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第74話 ガチトラップダンジョンラストフロア

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 そこに初めから待機していたのか、それともたった今生成されてきたのか。堅牢な鉱物のボディを持った巨人がズッシンと行く手を阻む。

「ゴーレムか……」
 生身の肉体を持たない魔導生物。あの中にはかつて生きていたものの魂が閉じ込めてある。こんなものを番人にしていたとは。

 レッドアイズ国で見た魔導機兵(オートマタ)のようなものと比べるとこちらはかなりのオールドスタイルだ。向こうは甲冑のような出で立ちだったが、これは石が辛うじて人の形をしている程度のものだ。

「性格悪いよねぇ。出口チラ見せしといて、こんなのを出してくるの。希望を断つのが目的なんだろうけど」
「お前の足なら出口まで走って抜けられるんじゃないのか?」
「おーいおいおい、おーいおいおい、あんま過大評価すんなって。これでも荷物が重くてキツいんだぜ?」
 それにしては余裕がありそうなニヤケ面している気がするが。

「コイツの身体はオリハルコン製だ。生半可な炎じゃ焼けないし溶けないし、っつーか、魔法弾いちゃうのよ」
 最後の最後で面倒くさいのが出てきたな。

「最後の仕掛けはランダムさ。本当はさっきみたいなトラップの続きみたいなパターンもあった。でもゴーレムのパターンは厄介だわ」
 コーベがぶつくさ言っている間に、オリハルコンゴーレムが拳を振り下ろしてきた。想像の数倍速い。デカブツのくせになんというスピードだ。

 床がグワングワンにシェイクされる。割れはしない辺り、おそらく床もオリハルコン製品か、それに耐えうる魔法でも施しているのだろう。

「おわっとっと」
 足元がグラついてバランスも取りづらい。これはまた本格的にまずいかもしれん。

「カシアちゃん、いいヒントをあげようか」
「なんだ急に。ヒントだ?」
「ゴーレムくんは宝を守る番人。今持ってる宝を全部差し出せば通してくれるよ」

 それはつまりここまで運んできた財宝を全部捨てろということではないか。
 命が惜しければ、無事に帰りたければその選択もあるということだな。

 その方法を知っているということは、コーベも実際に財宝捨てて逃げ帰ったことがあるのかもしれない。

 コーベはトラップの回避はお手のもののようだが、ガチンコ対決の肉弾戦は不向きだろうしな。ましてや重い財宝を鞄に詰め込んでいる状態ではなおのこと不利だ。

「それが事実とするならば今の状況では得策だろう。なんといってもここまでの洞窟探索、遺跡のトラップ回避でかなり疲弊してきているのも事実。……だが断る」
「マジで言っちゃってる?」
「マジだ」

 ここで全てを捨ててどうする。
 もう一度戻って、また宝物庫まで取りに行ってを繰り返せとでも?

 否、如何に我が惨めったらしくなろうとも、そこまで情けない醜態など晒したくはない。特に、そこにいるコーベの前ではな。

 後々に「しょうがないよ」とか、「仕方なかったんだよ」とか、慰められるのも虫酸が走るわ。

 コイツとともに行動してから我、ずっとカッコ悪いままじゃないか。ずっと守られてばっかで、そんなの、そんなのイヤに決まっておろうが!!!!

 どんなに腐っても、我は魔王だ!!!!
 オリハルコンゴーレムだ?
 焼けない? 溶けない? 弾かれる? 知ったことか!

鋼鉄巨神の黒弾丸(キャノンボーラー)!!!!」
 その呪文とともに放たれるは、オリハルコンゴーレムの背丈にも届く、巨大なる砲丸。さっき我を追い回した鉄球などと比べてくれるなよ。

「いや、だからカシアちゃん、アイツに魔法は――」

 我が鉄球は、オリハルコンゴーレムに直撃し、そしてそのまま爆発四散する。

「へっ?」
 あとに残るのは、鉱石の残骸……もはや石くずばかりよ。

「圧縮された魔力により鉄をも凌駕する硬度を誇る我が魔法に、オリハルコンごときが敵うものか! ふははははははははは!!!!」

 ただし、圧縮する力の分だけ魔力を消耗するから無茶すりゃあ一発でスッカラカンになる諸刃の剣。素人にはオススメできない。

「へぇ~、凄いねフィーちゃん。さっすが元魔王っ!」
「ふはははははははは!!!! ……はは?」

 今、コイツ、なんと言った?

