#1
ー/ー 窓明から漏れる旭光にカーテンを捲ると、冬にしては珍しい雲一つない青空。
永久凍土の支配するスピリッツ大陸北部の集落は日照時間が極端に短く、太陽は六時間しか顔を覗かせてはくれないが、それでも住民にとっては豪華な食事の次に重宝されている。
二階窓から見渡す限りの軒先に干された清潔なシーツ達は子供の心を騒がしくさせるのに十分なはずなのに、それを眺める目は煩わしさに細められていた。
「ライアンいい加減にいい加減に起きなさい!いくら冬休みだからってこんな天気のいい日に何もしないなんてセドナ様に叱られるわよ!」
子供の今の名はライアン。
少年は階下からの雷鳴にノロノロと寝床から這いだす。
永久凍土の支配するスピリッツ大陸北部の集落は日照時間が極端に短く、太陽は六時間しか顔を覗かせてはくれないが、それでも住民にとっては豪華な食事の次に重宝されている。
二階窓から見渡す限りの軒先に干された清潔なシーツ達は子供の心を騒がしくさせるのに十分なはずなのに、それを眺める目は煩わしさに細められていた。
「ライアンいい加減にいい加減に起きなさい!いくら冬休みだからってこんな天気のいい日に何もしないなんてセドナ様に叱られるわよ!」
子供の今の名はライアン。
少年は階下からの雷鳴にノロノロと寝床から這いだす。
——もう無意味なのに、どおして朝が来るんだろう。
世界の行く末を知る両目には凡そ覇気と呼べるものが無かった。
しかし両親の前では決して憂い顔をしないと決めていた少年は不承不承寝間着から着替え、これが自分に出来る唯一の親孝行だと気を入れ姿見で子供らしい表情を作る。
——でも村の皆は知らないかもしれないんだから、無理してでも元気に振舞わなきゃ。
ドア越しのくぐもったコンロとフライパンの金属音に呼ばれたかのように一直線にダイニングへ向かうと、卓上にはフランスパンに玉ねぎスープというメニューが用意されており、続けて真っ白な食器の上でまだ油の爆ぜるベーコンと目玉焼きまで出てきたので、辛抱たまらないという顔をしてみせる。
少年は意識的な垂涎を袖で拭い、母親に月並みな感想を送った。
「今朝も美味しそうだね。誰かの誕生日だっけ?」
「まだ頭が寝ているようね。今日から年末まで夜光祭じゃない。他所の子は家や狩りの手伝いをしてるって言うのにあんたときたら」
「ご馳走様!いくよタロー!」
折角のご馳走に舌鼓を打ちたかった少年だが、耳にタコが出来る程聞いた小言が始まる気配を察しパンをポケットにねじ込み、他は飢えた狼のように胃に落とし込みつつ暖炉の前でゆったり寛いでいた愛犬の名を呼んで勢いよく外に出る。
眩しい太陽、向い屋根の根雪、風にはためく洗濯物。
四つ足の相棒の立てる軽快な足音を聞きながら国費で除雪された小路に踊りいで、今日はどんな物語に出会えるかと胸を躍らせているかのように白煙を吐き出した。
少年は村の中心部にある広場を経由し開いたばかりの図書館でまだ読んだことのない漫画を手にし、見配置の書物が転がる二階から元気に駆け下り、段ボール図書館の司書へ挨拶がてら声を掛ける。
「おはようお爺さん。今日はこれを借りていくね」
「おはようライアン。別にその辺の席で読んでもいいんじゃよ?どうせお前さん以外に誰も来やせんのだし」
「お母さんが外で遊びなさいって五月蠅いから外で読まなきゃいけないの」
「そういう意味ではないと思うがのう」
暇でしょうがない老人への挨拶もそこそこに、少年は重たい正面扉の前で伏せていたタローを連れ二人だけの秘密の隠れ家へと移動した。
少年の両親は「子供は晴れた日には元気に外で走り回るべきだ」と部屋や暖炉の前で静読する彼の手から本を取り上げてしまうので、万が一探しに来られた時のため少年は彼らだけの秘密基地を作ったのだ。
