第34話

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 デートから一週間近くが過ぎ、今日からは試験期間だ。
 試験が終わる日までは部活も当然ながらお休みになる。
 どこぞの世界を大いに盛り上げる団と違い、当然ながら我々e-Sports愛好会も活動はお休みだ。

 テスト期間中ではあっても掃除当番がある生徒は当然ながら掃除をしてから帰ることになる。しかし、掃除を面倒に感じる生徒はうちの学校にも居るわけで――。

「なぁ富樫、お前どうせ家に帰ったら勉強以外にやることねぇだろ」

 皆が帰ろうとする中、同じクラスでサッカー部に居る早川に突如絡まれた。
 こいつはこないだの文化祭では準備委員であることを良い事に授業そっちのけで準備作業に取り掛かろうとしたら、先生に見事に叱られるほどの祭り好きで遊び好きだ。しかも成績は下から数えたほうが早く、正直相手にしたくないタイプだ。

「何だよ、急に。お前に言われる筋合いはない」
「なぁ、そんなこと言うなよ。どうせ勉強する暇があったら掃除当番を俺の代わりにやってもらえねぇかな」
「断る。お前、そう言って僕に掃除当番を押し付けようとするのか? 何度飯田さんに叱られたか分かっているのか」
「なぁ、頼むよ。俺とお前の仲だろ?」
「お前とは親しくした覚えはないさ」

 しかも、こいつは困ったことに掃除当番が回ったら適当な奴に回している。断ろうとしてもしつこく迫ってくるし、本当に困った奴だ。
 先生もしょっちゅう苦言を呈しているのに、全く懲りる様子がない。

 こいつのしつこさに僕が呆れた表情を浮かべていると、早川の後ろに見覚えのある女子生徒が立っていた。

「早川、お前また掃除当番を押し付けようとしていたな」

 高めの身長に低めの声と物憂げながらも若干怒りを帯びた表情――。
 愛未だ。助かった!

「ちぇっ、飯田か。別にいいだろ、掃除くらい他のやつにやらせても」
「早川、そのようなことがいじめに繋がるって先生から注意されたのを忘れたのか? 明日も掃除当番を押し付けたら、今度の大掃除の日に一人で教室掃除してもらうからな」
「そ、それは勘弁してくれ! ちゃんと掃除をやるから!」
「分かればいいんだ。私も手伝うから、お前も準備をしろ」
「は、はいっ!」

 そう言うと、早川は掃除用具が入ったロッカーに向かっていった。
 うちの学校では定期テスト終了後に定例の大掃除があるけど、そういった大掃除は早川の様なサボり癖のある生徒達(やつら)にやらせたいね。掃除を押し付けて自分は遊び散らかすような不届き者が減ると思う。
 愛未、今日のところは助かったよ。

 愛未の邪魔をするのは悪いと思って、勉強用具の入った鞄と弁当箱を携えると僕は階段に向かい、踊り場で朋恵からのメッセージを確認していた。

「なになに、『図書室に居るよ』、『ヤスはこれからどうするの?』か。『愛未が早川と一緒に掃除している』、『終わったら三人で一緒に勉強しない?』、と」

 メッセージを送ると、僕はスマホを胸ポケットに入れた。

 どこの学校もそうだけど、定期試験の前になると図書室に行って勉強する生徒が居る。図書委員を務めている黒須さんはともかく、普段は図書室に縁がない朋恵まで図書室で勉強をするくらいだ。

 今回も余裕で行けるかというと、e-Sports愛好会に入ってからちょっと勉強に集中できない。ちょっとの休憩で見るつもりだったVtuberの配信をつい見てしまい、気がついたら勉強に集中できていなかったことが何度もあったことか。
 部長をしている桃花先輩からも勉強するよう勧められているけれども、これじゃあ心配だなぁ……。

「ヤス君、どうした?」

 すると、掃除が終わったばかりでこれから帰ろうとしていた愛未と出くわした。

「愛未、掃除は終わったの?」
「ああ、もちろんだ。早川が協力してくれたからな」
「ありがとう、愛未」

 あと一歩で僕が掃除させられるところだけど、愛未のお陰で助かったよ。

「お礼は良いよ。私とヤス君との仲じゃないか」
「うん、そうだね。朋恵だけど、今図書館に居るってLINEが来ていたよ」
「さっき見たよ。トモが図書室か……、珍しいな。一緒に行くか?」

 僕は無言で頷いた。
 今日は大人しく帰って家で勉強しようと思ったけど、朋恵が図書室で勉強しているならば帰宅時間まで付き合おう。
 学校から家まで歩いて二十分くらいだし、お互いの家も近いから、話しながら帰ることだって出来るからね。

「ん? 橋本からだ」

 すると、制服の胸ポケットに入っていた携帯が振動したので、メッセージを確認した。

「『今地下鉄の構内に居るぜ。このまま帰るから、三人で仲良くやってくれ』だってさ」
「ふっ、気を遣うあたりアイツらしいね」

 そう話すと、愛未は微笑んだ。
 本当は橋本を交えて四人で勉強してみたかったんだよな――と思いつつ、僕らは夕闇迫る校舎内を歩いて、朋恵が待っている図書室へと足を運んだ。



