第40話 べ、別に結婚なんてしたくないんだからね!
ー/ー パエデロスの昼下がり、冒険者のお供、魔具を売っている優良店たるミモザの店は今日も繁盛していた。
ついぞ先日まで売り上げの落ち具合におたおたしていたミモザも、これにはほくほくニッコリとご満悦だ。
しかし、そんな最中、我は懸案事項をいくつか抱え込んでいた。
それが何であるかは言うまでもない話なのだが、例の王子の訪問によって、謎のご令嬢フィー、つまり我がプロポーズされたという噂が広まってしまったのだ。
あんだけ目立ってりゃあなぁ。
ひっきりなしに来る客、来る客から質問攻めを喰らって正直気疲れしてしまうレベルだ。返事は勿論濁している。
あと、薄々勘づいてはいたのだが、どうやら我が人間ではないことが既に知れ渡っているようだった。それも、大分前からだ。
さすがに、かつて世界を恐怖に陥れた魔王だとまではバレていないようだが、それでも我としてはショックがデカいぞ。
遠方の国の王子ですら知っている情報なのだから、そりゃあ当然パエデロスの現地にいる連中が知らない方がおかしいという話だが、このことがまたややこしいことに発展してきている。
それが異種族婚問題だ。
人間どもの社会においては、人間と、人間以外との婚約を指す。
これもレッドアイズ国のソレノス王子の策略だったと考えると、かなりの切れ者のように思わされるが、多分そこまでは意図していなかったような気はする。
ともあれ、人間ではない我と、軍事国家の王子のプロポーズにより、色んな種族が差別することなく過ごしているパエデロスに、とんでもなく浮ついた話が舞っているというわけだ。
仮に、我が結婚を断ったとしても、プロポーズをしたという事実はもう揺るがないし、国の意向というものが筒抜けになってしまっている。
レッドアイズ国は種族差別をなくそうとしている、と。
いやまあ、中にはいたよ?
まさか令嬢フィーは本気で結婚するのか? 許さねぇ! みたいな奴も。
でもまあ、この店にやってくる常連たちの話を継ぎ合わせてみるに、ぶっちゃけ我が結婚するなどとは真面目に考えている輩はそう多くなかった。
なんというか、あのレッドアイズ国が種族差別やめさせようアピールをしているんだ、ということで広まってしまっている。
それがいいことなのか悪いことなのかはもはや我には分からんが、ポジティブな方向性には動いているということは確かだろう。
パエデロスとしては、喜ばしいことだ。
よく分からん有象無象が集まってくる得体の知れなかった街が、種族差別のない治安の良い国になろうとしているという現状を、嘆くものなどそういない。
そう、パエデロスではな。
別に我は知らんぞ? レッドアイズ国では今頃どうなっているかなんて。
元々、差別意識が強かったのは向こうの国だしな。
パエデロスでこれだけ大いに話題になっているのだから、きっとレッドアイズ国でも伝わっていることだろうな。王子が亜人にプロポーズをした、レッドアイズ国が種族差別のない国作りを支援している、とな。
さぁて、レッドアイズ国はどうなっていることやら。
我に言わせてみれば、結婚するまでもなくその結果が出てきたことを喜ぶべきだろう。
かといって、結婚そのものが破談になったわけでもなければ、実際に結婚することによって期待していたアピール効果がなくなるわけでもないからまだ今後もソレノス王子のプロポーズを回避する策を練る必要はあるだろう。
「フィー様、レッドアイズ国は軍事国家です。差別意識の高い国ですから、結婚はどうか考え直してください」
たまになんかこういう客も出てくる。するとは一言も言ってないんだがな……。
ハッキリとここで結婚しない、と答えてしまうことは簡単だが、それはそれで厄介な話になってしまう。
まだ正式にパエデロスが国になってもいないうちにレッドアイズ国の王子との結婚を断ったという話が広まりでもしたら国交断絶ものだぞ。
というか、これまでロータスが積み上げてきた計画が水の泡になるぞ。
それはさすがに我にとっても不都合なことが多いし、大きい。
妙な噂をこれ以上広めてはいけない。だから答えはそれとなく濁す。
「気が早いぞ。まだ我はそこまで考えておらん。結論はもう少し腰を据えた話をしてからだ」
納得したかどうかは分からないが、客はそれ以上は何も返せず帰っていく。
せめてこれ以上、変な話に発展しないことを祈るばかりだ。
「フィー嬢はエルフだったのですか? 今までずっと身分を偽って……?」
なんかこういう変なのも増えてきたなぁ。前だったらここまで突っ込んだことを聞いてくる客なんていなかったぞ。これも例の噂のせいか。
