第1話 深夜二時の異変と、揺れる果実

ー/ー



「いらっしゃいませー! ……って、誰もいないか」

 深夜二時。

 俺、愛沢カズヤ(高二)の声が、誰もいない店内に虚しく響く。
 ここは俺の家であり、職場でもある『コンビニエンスストア・アイザワ』。

 元々は爺ちゃんの代から続く酒屋だったが、時代の波に飲まれてフランチャイズのコンビニになった。
 古くから親しまれた店だったので、店の名はアイザワ(愛沢)の使用が本店から許可された。

 順調にすすみ、明日開店というところで――親父のヤツが蒸発しやがった。

  莫大な借金を残して……。

 消えた親父の代わりに、店を切り盛りしているのが――

「んっ、もう……カズヤくん、そっちの棚出し終わったぁ?」

 レジ奥の事務所から、甘ったるい声と共に現れた小柄な女性。

 愛沢夏南子(あいざわななこ)(2×歳)だ。
 親父の再婚相手であり、俺の義理の母。

 童顔で、背は俺の胸あたりまでしかない。どう見ても同級生か年下の美少女にしか見えないが、戸籍上は立派な母親である。
 そして何より重要なのは――俺とは血が繋がっていないということだ。
 金に近い栗毛を腰まで伸ばし、青みがかった大きな瞳はウルウルといつも潤んでいる。雪解けの清流みたいな透明感のある肌は、存在が幻のように感じさせる。

 例えるなら、ファンタジーゲームに出て来るエルフのお姫様だ。現実にはありえないキャラクターがオレの目の前にキラキラと輝いて存在している。

 さらに声が「んっ♥」「あんっ♥」すっごく甘い。
 スイーツに蜂蜜と砂糖をぶっかけたようにあま~い。

「母さん、その『んっ♥』って声、やめてくれよ」
「えー? どうして?」

 母さんは思春期男子の悶悶とした感情など理解できず。頭に?を浮かべる。

「もうっ!! なにかしたのっ!?」
「あ~ん♥ 制服のサイズが合わなくて苦しいのよぉ~」

 夏南子母さんが胸元のボタンを止めようとしてるが、巨大な胸が邪魔して穴に入らない。

「ふぐぐぐぐっ」

 指先でボタンつまみ、強引に穴に入れた瞬間――。

「あ」

 プチッ、という乾いた音と共に、ボタンが弾け飛んだ。

 繊維の持つ耐久性を超え、コンビニの制服――本来なら通気性の良いポリエステル素材の生地が、左右に大きく開く。

「ひゃっ!?」

 母さんが可愛らしい悲鳴を上げる。

 淡いピンクのレースブラジャーが見えた瞬間、包まれたプリプリの巨大果実がどーん♥ と現われる。 

 オレは今3Dメガネでもしてるのか? と疑問に浮かぶほど、母さんのスイーツが目の前に飛び出してくる。

「ちょ、母さん! 前! 前開いてるって! お客さんが来たらどうするんだよっ!!」

 童顔で小柄な身体のどこにこんな栄養が詰まっているのか。白い肌が蛍光灯の下で艶めかしく光り、解放された双丘が ぷるん♥ ぷるん♥  と質量を持って揺れつづける。

「だ、だってぇ……最近また育っちゃったみたいで……うぅ」

 頬を桜色に染めて、両腕で胸を隠そうとする母さん。その動作がかえって胸のボリュームを強調し、二の腕に押されたパイ肉がむにゅ~♥ と盛りあがる。

 俺は慌てて視線を逸らそうとしたが、男の本能がそれを許さない。血が繋がっていないとはいえ、毎日この無防備な色気と戦う俺の身にもなってほしい。

「やだっカズヤくんっ母さんのおっぱいじっと見て。吸いたいの?」
 
 高校生にもなって、甘えん坊なんだから♥ とクスクス微笑む。

「いやっそういうんじゃっ」

 そういうんじゃないけど……。

 母さん……。

 オレの気持ち……。

 全然分かってない……。

 このまま……言っちゃったら楽になれるのかな?

 母と子の関係を壊しちゃっても……いいのかな……。 

「母さん……オレ……」

「なぁに?」

「オレ……母さんの事……」

 俺の理性と、親子の関係が、決壊するよりも先に、世界の方が――壊れた。

 ゴゴゴゴォォォゴゴォオォォオオッ――――!!!!

