第42話 絶望の対面
ー/ー
クロナを巡って、ブラナとメープルの戦いが続けられる。
手に短剣を握りしめ、ブラナはメープルたちの隙を突こうとじっと様子を窺っている。
「魔法隊、手を休めるのではありません。そこの魔族を始末なさい!」
「はっ!」
魔法隊は再び魔法をチャージし始める。
ホーネット伯爵家の魔法隊は、魔法の精鋭が集まるとはいえどしょせんは未熟な魔法使いだ。手に持っている杖を解して魔力をチャージしなければ、強力な魔法を使えない。
しかし、その大きな隙があっても、後ろに控えるのは十歳の天才魔法令嬢メープルである。
何度も見せたように、無詠唱で魔法を放ってくるため、さすがのブラナでも対処がとてもしづらいのだ。
(まったく、味方にいればとても心強いお方ですけれど、敵に回すと面倒極まりないですね。この場で一番の役立たずは伯爵様ですけれど、メープルの隣では弱点狙いというのも不可能です。ならば……)
ブラナはひとつの作戦に打って出たようである。
アサシンスパイダーの体を手に入れたブラナは、スパイダー部分のおしりから糸を出現させる。
「これでも食らいなさい!」
吐き出した糸をまとめ上げ、投げ網のようにして放り投げる。
魔法隊の頭上から網の目となった糸が襲い掛かる。
「うわぁっ!」
魔法への集中が切れ、魔法隊が慌て始める。
「落ち着きなさい!」
メープルが叫ぶと、頭上の糸に火がついて一気に燃え上がる。
ところが、すべてが燃え尽きてひと安心かと思えば、火のついた状態のまま、魔法隊へと落下を続けていた。
「なんでことですの!」
メープルは再び魔法を使う。
予想外のできごとに、メープルが慌てており、ブラナへの注意が逸れる。
(今ですね!)
ブラナは一瞬の隙を突き、メープルへと攻撃を仕掛ける。
ところが、メープルがその程度で簡単に攻撃を許すわけがなかった。
「くっ!」
またしてもトラップである。
「ふふっ、あはははははっ! 甘いですわね。このわたくしが、簡単に魔族の攻撃を許すとでもお思いですの?」
トラップによって攻撃を阻止されたブラナを見ながら、メープルは高らかに笑っている。まったくもって隙のないお嬢様である。
ここまで攻撃を防がれてしまうと、さすがのブラナも決め手に欠いてしまう。もはやブラナの体力とメープルの魔力のどちらが先に尽きるかという、根比べの状態に入ってしまっていた。
「まったく、これが十歳のご令嬢の魔法ですか?!」
「おほほほほ。信じられないでしょうけれど、これが現実なのですわ。さあ、わたくしたちの魔法に焼かれ、消え去りなさい!」
「ファイアーボール!」
チャージを終えた魔法隊が、ブラナに向けて魔法を一斉に照射する。
十数名から一斉に魔法を浴びせられては、暗殺者として活動していたブラナとはいえども躱しきるのは難しい。
『シールド!』
後方で見守っているスチールアントが防御壁を展開する。
「なるほど、さっきからちょこまかとしていたのはあなたですのね!」
メープルが何かに気が付き、魔法を放つ。
「逃げなさい!」
ブラナが気が付いて注意を呼び掛けるが、メープルの無詠唱魔法を交わすのは厳しい。
スチールアントがメープルの魔法の餌食となりそうになるが、その魔法は何かによって弾かれてしまった。
「メープル様……」
「お嬢様、なぜ出てこられたのですか!」
スチールアントを守ったのは、仮の隠れ家の奥で泣き疲れていたはずのクロナだった。
スチールアントの張ったシールドで魔法隊の攻撃を回避しきったブラナが、クロナの姿を見つけて叫んでいる。。
「わたくしの名を、気安く呼ばないで下さいませんこと?!」
クロナに名前を呼ばれたメープルが、ブチ切れた様子でクロナ目がけて魔法を放つ。
「お嬢様、お逃げ下さい!」
ブラナが呼び掛けるも、クロナはその場を動かない。
「嘘ですよね、メープル様」
泣きそうな顔をしながら、首を左右に振るクロナ。
「いやああっ!!」
涙をこぼしながら叫ぶと、メープルの放った魔法がクロナから解き放たれた魔力によって跳ね返されていた。
「なんですって?!」
メープルは跳ね返ってきた魔法を相殺する。
すぐさまクロナを睨み付け、血が出そうな強さで唇をかみしめている。
「魔族の分際で、わたくしの魔法をいともたやすく反射するとは……。許せませんわ!」
メープルは無詠唱でありったけの魔法をクロナへと向けて放つ。
「どうして……。どうして、みなさん、私のことを殺そうとしてくるのですか!」
悲痛な表情を浮かべたクロナが祈るように訴えると、クロナたちの周りに防壁が展開される。
突如として出現した防壁のすべてに、メープルの魔法はあえなくすべて跳ね返されてしまう。
「こんなの、ありえませんわ! 魔族ごときにわたくしの魔法が跳ね返されるなんて!」
驚愕の表情を浮かべながらも、メープルは放った魔法をすべて相殺しようとする。
だが、さすがに怒りに任せて放った魔法の数が多すぎて、ホーネット伯爵家の誇る魔法隊が巻き添えになっていく。
「うぎゃああっ!」
「うわああっ!」
悲鳴を上げ、一人、また一人と魔法隊が倒れていく。
すべての魔法が着弾し終えた時、その場に立っていたのはメープルとホーネット伯爵だけだった。
