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第19話 ウィッチ偵察機

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 朝風は火星に近づきつつあった。会議室で艦隊司令部の作戦会議が開かれた。

「これから数日かけて航空隊の本格的な訓練を行います。天野中佐、計画を説明してください」と瑠璃子。

「わが艦隊には、朝風と夕霧にそれぞれ一個中隊の航空隊があります。これらを一体運用する訓練を行います。各中隊はアルバ戦闘機六機で構成されており……」と瞳。

「艦長、起きてください」とサキ。

「お腹いっぱいで眠くて……」と悠木。

「起きるんだ、悠木艦長!」と桐子。

「ひえ! 桐子姉さん! なんでここにいるんだよ」と悠木。

「会議だからに決まってるだろう。夕霧と合同訓練だ。聞いてなかったのか?」と桐子。

「聞いてたよ。だから実戦は無理だって言ってるんだよ。素人のアルバじゃ」と悠木。

「だからお前が稽古をつけるんだ。やっぱり聞いてない」と桐子。

「稽古をつけるってどういうこと?」と悠木。

「お前も飛ぶんだ」と桐子。

「アルバなんて乗らないよ」と悠木。

「お前にはウィッチ偵察機を用意してある」と桐子。

「へ?」と悠木。「聞いてないよそんなこと。どこにあったの」

「ハンガーだ。嘘だと思うなら見てくるんだ」と桐子。

 飛行甲板の見える航空隊指揮所に悠木たちは移動した。

「ほんとうにウィッチだ。本物なの?」と悠木。

「あたりまえだ」と桐子。

「でもありえないよ。処分されたはずでしょ」と悠木。

「こっそり隠しておいてくれた人がいたんだ。この艦と一緒に」と桐子。

「この艦をぼくのために建造したって言ってたじゃないか」と悠木。

「もちろん、そんなの嘘だよ。二隻とも艤装しなおしただけだ」と桐子。

「甲板に降りて機体を見るよ」と悠木。

「好きにしろ。もともとお前のものだ」と桐子。

 桐子は指揮所から船内通信で瑠璃子につないだ。
「うまく乗ってくれそうです」と言った。

「よかったわ。夕霧の航空隊を出してちょうだい」と瑠璃子。「佐藤中尉、朝風航空隊をウィッチに続いて発艦させて」

 悠木は高気密部の甲板に出た。

「だれだよ、ぼくのウィッチをピンク色に塗ったのは?」と悠木。

「艦長、飛行甲板に出るときは船外用のスーツとヘルメットをつけてください!」と整備兵。

「乗ってしまえば関係ないよ」と悠木。「それより早く梯子をかけてよ!」

「指揮所へ、艦長が航空甲板に出ています、何とかしてください!」と整備兵。

「ウィッチに発艦許可が出ています。すぐに準備をしてあげて」と航空指揮所。

「マジですか?」と整備兵。

「ここに梯子なんてありません」と整備兵。

「乗れないじゃないか!」と悠木。

「本当に乗るんですか?エンジン回ってるとこ見たことありませんよ、この機体」と整備兵。

「思考認証にパスしないと起動しないんだ。早くしてよ」と悠木。

「抱っこしますよ、艦長」と整備兵。

「何するんだ!」と悠木。

「どこから乗るんですか?」と整備兵は悠木を抱えながら言った。

「もっと後ろだよ。非常用のパネルを開けるんだ」と悠木。「今、電源が入ったよ」

「お久しぶりです、ご主人様」とウィッチ搭載の人工知能が反応した。「わたくしは第七号機です」

「よく無事だったね。会えてうれしいよ」と悠木。

「わたくしもうれしゅうございます」とウィッチ。「まさか、ご主人様と再びお会いできるなんて、夢のようです」

「ぼくも現実とは思えないよ。早く中に入れて」と悠木。

「どうぞこちらへ」という声とともにキャノピーが開いた。

 悠木が転がり込むように操縦席に入るを見て、整備兵があんぐり口を開けて立っている。

「すぐに燃料を頼む。それから兵装を適当に見繕ってくれ」と悠木。

「承知しました!」と整備兵。

「飛べるかい?」と悠木。

「数分かかります」とウィッチ。

「そんなに?」と悠木。

「ご主人様の生体チェックにしばらく時間がかかります。思考接続はいかがいたしましょう?」とウィッチ。

「すぐに頼むよ。フルスペックで」と悠木。

「かしこまりました」とウィッチ。

「七番ということは、君はキャシーだね」と悠木。

「はい。覚えていて頂けて光栄です」とウィッチ。

「かわいい娘の名前を忘れるわけがないよ」と悠木。

「相変わらずお上手ですね、ご主人様」とキャシー。「ブリッジから通信が入ってます」

「つないでくれ」と悠木。

「どう、飛べそう?」と瑠璃子。