「えっ、きゃあああっ!?」
「うおっ!? 地震か!?」

 突如、店全体を激しい揺れが襲った。

 陳列棚の商品がガタガタと音を立て、ポテチの袋が雪崩のように床へ落ちる。
 バランスを崩した母さんが、オレの方へと倒れ込んできた。

「カズヤくんっ!」
「危ない!」

 オレはとっさに母さんを抱き留める。
 腕の中に飛び込んできたのは、甘いミルクのような匂いと、信じられないほどの柔らかさ。
 恐怖で震える母さんの身体が俺に密着し、さっき弾け飛んだ制服の隙間から、ダイレクトに体温と弾力が伝わってくる。

(やばい、柔らかい、当たってる、すごい当たってる……!)

 こんな時でも思春期男子の頭の中はどうしようもない。 でもスケベ心よりもっと大事なことがある――

「母さん、大丈夫だよ」

 震える母さんをギュっと強く抱きしめる。
 大事な母さんを守らなきゃ。

「カズヤくん……」

 母さんもオレの背中に手を回し、ぎゅっと抱きしめる。
 それは恋人への抱擁では無く。母が子を守るための行動だ。

 それが痛い程に伝わってくる。

「よしよし」

 揺れるコンビニの中で母がオレの背中をポンポンと赤ん坊をあやすように叩く。

 不安を一瞬で吹き飛ばす母さんの魔法。

 小さい頃からオレを癒やしてきた、最高の治癒魔法。
 母さんほどのヒーラーは異世界(ゲームの中)に行ったとしても存在しないと思う。

 揺れは十秒ほどで収まった。
 だが、何かがおかしい。
 揺れが止まった瞬間に感じるはずの、遠くを走る車の走行音や、街の喧騒が一切聞こえないのだ。
 代わりに聞こえてくるのは――鳥のさえずりと、風が木々を揺らす音?

「……おさまった、かな?」

 母さんが俺を見上げる。母さんの瞳は潤んでキラキラと輝いている。

「大丈夫? カズヤくん」

 オレが言うより早く、オレを心配する母さん。
 母さんの騎士失格だ。

「もう、地震おさまったわよ」

 いつまでも抱擁をやめないオレに母さんが呆れながらクスッと微笑む。

 母さんを守るつもりだったのに、守られる。
 情けない気持ちと、母さんがくれる安心感に、心だけは揺れ続ける。

 密着した胸から心臓の鼓動が伝わり、トクン、トクンと俺の胸板をノックし続ける。
 このまま抱きしめていたい衝動と、理性のブレーキが激しく火花を散らす。

「か、母さん。とりあえずニュースを見よう」
「えっ? あ、うん……」

 名残惜しそうに(とオレには思えた)身体を離す母さん。

 その瞬間、圧迫から解放された双丘が ボヨンッ♥ と大きく跳ね、弾け飛んだシャツの隙間から再びピンク色のレースが主張する。

 ……目に毒だ。あまりにも毒すぎる。
 俺は必死に視線をそらすと「あれ? なんか外、明るくないか?」違和感を憶え、自動ドアの方を見る。

 さっきまで深夜二時の漆黒の闇に包まれていたはずのガラスの向こうが、なぜか白く発光している。

『ウィーン、チャララ・ララララ~♪』

 聞き慣れた入店音が鳴り響き、自動ドアが開いた。
 その瞬間。

「――え?」

 俺と母さんの声が重なった。

 そこに広がっていたのは、アスファルトの駐車場でも、国道沿いの街並みでもなかった。

 見渡す限りの、大草原。

 どこまでも続く緑の絨毯。

 空は突き抜けるように青く、見たこともない巨大な積乱雲が浮かんでいる。

 そして極めつけは、遥か彼方の空を優雅に泳ぐ、翼の生えた巨大なトカゲ――
 ……どう見ても『ドラゴン』のシルエットだ。

「な、ななな、何これぇ!? ここどこ!? 盛岡じゃないの!?」

 母さんがパニックを起こして駆け寄ってくる。

 開け放たれたドアから、草原の爽やかな風が店内に吹き込んだ。

 ブワッ!