まったく、あの王子め。
「我はエルフではない。変な詮索はするな。これは3シルバだ。次の客がつっかえてておる。早く退いてくれぬか?」
これでは接客しているんだが、悩み相談させられてるんだか分からんな。
売り上げは悪くないのだが、こうも我の噂話を聞きつけた客の相手ばかりしていたのでは身が持たん。
というか、本当に今さらの話だが、我も有名になってしまったものだな。
単純に有名というだけの話なら、このパエデロスに屋敷を建てたときからそうなのだろうが、今では変な人望とでもいうのだろうか。こうやって、ミモザの店に立って冒険者やら何やらと関わり合う機会も多くなってきたせいもあって、人間どもの社会に忍び込むどころかすっかり紛れ込んでおるな。
「フィーしゃん、先に休んでもいいんれすよ? 朝からずっと質問されてばっかじゃないれふか」
ミモザも心配してくる。そらな。開店からずっとこんな調子ではな。
売り上げには貢献できているし、そろそろ我も切り上げるか。
「すまぬな。なら言葉に甘えて、後は頼んだぞ」
ミモザにも目配せしつつ、我の空いたカウンターにすかさず使用人を入れる。
そして、店の奥へと引っ込んで、我は二階へと上がった。
思いの外、疲弊した身体を引きずりつつも、窓の外をそっと見下ろしてみる。
店の前はやはりざわついていて、喜びの声も悲しみの声も怒りの声も入り交じっている様子だ。
そんなに我の結婚のことが気になるのか。
まあ確かに、ソレノス王子の訪問はそれだけ突然のことだった。
あの森で弟のコリウスを助けなければこんなことにはならなかったのか?
いや、いずれはあの王子もパエデロスには来ていただろう。
ミモザの店の信頼度と、我への好感度がちょっと上昇してしまっただけだ。
「はぁ~……」
憂鬱に空を眺めていたら、日も傾き始めていた。
少しぼんやりしすぎてしまったか。時間が経つのも早いものだ。
ふとベッドに腰掛ける。軽く軋ませつつ、柔らかいベッドの心地よさに身体が沈み込んでいく。疲れと眠気に誘われるかのように、そのまま仰向けに身を委ねた。
別に深く考える話でもあるまい。相手は我にとって敵国。
向こうはソレを知らないだけ。
魔王だと分かっていれば、そんな話を出すわけがない。
大体だな、ほぼ初対面でプロポーズするバカがおるか。
もっとこう、だな。お互い親密になってからでも良かろう。
残念イケメン王子め。
我も、数千年、なんだかんだ生きてきて、プロポーズされたのは初めてだ。
必要のあることではないしな。魔王なんて踏襲制だし。
人間どもの言う生涯の伴侶なんて想像したこともない。
っていうか、相手は人間なんだから向こうが先に死んでしまうではないか。
……いやいや、なんで結婚することを前提に考えておるんだ。
べ、別に結婚なんてしたくないんだからね!
ついぞ先日まで売り上げの落ち具合におたおたしていたミモザも、これにはほくほくニッコリとご満悦だ。
しかし、そんな最中、我は懸案事項をいくつか抱え込んでいた。
それが何であるかは言うまでもない話なのだが、例の王子の訪問によって、謎のご令嬢フィー、つまり我がプロポーズされたという噂が広まってしまったのだ。
あんだけ目立ってりゃあなぁ。
ひっきりなしに来る客、来る客から質問攻めを喰らって正直気疲れしてしまうレベルだ。返事は勿論濁している。
あと、薄々勘づいてはいたのだが、どうやら我が人間ではないことが既に知れ渡っているようだった。それも、大分前からだ。
さすがに、かつて世界を恐怖に陥れた魔王だとまではバレていないようだが、それでも我としてはショックがデカいぞ。
遠方の国の王子ですら知っている情報なのだから、そりゃあ当然パエデロスの現地にいる連中が知らない方がおかしいという話だが、このことがまたややこしいことに発展してきている。
それが異種族婚問題だ。
人間どもの社会においては、人間と、人間以外との婚約を指す。
これもレッドアイズ国のソレノス王子の策略だったと考えると、かなりの切れ者のように思わされるが、多分そこまでは意図していなかったような気はする。
ともあれ、人間ではない我と、軍事国家の王子のプロポーズにより、色んな種族が差別することなく過ごしているパエデロスに、とんでもなく浮ついた話が舞っているというわけだ。
仮に、我が結婚を断ったとしても、プロポーズをしたという事実はもう揺るがないし、国の意向というものが筒抜けになってしまっている。
レッドアイズ国は種族差別をなくそうとしている、と。
いやまあ、中にはいたよ?
