ep63 屋敷⑤

ー/ー



「……」

 俺は黙って考えこむ。
 今のヤツらが〔ダムド〕か。さっきの様子だとシヴィスとかいうヤツがそのリーダーと見て間違いないだろう。〔フリーダム〕とはどういう関係なのだろうか。

「クローさん!」

 俺を呼び覚ますようにシヒロが叫んだ。同時に建物内からドカーンと爆発音が鳴る。
 ハッとする。気がつけば建物全体にボーボーと炎がまわっているじゃないか。

「ここは危ない。行くぞシヒロ」

「い、いや、待ってください」

 やにわにシヒロが燃えさかる屋敷の上空あたりに向かって両手をかざす。
 
「......深淵なる万物万象の源泉よ。我が劤と為り、彼の者に荒水を浴びせ給へ。〔アルカーナ・アクウァ〕」

 シヒロの両手の先から、シャアァァァッと飛沫を立てて水流が発生する。水流は噴水のように屋敷の上空へ上昇し、パァッと弾ける。夕立のようにザーッと多量の水が建物へ降り注いだ。

「水魔法か!」

 俺は目を見張った。それはただの水魔法ではない。いや、魔法自体は従来の水魔法なのだが。

『中々器用ですね。彼女は』

 不意に謎の声が漏らした。どうやらシヒロの魔法に感心しているようだ。

『お前もそう思うか』

『あの魔法は本来、水をもって攻撃する黒魔法。あの出力でそのまま撃てば建物を破壊してしまいかねません。それをあのような形で放つことにより、最低限の出力を維持しつつ消火手段として最適な効果を実現しています』

『たいしたもんだな』

『クロー様。終わりましたら彼女をナデナデして褒めてあげてください』

『はあ?』

『いいですか? しっかりとナデナデしてあげてください』

 ほどなくして……。

「ふぅー。な、なんとか消火できました。これで火事が広がる心配はありません」

 水魔法による消火活動を終えたシヒロは、額に汗を浮かべてエヘヘと安堵の笑顔を見せる。
 おもむろに俺はシヒロに体を寄せると、背の低い彼女の頭を、よくやったと言わんばかりによしよしと撫でた。

「く、クローさん?」

 シヒロは頬を火のように赤くして、ひゃっと驚いた。

「偉いぞシヒロ」

 俺はアイツの指示通りにしっかりとナデナデする。

「あ、ああああの、ええと……」

「よしよし」

「ああああの、その……」

 顔を火照らせてしどろもどろするシヒロをよそに『なるほど』と謎の声が呟いた。

『どうした?』

『そのシヒロという娘……どうやら〔魔〕を秘めています』

『魔? それって……』

『はい。魔族の血が混じっているのかもしれません』

『つまり、人間と魔族のハーフとかクォーターってことか?』

『あるいは……いえ、とにかく「普通の人間とは違う何かを持っている」ことだけは確かかと』

『なるほどな。ならむしろ安心かもな』

『安心?』

『俺は得体の知れない連中と戦っている。それを手伝えとは言わないが、いざとなったらシヒロはシヒロで自分の身を守れる力はありそうってことだろ?』

『まあ、そういうふうに解釈することもできますね』

 俺たちの興味関心を知る由もないシヒロは、どうしていいかわからず無抵抗に撫でられ続けていた。


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「……」
 俺は黙って考えこむ。
 今のヤツらが〔ダムド〕か。さっきの様子だとシヴィスとかいうヤツがそのリーダーと見て間違いないだろう。〔フリーダム〕とはどういう関係なのだろうか。
「クローさん!」
 俺を呼び覚ますようにシヒロが叫んだ。同時に建物内からドカーンと爆発音が鳴る。
 ハッとする。気がつけば建物全体にボーボーと炎がまわっているじゃないか。
「ここは危ない。行くぞシヒロ」
「い、いや、待ってください」
 やにわにシヒロが燃えさかる屋敷の上空あたりに向かって両手をかざす。
「......深淵なる万物万象の源泉よ。我が劤と為り、彼の者に荒水を浴びせ給へ。〔アルカーナ・アクウァ〕」
 シヒロの両手の先から、シャアァァァッと飛沫を立てて水流が発生する。水流は噴水のように屋敷の上空へ上昇し、パァッと弾ける。夕立のようにザーッと多量の水が建物へ降り注いだ。
「水魔法か!」
 俺は目を見張った。それはただの水魔法ではない。いや、魔法自体は従来の水魔法なのだが。
『中々器用ですね。彼女は』
 不意に謎の声が漏らした。どうやらシヒロの魔法に感心しているようだ。
『お前もそう思うか』
『あの魔法は本来、水をもって攻撃する黒魔法。あの出力でそのまま撃てば建物を破壊してしまいかねません。それをあのような形で放つことにより、最低限の出力を維持しつつ消火手段として最適な効果を実現しています』
『たいしたもんだな』
『クロー様。終わりましたら彼女をナデナデして褒めてあげてください』
『はあ?』
『いいですか? しっかりとナデナデしてあげてください』
 ほどなくして……。
「ふぅー。な、なんとか消火できました。これで火事が広がる心配はありません」
 水魔法による消火活動を終えたシヒロは、額に汗を浮かべてエヘヘと安堵の笑顔を見せる。
 おもむろに俺はシヒロに体を寄せると、背の低い彼女の頭を、よくやったと言わんばかりによしよしと撫でた。
「く、クローさん?」
 シヒロは頬を火のように赤くして、ひゃっと驚いた。
「偉いぞシヒロ」
 俺はアイツの指示通りにしっかりとナデナデする。
「あ、ああああの、ええと……」
「よしよし」
「ああああの、その……」
 顔を火照らせてしどろもどろするシヒロをよそに『なるほど』と謎の声が呟いた。
『どうした?』
『そのシヒロという娘……どうやら〔魔〕を秘めています』
『魔? それって……』
『はい。魔族の血が混じっているのかもしれません』
『つまり、人間と魔族のハーフとかクォーターってことか?』
『あるいは……いえ、とにかく「普通の人間とは違う何かを持っている」ことだけは確かかと』
『なるほどな。ならむしろ安心かもな』
『安心?』
『俺は得体の知れない連中と戦っている。それを手伝えとは言わないが、いざとなったらシヒロはシヒロで自分の身を守れる力はありそうってことだろ?』
『まあ、そういうふうに解釈することもできますね』
 俺たちの興味関心を知る由もないシヒロは、どうしていいかわからず無抵抗に撫でられ続けていた。