「きゃあっ!」

 突風が、母さんの乱れた制服を容赦なく襲う。
 ボタンの弾けたシャツが左右に大きくはためき、短いプリーツスカートがめくれ上がった。

「ちょ、風っ! エッチ!」

 母さんが慌ててスカートを押さえるが、そのせいで胸元のガードがお留守になる。
 燦々と降り注ぐ、知らない世界の太陽光が、母さん艶やかな美肌と、薄い布一枚に包まれた豊かな膨らみを、神々しいほど鮮明に照らし出した。
 深夜の蛍光灯の下で見るよりも健康的で、それでいて背徳的なエロさがそこにある。

「す、すごい……」
「カズヤくん! 景色に感動してる場合じゃないわよぉ!」

 いや、俺が感動してるのは景色じゃなくて母さんのおおっぱい……いや、なんでもない。

「母さん、落ち着いて聞いてくれ」
「な、なに?」

 恥ずかしくて、言いたくないけど、言わざるを得ない。すごく恥ずかしいけどね。

「俺たちはたぶん……コンビニごと異世界に転移したんだ」
「い、異世界ぃ~!?」

 母さんは目を白黒させ、へなへなとその場に座り込んだ。
 M字に開脚したその足の間から、純白の何かがチラリと見え――俺は悟った。

 冒険? 魔王討伐? そんなものはどうでもいい。

 オレは……母さんを……。
 
 地震の時にのように守りたいのに、守られる。
 そう言う関係じゃ無く。

 ちゃんと母さんを……。

 大好きな人を守れる男に……。

 なるんだ……。

「あ、あのぅ……」

 その時、男の決意を邪魔するように、客が話しかけて来る。

 いまじゃねぇーだろっ!!

 思春期男子が大人になる大事な場面だぞっ!!

