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SCENE054 瞳ってば仕事が早い

ー/ー



 採寸から四日後のこと、衣織お姉さんが再びやってきた。

「あれ、衣織お姉さんってばまた来たの?」

「ああ、今日も渡すものがあってね」

 衣織お姉さんはそう答えると、紙袋をがさがさと取り出してきた。

「えっと、これはもしかして……」

「ああ、瞳が作った、瞬のための服だ。気に入ってくれるかなって、かなり気にしていたみたいだぞ?」

「いや、あれから四日後って……。いくらなんでも早くない?」

「土日が挟まっていたからな。そのおかげで早くできたらしい」

「あ、そっか。土日かぁ……」

 ダンジョン暮らしが長くなってきたせいで、僕の中の曜日感覚が完全に崩れて来ちゃっている。携帯電話もあんまり見ないから、よく忘れちゃうよ。
 僕はため息をつきながらも、衣織お姉さんが渡してきた紙袋の中身を取り出す。

「ぶっ!」

 服を広げた瞬間、僕は思い切り吹き出してしまった。だって、ものすごくフリフリした服なんだもん。なんだろう、腰のあたりがかなり絞られてない?

「これはハイウエストスカートだな。一応こうやって再度にファスナーがあるから、頭からかぶることもできるぞ」

「もう、なんでスカートとシャツを別々にしたんだよ。あれだけ足元から履けないって言ったのに……」

「瞬はワンピースを期待したのか。残念だったな、瞳はどうやら瞬の体のラインの美しさに目がいったようだ」

「なんだろう、嬉しくないなぁ……」

 衣織お姉さんは褒めているつもりなんだろうけど、元々男の子だった僕からしたら嬉しくないんだよなぁ。別に女装の趣味だってあったわけじゃないし。
 とはいえ、せっかく瞳が作ってくれたのだから、着てみることにしよう。
 そこへ、バトラーがやってきた。

「おお、それはケイヴベアーの皮ですな。これまた高級なものを持ちで」

「け、ケイヴベアー?」

 聞き慣れない言葉に、僕はバトラーに確認してしまう。

「はい。ランクは中程度の強力なモンスターして、時速六十キロほどでダンジョンの中を走り回れる大型のクマでございます」

「ろ、六十……?!」

 とんでもない話を聞いた気がする。六十キロといったら、道路を走る自動車みたいなもんだよね?
 モンスターにも色々いるみたいだけど、僕は恐怖で思わず身震いしちゃったよ。

「大丈夫ですよ、プリンセス。手下として召喚すれば、ダンジョンマスターは襲われることはありません。ダンジョン内のモンスターにはそういう制約がつきますからな」

「な、なるほど……。そっか、よかったぁ」

 バトラーの説明のおかげで、僕はほっと胸を撫で下ろしていた。

「まぁ、瞬。早くそいつを着てくれないかな。私がわざわざ素材を提供したんだ。ほらほら早く」

「ちょっと、衣織お姉さん?」

 僕は衣織お姉さんの手によって隠し部屋へと押し込まれてしまう。バトラーには絶対覗かないようにと念押しまでしていた。
 衣織お姉さんがついてきたのは、僕が服の着方が分からないからと思ったかららしい。もうひと月少々女の子やってるんだから、そこまで分からないわけないはずなんだけどなぁ。
 でも、初めて着るタイプの服だったので、結局衣織お姉さんに手伝ってもらってしまった。

「やっぱり、よく似合うな」

「褒められているはずなのに、嬉しくないよう……」

 僕は恥ずかしくて仕方ない。

「ハイウエストで腰回りを絞っているから、瞬の体型でも胸があるように見えるんだよ。まったく、瞳は分かっているなぁ」

「そ、そんなに胸って重要?!」

「人によるかな。少なくとも瞳は胸が小さいことを気にしているよ」

「そ、そうなんだ……」

 一緒に住んでたけど、瞳ってそんなことを気にしてたのか。女の子って分からないなぁ。
 でも、せっかく瞳が作ってくれた服だから、大切にしないとね。

「あっ、そうだ」

「なに、衣織お姉さん」

「写真撮ってきて欲しいって頼まれてたんだ。瞬、撮らせてもらってもいいか?」

「それは構わないよ。瞳が満足するなら、好きなだけ撮っていってよ」

 可愛い妹のためなら、僕は我慢するしかないよね。
 衣織お姉さんはかなり熱心に全方向から僕の写真を撮っていた。ちょっと多い気はしたんだけど、気のせいかな?

「よし、これでいいや。悪かったな、瞬」

「瞳のためなら仕方ないよ」

 服を着ての撮影を終えると、僕たちは隠し部屋から外へと出る。

「おお、プリンセス。これはまた変わった服ですな」

「フリルブラウスにハイウエストスカートだからな。いつもワンピースばかりで見慣れないだろうけど、こういうのもたまにはいいと思うよ」

「確かにそうですな。さすがはプリンセス、何を着てもよく似合いますぞ」

「ははは、ありがと……」

 バトラーにも褒められているんだけど、僕はひたすら苦笑いをするしかなかった。

「プリンセス、これはぜひとも視聴者のみなさまにもお見せするべきですぞ。ささっ、すぐに配信を始めるのです」

「ちょっと、バトラー?!」

 なんだろう。こんなバトラーは初めて見るよ。
 結局、バトラーの圧に負けて、僕は瞳の作ってくれた服を着たまま配信をすることになってしまう。
 流されてしまってはよくないと思いつつも、僕はドローンを取り出して配信を始めることにしたのだった。