まさか令嬢フィーは本気で結婚するのか? 許さねぇ! みたいな奴も。
でもまあ、この店にやってくる常連たちの話を継ぎ合わせてみるに、ぶっちゃけ我が結婚するなどとは真面目に考えている輩はそう多くなかった。
なんというか、あのレッドアイズ国が種族差別やめさせようアピールをしているんだ、ということで広まってしまっている。
それがいいことなのか悪いことなのかはもはや我には分からんが、ポジティブな方向性には動いているということは確かだろう。
パエデロスとしては、喜ばしいことだ。
よく分からん有象無象が集まってくる得体の知れなかった街が、種族差別のない治安の良い国になろうとしているという現状を、嘆くものなどそういない。
そう、パエデロスではな。
別に我は知らんぞ? レッドアイズ国では今頃どうなっているかなんて。
元々、差別意識が強かったのは向こうの国だしな。
パエデロスでこれだけ大いに話題になっているのだから、きっとレッドアイズ国でも伝わっていることだろうな。王子が亜人にプロポーズをした、レッドアイズ国が種族差別のない国作りを支援している、とな。
さぁて、レッドアイズ国はどうなっていることやら。
我に言わせてみれば、結婚するまでもなくその結果が出てきたことを喜ぶべきだろう。
かといって、結婚そのものが破談になったわけでもなければ、実際に結婚することによって期待していたアピール効果がなくなるわけでもないからまだ今後もソレノス王子のプロポーズを回避する策を練る必要はあるだろう。
「フィー様、レッドアイズ国は軍事国家です。差別意識の高い国ですから、結婚はどうか考え直してください」
たまになんかこういう客も出てくる。するとは一言も言ってないんだがな……。
ハッキリとここで結婚しない、と答えてしまうことは簡単だが、それはそれで厄介な話になってしまう。
まだ正式にパエデロスが国になってもいないうちにレッドアイズ国の王子との結婚を断ったという話が広まりでもしたら国交断絶ものだぞ。
というか、これまでロータスが積み上げてきた計画が水の泡になるぞ。
それはさすがに我にとっても不都合なことが多いし、大きい。
妙な噂をこれ以上広めてはいけない。だから答えはそれとなく濁す。
「気が早いぞ。まだ我はそこまで考えておらん。結論はもう少し腰を据えた話をしてからだ」
納得したかどうかは分からないが、客はそれ以上は何も返せず帰っていく。
せめてこれ以上、変な話に発展しないことを祈るばかりだ。
「フィー嬢はエルフだったのですか? 今までずっと身分を偽って……?」
なんかこういう変なのも増えてきたなぁ。前だったらここまで突っ込んだことを聞いてくる客なんていなかったぞ。これも例の噂のせいか。
まったく、あの王子め。
「我はエルフではない。変な詮索はするな。これは3シルバだ。次の客がつっかえてておる。早く退いてくれぬか?」
これでは接客しているんだが、悩み相談させられてるんだか分からんな。
売り上げは悪くないのだが、こうも我の噂話を聞きつけた客の相手ばかりしていたのでは身が持たん。
というか、本当に今さらの話だが、我も有名になってしまったものだな。
単純に有名というだけの話なら、このパエデロスに屋敷を建てたときからそうなのだろうが、今では変な人望とでもいうのだろうか。こうやって、ミモザの店に立って冒険者やら何やらと関わり合う機会も多くなってきたせいもあって、人間どもの社会に忍び込むどころかすっかり紛れ込んでおるな。
「フィーしゃん、先に休んでもいいんれすよ? 朝からずっと質問されてばっかじゃないれふか」
ミモザも心配してくる。そらな。開店からずっとこんな調子ではな。
売り上げには貢献できているし、そろそろ我も切り上げるか。
「すまぬな。なら言葉に甘えて、後は頼んだぞ」
ミモザにも目配せしつつ、我の空いたカウンターにすかさず使用人を入れる。
そして、店の奥へと引っ込んで、我は二階へと上がった。
思いの外、疲弊した身体を引きずりつつも、窓の外をそっと見下ろしてみる。
店の前はやはりざわついていて、喜びの声も悲しみの声も怒りの声も入り交じっている様子だ。
そんなに我の結婚のことが気になるのか。
まあ確かに、ソレノス王子の訪問はそれだけ突然のことだった。
あの森で弟のコリウスを助けなければこんなことにはならなかったのか?