 怒りで打ち震えたが、しかしオレには商売人の血が流れている。

「いらっしゃいませ~」

 ――と営業スマイルを瞬時に浮かべる。

 鈴のような声の方を振り返ったオレの目に飛び込んできたのは、コスプレ会場でもなければお目にかかれないような姿だった。

 白銀に輝く甲冑と兜。背中に背負った背丈を超える大剣。

 太陽の光をそのまま糸にしたような金髪と、宝石のような碧眼。

 凛とした美しい少年(中学生くらい)が、自動ドアの入り口で呆然と立ち尽くしている。




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 深夜二時。
 俺、愛沢カズヤ(高二)の声が、誰もいない店内に虚しく響く。
 ここは俺の家であり、職場でもある『コンビニエンスストア・アイザワ』。
 元々は爺ちゃんの代から続く酒屋だったが、時代の波に飲まれてフランチャイズのコンビニになった。
 古くから親しまれた店だったので、店の名はアイザワ(愛沢)の使用が本店から許可された。
 順調にすすみ、明日開店というところで――親父のヤツが蒸発しやがった。
  莫大な借金を残して……。
 消えた親父の代わりに、店を切り盛りしているのが――
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 レジ奥の事務所から、甘ったるい声と共に現れた小柄な女性。
 愛沢夏南子(あいざわななこ)(2×歳)だ。
 親父の再婚相手であり、俺の義理の母。
 童顔で、背は俺の胸あたりまでしかない。どう見ても同級生か年下の美少女にしか見えないが、戸籍上は立派な母親である。
 そして何より重要なのは――俺とは血が繋がっていないということだ。
 金に近い栗毛を腰まで伸ばし、青みがかった大きな瞳はウルウルといつも潤んでいる。雪解けの清流みたいな透明感のある肌は、存在が幻のように感じさせる。
 例えるなら、ファンタジーゲームに出て来るエルフのお姫様だ。現実にはありえないキャラクターがオレの目の前にキラキラと輝いて存在している。
 さらに声が「んっ♥」「あんっ♥」すっごく甘い。
 スイーツに蜂蜜と砂糖をぶっかけたようにあま~い。
「母さん、その『んっ♥』って声、やめてくれよ」
「えー? どうして?」
 母さんは思春期男子の悶悶とした感情など理解できず。頭に?を浮かべる。
「もうっ!! なにかしたのっ!?」
「あ~ん♥ 制服のサイズが合わなくて苦しいのよぉ~」
 夏南子母さんが胸元のボタンを止めようとしてるが、巨大な胸が邪魔して穴に入らない。
「ふぐぐぐぐっ」
 指先でボタンつまみ、強引に穴に入れた瞬間――。
「あ」
 プチッ、という乾いた音と共に、ボタンが弾け飛んだ。
 繊維の持つ耐久性を超え、コンビニの制服――本来なら通気性の良いポリエステル素材の生地が、左右に大きく開く。
「ひゃっ!?」
 母さんが可愛らしい悲鳴を上げる。
 淡いピンクのレースブラジャーが見えた瞬間、包まれたプリプリの巨大果実がどーん♥ と現われる。 
 オレは今3Dメガネでもしてるのか? と疑問に浮かぶほど、母さんのスイーツが目の前に飛び出してくる。
「ちょ、母さん! 前! 前開いてるって! お客さんが来たらどうするんだよっ!!」
 童顔で小柄な身体のどこにこんな栄養が詰まっているのか。白い肌が蛍光灯の下で艶めかしく光り、解放された双丘が ぷるん♥ ぷるん♥  と質量を持って揺れつづける。
「だ、だってぇ……最近また育っちゃったみたいで……うぅ」
 頬を桜色に染めて、両腕で胸を隠そうとする母さん。その動作がかえって胸のボリュームを強調し、二の腕に押されたパイ肉がむにゅ~♥ と盛りあがる。
 俺は慌てて視線を逸らそうとしたが、男の本能がそれを許さない。血が繋がっていないとはいえ、毎日この無防備な色気と戦う俺の身にもなってほしい。
「やだっカズヤくんっ母さんのおっぱいじっと見て。吸いたいの?」
 高校生にもなって、甘えん坊なんだから♥ とクスクス微笑む。
「いやっそういうんじゃっ」
 そういうんじゃないけど……。
 母さん……。
 オレの気持ち……。
 全然分かってない……。
 このまま……言っちゃったら楽になれるのかな?
 母と子の関係を壊しちゃっても……いいのかな……。 
「母さん……オレ……」
「なぁに?」
「オレ……母さんの事……」
 俺の理性と、親子の関係が、決壊するよりも先に、世界の方が――壊れた。
 ゴゴゴゴォォォゴゴォオォォオオッ――――!!!!
「えっ、きゃあああっ!?」
「うおっ!? 地震か!?」
 突如、店全体を激しい揺れが襲った。
 陳列棚の商品がガタガタと音を立て、ポテチの袋が雪崩のように床へ落ちる。
 バランスを崩した母さんが、オレの方へと倒れ込んできた。
「カズヤくんっ!」
「危ない!」
 オレはとっさに母さんを抱き留める。
 腕の中に飛び込んできたのは、甘いミルクのような匂いと、信じられないほどの柔らかさ。
 恐怖で震える母さんの身体が俺に密着し、さっき弾け飛んだ制服の隙間から、ダイレクトに体温と弾力が伝わってくる。