世界の行く末を知る両目には凡そ覇気と呼べるものが無かった。
しかし両親の前では決して憂い顔をしないと決めていた少年は不承不承寝間着から着替え、これが自分に出来る唯一の親孝行だと気を入れ姿見で子供らしい表情を作る。
——でも村の皆は知らないかもしれないんだから、無理してでも元気に振舞わなきゃ。
ドア越しのくぐもったコンロとフライパンの金属音に呼ばれたかのように一直線にダイニングへ向かうと、卓上にはフランスパンに玉ねぎスープというメニューが用意されており、続けて真っ白な食器の上でまだ油の爆ぜるベーコンと目玉焼きまで出てきたので、辛抱たまらないという顔をしてみせる。
少年は意識的な垂涎を袖で拭い、母親に月並みな感想を送った。
「今朝も美味しそうだね。誰かの誕生日だっけ?」
「まだ頭が寝ているようね。今日から年末まで夜光祭じゃない。他所の子は家や狩りの手伝いをしてるって言うのにあんたときたら」
「ご馳走様!いくよタロー!」
折角のご馳走に舌鼓を打ちたかった少年だが、耳にタコが出来る程聞いた小言が始まる気配を察しパンをポケットにねじ込み、他は飢えた狼のように胃に落とし込みつつ暖炉の前でゆったり寛いでいた愛犬の名を呼んで勢いよく外に出る。
眩しい太陽、向い屋根の根雪、風にはためく洗濯物。
四つ足の相棒の立てる軽快な足音を聞きながら国費で除雪された小路に踊りいで、今日はどんな物語に出会えるかと胸を躍らせているかのように白煙を吐き出した。
少年は村の中心部にある広場を経由し開いたばかりの図書館でまだ読んだことのない漫画を手にし、見配置の書物が転がる二階から元気に駆け下り、段ボール図書館の司書へ挨拶がてら声を掛ける。
「おはようお爺さん。今日はこれを借りていくね」
「おはようライアン。別にその辺の席で読んでもいいんじゃよ?どうせお前さん以外に誰も来やせんのだし」
「お母さんが外で遊びなさいって五月蠅いから外で読まなきゃいけないの」
「そういう意味ではないと思うがのう」
暇でしょうがない老人への挨拶もそこそこに、少年は重たい正面扉の前で伏せていたタローを連れ二人だけの秘密の隠れ家へと移動した。
少年の両親は「子供は晴れた日には元気に外で走り回るべきだ」と部屋や暖炉の前で静読する彼の手から本を取り上げてしまうので、万が一探しに来られた時のため少年は彼らだけの秘密基地を作ったのだ。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
窓明から漏れる旭光にカーテンを捲ると、冬にしては珍しい雲一つない青空。
永久凍土の支配するスピリッツ大陸北部の集落は日照時間が極端に短く、太陽は六時間しか顔を覗かせてはくれないが、それでも住民にとっては豪華な食事の次に重宝されている。
二階窓から見渡す限りの軒先に干された清潔なシーツ達は子供の心を騒がしくさせるのに十分なはずなのに、それを眺める目は煩わしさに細められていた。
永久凍土の支配するスピリッツ大陸北部の集落は日照時間が極端に短く、太陽は六時間しか顔を覗かせてはくれないが、それでも住民にとっては豪華な食事の次に重宝されている。
二階窓から見渡す限りの軒先に干された清潔なシーツ達は子供の心を騒がしくさせるのに十分なはずなのに、それを眺める目は煩わしさに細められていた。
「ライアンいい加減にいい加減に起きなさい!いくら冬休みだからってこんな天気のいい日に何もしないなんてセドナ様に叱られるわよ!」
子供の今の名はライアン。
少年は階下からの雷鳴にノロノロと寝床から這いだす。
少年は階下からの雷鳴にノロノロと寝床から這いだす。
