第59話

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ここはウエス国の森の中。ではなく、十数年前のエルドランド王国内のとある町。

一人の女の子が数人の男の子たちに囲まれていた。
「お前、汚ないんだよ!あっちに行けよ!」
「私、何もしてないよ......」
女の子はひどく怯えている。無理もない、年上の男の子数人に取り囲まれているのだ。路地裏なので人通りも少ない。多勢に無勢だった。
「お願い......やめて......」
「この町から出て行けよ。臭いんだよ。」
「うう、誰か助けて、お姉ちゃん!」

その時だった。

「あんた達!私の妹に何してるの!?」
別の女の子の声がした。
「やばい!逃げるぞ!」
男の子たちは蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。
「大丈夫?怪我はない?」
「......うん、ありがとう。お姉ちゃん。」
「こんなところに一人で来ちゃダメだよ。」
「ごめんね。お姉ちゃん。」
二人の姉妹は歩き出した。

妹は、スザク。
姉は、ホウオウ。
たった二人の家族である。
両親は事故で亡くなり、身よりはない。
飲食店の残り物やゴミ箱の残飯を漁って、何とか生きている。
二人にはお気に入りの場所があった。
町外れの高台の見晴し台。
この町の全体を見下ろすことが出来る。そこに座って食事をしている時間が一番幸せだった。

「美味しいね。お姉ちゃん。」
「もう、危ない所に一人で言っちゃダメだよ、スザク。」
「わかった。お姉ちゃん。」
ホウオウは、スザクの頭を撫でた。
二人はしばらく町を眺めていた。

ホウオウとスザクは、いつも二人で一人のように一緒に行動していた。

そんなある日。

一人でホウオウは残飯を探しに町に出ていた。
スザクは、姉妹が寝床にしている空き家に一人で残されていた。
暇を持て余したスザクは、寝床にしていた空き家を出て、歩き出した。

姉を探して町を歩き回る。
人通りの少ない町外れを通りがかった時だった。
向こうから、大きな図体をした男が一人歩いてきた。

重たそうな甲冑を身につけ、睨みつける様な恐ろしい眼をしている。
スザクは男から目を逸らして道の端っこを歩いた。

「お嬢ちゃん。ちょっと良いかい?」
男が話し掛けてきた...!
スザクが足早に逃げようとしたその時。
「道を聞きたいんだけど。」
オジさんが道に迷って困っている。助けてあげなきゃ!
恐怖心よりも親切心が勝った。
「どうしたの?オジさん?」

スザクは男を見上げて勇気を振り絞って話し掛けた。
男は膝を曲げて腰を屈めて、スザクに微笑みかけた。恐ろしい顔には違いないが何処か愛嬌がある。
「実は道に迷ってしまってね。困っていたんだ。」
「私が案内してあげる。」
「本当かい?ありがとう。オジさんはゲンブって言うんだ。」
「私は、スザク。」
スザクとゲンブは歩き始めた。

しばらく歩くと道端に馬車が停まっていた。馬車には荷物が積んであるようだ。馬車を曳く馬の横には、ヒョロっとした背の高い男が立っている。

「よう!ビャッコ。探したぜ。」
その背の高い男にゲンブが話し掛けた。
「あれはオジさんの友達でビャッコって言うんだ。ありがとう。スザクのお陰で見つかったよ。」
ゲンブはこのビャッコと言う人を探していたらしい。スザクは、ほっとした。

「オジさん、良かったね。じゃあね!」
スザクがそう言って、その場を去ろうとした時だった。

「おっと、そうはいかないなぁ。お嬢ちゃん。」
ゲンブはそう言うと、スザクの腕を掴んだ。
「オジさん!痛い!」
スザクの訴えを聞かずに、ゲンブはスザクの腕を引き馬車に押し込んだ。
積んであった縄でスザクを縛り上げる。暴れて抵抗していたスザクも大人しくなった。

お姉ちゃん、ごめんなさい。助けて......!


一方その頃。

いつもの寝床にスザクの姿がないことに気づいたホウオウは、町でスザクを探し回っていた。

「スザク!何処にいるの!返事をして!」
散々探し回ったが何処にも居ない。
諦めかけたその時。

「子供を拐う人身売買の集団がいるらしいよ。」
「怖いねぇ。うちも気を付けないと。」
「馬車でいろんな町を渡り歩いてるって話だ。」
「うちの子にも、怪しい馬車には絶対に近づくなって言い聞かせてるよ。」


町の人々の噂話がホウオウの耳に飛び込んで来た。
「人身売買!怪しい馬車!まさか、スザクが!?」
ホウオウは、手当たり次第に馬車を探し始めた。
何台か探したが、スザクの姿は無い。

町外れを歩いている時だった。
怪しい馬車が一台、道端に停まっている。
ヒョロヒョロっと背の高い男と背の低いガタイの良い厳つい男が、馬車の脇に座っている。
ホウオウは直感的に身を隠して様子を伺った。スザクは、あの馬車に乗っているに違いない。
ホウオウはチャンスを待った。

陽が落ちて辺りは薄暗くなっていた。
すると男たちが馬車を離れた。
今がチャンスだ!
ホウオウはゆっくりと慎重に馬車の荷台に近付く。
中から物音がする。
「スザク?」
ホウオウが小さな声で呼び掛けると、
「ん!んーっ!!」
声にはなっていないが、間違いなくスザクだ!
「スザク!今助けるからね!」
ホウオウがスザクを縛った縄を解こうとしたその時だった。

バシッ!