「お、おい、キサマ……? な、何故……」
「なんで知ってっかって? 聞いてなかったの? 大分前にロータスやリンドーの野郎がフィーちゃんのもとまで辿り着いただろ? あの情報提供したの、オレだから」
 おま、おまぁ……っ!?

「そ、そ、そそそんな情報何処から? どうやって?」
「盗ませてもらったぜ」
 この上なく悪びれもしない笑みで答えられた。

「こういうのはオレの得意分野なんでね。ああ、その顔についてもオレの個人的な趣味で探らせてもらったよ。いい名前だね、カシアちゃん」
「ぬななななっ!? ……お、オホン。コーベ、キサマが何を言っておるのか、わ、我にはまるで分からん。元魔王とは何のことだ?」

 しらばっくれる勢いで、無理やりにでも取り繕ってみる。いくらなんでもブラフを重ねているだけだろう。適当に嘘八百並べてからかっているだけ。そうに違いない。
 大体、どういう情報網を持っていたら我とフィーが繋がるのだ。

 今の我の姿はミモザの瞬間的人違い(スルーポーズ)によって全くの別人、カシア・アレフヘイムになっているのだから、分かるはずがない。

「フィーちゃんさ、少し前にレッドアイズ国行って暴れてたでしょ? あれがよくなかったねぇ~。あの国のあちこちを徘徊している魔導機兵(オートマタ)は優秀なものでね、見たものを記録することもできるんだぜ。言ってる意味分かる?」
「わ、分からぬな!」
 なんか嫌な予感がしてきた。そういえばマルペル辺りがそんなことを言っていたような気もする。

「バッチリ残っちゃってたよ。迷子の迷子のカシアちゃんが、魔導機兵(オートマタ)に道を尋ねて、不審者扱いされた、まさにその場面がね」
 物凄い愉快なものを目撃したみたいな顔をするな!
 ぐぬぬ……ソレばかりは我しか知らない情報のはずだ。的確に、まるで見てきたかのように言えるということは、コーベの言葉がデタラメなんかではなく、紛れもない事実だと証明されてしまったも同然ではないか。

「いやいや、そんな記録が残ってたとして、なんでキサマが――」
「盗ませてもらったぜ」
 あ、ダメだ、コイツに常識は通じないんだ。常識を犠牲にした結果、あらゆる手段を使ってフリーダムに情報を集める能力に長けているんだ。
 キモキモチャラ男が格段にキモキモ度アップしたぞ。

「フィーちゃんが魔王だって分かったのは、ま、リンドーに頼まれて仕方なく調べてやった結果だけどね。魔導機兵(オートマタ)の記録調べたのは偶然よグーゼン。レッドアイズが大騒ぎだって聞いたから面白そうだなぁと思って不審者情報を探ってたらたまたま入国記録がないのに国の中枢にのほほんと出歩いてる間抜けな女がいたからそこから位置情報を調べ上げて、んで、その日フィーちゃんが行方をくらました位置から近かったから断定したってわけさ。あ、この女、フィーちゃんの変装だな、ってね」
 うぅわぁ、すっごい早口。キモいなぁ。

「ということは何か? キサマ、最初に我と出会ったときに既に我の正体に気付いていたのか?」
「まさかぁ~、そりゃあ買いかぶりすぎっちゅうもんよ。ただ、めちゃくちゃ怪しいヤッベェ女だとは確信してたぜ。まともな武器も持たず、超キケンな洞窟歩いているんだもん」

 あ……ひょっとしてコーベが初対面で執拗に我に絡んできたのって、我の所持品をこっそり調べるためだったのか? 何故かコーベに向かって魔法を使おうとしたとき、魔石持ってること最初から知ってるみたいに的確に盗んだし。


