第32話
ー/ー「トモ、男性向けの服を置いているところはモールには少ないよ」
モールを目の前に歩いていると、愛未が朋恵に話しかけてきた。
朋恵はバッグからスマホを取り出して店舗情報をチェックすると、「ホントだ!」と驚いた表情を見せた。
「それじゃあ、隣にあるララガーデンに行く?」
「そうだね。ウニクロは……」
あそこでいつも服を買っているから、別に拘らなくても良いんじゃないか――、と思ったら、朋恵が手を交差する仕草を見せた。
入りやすくて、広いのになぁ。
「どうせなら、ウニクロ以外にしない? ほら、メンズ&ウィメンズファッションの店もあることだし」
「ブランドものって、どういった店があるんだ? 僕はあまり知らないんだけど」
「そうだね~、ここのサイトを見る限りだと……」
すると、歩行者信号が赤から青に変わっていた。
ここは国道沿いで交通量が多いから、渡るタイミングを計るのが難しいんだよな。
「トモ、信号が変わっているぞ。早く渡らないと」
「あ、ホントだ! 行こう」
朋恵がスマホをバッグにしまうと、僕と手を繋いでダッシュで横断歩道を渡った。
もちろん、背後からは愛未もダッシュしてついてきている。
僕は小学校の時の貯金を使い尽しているせいもあって、息が切れそうだったよ。
少し体を鍛えないとダメだなぁ。
◇
ララガーデンに着くや否や、僕らは二階の店を歩いて回った。
二階はさすがに「帰りたい」ムードになる……と思いきや、今三人で来ている店はモールの通路に近いところにあり、店の雰囲気も落ち着いている。
「どれがいいのかなぁ……」
ウニクロだったらコットンシャツやカーディガンを選定してすぐにお会計ということが出来るのだが、何せここには来たことがない。
しかも、店の人がお勧めのコーデを教えてくれそうだから、ここは店の人に従うべきか――と思ったら、「ねえ」と朋恵が声をかけてきた。
「これ、ヤスにぴったりだと思うよ」
「どれ?」
朋恵が見せてきたのは、少しだけだぼだぼとしている感じのダークグレーのカーディガンだった。
サイズも良いし、色も控えめ気味で僕に似合いそうだ。
ただ、気になる値段は……。
「ん~、三千七百円かぁ」
月一万円の小遣いを親からもらっている身で、四千円の近くの服を買うのはどうなんだろう。身だしなみに気を遣わなければならなくなると、お金が足りなくなる。
つくづく夏休みにバイトをすればよかったのに……って、なんだかヘタレているぞ、僕!
「ヤス、どうしたの?」
すると、不安そうに朋恵が僕を覗き込んできた。
「いや、いざ買おうと思ってもお金が……ね」
見た感じは似合いそうな服だけど、金を使って買って大丈夫なんだろうか。
「ふ~ん、ヤスってお年玉やお小遣いを貯金しているの?」
「僕はお昼は親の弁当で済ませていて、それに徒歩で学校に通っているからね。お小遣いが余ることが多くて、ほとんど貯金に回しているんだ」
本を買うにしても参考書くらいだし、服はあんまり買っていない――というか、いつもウニクロで親から買ってもらってばかりだ。
お小遣いを多めに貰っても余るばかりだし、この際だから買っちゃうか。
「よし、たまには奮発して……」
「おっ! ヤス、乗り気だね~」
「たまには服を自分で買わないとね」
「マナもそう思う?」
「うん。私も服は自分で買っているからね」
愛未も自分で買っているのか……。僕一人だけがまだ子供のような感じがするんだけど、もう迷ってはいられないんだ!
こうして、二人に押されるように、奮発してこれからの時期にぴったりのカーディガンを無事手に入れたけど……、母さんになんか言われそうで心配だな。
◇
僕の服を買い終わった後で、僕たちは雑貨店に立ち寄った。
なお、愛未は「今回は遠慮して、ネットショップで良い服を探してみるよ」とのことで見て回るだけになった。
その一方で、朋恵は店に置いてあるアクセサリーに飛びついて色々と買おうとした。
金がないのは世の学生の常か、朋恵は財布にある現金の残りをしきりに気にしていたけど。
「うーん、これも欲しいんだけどなぁ」
「余りカネを使いすぎないほうがいいよ。カネを使いすぎると叔母さんに叱られるだろ」
「うぐっ……、それは不味いね。ここは我慢だね」
朋恵が欲しいアクセサリーに手を伸ばそうとした瞬間、愛未に突っ込まれて一瞬にして顔を曇らせた。
僕も秋冬物のカーディガンを買ったために財布が心許ないから、その気持ちは良く分かる。お昼は母さん手製の(というよりは夕ご飯の余りが多い)弁当があるから何とかなるし、飲み物もマイボトルがあるからこれまた大丈夫……、だよな。
結局、雑貨店では愛未がシャーペンを買い替える程度で終わった。
そろそろお昼だけど、どこで食べようかなぁ。服を買った以上は、あまり金をかけたくないんだよな。
すると、朋恵が「百円ショップに行こうよ!」と誘ってきたので、僕らはついて行くことになった。
参ったな。これだといつお昼になるか分からないな。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