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 採寸から四日後のこと、衣織お姉さんが再びやってきた。
「あれ、衣織お姉さんってばまた来たの?」
「ああ、今日も渡すものがあってね」
 衣織お姉さんはそう答えると、紙袋をがさがさと取り出してきた。
「えっと、これはもしかして……」
「ああ、瞳が作った、瞬のための服だ。気に入ってくれるかなって、かなり気にしていたみたいだぞ?」
「いや、あれから四日後って……。いくらなんでも早くない?」
「土日が挟まっていたからな。そのおかげで早くできたらしい」
「あ、そっか。土日かぁ……」
 ダンジョン暮らしが長くなってきたせいで、僕の中の曜日感覚が完全に崩れて来ちゃっている。携帯電話もあんまり見ないから、よく忘れちゃうよ。
 僕はため息をつきながらも、衣織お姉さんが渡してきた紙袋の中身を取り出す。
「ぶっ!」
 服を広げた瞬間、僕は思い切り吹き出してしまった。だって、ものすごくフリフリした服なんだもん。なんだろう、腰のあたりがかなり絞られてない?
「これはハイウエストスカートだな。一応こうやって再度にファスナーがあるから、頭からかぶることもできるぞ」
「もう、なんでスカートとシャツを別々にしたんだよ。あれだけ足元から履けないって言ったのに……」
「瞬はワンピースを期待したのか。残念だったな、瞳はどうやら瞬の体のラインの美しさに目がいったようだ」
「なんだろう、嬉しくないなぁ……」
 衣織お姉さんは褒めているつもりなんだろうけど、元々男の子だった僕からしたら嬉しくないんだよなぁ。別に女装の趣味だってあったわけじゃないし。
 とはいえ、せっかく瞳が作ってくれたのだから、着てみることにしよう。
 そこへ、バトラーがやってきた。
「おお、それはケイヴベアーの皮ですな。これまた高級なものを持ちで」
「け、ケイヴベアー?」
 聞き慣れない言葉に、僕はバトラーに確認してしまう。
「はい。ランクは中程度の強力なモンスターして、時速六十キロほどでダンジョンの中を走り回れる大型のクマでございます」
「ろ、六十……?!」
 とんでもない話を聞いた気がする。六十キロといったら、道路を走る自動車みたいなもんだよね?
 モンスターにも色々いるみたいだけど、僕は恐怖で思わず身震いしちゃったよ。
「大丈夫ですよ、プリンセス。手下として召喚すれば、ダンジョンマスターは襲われることはありません。ダンジョン内のモンスターにはそういう制約がつきますからな」
「な、なるほど……。そっか、よかったぁ」
 バトラーの説明のおかげで、僕はほっと胸を撫で下ろしていた。
「まぁ、瞬。早くそいつを着てくれないかな。私がわざわざ素材を提供したんだ。ほらほら早く」
「ちょっと、衣織お姉さん?」
 僕は衣織お姉さんの手によって隠し部屋へと押し込まれてしまう。バトラーには絶対覗かないようにと念押しまでしていた。
 衣織お姉さんがついてきたのは、僕が服の着方が分からないからと思ったかららしい。もうひと月少々女の子やってるんだから、そこまで分からないわけないはずなんだけどなぁ。
 でも、初めて着るタイプの服だったので、結局衣織お姉さんに手伝ってもらってしまった。
「やっぱり、よく似合うな」
「褒められているはずなのに、嬉しくないよう……」
 僕は恥ずかしくて仕方ない。
「ハイウエストで腰回りを絞っているから、瞬の体型でも胸があるように見えるんだよ。まったく、瞳は分かっているなぁ」
「そ、そんなに胸って重要?!」
「人によるかな。少なくとも瞳は胸が小さいことを気にしているよ」
「そ、そうなんだ……」
 一緒に住んでたけど、瞳ってそんなことを気にしてたのか。女の子って分からないなぁ。
 でも、せっかく瞳が作ってくれた服だから、大切にしないとね。
「あっ、そうだ」
「なに、衣織お姉さん」
「写真撮ってきて欲しいって頼まれてたんだ。瞬、撮らせてもらってもいいか?」
「それは構わないよ。瞳が満足するなら、好きなだけ撮っていってよ」
 可愛い妹のためなら、僕は我慢するしかないよね。
 衣織お姉さんはかなり熱心に全方向から僕の写真を撮っていた。ちょっと多い気はしたんだけど、気のせいかな?
「よし、これでいいや。悪かったな、瞬」
「瞳のためなら仕方ないよ」
 服を着ての撮影を終えると、僕たちは隠し部屋から外へと出る。
「おお、プリンセス。これはまた変わった服ですな」
「フリルブラウスにハイウエストスカートだからな。いつもワンピースばかりで見慣れないだろうけど、こういうのもたまにはいいと思うよ」
「確かにそうですな。さすがはプリンセス、何を着てもよく似合いますぞ」
「ははは、ありがと……」
 バトラーにも褒められているんだけど、僕はひたすら苦笑いをするしかなかった。
「プリンセス、これはぜひとも視聴者のみなさまにもお見せするべきですぞ。ささっ、すぐに配信を始めるのです」
「ちょっと、バトラー?!」
 なんだろう。こんなバトラーは初めて見るよ。
 結局、バトラーの圧に負けて、僕は瞳の作ってくれた服を着たまま配信をすることになってしまう。
 流されてしまってはよくないと思いつつも、僕はドローンを取り出して配信を始めることにしたのだった。