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 そこに初めから待機していたのか、それともたった今生成されてきたのか。堅牢な鉱物のボディを持った巨人がズッシンと行く手を阻む。
「ゴーレムか……」
 生身の肉体を持たない魔導生物。あの中にはかつて生きていたものの魂が閉じ込めてある。こんなものを番人にしていたとは。
 レッドアイズ国で見た魔導機兵《オートマタ》のようなものと比べるとこちらはかなりのオールドスタイルだ。向こうは甲冑のような出で立ちだったが、これは石が辛うじて人の形をしている程度のものだ。
「性格悪いよねぇ。出口チラ見せしといて、こんなのを出してくるの。希望を断つのが目的なんだろうけど」
「お前の足なら出口まで走って抜けられるんじゃないのか?」
「おーいおいおい、おーいおいおい、あんま過大評価すんなって。これでも荷物が重くてキツいんだぜ?」
 それにしては余裕がありそうなニヤケ面している気がするが。
「コイツの身体はオリハルコン製だ。生半可な炎じゃ焼けないし溶けないし、っつーか、魔法弾いちゃうのよ」
 最後の最後で面倒くさいのが出てきたな。
「最後の仕掛けはランダムさ。本当はさっきみたいなトラップの続きみたいなパターンもあった。でもゴーレムのパターンは厄介だわ」
 コーベがぶつくさ言っている間に、オリハルコンゴーレムが拳を振り下ろしてきた。想像の数倍速い。デカブツのくせになんというスピードだ。
 床がグワングワンにシェイクされる。割れはしない辺り、おそらく床もオリハルコン製品か、それに耐えうる魔法でも施しているのだろう。
「おわっとっと」
 足元がグラついてバランスも取りづらい。これはまた本格的にまずいかもしれん。
「カシアちゃん、いいヒントをあげようか」
「なんだ急に。ヒントだ?」
「ゴーレムくんは宝を守る番人。今持ってる宝を全部差し出せば通してくれるよ」
 それはつまりここまで運んできた財宝を全部捨てろということではないか。
 命が惜しければ、無事に帰りたければその選択もあるということだな。
 その方法を知っているということは、コーベも実際に財宝捨てて逃げ帰ったことがあるのかもしれない。
 コーベはトラップの回避はお手のもののようだが、ガチンコ対決の肉弾戦は不向きだろうしな。ましてや重い財宝を鞄に詰め込んでいる状態ではなおのこと不利だ。
「それが事実とするならば今の状況では得策だろう。なんといってもここまでの洞窟探索、遺跡のトラップ回避でかなり疲弊してきているのも事実。……だが断る」
「マジで言っちゃってる?」
「マジだ」
 ここで全てを捨ててどうする。
 もう一度戻って、また宝物庫まで取りに行ってを繰り返せとでも?
 否、如何に我が惨めったらしくなろうとも、そこまで情けない醜態など晒したくはない。特に、そこにいるコーベの前ではな。
 後々に「しょうがないよ」とか、「仕方なかったんだよ」とか、慰められるのも虫酸が走るわ。
 コイツとともに行動してから我、ずっとカッコ悪いままじゃないか。ずっと守られてばっかで、そんなの、そんなのイヤに決まっておろうが!!!!
 どんなに腐っても、我は魔王だ!!!!
 オリハルコンゴーレムだ?
 焼けない? 溶けない? 弾かれる? 知ったことか!
「|鋼鉄巨神の黒弾丸《キャノンボーラー》!!!!」
 その呪文とともに放たれるは、オリハルコンゴーレムの背丈にも届く、巨大なる砲丸。さっき我を追い回した鉄球などと比べてくれるなよ。
「いや、だからカシアちゃん、アイツに魔法は――」
 我が鉄球は、オリハルコンゴーレムに直撃し、そしてそのまま爆発四散する。
「へっ?」
 あとに残るのは、鉱石の残骸……もはや石くずばかりよ。