いや、いずれはあの王子もパエデロスには来ていただろう。
ミモザの店の信頼度と、我への好感度がちょっと上昇してしまっただけだ。
「はぁ~……」
憂鬱に空を眺めていたら、日も傾き始めていた。
少しぼんやりしすぎてしまったか。時間が経つのも早いものだ。
ふとベッドに腰掛ける。軽く軋ませつつ、柔らかいベッドの心地よさに身体が沈み込んでいく。疲れと眠気に誘われるかのように、そのまま仰向けに身を委ねた。
別に深く考える話でもあるまい。相手は我にとって敵国。
向こうはソレを知らないだけ。
魔王だと分かっていれば、そんな話を出すわけがない。
大体だな、ほぼ初対面でプロポーズするバカがおるか。
もっとこう、だな。お互い親密になってからでも良かろう。
残念イケメン王子め。
我も、数千年、なんだかんだ生きてきて、プロポーズされたのは初めてだ。
必要のあることではないしな。魔王なんて踏襲制だし。
人間どもの言う生涯の伴侶なんて想像したこともない。
っていうか、相手は人間なんだから向こうが先に死んでしまうではないか。
……いやいや、なんで結婚することを前提に考えておるんだ。
べ、別に結婚なんてしたくないんだからね!
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
パエデロスの昼下がり、冒険者のお供、魔具を売っている優良店たるミモザの店は今日も繁盛していた。
ついぞ先日まで売り上げの落ち具合におたおたしていたミモザも、これにはほくほくニッコリとご満悦だ。
ついぞ先日まで売り上げの落ち具合におたおたしていたミモザも、これにはほくほくニッコリとご満悦だ。
しかし、そんな最中、我は懸案事項をいくつか抱え込んでいた。
それが何であるかは言うまでもない話なのだが、例の王子の訪問によって、謎のご令嬢フィー、つまり我がプロポーズされたという噂が広まってしまったのだ。
あんだけ目立ってりゃあなぁ。
あんだけ目立ってりゃあなぁ。
ひっきりなしに来る客、来る客から質問攻めを喰らって正直気疲れしてしまうレベルだ。返事は勿論濁している。
あと、薄々勘づいてはいたのだが、どうやら我が人間ではないことが既に知れ渡っているようだった。それも、大分前からだ。
さすがに、かつて世界を恐怖に陥れた魔王だとまではバレていないようだが、それでも我としてはショックがデカいぞ。
さすがに、かつて世界を恐怖に陥れた魔王だとまではバレていないようだが、それでも我としてはショックがデカいぞ。
遠方の国の王子ですら知っている情報なのだから、そりゃあ当然パエデロスの現地にいる連中が知らない方がおかしいという話だが、このことがまたややこしいことに発展してきている。
それが異種族婚問題だ。
人間どもの社会においては、人間と、人間以外との婚約を指す。
人間どもの社会においては、人間と、人間以外との婚約を指す。
これもレッドアイズ国のソレノス王子の策略だったと考えると、かなりの切れ者のように思わされるが、多分そこまでは意図していなかったような気はする。
ともあれ、人間ではない我と、軍事国家の王子のプロポーズにより、色んな種族が差別することなく過ごしているパエデロスに、とんでもなく浮ついた話が舞っているというわけだ。
仮に、我が結婚を断ったとしても、プロポーズをしたという事実はもう揺るがないし、国の意向というものが筒抜けになってしまっている。
レッドアイズ国は種族差別をなくそうとしている、と。
レッドアイズ国は種族差別をなくそうとしている、と。
いやまあ、中にはいたよ?
