今日は祖母の一回忌だ。
祖母の家は実家から徒歩圏内にあり、小さい頃は祖母の家にいることがほとんどで、祖母に育ててもらったようなものだ。
中学生になったあたりから部活動に入ったこともあり、祖母の家に行くことが少なくなった。
それから数年後、祖母は認知症が目立ってきたため施設に入ることになり、私が社会人になって施設へ会いに行った時には、私のことを忘れてしまっていた。
そして去年、流行りの感染症にかかり亡くなった。
知らせを聞いた時、驚いたが涙は出なかった。
現実味がなかったこともあるが、正直なところは長い間離れていて他人のように感じてしまっていたのだろう。
白状な話だ。
だから罪悪感と、虚無感を感じながら参列した。
和尚さんがお経を唱えている間、祖母のことを考え昔を思い出す。
祖母が作ってくれるご飯が美味しかった。もう食べることはできないし、おかわりをすると嬉しそうにしていた祖母の姿はもう一生見れないことを思うと、涙が出そうになりうつむいた。
お墓参りも終え、集まった家族で雑談が始まった。明るい顔をしている人はおらず、みんな険しい顔をして話し合っている。
命日だから仕方がないが、一年も経ったのだからそんなに思い詰めなくてもいいんじゃないかと、同じ家族だが外野のように思いながらその場の雰囲気に堪えられず、あたりを少し歩くことにした。
彼岸花を見つけた。
寒くなり始めたこの時期に、花が咲くことに驚いたが、祖母は花が好きでガーデニングが趣味だったことを思い出し、彼岸花を見てなんだか心が安らいだ。
少しの間見つめていたがそろそろ戻ろうと振り返った。
目の前には祖母がいた。
驚いて声も出なかった。
だがすぐに幻覚だと気づいた。祖母が話始めたからだ。
「ごめんねえ。わざわざ来てくれてありがとうね。」
私の記憶の中にある可愛らしい笑顔の祖母がそのままそこにいて、話をしている。とても不思議な感覚だ。
目の前の祖母は、施設に入る前の姿で、何より忘れてしまったはずの私を認識していることが、現実ではないことを示し、私を落ち着かせた。
初めて家族が亡くなり、一年が経ちやっと私の現実になったのだろう。そして自覚していなかったが悲しいという感情から出てきた幻覚なんだと気付くことができた。
我ながら冷静だと思いながら
「ううん。むしろ全然来れなくてごめんね。また来るよ!」
と返事をした。自分の中の幻覚だとしても、今まで無関心だったことを謝りたくて、そう答えた。
それを聞くと、祖母は嬉しいような悲しいような笑顔をして、瞬きの間に消えた。
もう少し話したかったが、ここにくればまた現れてくれそうな気がした。
時間がある時にはできるだけお墓参りに来ようと決め、彼岸花を横目に見ながら家族の元へ戻った。