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 デートから一週間近くが過ぎ、今日からは試験期間だ。
 試験が終わる日までは部活も当然ながらお休みになる。
 どこぞの世界を大いに盛り上げる団と違い、当然ながら我々e-Sports愛好会も活動はお休みだ。
 テスト期間中ではあっても掃除当番がある生徒は当然ながら掃除をしてから帰ることになる。しかし、掃除を面倒に感じる生徒はうちの学校にも居るわけで――。
「なぁ富樫、お前どうせ家に帰ったら勉強以外にやることねぇだろ」
 皆が帰ろうとする中、同じクラスでサッカー部に居る早川に突如絡まれた。
 こいつはこないだの文化祭では準備委員であることを良い事に授業そっちのけで準備作業に取り掛かろうとしたら、先生に見事に叱られるほどの祭り好きで遊び好きだ。しかも成績は下から数えたほうが早く、正直相手にしたくないタイプだ。
「何だよ、急に。お前に言われる筋合いはない」
「なぁ、そんなこと言うなよ。どうせ勉強する暇があったら掃除当番を俺の代わりにやってもらえねぇかな」
「断る。お前、そう言って僕に掃除当番を押し付けようとするのか? 何度飯田さんに叱られたか分かっているのか」
「なぁ、頼むよ。俺とお前の仲だろ?」
「お前とは親しくした覚えはないさ」
 しかも、こいつは困ったことに掃除当番が回ったら適当な奴に回している。断ろうとしてもしつこく迫ってくるし、本当に困った奴だ。
 先生もしょっちゅう苦言を呈しているのに、全く懲りる様子がない。
 こいつのしつこさに僕が呆れた表情を浮かべていると、早川の後ろに見覚えのある女子生徒が立っていた。
「早川、お前また掃除当番を押し付けようとしていたな」
 高めの身長に低めの声と物憂げながらも若干怒りを帯びた表情――。
 愛未だ。助かった!
「ちぇっ、飯田か。別にいいだろ、掃除くらい他のやつにやらせても」
「早川、そのようなことがいじめに繋がるって先生から注意されたのを忘れたのか? 明日も掃除当番を押し付けたら、今度の大掃除の日に一人で教室掃除してもらうからな」
「そ、それは勘弁してくれ! ちゃんと掃除をやるから!」
「分かればいいんだ。私も手伝うから、お前も準備をしろ」
「は、はいっ!」
 そう言うと、早川は掃除用具が入ったロッカーに向かっていった。
 うちの学校では定期テスト終了後に定例の大掃除があるけど、そういった大掃除は早川の様なサボり癖のある生徒達《やつら》にやらせたいね。掃除を押し付けて自分は遊び散らかすような不届き者が減ると思う。
 愛未、今日のところは助かったよ。
 愛未の邪魔をするのは悪いと思って、勉強用具の入った鞄と弁当箱を携えると僕は階段に向かい、踊り場で朋恵からのメッセージを確認していた。
「なになに、『図書室に居るよ』、『ヤスはこれからどうするの?』か。『愛未が早川と一緒に掃除している』、『終わったら三人で一緒に勉強しない?』、と」
 メッセージを送ると、僕はスマホを胸ポケットに入れた。
 どこの学校もそうだけど、定期試験の前になると図書室に行って勉強する生徒が居る。図書委員を務めている黒須さんはともかく、普段は図書室に縁がない朋恵まで図書室で勉強をするくらいだ。
 今回も余裕で行けるかというと、e-Sports愛好会に入ってからちょっと勉強に集中できない。ちょっとの休憩で見るつもりだったVtuberの配信をつい見てしまい、気がついたら勉強に集中できていなかったことが何度もあったことか。
 部長をしている桃花先輩からも勉強するよう勧められているけれども、これじゃあ心配だなぁ……。
「ヤス君、どうした?」
 すると、掃除が終わったばかりでこれから帰ろうとしていた愛未と出くわした。
「愛未、掃除は終わったの?」
「ああ、もちろんだ。早川が協力してくれたからな」
「ありがとう、愛未」
 あと一歩で僕が掃除させられるところだけど、愛未のお陰で助かったよ。
「お礼は良いよ。私とヤス君との仲じゃないか」
「うん、そうだね。朋恵だけど、今図書館に居るってLINEが来ていたよ」
「さっき見たよ。トモが図書室か……、珍しいな。一緒に行くか?」
 僕は無言で頷いた。
 今日は大人しく帰って家で勉強しようと思ったけど、朋恵が図書室で勉強しているならば帰宅時間まで付き合おう。
 学校から家まで歩いて二十分くらいだし、お互いの家も近いから、話しながら帰ることだって出来るからね。
「ん? 橋本からだ」
 すると、制服の胸ポケットに入っていた携帯が振動したので、メッセージを確認した。
「『今地下鉄の構内に居るぜ。このまま帰るから、三人で仲良くやってくれ』だってさ」
「ふっ、気を遣うあたりアイツらしいね」
 そう話すと、愛未は微笑んだ。
 本当は橋本を交えて四人で勉強してみたかったんだよな――と思いつつ、僕らは夕闇迫る校舎内を歩いて、朋恵が待っている図書室へと足を運んだ。