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SCENE066 ダンジョンのお悩み

ー/ー



 僕がふて寝をした翌日のこと、衣織お姉さんが僕のところに突撃してきた。

「おい、瞬、聞いたか?」

「どうしたの、衣織お姉さん」

 慌てた様子で僕に話しかけてくる衣織お姉さんに、きょとんとした顔で状況を尋ねている。

「横浜ダンジョンで、探索者の新人の育成をすることが決まったらしい」

「衣織お姉さん、それ、どこで聞いたんだよ」

「な、なんだ……。知っているのか」

 さっきまで慌てていたような様子の衣織お姉さんが、なんだか一気に落ち着いちゃった。僕が知っていたことが意外だったみたいだ。

「うん。昨日、セイレーンさんから直に聞かされたからね」

「瞬。お前、あそこのダンジョンマスターと連絡とり合えるのか」

「ちょっとわけあってね。まあ、ダンジョンポイントが増えるってセイレーンさんは大喜びしていましたけれどね」

「ああ、横浜ダンジョンは復活ポイントがあるからな。ダンジョン内で死ねば、その分ポイントが入るんだっけか」

「そうだよ。僕もできればそういう機能が欲しいんだけど、100万ポイントは遠すぎるんだよなぁ……」

 衣織お姉さんと話をしながら、僕は悩ましげに両腕を組みながら唸っている。
 僕の悩んでいる姿を見た衣織お姉さんは、何か手を叩いていた。いいアイディアでも出たのだろうかな。

「よし、配信をしよう」

「へ? なんで」

 衣織お姉さんの発言に、僕は顔が歪んでしまう。

「瞬のダンジョンポイントは配信で視聴者を魅了することでしか稼げないだろう? 稼ぐとなったらガンガン配信するしかないじゃないか」

「ま、まあ、そうだけどさ……」

 衣織お姉さんの珍しい正論に、僕は押され気味になってしまう。
 ダンジョン管理局の完全な管理下に置かれた僕のダンジョンでは、人死にによるダンジョンポイント獲得というのはほぼ無理だ。
 途中に『キラー』と名のつくモンスターを配置しているけれど、負わせられても大ケガまでだから、ポイントの期待はできない。
 そうなると、必然的に僕の配信による魅了効果を期待するしかないというわけだった。
 実際、僕の魅了の効果が現れた衣織お姉さんは、一人で5000ポイントという大量のポイントをもたらしてくれた。

 ……そういえば、衣織お姉さんがやたらと僕に絡んでくるのって、この魅了のせいじゃないよね?
 元々、僕や瞳に対して過保護気味だったけどさ、そこに魅了までついて本気で手に負えなくなってきてるの?
 だったらどうしよう。いろいろ割り込んでくるから、配信も電話もはっきりいって邪魔になりかねないんだよね。

「というわけだ。瞬、バトラーを呼んでくれ」

「バトラーを? まあ、分かったよ」

 僕は衣織お姉さんに言われて、バトラーを呼び出す。
 なにやら作業をしていたみたいだけど、バトラーは呼び掛けに応じて僕たちのところにやってきた。

「やれやれ、まったく暇人ですな」

 呼ばれたバトラーは思いっきり呆れているようである。

「まあ、そういうな。私はダンジョンに潜っているだけで生活ができるんでな」

「そうですか。して、今回は何をするおつもりですかな?」

 なんとも自信たっぷりな衣織お姉さんの返事である。バトラーはやっぱり呆れているようで、すぐに用件を聞き出そうとしている。

「ただの力比べだ。瞬のダンジョンポイントを稼ぐには、魅力を伝えなければならないだろう?」

「我々に対する評価で、ダンジョンポイントが入りますかね?」

「分からん。だが、やってみるまでだ」

「承知致しました。では、プリンセス、配信を始めて下さい」

「わ、分かったよ!」

 衣織お姉さんから戦いを挑まれたバトラーは、疑問視しながらも受け入れていた。
 僕はしょうがなく、ドローンを取り出して配信を始める。

「みなさん、こんにちは。ダンジョンマスターのウィンクです」

『こんらみあ~』

 挨拶をすれば挨拶が返ってくる。本当に早いなぁ、みんな。

「本日は衣織お姉さんが訪ねてきてくれましたので、バトラーとの実戦を配信することとなりました。ダンジョンは誠意改造中ですので、ご報告までにはまだ時間をいただきますのでご了承ください」

