
首吊りの樹から樹皮が剥がれ、紫色の肉のようなものが現われる。
内部に巨大な魔力の塊が生じ、それが炎へと変換されていく。
あっという間に、首吊りの樹は炎に包まれていった。
これは——もしかしなくても、ヤバい奴だ!
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
『|汝《な》はすべての害を乗り越えたり。勝利の賞を得んがため、いかなる損傷をも防ぐ守護の力を支援せよ!』
背後から、チカの声が聞こえてきた。
チカは、ぼくとアカネのように、アリアンフロッド見習いではない。
彼女だけは、先に王都のアリアンフロッド機関に所属していて、活躍していたのだ。
背後から、チカの声が聞こえてきた。
チカは、ぼくとアカネのように、アリアンフロッド見習いではない。
彼女だけは、先に王都のアリアンフロッド機関に所属していて、活躍していたのだ。
集中しているから、なのだろうか——チカの声はいつもより、よく通っているような気がする。
ぼくの体が、金色の光で一瞬、包まれる。
着用している、革鎧をベースにしたフェザー・ジャケットと肉体、その両方が|呪工《エンチャント》されたことがわかる。
防御力を上げるのと同時に、筋力もあがったので、首吊りの樹に与える打撃の量も強化されたのだろう。
ぼくの体が、金色の光で一瞬、包まれる。
着用している、革鎧をベースにしたフェザー・ジャケットと肉体、その両方が|呪工《エンチャント》されたことがわかる。
防御力を上げるのと同時に、筋力もあがったので、首吊りの樹に与える打撃の量も強化されたのだろう。
「おい! スキルなしの支援は後回しだ! こっちを早くしろ」
ウォーレンの怒鳴り声が響いた。
ウォーレンの怒鳴り声が響いた。
スキルなし、とはアリアンフロッドたちが、自分たち以外の人間を指す隠語のようなもので、あんまりいい言葉ではない。
少なくても、ぼくたちをガードするはずの小隊のメンバーが使う言葉じゃない。
少なくても、ぼくたちをガードするはずの小隊のメンバーが使う言葉じゃない。
ウォーレンはもうずっと前から、スキルなしとぼくのことを呼んでいるのだけど、小隊長のギンゲツは注意する素振りすら見せていなかった。
つまり——この小隊はそういう人間たちの集まりってことだ。
彼らにしたら、アリアンフロッド見習いの面倒なんて、したくなかったのかもしれないが、それにしても酷い話だ。
つまり——この小隊はそういう人間たちの集まりってことだ。
彼らにしたら、アリアンフロッド見習いの面倒なんて、したくなかったのかもしれないが、それにしても酷い話だ。
ウォーレンの声に、チカが萎縮するのがわかった。
チカは兎の特性を宿した獣人だ。
|白尾の族《ヒースネイン》と呼ばれており、白と赤で着色された神官服に身を包んでいる。
その神官服は、夢と死の女神、リフトラシルのもので、コモンだけでなく、獣人にも広く、信仰を広げている。
チカは兎の特性を宿した獣人だ。
|白尾の族《ヒースネイン》と呼ばれており、白と赤で着色された神官服に身を包んでいる。
その神官服は、夢と死の女神、リフトラシルのもので、コモンだけでなく、獣人にも広く、信仰を広げている。
彼女は、自分が獣人であることをあまり、目立たせたくないらしく、セリカ姉譲りの銀髪は背の中程まである、長い|ベール《ウィンプル》で隠し、獣毛に覆われた肘から先は長手袋を嵌めていた。
尻尾も神官服のなかに隠し、ヒースネインの特徴である、長く尖端が少し垂れた外耳も、半透明のベールで遮られて、露にはならずに済んでいる。
尻尾も神官服のなかに隠し、ヒースネインの特徴である、長く尖端が少し垂れた外耳も、半透明のベールで遮られて、露にはならずに済んでいる。
獣人は、身体の成長がぼくたちよりもずっと早く、十代半ばでもう、成人として認められることが多い。
チカは実の姉であるセリカ姉の手ほどきを受けて、アリアンフロッドとして先に活躍していた。
もっとも、彼女は「千秋の轍」の隊員、ということではなく、ゲストとして参加しているのだった。
チカは実の姉であるセリカ姉の手ほどきを受けて、アリアンフロッドとして先に活躍していた。
もっとも、彼女は「千秋の轍」の隊員、ということではなく、ゲストとして参加しているのだった。
「どけ!」
ぼくが首吊りの樹に、次の一撃を振るおうとした時、ウォーレンが迫ってきた。
そのまま、斧を振り回すと、ウォーレンに当たりそうになるので、ぼくは仕方なく、首吊りの樹から退いた。
ぼくが首吊りの樹に、次の一撃を振るおうとした時、ウォーレンが迫ってきた。
そのまま、斧を振り回すと、ウォーレンに当たりそうになるので、ぼくは仕方なく、首吊りの樹から退いた。
『勝利を確信する勝ち鬨を以て、光輝の賞を|我《わ》、|此方《こなた》に招来せんと願う。戦と武の神、ヒューランスよ。敵対する者どもを踏みにじらんがために、諸力を我が剣に宿せ!』
ウォーレンが呪句を唱える。
その体の周りを、|呪符《フォース・インテンシブ・カード》がくるくると回っている。