「圧縮された魔力により鉄をも凌駕する硬度を誇る我が魔法に、オリハルコンごときが敵うものか! ふははははははははは!!!!」
 ただし、圧縮する力の分だけ魔力を消耗するから無茶すりゃあ一発でスッカラカンになる諸刃の剣。素人にはオススメできない。
「へぇ~、凄いねフィーちゃん。さっすが元魔王っ!」
「ふはははははははは!!!! ……はは?」
 今、コイツ、なんと言った?
「お、おい、キサマ……? な、何故……」
「なんで知ってっかって? 聞いてなかったの? 大分前にロータスやリンドーの野郎がフィーちゃんのもとまで辿り着いただろ? あの情報提供したの、オレだから」
 おま、おまぁ……っ!?
「そ、そ、そそそんな情報何処から? どうやって?」
「盗ませてもらったぜ」
 この上なく悪びれもしない笑みで答えられた。
「こういうのはオレの得意分野なんでね。ああ、その顔についてもオレの個人的な趣味で探らせてもらったよ。いい名前だね、カシアちゃん」
「ぬななななっ!? ……お、オホン。コーベ、キサマが何を言っておるのか、わ、我にはまるで分からん。元魔王とは何のことだ?」
 しらばっくれる勢いで、無理やりにでも取り繕ってみる。いくらなんでもブラフを重ねているだけだろう。適当に嘘八百並べてからかっているだけ。そうに違いない。
 大体、どういう情報網を持っていたら我とフィーが繋がるのだ。
 今の我の姿はミモザの|瞬間的人違い《スルーポーズ》によって全くの別人、カシア・アレフヘイムになっているのだから、分かるはずがない。
「フィーちゃんさ、少し前にレッドアイズ国行って暴れてたでしょ? あれがよくなかったねぇ~。あの国のあちこちを徘徊している魔導機兵《オートマタ》は優秀なものでね、見たものを記録することもできるんだぜ。言ってる意味分かる?」
「わ、分からぬな!」
 なんか嫌な予感がしてきた。そういえばマルペル辺りがそんなことを言っていたような気もする。
「バッチリ残っちゃってたよ。迷子の迷子のカシアちゃんが、魔導機兵《オートマタ》に道を尋ねて、不審者扱いされた、まさにその場面がね」
 物凄い愉快なものを目撃したみたいな顔をするな!
 ぐぬぬ……ソレばかりは我しか知らない情報のはずだ。的確に、まるで見てきたかのように言えるということは、コーベの言葉がデタラメなんかではなく、紛れもない事実だと証明されてしまったも同然ではないか。
「いやいや、そんな記録が残ってたとして、なんでキサマが――」
「盗ませてもらったぜ」
 あ、ダメだ、コイツに常識は通じないんだ。常識を犠牲にした結果、あらゆる手段を使ってフリーダムに情報を集める能力に長けているんだ。
 キモキモチャラ男が格段にキモキモ度アップしたぞ。
「フィーちゃんが魔王だって分かったのは、ま、リンドーに頼まれて仕方なく調べてやった結果だけどね。魔導機兵《オートマタ》の記録調べたのは偶然よグーゼン。レッドアイズが大騒ぎだって聞いたから面白そうだなぁと思って不審者情報を探ってたらたまたま入国記録がないのに国の中枢にのほほんと出歩いてる間抜けな女がいたからそこから位置情報を調べ上げて、んで、その日フィーちゃんが行方をくらました位置から近かったから断定したってわけさ。あ、この女、フィーちゃんの変装だな、ってね」
 うぅわぁ、すっごい早口。キモいなぁ。
「ということは何か? キサマ、最初に我と出会ったときに既に我の正体に気付いていたのか?」
「まさかぁ~、そりゃあ買いかぶりすぎっちゅうもんよ。ただ、めちゃくちゃ怪しいヤッベェ女だとは確信してたぜ。まともな武器も持たず、超キケンな洞窟歩いているんだもん」
 あ……ひょっとしてコーベが初対面で執拗に我に絡んできたのって、我の所持品をこっそり調べるためだったのか? 何故かコーベに向かって魔法を使おうとしたとき、魔石持ってること最初から知ってるみたいに的確に盗んだし。