「トモ、男性向けの服を置いているところはモールには少ないよ」
モールを目の前に歩いていると、愛未が朋恵に話しかけてきた。
朋恵はバッグからスマホを取り出して店舗情報をチェックすると、「ホントだ!」と驚いた表情を見せた。
「それじゃあ、隣にあるララガーデンに行く?」
「そうだね。ウニクロは……」
あそこでいつも服を買っているから、別に拘らなくても良いんじゃないか――、と思ったら、朋恵が手を交差する仕草を見せた。
入りやすくて、広いのになぁ。
「どうせなら、ウニクロ以外にしない? ほら、メンズ&ウィメンズファッションの店もあることだし」
「ブランドものって、どういった店があるんだ? 僕はあまり知らないんだけど」
「そうだね~、ここのサイトを見る限りだと……」
すると、歩行者信号が赤から青に変わっていた。
ここは国道沿いで交通量が多いから、渡るタイミングを計るのが難しいんだよな。
「トモ、信号が変わっているぞ。早く渡らないと」
「あ、ホントだ! 行こう」
朋恵がスマホをバッグにしまうと、僕と手を繋いでダッシュで横断歩道を渡った。
もちろん、背後からは愛未もダッシュしてついてきている。
僕は小学校の時の貯金を使い尽しているせいもあって、息が切れそうだったよ。
少し体を鍛えないとダメだなぁ。
◇
ララガーデンに着くや否や、僕らは二階の店を歩いて回った。
二階はさすがに「帰りたい」ムードになる……と思いきや、今三人で来ている店はモールの通路に近いところにあり、店の雰囲気も落ち着いている。
「どれがいいのかなぁ……」
ウニクロだったらコットンシャツやカーディガンを選定してすぐにお会計ということが出来るのだが、何せここには来たことがない。
しかも、店の人がお勧めのコーデを教えてくれそうだから、ここは店の人に従うべきか――と思ったら、「ねえ」と朋恵が声をかけてきた。
「これ、ヤスにぴったりだと思うよ」
「どれ?」
朋恵が見せてきたのは、少しだけだぼだぼとしている感じのダークグレーのカーディガンだった。
サイズも良いし、色も控えめ気味で僕に似合いそうだ。
ただ、気になる値段は……。
「ん~、三千七百円かぁ」
月一万円の小遣いを親からもらっている身で、四千円の近くの服を買うのはどうなんだろう。身だしなみに気を遣わなければならなくなると、|お金《先立つもの》が足りなくなる。
つくづく夏休みにバイトをすればよかったのに……って、なんだかヘタレているぞ、僕!
「ヤス、どうしたの?」
すると、不安そうに朋恵が僕を覗き込んできた。
「いや、いざ買おうと思ってもお金が……ね」
見た感じは似合いそうな服だけど、金を使って買って大丈夫なんだろうか。
「ふ~ん、ヤスってお年玉やお小遣いを貯金しているの?」
「僕はお昼は親の弁当で済ませていて、それに徒歩で学校に通っているからね。お小遣いが余ることが多くて、ほとんど貯金に回しているんだ」
本を買うにしても参考書くらいだし、服はあんまり買っていない――というか、いつもウニクロで親から買ってもらってばかりだ。
お小遣いを多めに貰っても余るばかりだし、この際だから買っちゃうか。
「よし、たまには奮発して……」
「おっ! ヤス、乗り気だね~」
「たまには服を自分で買わないとね」
「マナもそう思う?」
「うん。私も服は自分で買っているからね」
愛未も自分で買っているのか……。僕一人だけがまだ子供のような感じがするんだけど、もう迷ってはいられないんだ!
こうして、二人に押されるように、奮発してこれからの時期にぴったりのカーディガンを無事手に入れたけど……、母さんになんか言われそうで心配だな。
◇
僕の服を買い終わった後で、僕たちは雑貨店に立ち寄った。
なお、愛未は「今回は遠慮して、ネットショップで良い服を探してみるよ」とのことで見て回るだけになった。
その一方で、朋恵は店に置いてあるアクセサリーに飛びついて色々と買おうとした。
金がないのは世の学生の常か、朋恵は財布にある現金の残りをしきりに気にしていたけど。
「うーん、これも欲しいんだけどなぁ」
「余りカネを使いすぎないほうがいいよ。カネを使いすぎると叔母さんに叱られるだろ」
「うぐっ……、それは不味《マズ》いね。ここは我慢だね」
朋恵が欲しいアクセサリーに手を伸ばそうとした瞬間、愛未に突っ込まれて一瞬にして顔を曇らせた。
僕も秋冬物のカーディガンを買ったために財布が心許ないから、その気持ちは良く分かる。お昼は母さん手製の(というよりは夕ご飯の余りが多い)弁当があるから何とかなるし、飲み物もマイボトルがあるからこれまた大丈夫……、だよな。
結局、雑貨店では愛未がシャーペンを買い替える程度で終わった。
そろそろお昼だけど、どこで食べようかなぁ。服を買った以上は、あまり金をかけたくないんだよな。
すると、朋恵が「百円ショップに行こうよ!」と誘ってきたので、僕らはついて行くことになった。
参ったな。これだといつお昼になるか分からないな。