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第4楽章〜フィナーレ〜⑨

ー/ー



 同日 ほぼ同時刻

 〜黄瀬壮馬の見解〜

 展望台で剥がした御札をゴールでボクたちを出迎えてくれた早見先輩に手渡すと、

「はい、ミッションクリアだね、合格だよ炊飯場の奥にクーラーボックスが置いてあるから、そこで、アイスをもらってね」

と、タイムキーパーを務めていた上級生は、ミッション達成者に対する報酬に関する案内をしてくれた。

 その声に従って、炊飯場のクーラーボックスが置かれている場所に行き、白草さんと一緒に吹奏楽部の先輩から、ガリガリ君のアイスキャンデーを受け取って、ベンチに腰掛ける。

 すぐに開封し、アイスバーにかじりつくと、汗ばんでいた身体に清涼感のあるソーダ味が心地よく感じられる。

 レクリエーションを終え、暗がりから戻ってきた開放感に浸っているボクと違い、白草さんは、あごに手を置いたまま、なにやら考え事をしているようで、いまだに、緊張を解いていないように見えた。

「どうしたの、白草さん? 早く食べないとアイスが溶けちゃうよ?」

 さっきまでのお節介ついでに、そう言うと、彼女は手に持ったままのアイスを気にするようすも無く、ボクの問いかけとは、まったく関係の無いことをたずねてくる。

「ねぇ、黄瀬クン。さっきの肝だめしって、どれくらいの時間が掛かった?」

「どれくらい……って、せいぜい10分程度なんじゃないの? ボクたちは、9時過ぎに出発して、いまが9時18分だから、ゴールに戻って来るまで15分も掛かっていないと思うよ」

「じゃあ、わたしたちより10分遅く出発したクロたちは、あと5分くらいで戻って来るはずだよね?」

「まあ、そうなんじゃない? 二人で寄り道とかしてなければ……と言っても、まあ、あんな暗がりの一本道で、寄り道するところなんて、御札の貼ってあった展望台くらいしか無いと思うけど……」

 アイスキャンデーにかじりつきながら答えると、「展望台……」と、つぶやいた白草さんは、アイスを木製のテーブルに置いて、すぐに駆け出す。

「あっ! ちょっと、どこに行くんだよ?」

 そう言って、彼女を目で追うと、肝だめしのペアだった女子生徒は、タイムキーパーを務めていた早見部長のいる場所を一目散に目指している。そんな白草さんのようすが心配になり、ガリガリ君の残りの部分を急いで食べ終えたボクは、

「すいません、急用が出来たみたいなんで、アイスは一旦お返しします」

と、クーラーボックスを管理する吹奏楽部の3年生部員に、白草さんのガリガリ君を手渡して、すぐに彼女を追いかける。
 ちょうど、ゴール地点には、佐倉さん&宮野さんのペアとともに、謎のマスクを小脇に抱えた寿先輩が戻って来るところだった。

「お疲れさま、ミッションクリアだね。二人とも合格だよ炊飯場の奥にクーラーボックスが置いてあるから、そこで、アイスをもらってね。美奈子もお疲れさま。あなたの分のアイスも残ってるみたいよ」

 ボクたちに対するものと同じように、佐倉さんたちを労う上級生は、肝だめしのコースとは反対方向の炊飯場から駆けてきた女子生徒に目を丸くする。
 
「白草さんどうしたの? 落とし物でもしたの?」

 声をかける早見先輩に対して、白草さんは立ち止まること無く答えて、上級生の前を走り去ろうとする。

「ちょっと、黒田クンたちが心配なので見てきます」

 あっという間に、タイムキーパーと肝だめしを終えた佐倉さんたち、そして、幽霊役の寿先輩の目の前を通り過ぎた彼女は、暗がりの小道を駆けていく。彼女はスマホのライト機能をオンにしたようだけど、とうぜん、そんな光源では足元まで十分に届く光量とは言えないだろう。

「すみません、白草さんを追いかけるので、懐中電灯を貸して下さい」

 早見先輩の元に駆けつけたボクが声をかけると、上級生は、「う、うん! お願いね」と言って、すぐに各ペアから返却された懐中電灯のうちの1本を手渡してくれた。

「なになに? なにかトラブルでもあったの?」

「いえ、いつもの白草さんの暴走です」

 ボクが答えると、声の主の寿先輩は、

「それじゃ、放って置けないじゃん」

と言って、ボクとともに、数メートル先を行く、白草さんを追いかける。
 その言葉に、反応した佐倉さんと宮野も、

「ワタシも行きます!」
「わたすも行くべ」

と、これまで歩いてきたコースを戻るように、ボクたちに着いてきた。

 光源の強い懐中電灯で前方の白草さんの足元より少し前方を照らしながら、ボクら4人は、真っ先に駆け出した女子生徒を追う。

(スマホの弱い光源で、良く全力疾走が出来るな……)

 一心不乱に駆けるクラスメートの執念に感心しながら、夜道を駆けると、程なくして小道の両脇を覆っていた木々が途絶え、広場のような場所に出る。そして、その先にある木製の展望台には、おそらく、白草さんが想像したとおり、二つの人影があるのが確認された。