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手に短剣を握りしめ、ブラナはメープルたちの隙を突こうとじっと様子を窺っている。
「魔法隊、手を休めるのではありません。そこの魔族を始末なさい!」
「はっ!」
魔法隊は再び魔法をチャージし始める。
ホーネット伯爵家の魔法隊は、魔法の精鋭が集まるとはいえどしょせんは未熟な魔法使いだ。手に持っている杖を解して魔力をチャージしなければ、強力な魔法を使えない。
しかし、その大きな隙があっても、後ろに控えるのは十歳の天才魔法令嬢メープルである。
何度も見せたように、無詠唱で魔法を放ってくるため、さすがのブラナでも対処がとてもしづらいのだ。
(まったく、味方にいればとても心強いお方ですけれど、敵に回すと面倒極まりないですね。この場で一番の役立たずは伯爵様ですけれど、メープルの隣では弱点狙いというのも不可能です。ならば……)
ブラナはひとつの作戦に打って出たようである。
アサシンスパイダーの体を手に入れたブラナは、スパイダー部分のおしりから糸を出現させる。
「これでも食らいなさい!」
吐き出した糸をまとめ上げ、投げ網のようにして放り投げる。
魔法隊の頭上から網の目となった糸が襲い掛かる。
「うわぁっ!」
魔法への集中が切れ、魔法隊が慌て始める。
「落ち着きなさい!」
メープルが叫ぶと、頭上の糸に火がついて一気に燃え上がる。
ところが、すべてが燃え尽きてひと安心かと思えば、火のついた状態のまま、魔法隊へと落下を続けていた。
「なんでことですの!」
メープルは再び魔法を使う。
予想外のできごとに、メープルが慌てており、ブラナへの注意が逸れる。
(今ですね!)
ブラナは一瞬の隙を突き、メープルへと攻撃を仕掛ける。
ところが、メープルがその程度で簡単に攻撃を許すわけがなかった。
「くっ!」
またしてもトラップである。
「ふふっ、あはははははっ! 甘いですわね。このわたくしが、簡単に魔族の攻撃を許すとでもお思いですの?」
トラップによって攻撃を阻止されたブラナを見ながら、メープルは高らかに笑っている。まったくもって隙のないお嬢様である。
ここまで攻撃を防がれてしまうと、さすがのブラナも決め手に欠いてしまう。もはやブラナの体力とメープルの魔力のどちらが先に尽きるかという、根比べの状態に入ってしまっていた。
「まったく、これが十歳のご令嬢の魔法ですか?!」
「おほほほほ。信じられないでしょうけれど、これが現実なのですわ。さあ、わたくしたちの魔法に焼かれ、消え去りなさい!」
「ファイアーボール!」
チャージを終えた魔法隊が、ブラナに向けて魔法を一斉に照射する。
十数名から一斉に魔法を浴びせられては、暗殺者として活動していたブラナとはいえども躱しきるのは難しい。
『シールド!』
後方で見守っているスチールアントが防御壁を展開する。
「なるほど、さっきからちょこまかとしていたのはあなたですのね!」
メープルが何かに気が付き、魔法を放つ。
「逃げなさい!」
ブラナが気が付いて注意を呼び掛けるが、メープルの無詠唱魔法を交わすのは厳しい。
スチールアントがメープルの魔法の餌食となりそうになるが、その魔法は何かによって弾かれてしまった。
「メープル様……」
「お嬢様、なぜ出てこられたのですか!」
スチールアントを守ったのは、仮の隠れ家の奥で泣き疲れていたはずのクロナだった。
スチールアントの張ったシールドで魔法隊の攻撃を回避しきったブラナが、クロナの姿を見つけて叫んでいる。。
「わたくしの名を、気安く呼ばないで下さいませんこと?!」
クロナに名前を呼ばれたメープルが、ブチ切れた様子でクロナ目がけて魔法を放つ。
「お嬢様、お逃げ下さい!」
ブラナが呼び掛けるも、クロナはその場を動かない。
「嘘ですよね、メープル様」
泣きそうな顔をしながら、首を左右に振るクロナ。
「いやああっ!!」
涙をこぼしながら叫ぶと、メープルの放った魔法がクロナから解き放たれた魔力によって跳ね返されていた。
「なんですって?!」
メープルは跳ね返ってきた魔法を相殺する。
すぐさまクロナを睨み付け、血が出そうな強さで唇をかみしめている。
「魔族の分際で、わたくしの魔法をいともたやすく反射するとは……。許せませんわ!」
メープルは無詠唱でありったけの魔法をクロナへと向けて放つ。
「どうして……。どうして、みなさん、私のことを殺そうとしてくるのですか!」
悲痛な表情を浮かべたクロナが祈るように訴えると、クロナたちの周りに防壁が展開される。
突如として出現した防壁のすべてに、メープルの魔法はあえなくすべて跳ね返されてしまう。
「こんなの、ありえませんわ! 魔族ごときにわたくしの魔法が跳ね返されるなんて!」
驚愕の表情を浮かべながらも、メープルは放った魔法をすべて相殺しようとする。
だが、さすがに怒りに任せて放った魔法の数が多すぎて、ホーネット伯爵家の誇る魔法隊が巻き添えになっていく。
「うぎゃああっ!」
「うわああっ!」
悲鳴を上げ、一人、また一人と魔法隊が倒れていく。
すべての魔法が着弾し終えた時、その場に立っていたのはメープルとホーネット伯爵だけだった。