(やばい、柔らかい、当たってる、すごい当たってる……!)
 こんな時でも思春期男子の頭の中はどうしようもない。 でもスケベ心よりもっと大事なことがある――
「母さん、大丈夫だよ」
 震える母さんをギュっと強く抱きしめる。
 大事な母さんを守らなきゃ。
「カズヤくん……」
 母さんもオレの背中に手を回し、ぎゅっと抱きしめる。
 それは恋人への抱擁では無く。母が子を守るための行動だ。
 それが痛い程に伝わってくる。
「よしよし」
 揺れるコンビニの中で母がオレの背中をポンポンと赤ん坊をあやすように叩く。
 不安を一瞬で吹き飛ばす母さんの魔法。
 小さい頃からオレを癒やしてきた、最高の治癒魔法。
 母さんほどのヒーラーは異世界(ゲームの中)に行ったとしても存在しないと思う。
 揺れは十秒ほどで収まった。
 だが、何かがおかしい。
 揺れが止まった瞬間に感じるはずの、遠くを走る車の走行音や、街の喧騒が一切聞こえないのだ。
 代わりに聞こえてくるのは――鳥のさえずりと、風が木々を揺らす音?
「……おさまった、かな?」
 母さんが俺を見上げる。母さんの瞳は潤んでキラキラと輝いている。
「大丈夫? カズヤくん」
 オレが言うより早く、オレを心配する母さん。
 母さんの騎士失格だ。
「もう、地震おさまったわよ」
 いつまでも抱擁をやめないオレに母さんが呆れながらクスッと微笑む。
 母さんを守るつもりだったのに、守られる。
 情けない気持ちと、母さんがくれる安心感に、心だけは揺れ続ける。
 密着した胸から心臓の鼓動が伝わり、トクン、トクンと俺の胸板をノックし続ける。
 このまま抱きしめていたい衝動と、理性のブレーキが激しく火花を散らす。
「か、母さん。とりあえずニュースを見よう」
「えっ? あ、うん……」
 名残惜しそうに(とオレには思えた)身体を離す母さん。
 その瞬間、圧迫から解放された双丘が ボヨンッ♥ と大きく跳ね、弾け飛んだシャツの隙間から再びピンク色のレースが主張する。
 ……目に毒だ。あまりにも毒すぎる。
 俺は必死に視線をそらすと「あれ? なんか外、明るくないか?」違和感を憶え、自動ドアの方を見る。
 さっきまで深夜二時の漆黒の闇に包まれていたはずのガラスの向こうが、なぜか白く発光している。
『ウィーン、チャララ・ララララ~♪』
 聞き慣れた入店音が鳴り響き、自動ドアが開いた。
 その瞬間。
「――え?」
 俺と母さんの声が重なった。
 そこに広がっていたのは、アスファルトの駐車場でも、国道沿いの街並みでもなかった。
 見渡す限りの、大草原。
 どこまでも続く緑の絨毯。
 空は突き抜けるように青く、見たこともない巨大な積乱雲が浮かんでいる。
 そして極めつけは、遥か彼方の空を優雅に泳ぐ、翼の生えた巨大なトカゲ――
 ……どう見ても『ドラゴン』のシルエットだ。
「な、ななな、何これぇ!? ここどこ!? 盛岡じゃないの!?」
 母さんがパニックを起こして駆け寄ってくる。
 開け放たれたドアから、草原の爽やかな風が店内に吹き込んだ。
 ブワッ!
「きゃあっ!」
 突風が、母さんの乱れた制服を容赦なく襲う。
 ボタンの弾けたシャツが左右に大きくはためき、短いプリーツスカートがめくれ上がった。
「ちょ、風っ! エッチ!」
 母さんが慌ててスカートを押さえるが、そのせいで胸元のガードがお留守になる。
 燦々と降り注ぐ、知らない世界の太陽光が、母さん艶やかな美肌と、薄い布一枚に包まれた豊かな膨らみを、神々しいほど鮮明に照らし出した。
 深夜の蛍光灯の下で見るよりも健康的で、それでいて背徳的なエロさがそこにある。
「す、すごい……」
「カズヤくん! 景色に感動してる場合じゃないわよぉ!」
 いや、俺が感動してるのは景色じゃなくて母さんのおおっぱい……いや、なんでもない。
「母さん、落ち着いて聞いてくれ」
「な、なに?」
 恥ずかしくて、言いたくないけど、言わざるを得ない。すごく恥ずかしいけどね。
「俺たちはたぶん……コンビニごと異世界に転移したんだ」
「い、異世界ぃ~!?」
 母さんは目を白黒させ、へなへなとその場に座り込んだ。
 M字に開脚したその足の間から、純白の何かがチラリと見え――俺は悟った。
 冒険? 魔王討伐? そんなものはどうでもいい。
 オレは……母さんを……。
 地震の時にのように守りたいのに、守られる。
 そう言う関係じゃ無く。
 ちゃんと母さんを……。
 大好きな人を守れる男に……。
 なるんだ……。
「あ、あのぅ……」
 その時、男の決意を邪魔するように、客が話しかけて来る。
 いまじゃねぇーだろっ!!
 思春期男子が大人になる大事な場面だぞっ!!
 怒りで打ち震えたが、しかしオレには商売人の血が流れている。
「いらっしゃいませ~」
 ――と営業スマイルを瞬時に浮かべる。
 鈴のような声の方を振り返ったオレの目に飛び込んできたのは、コスプレ会場でもなければお目にかかれないような姿だった。
 白銀に輝く甲冑と兜。背中に背負った背丈を超える大剣。
 太陽の光をそのまま糸にしたような金髪と、宝石のような碧眼。
 凛とした美しい少年(中学生くらい)が、自動ドアの入り口で呆然と立ち尽くしている。