 さらに、ボクたちの位置からは、その二つの影の頭部が重なっているように見えた。
 その光景に、ボクたちは、思わず息を飲む。

 そして、真っ暗な広場に、白草さんの声が響き渡った。

「クロ! ナニやってんの!?」


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 同日 ほぼ同時刻
 〜黄瀬壮馬の見解〜
 展望台で剥がした御札をゴールでボクたちを出迎えてくれた早見先輩に手渡すと、
「はい、ミッションクリアだね、合格だよ炊飯場の奥にクーラーボックスが置いてあるから、そこで、アイスをもらってね」
と、タイムキーパーを務めていた上級生は、ミッション達成者に対する報酬に関する案内をしてくれた。
 その声に従って、炊飯場のクーラーボックスが置かれている場所に行き、白草さんと一緒に吹奏楽部の先輩から、ガリガリ君のアイスキャンデーを受け取って、ベンチに腰掛ける。
 すぐに開封し、アイスバーにかじりつくと、汗ばんでいた身体に清涼感のあるソーダ味が心地よく感じられる。
 レクリエーションを終え、暗がりから戻ってきた開放感に浸っているボクと違い、白草さんは、あごに手を置いたまま、なにやら考え事をしているようで、いまだに、緊張を解いていないように見えた。
「どうしたの、白草さん? 早く食べないとアイスが溶けちゃうよ?」
 さっきまでのお節介ついでに、そう言うと、彼女は手に持ったままのアイスを気にするようすも無く、ボクの問いかけとは、まったく関係の無いことをたずねてくる。
「ねぇ、黄瀬クン。さっきの肝だめしって、どれくらいの時間が掛かった?」
「どれくらい……って、せいぜい10分程度なんじゃないの? ボクたちは、9時過ぎに出発して、いまが9時18分だから、ゴールに戻って来るまで15分も掛かっていないと思うよ」
「じゃあ、わたしたちより10分遅く出発したクロたちは、あと5分くらいで戻って来るはずだよね?」
「まあ、そうなんじゃない? 二人で寄り道とかしてなければ……と言っても、まあ、あんな暗がりの一本道で、寄り道するところなんて、御札の貼ってあった展望台くらいしか無いと思うけど……」
 アイスキャンデーにかじりつきながら答えると、「展望台……」と、つぶやいた白草さんは、アイスを木製のテーブルに置いて、すぐに駆け出す。
「あっ! ちょっと、どこに行くんだよ?」
 そう言って、彼女を目で追うと、肝だめしのペアだった女子生徒は、タイムキーパーを務めていた早見部長のいる場所を一目散に目指している。そんな白草さんのようすが心配になり、ガリガリ君の残りの部分を急いで食べ終えたボクは、
「すいません、急用が出来たみたいなんで、アイスは一旦お返しします」
と、クーラーボックスを管理する吹奏楽部の3年生部員に、白草さんのガリガリ君を手渡して、すぐに彼女を追いかける。
 ちょうど、ゴール地点には、佐倉さん&宮野さんのペアとともに、謎のマスクを小脇に抱えた寿先輩が戻って来るところだった。
「お疲れさま、ミッションクリアだね。二人とも合格だよ炊飯場の奥にクーラーボックスが置いてあるから、そこで、アイスをもらってね。美奈子もお疲れさま。あなたの分のアイスも残ってるみたいよ」
 ボクたちに対するものと同じように、佐倉さんたちを労う上級生は、肝だめしのコースとは反対方向の炊飯場から駆けてきた女子生徒に目を丸くする。
「白草さんどうしたの? 落とし物でもしたの?」
 声をかける早見先輩に対して、白草さんは立ち止まること無く答えて、上級生の前を走り去ろうとする。
「ちょっと、黒田クンたちが心配なので見てきます」
 あっという間に、タイムキーパーと肝だめしを終えた佐倉さんたち、そして、幽霊役の寿先輩の目の前を通り過ぎた彼女は、暗がりの小道を駆けていく。彼女はスマホのライト機能をオンにしたようだけど、とうぜん、そんな光源では足元まで十分に届く光量とは言えないだろう。
「すみません、白草さんを追いかけるので、懐中電灯を貸して下さい」
 早見先輩の元に駆けつけたボクが声をかけると、上級生は、「う、うん! お願いね」と言って、すぐに各ペアから返却された懐中電灯のうちの1本を手渡してくれた。
「なになに? なにかトラブルでもあったの?」
「いえ、いつもの白草さんの暴走です」
 ボクが答えると、声の主の寿先輩は、
「それじゃ、放って置けないじゃん」
と言って、ボクとともに、数メートル先を行く、白草さんを追いかける。
 その言葉に、反応した佐倉さんと宮野も、
「ワタシも行きます!」
「わたすも行くべ」
と、これまで歩いてきたコースを戻るように、ボクたちに着いてきた。
 光源の強い懐中電灯で前方の白草さんの足元より少し前方を照らしながら、ボクら4人は、真っ先に駆け出した女子生徒を追う。
(スマホの弱い光源で、良く全力疾走が出来るな……)
 一心不乱に駆けるクラスメートの執念に感心しながら、夜道を駆けると、程なくして小道の両脇を覆っていた木々が途絶え、広場のような場所に出る。そして、その先にある木製の展望台には、おそらく、白草さんが想像したとおり、二つの人影があるのが確認された。
 さらに、ボクたちの位置からは、その二つの影の頭部が重なっているように見えた。
 その光景に、ボクたちは、思わず息を飲む。
 そして、真っ暗な広場に、白草さんの声が響き渡った。
「クロ! ナニやってんの!?」