『了解。鬼百合の戦い、また見られるとはな』

『鬼百合はまったく配信しないからなぁ。その戦いが見られるこの配信は貴重だ』

 どうやら衣織お姉さんの戦いはかなり好評のようだ。配信してないって言ってたもんな。
 高レベル同士の戦いだからか、同接数がどんどんと増えていく。まったく、どれだけ衣織お姉さんは人気なんだろう。

「それじゃ、いい感じに視聴者さんが集まったので、二人ともお願いしますね!」

「心得たですぞ!」

「全力でいかせてもらう!」

 手加減がなさそうな二人なので、僕は表情を引きつらせてしまう。
 魅了で少しずつレベルが上がっているけれど、あの二人に比べたらアリやミジンコだからなぁ。衣織お姉さんとの間では不殺設定があるとはいっても怖いよ、ほんと。

 結果、衣織お姉さんとバトラーの戦いは、バトラーの勝利で幕を閉じた。バトラーってば強いなぁ。

「くそっ、負けた……」

「まったく、直線的な動きが多すぎますぞ。パワータイプのモンスターなら通じますでしょうが、我のような技巧タイプのモンスターではいなされてしまいます。もうちょっと考えなければ、とてもじゃないですが横浜ダンジョンの踏破など無理ですぞ」

「ぐぬぬぬぬ……」

 バトラーに酷評を食らって、衣織お姉さんはかなり不服そうだった。
 視聴者さんたちも大満足のうちに、今日の配信を終わらせることができた。
 結果、今日の配信では2000くらいダンジョンポイントが増えたよ。よかったよかった。


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次のエピソードへ進む SCENE067 闇以外も頑張ろう