背後からの衝撃で、ホウオウは気を失った。




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みんなのリアクション

ここはウエス国の森の中。ではなく、十数年前のエルドランド王国内のとある町。
一人の女の子が数人の男の子たちに囲まれていた。
「お前、汚ないんだよ!あっちに行けよ!」
「私、何もしてないよ......」
女の子はひどく怯えている。無理もない、年上の男の子数人に取り囲まれているのだ。路地裏なので人通りも少ない。多勢に無勢だった。
「お願い......やめて......」
「この町から出て行けよ。臭いんだよ。」
「うう、誰か助けて、お姉ちゃん!」
その時だった。
「あんた達!私の妹に何してるの!?」
別の女の子の声がした。
「やばい!逃げるぞ!」
男の子たちは蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。
「大丈夫?怪我はない?」
「......うん、ありがとう。お姉ちゃん。」
「こんなところに一人で来ちゃダメだよ。」
「ごめんね。お姉ちゃん。」
二人の姉妹は歩き出した。
妹は、スザク。
姉は、ホウオウ。
たった二人の家族である。
両親は事故で亡くなり、身よりはない。
飲食店の残り物やゴミ箱の残飯を漁って、何とか生きている。
二人にはお気に入りの場所があった。
町外れの高台の見晴し台。
この町の全体を見下ろすことが出来る。そこに座って食事をしている時間が一番幸せだった。
「美味しいね。お姉ちゃん。」
「もう、危ない所に一人で言っちゃダメだよ、スザク。」
「わかった。お姉ちゃん。」
ホウオウは、スザクの頭を撫でた。
二人はしばらく町を眺めていた。
ホウオウとスザクは、いつも二人で一人のように一緒に行動していた。
そんなある日。
一人でホウオウは残飯を探しに町に出ていた。
スザクは、姉妹が寝床にしている空き家に一人で残されていた。
暇を持て余したスザクは、寝床にしていた空き家を出て、歩き出した。
姉を探して町を歩き回る。
人通りの少ない町外れを通りがかった時だった。
向こうから、大きな図体をした男が一人歩いてきた。
重たそうな甲冑を身につけ、睨みつける様な恐ろしい眼をしている。
スザクは男から目を逸らして道の端っこを歩いた。
「お嬢ちゃん。ちょっと良いかい?」
男が話し掛けてきた...!
スザクが足早に逃げようとしたその時。
「道を聞きたいんだけど。」
オジさんが道に迷って困っている。助けてあげなきゃ!
恐怖心よりも親切心が勝った。
「どうしたの?オジさん?」
スザクは男を見上げて勇気を振り絞って話し掛けた。
男は膝を曲げて腰を屈めて、スザクに微笑みかけた。恐ろしい顔には違いないが何処か愛嬌がある。
「実は道に迷ってしまってね。困っていたんだ。」
「私が案内してあげる。」
「本当かい?ありがとう。オジさんはゲンブって言うんだ。」
「私は、スザク。」
スザクとゲンブは歩き始めた。
しばらく歩くと道端に馬車が停まっていた。馬車には荷物が積んであるようだ。馬車を曳く馬の横には、ヒョロっとした背の高い男が立っている。
「よう!ビャッコ。探したぜ。」
その背の高い男にゲンブが話し掛けた。
「あれはオジさんの友達でビャッコって言うんだ。ありがとう。スザクのお陰で見つかったよ。」
ゲンブはこのビャッコと言う人を探していたらしい。スザクは、ほっとした。
「オジさん、良かったね。じゃあね!」
スザクがそう言って、その場を去ろうとした時だった。
「おっと、そうはいかないなぁ。お嬢ちゃん。」
ゲンブはそう言うと、スザクの腕を掴んだ。
「オジさん!痛い!」
スザクの訴えを聞かずに、ゲンブはスザクの腕を引き馬車に押し込んだ。
積んであった縄でスザクを縛り上げる。暴れて抵抗していたスザクも大人しくなった。
お姉ちゃん、ごめんなさい。助けて......!
一方その頃。
いつもの寝床にスザクの姿がないことに気づいたホウオウは、町でスザクを探し回っていた。
「スザク!何処にいるの!返事をして!」
散々探し回ったが何処にも居ない。
諦めかけたその時。
「子供を拐う人身売買の集団がいるらしいよ。」
「怖いねぇ。うちも気を付けないと。」
「馬車でいろんな町を渡り歩いてるって話だ。」
「うちの子にも、怪しい馬車には絶対に近づくなって言い聞かせてるよ。」
町の人々の噂話がホウオウの耳に飛び込んで来た。
「人身売買!怪しい馬車!まさか、スザクが!?」
ホウオウは、手当たり次第に馬車を探し始めた。
何台か探したが、スザクの姿は無い。
町外れを歩いている時だった。
怪しい馬車が一台、道端に停まっている。
ヒョロヒョロっと背の高い男と背の低いガタイの良い厳つい男が、馬車の脇に座っている。
ホウオウは直感的に身を隠して様子を伺った。スザクは、あの馬車に乗っているに違いない。
ホウオウはチャンスを待った。
陽が落ちて辺りは薄暗くなっていた。
すると男たちが馬車を離れた。
今がチャンスだ!
ホウオウはゆっくりと慎重に馬車の荷台に近付く。
中から物音がする。
「スザク?」
ホウオウが小さな声で呼び掛けると、
「ん!んーっ!!」
声にはなっていないが、間違いなくスザクだ!
「スザク!今助けるからね!」
ホウオウがスザクを縛った縄を解こうとしたその時だった。
バシッ!
背後からの衝撃で、ホウオウは気を失った。