「シシト、お前、痩せてるな! 飯食ってるのか!?」
スパチーはシシトに近付きながら言った。
ルサークは慌てながらスパチーを止める。
「馬鹿!! だから『シシト様』だ!」
そんな様子を笑いながらシシトは見ていた。
「大丈夫ですよ。スパチーさん、僕は病気でね、食べられないんだ」
「病気? 病気ってなんだ!?」
スパチーは首をかしげて尋ねる。
「病気ってのは、えーっとね。体が辛くなったり、動けなくなったりするんだ」
「なんだ! お前弱いのか! 髪真っ白だもんな!」
スパチーにデルタも声を掛けた。
「いい加減にしなさい。スパチー」
「いいんです。久しぶりにこうして人と話せて嬉しいですから」
その言葉にルサークは違和感を覚える。
「久しぶり……。ですか?」
「えぇ、みんな。僕の病気がうつるのが心配だったり、僕の身分を気にして……」
病気がうつると聞いて、一瞬、ドキッとしたルサークとデルタだったが、悟られないようにした。
そして、ルサークはシシトに質問をする。
「失礼ですが、身分というのは……」
言いにくそうにシシトは答える。
「……クルミン家の長男です」
聞いたルサークもデルタも驚いた。
「クルミン家っていうと、メチャクチャ有名な貴族では!?」
ルサークの言葉にシシトの顔は曇る。
「でも、僕は身分だけです。体はこんな状態ですし……」
何て声を掛けようかと悩むルサークを無視して、スパチーは言う。
「そうだ、お前。飴食べろ!!」
スパチーはこの間、レモーヌと作った飴の欠片をシシトに差し出す。
ルサークは慌てて止めに入った。
「ばっ、お前!! そんな不衛生なモン食べさせるな!!」
「いえ、いただきますよ。ありがとうスパチーちゃん」
シシトは飴の欠片を手に取る際にスパチーの暖かな手が触れ合った。
茶色く、透き通ったそれを口に運ぶ。
「甘い、おいしいね。ありがとう」
スパチーは満足そうに胸を張った。
「美味いだろ!!」
ルサークは何か話題を振ろうと話す。
「シシト様、何かしたい事や、してほしい事などはありますか?」
うーんと考えた後、シシトは言う。
「皆さんの事、教えて欲しいです。どんな人生を送ったのか、どうして僕のもとに来たのか」
シシトに言われ、ルサークはうーんと悩む。
「俺、じゃなかった。私達の話などつまらないと思いますが……」
その言葉に、シシトは首を横に振って言う。
「いいんです。外の話をもっと知りたいんです!」
ルサークは「それでしたら」と話し始める。
「私達は冒険者をやっていましてね」
その話の入りにシシトは目を輝かせた。
「冒険者さんだったんですね!」
ルサークはシシトの食いつきっぷりに気が引けながら話す。
「それで、それはもう色々とありまして、今はシシト様にお仕えする形に……」
シシトはもっと話が聞きたく、言葉を出す。
「その、冒険者時代のお話を聞かせてください! あぁ、すみません。どうぞ、椅子に掛けてください」
椅子に座るよう言われ、デルタが断る。
「いえ、そういうわけには」
シシトはまた首を横に振って、手で
促す。
「いいんです! 座ってください! そしてもっとお話をしましょう!」
スパチーは椅子に座ってから言った。
「私は座るぞ!」
ルサークとデルタも顔を見合わせてから椅子に座った。
そして、冒険者時代の話を語る。
一通り聞き終えたシシトは満足そうに笑顔だった。
「ありがとうございました! また聞かせて下さいね!」
ルサークも笑顔を作ってシシトに返す。
「えぇ、いつでも」
そこでスパチーも声をあげた。
「私もシシトと話がしたいぞ!」
ルサークがスパチーの呼び捨てを窘めた。
「だから、シシト様と呼べって言ってんだろ!」
「ははは。スパチーちゃんともお話したい。でもそろそろ体が疲れてきちゃってね」
「お前、体よわよわだな!」
デルタもスパチーを叱る。
「お前って言うな!」
シシトは前を向いて呟いた。
「新しい使用人の人が皆さんで良かった。久しぶりに楽しいです」
最初はどうしたものかと考えていたルサークとデルタも、シシト様のお世話をしたいと思うようになった。
その時、部屋のドアがノックされ、声が聞こえた。
「お食事の準備が整いました」
ルサークはシシトに断りを入れた。
「シシト様、よろしいでしょうか?」
「えぇ、どうぞ」
ルサークは部屋のドアを開いて、メイドを招き入れた。
食事が乗った台車をルサークは受け取り、シシトの前まで行く。
「シシト様、どうぞ」
「あまりお腹空いてないんですけどね」
デルタがテーブルに食事を運びながら言った。
「食べないと体に毒ですよ」
スパチーはそんな料理を見て声を上げる。
「美味そうだな!!」
ルサークはスパチーの肩を掴んで引き止めた。
「お前のじゃない。スパチー」