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SCENE048 面白いもの、つまらないもの

ー/ー



 おーっほっほっほっほっ!

 ああ、高笑いが止まりませんわね。
 どうもみなさま、横浜ダンジョンのダンジョンマスターのセイレーンですわよ。
 すごいですわね、配信というものは。
 あたしの姿を見た探索者どもが、こぞってダンジョンに潜りに来るようになりましたわ。
 甘いですわね。あたしがそう簡単に出会えるようにすると思いまして?
 さあ、つられてやって来た探索者どもよ。おとなしくあたしのダンジョンポイントの糧となりなさい。

「セイレーンさん、とてもご機嫌ですね」

「それはそうでしょう。ダンジョンを豊かにするダンジョンポイントが大量に入ってきておるのですからな」

「そうなんですね」

 シードラゴンと下僕が何か話をしておりますわね。
 まあ、多少の雑音は許して差し上げますわ。なにせ、今日もたくさんポイントが稼げておりますもの。

「ダンジョンポイントって、一体何に使うんですか?」

「ダンジョンの設備を整えるために使いますな。あとは我々の食事でございます」

「食事……」

「あら、当然ですわよ。あたしたちモンスターだって、きちんと何かでエネルギーを補給しませんと動けなくなりますのよ。何か勘違いしておりません?」

 下僕の失礼な反応に、あたしはびしっと注意をして差し上げます。

「ご、ごめんなさい。モンスターっていうだけあって、俺たち人間とは大きな違いがあるのかと思ってしまって……」

 下僕は下を向いて小さくなっていますわね。
 まったく、謝るくらいなら最初からそのような態度は取りませんことよ。まったく、礼儀がなっていませんわね。

「シードラゴン、探索者の様子はどうかしら」

「はい。一番侵入しているものが六階層ですね。ですが、この六階層は今までの最高記録と変わりありませんし、あそこは資源が豊富ですから、これ以上の侵攻はないかと思われます」

「ふむ、そうですのね」

 このダンジョンは五階層から下は、岩肌の多い一般的なダンジョンの様相を呈しますわ。
 五階層と六階層は、希少な金属などを仕掛けてありますので、それにつられて探索者どもは罠にかかるのですわ。
 たとえ罠にかかって死んだとしても、物を手に入れてから死ぬわけですし、死ねばダンジョン入口に戻ります。高価なものですから、探索者どもはそれで満足して帰っていきます。なので、六階層よりも下にやって来たのは、目の前にいる下僕以外は誰もいませんのよ。

「結構ダンジョンの構造を考えてらっしゃるんですね」

「当たり前ですわよ。あたしの持ちうる財産をかなり投入して構築しておりますもの。その分、しっかりと回収させていただきませんとね。あたしが頑張れば、我が家の名声は上がり、さらに潤沢な資金が流れ込みますの。まあ、ダンジョンマスターとなってしまったあたしには関係はありませんが、家と家族に貢献できるのでしたら、それはそれで名誉なことですわ」

「すごいですね。そこまで考えられるって」

 なんですのよ。下僕ってば変な反応を示してくれますわね。
 あたしが下僕のことを変な目で見た瞬間でしたわ。シードラゴンが妙な声を出し始めましたわ。

「むむむっ……」

「どうしましたの、シードラゴン」

 あたしは顔色の変わったシードラゴンに声をかけましたわ。

「七階層に初めて侵入しましたな」

「あら、あれを突破してきましたの?」

 なんてことですの。多くの探索者を葬り去ってきた六階層を突破してきた探索者が出たようですわ。
 ですが、まだあたしのところまでは四階層ありますのよ。さあ、頑張っていらして下さいな。

「あっ、七階層で死にましたな」

「あら、あっけないですわね」

 まったく、歓迎くらいしてあげようと思いましたのに、一瞬でお帰りになられましたわね。拍子抜けもいいところですわ。

「俺、そんな危険地帯を抜けてこれたんだ……」

 あたしたちのやり取りを見ていた下僕が震えていますわね。
 まったく情けないですわね。下僕はあまたの探索者たちを葬ってきた罠を潜り抜けてあたしのところに到達した唯一の探索者なのですわ。もっと誇ればいいと思いますのにね。

「下僕」

「あっ、はい」

「配信を行いますわよ、準備なさい」

「はい、喜んで!」

 落ち込んでいたと思いましたら、あたしが呼び掛けた瞬間、ぱあっと表情を明るくしましたわね。
 あたしに仕えられることを喜ぶのはいいですけれど、それでしたら普段からもうちょっとしっかりして頂きたいものですわね。
 あたしがそんなことを言っている間も、下僕は配信のための準備を進めておりますわね。そんなに手間取ることでしたっけ?

