表示設定
表示設定
目次 目次




SCENE055 服をお披露目します

ー/ー



「こんにちは、みなさん。ダンジョンマスターのウィンクです」

 ドローンを取り出した僕は、いつものようににこやかな笑顔をドローンのカメラに向けている。

『ウィンクちゃん、こんにちは~』

『こんらみあ~』

 配信を始めると同時に、やっぱり視聴者さんたちから挨拶が返ってきていた。通知がいくとしても、早すぎないかなって思う反応だよ。
 とはいっても、こういう人たちがいるからこそ、僕の手元には大量のダンジョンポイントが転がり込んでくる。スパチャが飛んでくれば、家族の生活の助けになる。そこはもう割り切るしかなかった。

『おや、ウィンクちゃんの服装がまた違った感じになってる』

『本当だ。今回の服はどうしたの?』

 さすがに視聴者のみんなはすぐに気が付いたみたいだ。

「さすがみなさんですね。はい、今回僕は新しい服を着てみました」

 僕はドローンを後ろに下がらせて、服装の全体像をよく見せている。全身が映っているのを確認すると、今度は器用にくるっと回ってみせる。

『ハイウエストだ』

『ああ、いいねえ。ハイウエストにすると腰回りが細く見えるから、相対的に胸が大きく見えるんだ』

『どこで手に入れたんだろうかな』

 視聴者さんたちがあーだこーだといい始めている。

『でも、ウィンクちゃんはぺたんこだよね』

『希少価値だぞ、ステータスだぞ』

 胸の話題が出たせいか、そのことで視聴者さんたちが言い争い始めてる。
 なので、僕は配信者らしく場をぴたりと収めることにする。

「今回の服ですけれど、僕の妹が作ってくれたんです。僕よりふたつ下で、可愛い妹なんですよ」

『へえ、ウィンクちゃんって妹がいたんだ』

『妹お手製の服!羨まシスター!』

『そのギャグ、寒いぞ』

 視聴者さんのやり取りに、僕はついくすくすと笑ってしまう。こういうやり取りは本当に楽しいかぎりだなぁ。

『しかし、ウィンクちゃんの妹さんはなかなかに器用だな』

『かなり面倒な感じに見えるんだけど、これどのくらいで作ったんだ?』

 視聴者さんたちは、僕の着ている服にとても興味津々のようだ。

「四日だ」

 そこへ、急に衣織お姉さんが配信に割り込んできた。

『げげっ!』

『ゲェーッ!鬼百合の衣織じゃねえか!』

「ほう、お前たち、命が要らないということかな?」

 驚き方が酷かったようで、衣織お姉さんが顔を引きつらせながら話をしている。これは僕としても怖いかぎりだよ。

「い、衣織お姉さん。これは僕の配信だから、こらえてよーっ!」

 僕は慌てて衣織お姉さんを必死に止める。

「離せ、瞬。人の顔を見るなり、ありえない反応をしたこいつらが悪い!」

「だから、やめてってば! 僕の配信が止められちゃうから! 僕に免じて許してあげて!」

「瞬がそこまで言うのなら、しょうがないな」

 衣織お姉さんがようやく引き下がってくれた。
 もう、衣織お姉さんってば急に顔を出すのはやめて欲しいな。僕と瞳の電話の最中にも割り込んできたし、じっとしてられない性分なんだろうな。

「みなさん、本当にごめんなさい。衣織お姉さんにはきつく言っておきますから」

『ウィンクちゃんに免じて許す』

『てか、ウィンクちゃん、鬼百合の衣織と親戚関係なん?』

「いえ、ただのご近所さんです。小さい頃に妹と一緒によく遊んでもらっていたんですよ」

『なんだ、赤の他人か』

『だとしても、配信に割り込むのはよろしくないなぁ。今のやり取りなら、ウィンクちゃんが運営から叱られるぞ』

「ぐっ……、それは困る。護らねばならぬのに、迷惑などかけてしまうわけには……」

 視聴者さんの正論に、さすがの衣織お姉さんもぐうの音も出ないみたいだ。
 衣織お姉さん、優しいのはいいんだけど、ちょっと頭に血が上りやすいのが欠点なんだよね。もうちょっとこらえてもらいたいよ。

「それで、僕の着ている服は、妹が四日で作ってくれたんです。土日が挟まっていたようで、時間はたくさんあったそうですよ」

『はえー、それでも四日は早い』

『てか、それの素材は何なん?』

「バトラーがいうには、ケイヴベアーだそうです」

『ケイヴベアー?!』

 あっ、視聴者さんたちがものすごく驚いてる。
 バトラーは中級のモンスターだって言ってたけど、この反応を見る限り、探索者にとっては面倒なモンスターっぽいね。

「私だから倒せたんだ。つまり、瞬のこの服は、私が作ったといっても過言じゃない。はっはっはっ!」

『いやぁ、過言だろ』

『素材は確かにすごいんだが、縫製したわけじゃないからなぁ』

『誇張ワロス』

 衣織お姉さんは自慢げだけど、視聴者さんたちはとても冷ややかだった。さっきのこともあったので、仕返しみたいな感じだね。
 こんな感じで、ちょっと厳しい場面もあったけど、僕の新しい服のことでかなり盛り上がることができた。
 視聴者さんたちは僕の妹について、かなり興味を持ってくれたみたいだ。

「それでは、今日はこの辺で終わりにしますね。チャンネル登録と評価のほど、よろしくお願いしますね」

『おつらみあ~』

 どうにかこうにか無事に配信を終わることができたのだけど、衣織お姉さんの暴走にはこれからも悩まされそうだ。
 満足そうな衣織お姉さんに対して、僕はつい大きなため息をつくのだった。


スタンプを贈って作者を応援しよう!



みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



「こんにちは、みなさん。ダンジョンマスターのウィンクです」
 ドローンを取り出した僕は、いつものようににこやかな笑顔をドローンのカメラに向けている。
『ウィンクちゃん、こんにちは~』
『こんらみあ~』
 配信を始めると同時に、やっぱり視聴者さんたちから挨拶が返ってきていた。通知がいくとしても、早すぎないかなって思う反応だよ。
 とはいっても、こういう人たちがいるからこそ、僕の手元には大量のダンジョンポイントが転がり込んでくる。スパチャが飛んでくれば、家族の生活の助けになる。そこはもう割り切るしかなかった。
『おや、ウィンクちゃんの服装がまた違った感じになってる』
『本当だ。今回の服はどうしたの?』
 さすがに視聴者のみんなはすぐに気が付いたみたいだ。
「さすがみなさんですね。はい、今回僕は新しい服を着てみました」
 僕はドローンを後ろに下がらせて、服装の全体像をよく見せている。全身が映っているのを確認すると、今度は器用にくるっと回ってみせる。
『ハイウエストだ』
『ああ、いいねえ。ハイウエストにすると腰回りが細く見えるから、相対的に胸が大きく見えるんだ』
『どこで手に入れたんだろうかな』
 視聴者さんたちがあーだこーだといい始めている。
『でも、ウィンクちゃんはぺたんこだよね』
『希少価値だぞ、ステータスだぞ』
 胸の話題が出たせいか、そのことで視聴者さんたちが言い争い始めてる。
 なので、僕は配信者らしく場をぴたりと収めることにする。
「今回の服ですけれど、僕の妹が作ってくれたんです。僕よりふたつ下で、可愛い妹なんですよ」
『へえ、ウィンクちゃんって妹がいたんだ』
『妹お手製の服!羨まシスター!』
『そのギャグ、寒いぞ』
 視聴者さんのやり取りに、僕はついくすくすと笑ってしまう。こういうやり取りは本当に楽しいかぎりだなぁ。
『しかし、ウィンクちゃんの妹さんはなかなかに器用だな』
『かなり面倒な感じに見えるんだけど、これどのくらいで作ったんだ?』
 視聴者さんたちは、僕の着ている服にとても興味津々のようだ。
「四日だ」
 そこへ、急に衣織お姉さんが配信に割り込んできた。
『げげっ!』
『ゲェーッ!鬼百合の衣織じゃねえか!』
「ほう、お前たち、命が要らないということかな?」
 驚き方が酷かったようで、衣織お姉さんが顔を引きつらせながら話をしている。これは僕としても怖いかぎりだよ。
「い、衣織お姉さん。これは僕の配信だから、こらえてよーっ!」
 僕は慌てて衣織お姉さんを必死に止める。
「離せ、瞬。人の顔を見るなり、ありえない反応をしたこいつらが悪い!」
「だから、やめてってば! 僕の配信が止められちゃうから! 僕に免じて許してあげて!」
「瞬がそこまで言うのなら、しょうがないな」
 衣織お姉さんがようやく引き下がってくれた。
 もう、衣織お姉さんってば急に顔を出すのはやめて欲しいな。僕と瞳の電話の最中にも割り込んできたし、じっとしてられない性分なんだろうな。
「みなさん、本当にごめんなさい。衣織お姉さんにはきつく言っておきますから」
『ウィンクちゃんに免じて許す』
『てか、ウィンクちゃん、鬼百合の衣織と親戚関係なん?』
「いえ、ただのご近所さんです。小さい頃に妹と一緒によく遊んでもらっていたんですよ」
『なんだ、赤の他人か』
『だとしても、配信に割り込むのはよろしくないなぁ。今のやり取りなら、ウィンクちゃんが運営から叱られるぞ』
「ぐっ……、それは困る。護らねばならぬのに、迷惑などかけてしまうわけには……」
 視聴者さんの正論に、さすがの衣織お姉さんもぐうの音も出ないみたいだ。
 衣織お姉さん、優しいのはいいんだけど、ちょっと頭に血が上りやすいのが欠点なんだよね。もうちょっとこらえてもらいたいよ。
「それで、僕の着ている服は、妹が四日で作ってくれたんです。土日が挟まっていたようで、時間はたくさんあったそうですよ」
『はえー、それでも四日は早い』
『てか、それの素材は何なん?』
「バトラーがいうには、ケイヴベアーだそうです」
『ケイヴベアー?!』
 あっ、視聴者さんたちがものすごく驚いてる。
 バトラーは中級のモンスターだって言ってたけど、この反応を見る限り、探索者にとっては面倒なモンスターっぽいね。
「私だから倒せたんだ。つまり、瞬のこの服は、私が作ったといっても過言じゃない。はっはっはっ!」
『いやぁ、過言だろ』
『素材は確かにすごいんだが、縫製したわけじゃないからなぁ』
『誇張ワロス』
 衣織お姉さんは自慢げだけど、視聴者さんたちはとても冷ややかだった。さっきのこともあったので、仕返しみたいな感じだね。
 こんな感じで、ちょっと厳しい場面もあったけど、僕の新しい服のことでかなり盛り上がることができた。
 視聴者さんたちは僕の妹について、かなり興味を持ってくれたみたいだ。
「それでは、今日はこの辺で終わりにしますね。チャンネル登録と評価のほど、よろしくお願いしますね」
『おつらみあ~』
 どうにかこうにか無事に配信を終わることができたのだけど、衣織お姉さんの暴走にはこれからも悩まされそうだ。
 満足そうな衣織お姉さんに対して、僕はつい大きなため息をつくのだった。