——もう無意味なのに、どおして朝が来るんだろう。
世界の行く末を知る両目には凡そ覇気と呼べるものが無かった。
しかし両親の前では決して憂い顔をしないと決めていた少年は不承不承寝間着から着替え、これが自分に出来る唯一の親孝行だと気を入れ姿見で子供らしい表情を作る。
しかし両親の前では決して憂い顔をしないと決めていた少年は不承不承寝間着から着替え、これが自分に出来る唯一の親孝行だと気を入れ姿見で子供らしい表情を作る。
——でも村の皆は知らないかもしれないんだから、無理してでも元気に振舞わなきゃ。
ドア越しのくぐもったコンロとフライパンの金属音に呼ばれたかのように一直線にダイニングへ向かうと、卓上にはフランスパンに玉ねぎスープというメニューが用意されており、続けて真っ白な食器の上でまだ油の爆ぜるベーコンと目玉焼きまで出てきたので、辛抱たまらないという顔をしてみせる。
少年は意識的な垂涎を袖で拭い、母親に月並みな感想を送った。
少年は意識的な垂涎を袖で拭い、母親に月並みな感想を送った。
「今朝も美味しそうだね。誰かの誕生日だっけ?」
「まだ頭が寝ているようね。今日から年末まで夜光祭じゃない。他所の子は家や狩りの手伝いをしてるって言うのにあんたときたら」
「ご馳走様!いくよタロー!」
「まだ頭が寝ているようね。今日から年末まで夜光祭じゃない。他所の子は家や狩りの手伝いをしてるって言うのにあんたときたら」
「ご馳走様!いくよタロー!」
折角のご馳走に舌鼓を打ちたかった少年だが、耳にタコが出来る程聞いた小言が始まる気配を察しパンをポケットにねじ込み、他は飢えた狼のように胃に落とし込みつつ暖炉の前でゆったり寛いでいた愛犬の名を呼んで勢いよく外に出る。
眩しい太陽、向い屋根の根雪、風にはためく洗濯物。
四つ足の相棒の立てる軽快な足音を聞きながら国費で除雪された小路に踊りいで、今日はどんな物語に出会えるかと胸を躍らせているかのように白煙を吐き出した。
少年は村の中心部にある広場を経由し開いたばかりの図書館でまだ読んだことのない漫画を手にし、見配置の書物が転がる二階から元気に駆け下り、段ボール図書館の司書へ挨拶がてら声を掛ける。
四つ足の相棒の立てる軽快な足音を聞きながら国費で除雪された小路に踊りいで、今日はどんな物語に出会えるかと胸を躍らせているかのように白煙を吐き出した。
少年は村の中心部にある広場を経由し開いたばかりの図書館でまだ読んだことのない漫画を手にし、見配置の書物が転がる二階から元気に駆け下り、段ボール図書館の司書へ挨拶がてら声を掛ける。
「おはようお爺さん。今日はこれを借りていくね」
「おはようライアン。別にその辺の席で読んでもいいんじゃよ?どうせお前さん以外に誰も来やせんのだし」
「お母さんが外で遊びなさいって五月蠅いから外で読まなきゃいけないの」
「そういう意味ではないと思うがのう」
「おはようライアン。別にその辺の席で読んでもいいんじゃよ?どうせお前さん以外に誰も来やせんのだし」
「お母さんが外で遊びなさいって五月蠅いから外で読まなきゃいけないの」
「そういう意味ではないと思うがのう」
暇でしょうがない老人への挨拶もそこそこに、少年は重たい正面扉の前で伏せていたタローを連れ二人だけの秘密の隠れ家へと移動した。
少年の両親は「子供は晴れた日には元気に外で走り回るべきだ」と部屋や暖炉の前で静読する彼の手から本を取り上げてしまうので、万が一探しに来られた時のため少年は彼らだけの秘密基地を作ったのだ。
少年の両親は「子供は晴れた日には元気に外で走り回るべきだ」と部屋や暖炉の前で静読する彼の手から本を取り上げてしまうので、万が一探しに来られた時のため少年は彼らだけの秘密基地を作ったのだ。