まさか令嬢フィーは本気で結婚するのか? 許さねぇ! みたいな奴も。
でもまあ、この店にやってくる常連たちの話を継ぎ合わせてみるに、ぶっちゃけ我が結婚するなどとは真面目に考えている輩はそう多くなかった。
まさか令嬢フィーは本気で結婚するのか? 許さねぇ! みたいな奴も。
でもまあ、この店にやってくる常連たちの話を継ぎ合わせてみるに、ぶっちゃけ我が結婚するなどとは真面目に考えている輩はそう多くなかった。
なんというか、あのレッドアイズ国が種族差別やめさせようアピールをしているんだ、ということで広まってしまっている。
それがいいことなのか悪いことなのかはもはや我には分からんが、ポジティブな方向性には動いているということは確かだろう。
それがいいことなのか悪いことなのかはもはや我には分からんが、ポジティブな方向性には動いているということは確かだろう。
パエデロスとしては、喜ばしいことだ。
よく分からん有象無象が集まってくる得体の知れなかった街が、種族差別のない治安の良い国になろうとしているという現状を、嘆くものなどそういない。
そう、パエデロスではな。
よく分からん有象無象が集まってくる得体の知れなかった街が、種族差別のない治安の良い国になろうとしているという現状を、嘆くものなどそういない。
そう、パエデロスではな。
別に我は知らんぞ? レッドアイズ国では今頃どうなっているかなんて。
元々、差別意識が強かったのは向こうの国だしな。
元々、差別意識が強かったのは向こうの国だしな。
パエデロスでこれだけ大いに話題になっているのだから、きっとレッドアイズ国でも伝わっていることだろうな。王子が亜人にプロポーズをした、レッドアイズ国が種族差別のない国作りを支援している、とな。
さぁて、レッドアイズ国はどうなっていることやら。
我に言わせてみれば、結婚するまでもなくその結果が出てきたことを喜ぶべきだろう。
かといって、結婚そのものが破談になったわけでもなければ、実際に結婚することによって期待していたアピール効果がなくなるわけでもないからまだ今後もソレノス王子のプロポーズを回避する策を練る必要はあるだろう。
かといって、結婚そのものが破談になったわけでもなければ、実際に結婚することによって期待していたアピール効果がなくなるわけでもないからまだ今後もソレノス王子のプロポーズを回避する策を練る必要はあるだろう。
「フィー様、レッドアイズ国は軍事国家です。差別意識の高い国ですから、結婚はどうか考え直してください」
たまになんかこういう客も出てくる。するとは一言も言ってないんだがな……。
ハッキリとここで結婚しない、と答えてしまうことは簡単だが、それはそれで厄介な話になってしまう。
たまになんかこういう客も出てくる。するとは一言も言ってないんだがな……。
ハッキリとここで結婚しない、と答えてしまうことは簡単だが、それはそれで厄介な話になってしまう。
まだ正式にパエデロスが国になってもいないうちにレッドアイズ国の王子との結婚を断ったという話が広まりでもしたら国交断絶ものだぞ。
というか、これまでロータスが積み上げてきた計画が水の泡になるぞ。
というか、これまでロータスが積み上げてきた計画が水の泡になるぞ。
それはさすがに我にとっても不都合なことが多いし、大きい。
妙な噂をこれ以上広めてはいけない。だから答えはそれとなく濁す。
妙な噂をこれ以上広めてはいけない。だから答えはそれとなく濁す。
「気が早いぞ。まだ我はそこまで考えておらん。結論はもう少し腰を据えた話をしてからだ」
納得したかどうかは分からないが、客はそれ以上は何も返せず帰っていく。
せめてこれ以上、変な話に発展しないことを祈るばかりだ。
納得したかどうかは分からないが、客はそれ以上は何も返せず帰っていく。
せめてこれ以上、変な話に発展しないことを祈るばかりだ。
「フィー嬢はエルフだったのですか? 今までずっと身分を偽って……?」
なんかこういう変なのも増えてきたなぁ。前だったらここまで突っ込んだことを聞いてくる客なんていなかったぞ。これも例の噂のせいか。
まったく、あの王子め。
なんかこういう変なのも増えてきたなぁ。前だったらここまで突っ込んだことを聞いてくる客なんていなかったぞ。これも例の噂のせいか。