「ええ、行けます。あと数分ください」と悠木。

「わかったわ。それじゃあ先にアルバを出すわよ」と瑠璃子。

「分かりました」と悠木。



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 朝風は火星に近づきつつあった。会議室で艦隊司令部の作戦会議が開かれた。
「これから数日かけて航空隊の本格的な訓練を行います。天野中佐、計画を説明してください」と瑠璃子。
「わが艦隊には、朝風と夕霧にそれぞれ一個中隊の航空隊があります。これらを一体運用する訓練を行います。各中隊はアルバ戦闘機六機で構成されており……」と瞳。
「艦長、起きてください」とサキ。
「お腹いっぱいで眠くて……」と悠木。
「起きるんだ、悠木艦長!」と桐子。
「ひえ! 桐子姉さん! なんでここにいるんだよ」と悠木。
「会議だからに決まってるだろう。夕霧と合同訓練だ。聞いてなかったのか?」と桐子。
「聞いてたよ。だから実戦は無理だって言ってるんだよ。素人のアルバじゃ」と悠木。
「だからお前が稽古をつけるんだ。やっぱり聞いてない」と桐子。
「稽古をつけるってどういうこと?」と悠木。
「お前も飛ぶんだ」と桐子。
「アルバなんて乗らないよ」と悠木。
「お前にはウィッチ偵察機を用意してある」と桐子。
「へ?」と悠木。「聞いてないよそんなこと。どこにあったの」
「ハンガーだ。嘘だと思うなら見てくるんだ」と桐子。
 飛行甲板の見える航空隊指揮所に悠木たちは移動した。
「ほんとうにウィッチだ。本物なの?」と悠木。
「あたりまえだ」と桐子。
「でもありえないよ。処分されたはずでしょ」と悠木。
「こっそり隠しておいてくれた人がいたんだ。この艦と一緒に」と桐子。
「この艦をぼくのために建造したって言ってたじゃないか」と悠木。
「もちろん、そんなの嘘だよ。二隻とも艤装しなおしただけだ」と桐子。
「甲板に降りて機体を見るよ」と悠木。
「好きにしろ。もともとお前のものだ」と桐子。
 桐子は指揮所から船内通信で瑠璃子につないだ。
「うまく乗ってくれそうです」と言った。
「よかったわ。夕霧の航空隊を出してちょうだい」と瑠璃子。「佐藤中尉、朝風航空隊をウィッチに続いて発艦させて」
 悠木は高気密部の甲板に出た。
「だれだよ、ぼくのウィッチをピンク色に塗ったのは?」と悠木。
「艦長、飛行甲板に出るときは船外用のスーツとヘルメットをつけてください!」と整備兵。
「乗ってしまえば関係ないよ」と悠木。「それより早く梯子をかけてよ!」
「指揮所へ、艦長が航空甲板に出ています、何とかしてください!」と整備兵。
「ウィッチに発艦許可が出ています。すぐに準備をしてあげて」と航空指揮所。
「マジですか?」と整備兵。
「ここに梯子なんてありません」と整備兵。
「乗れないじゃないか!」と悠木。
「本当に乗るんですか?エンジン回ってるとこ見たことありませんよ、この機体」と整備兵。
「思考認証にパスしないと起動しないんだ。早くしてよ」と悠木。
「抱っこしますよ、艦長」と整備兵。
「何するんだ!」と悠木。
「どこから乗るんですか?」と整備兵は悠木を抱えながら言った。
「もっと後ろだよ。非常用のパネルを開けるんだ」と悠木。「今、電源が入ったよ」
「お久しぶりです、ご主人様」とウィッチ搭載の人工知能が反応した。「わたくしは第七号機です」
「よく無事だったね。会えてうれしいよ」と悠木。
「わたくしもうれしゅうございます」とウィッチ。「まさか、ご主人様と再びお会いできるなんて、夢のようです」
「ぼくも現実とは思えないよ。早く中に入れて」と悠木。
「どうぞこちらへ」という声とともにキャノピーが開いた。
 悠木が転がり込むように操縦席に入るを見て、整備兵があんぐり口を開けて立っている。
「すぐに燃料を頼む。それから兵装を適当に見繕ってくれ」と悠木。
「承知しました!」と整備兵。
「飛べるかい?」と悠木。
「数分かかります」とウィッチ。
「そんなに?」と悠木。
「ご主人様の生体チェックにしばらく時間がかかります。思考接続はいかがいたしましょう?」とウィッチ。
「すぐに頼むよ。フルスペックで」と悠木。
「かしこまりました」とウィッチ。
「七番ということは、君はキャシーだね」と悠木。
「はい。覚えていて頂けて光栄です」とウィッチ。
「かわいい娘の名前を忘れるわけがないよ」と悠木。
「相変わらずお上手ですね、ご主人様」とキャシー。「ブリッジから通信が入ってます」
「つないでくれ」と悠木。
「どう、飛べそう?」と瑠璃子。
「ええ、行けます。あと数分ください」と悠木。
「わかったわ。それじゃあ先にアルバを出すわよ」と瑠璃子。
「分かりました」と悠木。