「すみません。ドローンを探してしまって。移動している間に荷物の下に紛れてしまっていたようです」

「はあ、そんなことでは先が思いやられますわ。それ、あたしのところに置いていきなさい。あたしが管理して差し上げますわ」

「ええ、そんな! セイレーンさんの手を煩わせるなんて、おそれ多いことはできませんよ」

「でしたら、取り出すのに時間をかけるのではありませんわよ。管理できないのであれば、あたしの方で管理をするしかありませんでしょうに」

 あたしは当然の話をしてあげますわ。ですが、どうしてそんなしょぼくれた顔をするのですか。まったく、情けないったらありゃしませんわね。

「やはり、そのどろーんとやらは、あたしが管理しますわ。配信が終わった後は置いていきなさい」

「……はい。分かりました」

 下僕は申し訳なさそうに下を向きながら返事をしていましたわね。
 あたしは下僕の態度にイラつきながらも、落ち着いて配信を始めることにしましたわ。


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 おーっほっほっほっほっ!
 ああ、高笑いが止まりませんわね。
 どうもみなさま、横浜ダンジョンのダンジョンマスターのセイレーンですわよ。
 すごいですわね、配信というものは。
 あたしの姿を見た探索者どもが、こぞってダンジョンに潜りに来るようになりましたわ。
 甘いですわね。あたしがそう簡単に出会えるようにすると思いまして?
 さあ、つられてやって来た探索者どもよ。おとなしくあたしのダンジョンポイントの糧となりなさい。
「セイレーンさん、とてもご機嫌ですね」
「それはそうでしょう。ダンジョンを豊かにするダンジョンポイントが大量に入ってきておるのですからな」
「そうなんですね」
 シードラゴンと下僕が何か話をしておりますわね。
 まあ、多少の雑音は許して差し上げますわ。なにせ、今日もたくさんポイントが稼げておりますもの。
「ダンジョンポイントって、一体何に使うんですか?」
「ダンジョンの設備を整えるために使いますな。あとは我々の食事でございます」
「食事……」
「あら、当然ですわよ。あたしたちモンスターだって、きちんと何かでエネルギーを補給しませんと動けなくなりますのよ。何か勘違いしておりません?」
 下僕の失礼な反応に、あたしはびしっと注意をして差し上げます。
「ご、ごめんなさい。モンスターっていうだけあって、俺たち人間とは大きな違いがあるのかと思ってしまって……」
 下僕は下を向いて小さくなっていますわね。
 まったく、謝るくらいなら最初からそのような態度は取りませんことよ。まったく、礼儀がなっていませんわね。
「シードラゴン、探索者の様子はどうかしら」
「はい。一番侵入しているものが六階層ですね。ですが、この六階層は今までの最高記録と変わりありませんし、あそこは資源が豊富ですから、これ以上の侵攻はないかと思われます」
「ふむ、そうですのね」
 このダンジョンは五階層から下は、岩肌の多い一般的なダンジョンの様相を呈しますわ。
 五階層と六階層は、希少な金属などを仕掛けてありますので、それにつられて探索者どもは罠にかかるのですわ。
 たとえ罠にかかって死んだとしても、物を手に入れてから死ぬわけですし、死ねばダンジョン入口に戻ります。高価なものですから、探索者どもはそれで満足して帰っていきます。なので、六階層よりも下にやって来たのは、目の前にいる下僕以外は誰もいませんのよ。
「結構ダンジョンの構造を考えてらっしゃるんですね」
「当たり前ですわよ。あたしの持ちうる財産をかなり投入して構築しておりますもの。その分、しっかりと回収させていただきませんとね。あたしが頑張れば、我が家の名声は上がり、さらに潤沢な資金が流れ込みますの。まあ、ダンジョンマスターとなってしまったあたしには関係はありませんが、家と家族に貢献できるのでしたら、それはそれで名誉なことですわ」
「すごいですね。そこまで考えられるって」
 なんですのよ。下僕ってば変な反応を示してくれますわね。
 あたしが下僕のことを変な目で見た瞬間でしたわ。シードラゴンが妙な声を出し始めましたわ。
「むむむっ……」
「どうしましたの、シードラゴン」
 あたしは顔色の変わったシードラゴンに声をかけましたわ。
「七階層に初めて侵入しましたな」
「あら、あれを突破してきましたの?」
 なんてことですの。多くの探索者を葬り去ってきた六階層を突破してきた探索者が出たようですわ。
 ですが、まだあたしのところまでは四階層ありますのよ。さあ、頑張っていらして下さいな。
「あっ、七階層で死にましたな」
「あら、あっけないですわね」
 まったく、歓迎くらいしてあげようと思いましたのに、一瞬でお帰りになられましたわね。拍子抜けもいいところですわ。
「俺、そんな危険地帯を抜けてこれたんだ……」
 あたしたちのやり取りを見ていた下僕が震えていますわね。
 まったく情けないですわね。下僕はあまたの探索者たちを葬ってきた罠を潜り抜けてあたしのところに到達した唯一の探索者なのですわ。もっと誇ればいいと思いますのにね。
「下僕」
「あっ、はい」
「配信を行いますわよ、準備なさい」
「はい、喜んで!」
 落ち込んでいたと思いましたら、あたしが呼び掛けた瞬間、ぱあっと表情を明るくしましたわね。
 あたしに仕えられることを喜ぶのはいいですけれど、それでしたら普段からもうちょっとしっかりして頂きたいものですわね。
 あたしがそんなことを言っている間も、下僕は配信のための準備を進めておりますわね。そんなに手間取ることでしたっけ?
「すみません。ドローンを探してしまって。移動している間に荷物の下に紛れてしまっていたようです」
「はあ、そんなことでは先が思いやられますわ。それ、あたしのところに置いていきなさい。あたしが管理して差し上げますわ」
「ええ、そんな! セイレーンさんの手を煩わせるなんて、おそれ多いことはできませんよ」
「でしたら、取り出すのに時間をかけるのではありませんわよ。管理できないのであれば、あたしの方で管理をするしかありませんでしょうに」
 あたしは当然の話をしてあげますわ。ですが、どうしてそんなしょぼくれた顔をするのですか。まったく、情けないったらありゃしませんわね。
「やはり、そのどろーんとやらは、あたしが管理しますわ。配信が終わった後は置いていきなさい」
「……はい。分かりました」
 下僕は申し訳なさそうに下を向きながら返事をしていましたわね。
 あたしは下僕の態度にイラつきながらも、落ち着いて配信を始めることにしましたわ。