まったく、あの王子め。
「我はエルフではない。変な詮索はするな。これは3シルバだ。次の客がつっかえてておる。早く退いてくれぬか?」
これでは接客しているんだが、悩み相談させられてるんだか分からんな。
売り上げは悪くないのだが、こうも我の噂話を聞きつけた客の相手ばかりしていたのでは身が持たん。
これでは接客しているんだが、悩み相談させられてるんだか分からんな。
売り上げは悪くないのだが、こうも我の噂話を聞きつけた客の相手ばかりしていたのでは身が持たん。
というか、本当に今さらの話だが、我も有名になってしまったものだな。
単純に有名というだけの話なら、このパエデロスに屋敷を建てたときからそうなのだろうが、今では変な人望とでもいうのだろうか。こうやって、ミモザの店に立って冒険者やら何やらと関わり合う機会も多くなってきたせいもあって、人間どもの社会に忍び込むどころかすっかり紛れ込んでおるな。
「フィーしゃん、先に休んでもいいんれすよ? 朝からずっと質問されてばっかじゃないれふか」
ミモザも心配してくる。そらな。開店からずっとこんな調子ではな。
売り上げには貢献できているし、そろそろ我も切り上げるか。
ミモザも心配してくる。そらな。開店からずっとこんな調子ではな。
売り上げには貢献できているし、そろそろ我も切り上げるか。
「すまぬな。なら言葉に甘えて、後は頼んだぞ」
ミモザにも目配せしつつ、我の空いたカウンターにすかさず使用人を入れる。
そして、店の奥へと引っ込んで、我は二階へと上がった。
ミモザにも目配せしつつ、我の空いたカウンターにすかさず使用人を入れる。
そして、店の奥へと引っ込んで、我は二階へと上がった。
思いの外、疲弊した身体を引きずりつつも、窓の外をそっと見下ろしてみる。
店の前はやはりざわついていて、喜びの声も悲しみの声も怒りの声も入り交じっている様子だ。
店の前はやはりざわついていて、喜びの声も悲しみの声も怒りの声も入り交じっている様子だ。
そんなに我の結婚のことが気になるのか。
まあ確かに、ソレノス王子の訪問はそれだけ突然のことだった。
あの森で弟のコリウスを助けなければこんなことにはならなかったのか?
まあ確かに、ソレノス王子の訪問はそれだけ突然のことだった。
あの森で弟のコリウスを助けなければこんなことにはならなかったのか?
いや、いずれはあの王子もパエデロスには来ていただろう。
ミモザの店の信頼度と、我への好感度がちょっと上昇してしまっただけだ。
ミモザの店の信頼度と、我への好感度がちょっと上昇してしまっただけだ。
「はぁ~……」
憂鬱に空を眺めていたら、日も傾き始めていた。
少しぼんやりしすぎてしまったか。時間が経つのも早いものだ。
憂鬱に空を眺めていたら、日も傾き始めていた。
少しぼんやりしすぎてしまったか。時間が経つのも早いものだ。
ふとベッドに腰掛ける。軽く軋ませつつ、柔らかいベッドの心地よさに身体が沈み込んでいく。疲れと眠気に誘われるかのように、そのまま仰向けに身を委ねた。
別に深く考える話でもあるまい。相手は我にとって敵国。
向こうはソレを知らないだけ。
魔王だと分かっていれば、そんな話を出すわけがない。
向こうはソレを知らないだけ。
魔王だと分かっていれば、そんな話を出すわけがない。
大体だな、ほぼ初対面でプロポーズするバカがおるか。
もっとこう、だな。お互い親密になってからでも良かろう。
残念イケメン王子め。
もっとこう、だな。お互い親密になってからでも良かろう。
残念イケメン王子め。
我も、数千年、なんだかんだ生きてきて、プロポーズされたのは初めてだ。
必要のあることではないしな。魔王なんて踏襲制だし。
人間どもの言う生涯の伴侶なんて想像したこともない。
必要のあることではないしな。魔王なんて踏襲制だし。
人間どもの言う生涯の伴侶なんて想像したこともない。
っていうか、相手は人間なんだから向こうが先に死んでしまうではないか。
……いやいや、なんで結婚することを前提に考えておるんだ。
……いやいや、なんで結婚することを前提に考えておるんだ。
べ、別に結婚なんてしたくないんだからね!