ここはウエス国の森の中。
リリィとフィーネが睨み合っている。
リリィは両手を下に向け、念を込めた。
左右の手の先に青白い魔法陣が現れる。
フィーネは、ただ立ってリリィを見ている。
リリィが両手を前に出した。左右の手を合わせると、魔法陣が一つになった。
「ライトニング!」
リリィが魔法を唱えると、魔法陣から一筋の光の矢が放たれ、真っ直ぐフィーネに向かって飛んでいく。
フィーネは、目を閉じて集中し呪文を唱える。
「バリア。」
フィーネの周りに防御バリアが張られる。
そのバリアにリリィが放った光の矢が突き刺さった。
バリバリバリッという音を立てて、光の矢は消滅した。
間髪入れずに、リリィが無数の光の矢を放った。上下左右様々な角度からフィーネに襲い掛かる。
しかし、フィーネのバリアが全て防いだ。
フィーネは肩に付いた埃を払う。
リリィは、両手を空に向かって突き上げた。
魔法陣が無数に現れ、それが光の玉になる。
「ライトニングボール。」
無数の光の玉がフィーネに向かって飛んで行く。
しかし、バリアでことごとく弾かれる。
「今のはまあまあね。」
フィーネがつぶやく。
「ライトニングドラゴン!」
リリィが両手を合わせて前に出すと光の竜が現れた。両手を左右に動かすと光の竜も動く。
リリィが両手を上に上げて、勢いよく振り下ろした。
光の竜は上空から真っ直ぐにフィーネの所に落ちていき、そのまま、フィーネを飲み込んだ。
「やったわ!」
リリィが笑顔を見せる。次の瞬間、光の竜が砕け散り、中からフィーネが現れた。
「残念。」
フィーネは、ニッコリ微笑んだ。
リリィはガックリと膝から崩れ落ちる。
パチパチパチパチ
横で見ていたイブが手を叩く。
「リリィ、惜しかったな。でも、かなり上達したじゃないか?」
リリィが地面に大の字になって
「あー!悔しい!フィーネはやっぱり強いよ!」
悔しそうに叫んだ。
「びっくりしたわ。リリィ、いつの間にあんな技覚えたの?」
フィーネがリリィに近づきながら話す。
「ハクに教えてもらったんだ。でも、フィーネには勝てなかった。」
リリィは立ち上がる。
「じゃあ、休憩にしましょう。」
「やっと休憩...疲れたー!」
リリィは、体に宿る女神の魂の力を使いこなせるようになるため、フィーネと特訓をしていた。リリィの力は、魔神との戦いに絶対に必要だからだ。
特訓の甲斐もあって、リリィの魔力は大幅にパワーアップし、技のバリエーションも増えた。
今では、立派な戦力の1人だ。
フィーネは、キッチンで魔法を使って料理をしている。
イブとリリィとハクは、テーブルの椅子に座って待っていた。
ドンキーとモックは庭で水を飲んでいる。
「お待たせ。フィーネ特製フレンチトーストよ!」
フレンチトーストが乗った皿が並び、紅茶がカップに注がれる。シナモンと紅茶のいい香りが漂う。
「フレンチトーストだ!私大好き!」
リリィが頬張る。
「うーん、紅茶との相性もピッタリじゃな。」
イブが、一口紅茶をすする。
「これ、美味いな!フィーネ、おかわり!」
ハクは、あっという間に平らげてしまった。
フィーネが手を挙げると、魔法で追加のフレンチトーストが焼き上がる。
「我ながら良い感じに出来たわね。」
フィーネも椅子に座り、デザートを楽しんだ。
食後は体の疲れを癒すため、露天風呂に入る。
「ふー。生き返るわ。」
「魔力たくさん使ったからヘトヘト。」
「リリィの上達ぶりには感心するな。」
3人ともすっかり寛いでいる。
「今のリリィの実力なら、ライジンやフウジンとも互角に戦えそうね。」
フィーネがいう。
「後は経験を積むだけだな。」
イブが付け加える。
「私、そんなに強くなったのかな?」
リリィは、自信が無さそうだ。
「百戦錬磨のエルフと女神、それに神の竜のお墨付きなんだから、自信を持って良いわよ。」
フィーネが笑って言う。
「スザクとホウオウの情報収集は、上手く行ってるのかしら?」
フィーネが空を見上げながら言った。
そのころ。
スザクとホウオウは、エルドランド城に潜入していた。
「この城の何処かに【深淵の鍵】が保管されてるのね。姉さん。」
「そうよスザク。【深淵の鍵】は、魔神に近づくカギ。絶対に手に入れるわ。」
2人は侍女に変装して、【深淵の鍵】が保管されていると言う部屋の場所を探っている。
「姉さん。あれは、大臣じゃない?」
「そうね。大臣は、必ず一日一回、【深淵の鍵】の確認に行く。その時が狙い目ね。」
ホウオウとスザクはお互いに視線を交わした。
「大臣の行動を監視しましょう。」
2人は行動を開始した。
その夜。
フィーネたちはロッキングチェアに座って寛いでいる。
「ああ。こののんびりしてる時間がずっと続けば良いのに。」
フィーネがつぶやく。
「フィーネ、魔神と戦う運命は変えられないぞ。」
イブが言う。
「私は覚悟出来てる。ただ...」
「リリィが心配か?」
イブの言葉にフィーネがうなづく。
「何れにしても、最後の転生が迫っている。リリィにも話さなくてはな。」
「そうね。」
フィーネとイブは紅茶を飲んだ。
夜空には満天の星空が瞬いている。