ウォーレンが呪句を唱える。
その体の周りを、|呪符《フォース・インテンシブ・カード》がくるくると回っている。
呪符は、アリアンフロッドが得た、呪文の力を封じたカードで、それを使うことによって、戦闘能力を強化したり、回復させたり、または特殊な効果を生み出すことができる、というものだ。
ウォーレンが唱えた呪句により、舞っていた呪符の一枚に爪で切り裂かれたような跡が付き、そして、風に巻かれるようにして、消えていった。
ウォーレンが唱えた呪句により、舞っていた呪符の一枚に爪で切り裂かれたような跡が付き、そして、風に巻かれるようにして、消えていった。
と同時に、ウォーレンの片手半剣から、ぼくはぴりぴりとしたものを感じた。
呪符で、剣が強化されたのだろう。
呪符で、剣が強化されたのだろう。
「アカネちゃん! ふたりで挟み込むぞ」
ウォーレンが指示を飛ばす。
ぼくには冷たいのに、ウォーレンはやたらと、アカネに親しげに、話しかけたりしている。
ウォーレンが指示を飛ばす。
ぼくには冷たいのに、ウォーレンはやたらと、アカネに親しげに、話しかけたりしている。
アカネは美人だし、スタイルもいいので、わからないでもないけどね。
紅葉色の、三つ編みの髪をなびかせ、ガーディアン・ジャケットの胸の部分を下から突き上げるようにしている、大きな胸は、義理の弟ではないぼくからしても、つい目で追ってしまうだろう。
とは言え、そういう目で見られてしまっていることに、何だかぼくとチカの三人の関係に土足で踏み込まれてしまっているようで、面白くはなかった。
紅葉色の、三つ編みの髪をなびかせ、ガーディアン・ジャケットの胸の部分を下から突き上げるようにしている、大きな胸は、義理の弟ではないぼくからしても、つい目で追ってしまうだろう。
とは言え、そういう目で見られてしまっていることに、何だかぼくとチカの三人の関係に土足で踏み込まれてしまっているようで、面白くはなかった。
『|実《げ》に|叢《くさむら》を食らいつつ、炎の歯は食餌を求めるなり。|汝《な》の光輝をして、一切の諸力は赤刃を以て、包容せよ!』
チカが、呪句を唱える。
走り込むアカネが手にした刀身が、炎に包まれた。
チカが、呪句を唱える。
走り込むアカネが手にした刀身が、炎に包まれた。
こうなってはもう、ぼくの出番はないのかもしれない。
斧を構えて、ふたりの攻撃を見守った。
「おまえたちだけに、いい顔はさせないぜ」
斧を構えて、ふたりの攻撃を見守った。
「おまえたちだけに、いい顔はさせないぜ」
「千秋の轍」のもうひとりの隊員、エルランジュが、わざとなのだろう、背後からぼくにぶつかりながら、首吊りの樹に迫っていった。
既に強化済みなのだろう、振り上げた戦鎚に青い光が宿っている。
既に強化済みなのだろう、振り上げた戦鎚に青い光が宿っている。
首吊りの樹を中心にして、大地が揺れた。
地面の下から、木の根のようなものが飛び出してくる。
それが、アカネとウォーレン、エルランジュを襲う。
地面の下から、木の根のようなものが飛び出してくる。
それが、アカネとウォーレン、エルランジュを襲う。
エルランジュの体が宙を舞った。
吹き飛ばされ、怒声をあげる。
が——アカネは刀を閃かせて、木の根を切断した。
吹き飛ばされ、怒声をあげる。
が——アカネは刀を閃かせて、木の根を切断した。
「おりゃあ!」
ウォーレンが雄叫びをあげた。
木の根が束となって、迫る。
が、ウォーレンは意に介さず、その木の根ごと、剣で薙ぎ払った。
切断された木の根が舞う。
ウォーレンが雄叫びをあげた。
木の根が束となって、迫る。
が、ウォーレンは意に介さず、その木の根ごと、剣で薙ぎ払った。
切断された木の根が舞う。
と、首吊りの樹、全体がぶるぶると震えはじめた。
『汝が息吹の力をして、上昇せしめよ。灼熱によりて、その致命所を貫け……』
ギンゲツの呪句を唱える声が聞こえる。
『汝が息吹の力をして、上昇せしめよ。灼熱によりて、その致命所を貫け……』
ギンゲツの呪句を唱える声が聞こえる。
首吊りの樹からまた、あの鼓膜を揺らすような、人間には出しようのない音が響く。
「やべぇ……退避するぞ」
ウォーレンが腰を低くすると、アカネに抱きついた。
そのまま、前転をするように、転がる。
「やべぇ……退避するぞ」
ウォーレンが腰を低くすると、アカネに抱きついた。
そのまま、前転をするように、転がる。
『……ヒュメイン、炎の象徴よ。ここに宣言す、彼らの|頭《こうべ》を両列に牙の並ぶ顎によりて、咬合せよ!』
ぞわり、とぼくの背筋に冷たい氷で触れるような感覚が走った。
首吊りの樹から樹皮が剥がれ、紫色の肉のようなものが現われる。
首吊りの樹から樹皮が剥がれ、紫色の肉のようなものが現われる。
内部に巨大な魔力の塊が生じ、それが炎へと変換されていく。
あっという間に、首吊りの樹は炎に包まれていった。
これは——もしかしなくても、ヤバい奴だ!
あっという間に、首吊りの樹は炎に包まれていった。
これは——もしかしなくても、ヤバい奴だ!