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 僕がふて寝をした翌日のこと、衣織お姉さんが僕のところに突撃してきた。
「おい、瞬、聞いたか?」
「どうしたの、衣織お姉さん」
 慌てた様子で僕に話しかけてくる衣織お姉さんに、きょとんとした顔で状況を尋ねている。
「横浜ダンジョンで、探索者の新人の育成をすることが決まったらしい」
「衣織お姉さん、それ、どこで聞いたんだよ」
「な、なんだ……。知っているのか」
 さっきまで慌てていたような様子の衣織お姉さんが、なんだか一気に落ち着いちゃった。僕が知っていたことが意外だったみたいだ。
「うん。昨日、セイレーンさんから直に聞かされたからね」
「瞬。お前、あそこのダンジョンマスターと連絡とり合えるのか」
「ちょっとわけあってね。まあ、ダンジョンポイントが増えるってセイレーンさんは大喜びしていましたけれどね」
「ああ、横浜ダンジョンは復活ポイントがあるからな。ダンジョン内で死ねば、その分ポイントが入るんだっけか」
「そうだよ。僕もできればそういう機能が欲しいんだけど、100万ポイントは遠すぎるんだよなぁ……」
 衣織お姉さんと話をしながら、僕は悩ましげに両腕を組みながら唸っている。
 僕の悩んでいる姿を見た衣織お姉さんは、何か手を叩いていた。いいアイディアでも出たのだろうかな。
「よし、配信をしよう」
「へ? なんで」
 衣織お姉さんの発言に、僕は顔が歪んでしまう。
「瞬のダンジョンポイントは配信で視聴者を魅了することでしか稼げないだろう? 稼ぐとなったらガンガン配信するしかないじゃないか」
「ま、まあ、そうだけどさ……」
 衣織お姉さんの珍しい正論に、僕は押され気味になってしまう。
 ダンジョン管理局の完全な管理下に置かれた僕のダンジョンでは、人死にによるダンジョンポイント獲得というのはほぼ無理だ。
 途中に『キラー』と名のつくモンスターを配置しているけれど、負わせられても大ケガまでだから、ポイントの期待はできない。
 そうなると、必然的に僕の配信による魅了効果を期待するしかないというわけだった。
 実際、僕の魅了の効果が現れた衣織お姉さんは、一人で5000ポイントという大量のポイントをもたらしてくれた。
 ……そういえば、衣織お姉さんがやたらと僕に絡んでくるのって、この魅了のせいじゃないよね?
 元々、僕や瞳に対して過保護気味だったけどさ、そこに魅了までついて本気で手に負えなくなってきてるの?
 だったらどうしよう。いろいろ割り込んでくるから、配信も電話もはっきりいって邪魔になりかねないんだよね。
「というわけだ。瞬、バトラーを呼んでくれ」
「バトラーを? まあ、分かったよ」
 僕は衣織お姉さんに言われて、バトラーを呼び出す。
 なにやら作業をしていたみたいだけど、バトラーは呼び掛けに応じて僕たちのところにやってきた。
「やれやれ、まったく暇人ですな」
 呼ばれたバトラーは思いっきり呆れているようである。
「まあ、そういうな。私はダンジョンに潜っているだけで生活ができるんでな」
「そうですか。して、今回は何をするおつもりですかな?」
 なんとも自信たっぷりな衣織お姉さんの返事である。バトラーはやっぱり呆れているようで、すぐに用件を聞き出そうとしている。
「ただの力比べだ。瞬のダンジョンポイントを稼ぐには、魅力を伝えなければならないだろう?」
「我々に対する評価で、ダンジョンポイントが入りますかね?」
「分からん。だが、やってみるまでだ」
「承知致しました。では、プリンセス、配信を始めて下さい」
「わ、分かったよ!」
 衣織お姉さんから戦いを挑まれたバトラーは、疑問視しながらも受け入れていた。
 僕はしょうがなく、ドローンを取り出して配信を始める。
「みなさん、こんにちは。ダンジョンマスターのウィンクです」
『こんらみあ~』
 挨拶をすれば挨拶が返ってくる。本当に早いなぁ、みんな。
「本日は衣織お姉さんが訪ねてきてくれましたので、バトラーとの実戦を配信することとなりました。ダンジョンは誠意改造中ですので、ご報告までにはまだ時間をいただきますのでご了承ください」
『了解。鬼百合の戦い、また見られるとはな』
『鬼百合はまったく配信しないからなぁ。その戦いが見られるこの配信は貴重だ』
 どうやら衣織お姉さんの戦いはかなり好評のようだ。配信してないって言ってたもんな。
 高レベル同士の戦いだからか、同接数がどんどんと増えていく。まったく、どれだけ衣織お姉さんは人気なんだろう。
「それじゃ、いい感じに視聴者さんが集まったので、二人ともお願いしますね!」
「心得たですぞ!」
「全力でいかせてもらう!」
 手加減がなさそうな二人なので、僕は表情を引きつらせてしまう。
 魅了で少しずつレベルが上がっているけれど、あの二人に比べたらアリやミジンコだからなぁ。衣織お姉さんとの間では不殺設定があるとはいっても怖いよ、ほんと。
 結果、衣織お姉さんとバトラーの戦いは、バトラーの勝利で幕を閉じた。バトラーってば強いなぁ。
「くそっ、負けた……」
「まったく、直線的な動きが多すぎますぞ。パワータイプのモンスターなら通じますでしょうが、我のような技巧タイプのモンスターではいなされてしまいます。もうちょっと考えなければ、とてもじゃないですが横浜ダンジョンの踏破など無理ですぞ」
「ぐぬぬぬぬ……」
 バトラーに酷評を食らって、衣織お姉さんはかなり不服そうだった。
 視聴者さんたちも大満足のうちに、今日の配信を終わらせることができた。
 結果、今日の配信では2000くらいダンジョンポイントが増えたよ。よかったよかった。