第36話 兄と侍女の戦い
ー/ー
ブラナをシュヴァルツの戦いは続いている。
アサシンスパイダーすらも斬り裂いてきたシュヴァルツの剣も、さすがに元暗殺者であるブラナには通じていない。その上、アサシンスパイダーの力を得たブラナは、以前よりも不思議な動きをできるようになっていた。
「はあっ!」
「この程度の糸などで、俺の動きを止められると思うな。バーニングファイア!」
クロナがクモの体から糸を吐き出すも、シュヴァルツの魔法によって焼き払われてしまう。
「ちっ、なりたての体では、思うように力が使えませんね。それにさすが坊ちゃま、力の使い方がうまい」
「ふん。俺を誰だと思っているんだ。お前すら敵わなかった子爵の息子だぞ?」
着地を決めるブラナに対し、シュヴァルツは挑発するかのように吐き捨てる。どうやら、シュヴァルツもブラナの過去を知っているようである。
しかし、そんなことを言われても、今のブラナには焦りはない。むしろ、冷静になれていた。
「旦那様は旦那様、坊ちゃまは坊ちゃまです。そして、坊ちゃまはまだ未熟です」
「何がいいたい」
ブラナの言葉に、シュヴァルツは眉をひそめる。どうやらカチンと来たようだ。
「まだ十三歳の坊ちゃまは、私の敵ではないと言っているのです」
「ほざけっ!」
シュヴァルツが襲い掛かってくる。クロナは思わず顔を手で覆ってしまうが、ブラナは余裕でシュヴァルツの攻撃を避けていた。
「心臓を一突きするつもりだったようですね。動きも普通の方よりも速い。ですが、坊ちゃまの癖を把握していれば、この程度の攻撃、たやすく避けられます」
「くそっ! たまたま運がよかっただけだろうが!」
ブラナに冷静に分析されている状況に、シュヴァルツの顔が段々と怒りに満ちていく。
その顔を見ながら、ブラナは実に憐れみを含んだ表情を向けている。
「なんだ、その顔は……」
ブラナの表情に、シュヴァルツがますます怒りを募らせていく。
ところが、そんな状況にもブラナは冷静だった。
「やれやれ。怒りに支配されるというのが幼いと言っているんですよ。まったく、旦那様の跡取りがこれでは、コークロッチヌス子爵家の未来はお暗いですね」
「何を言いやがる! 守護者たるコークロッチヌス子爵家に対してその言い分。お前はここで殺してやる」
「やれるものなら、やってみればいいのですよ。ええ、やれるものならね」
シュヴァルツが激昂して言い放つと、ブラナも負けじと挑発を返す。売り言葉に買い言葉とは、まさにこういうことだろう。
シュヴァルツは怒りをにじませながらブラナを睨み、ブラナの方は楽しそうに笑みを浮かべながらシュヴァルツを見ている。
口ではシュヴァルツを挑発しながらも、ブラナはとても楽しんでいるようである。
しかし、後ろでは自分たちを心配そうに見つめているクロナがいる。それゆえに、戦うことは楽しいものの、シュヴァルツをどうするかということでブラナは悩んでいる。
シュヴァルツを殺すようなことになると、世話になっているコークロッチヌス子爵家に仇を返すことになるし、なによりクロナが大きなショックを受けてしまう。そればかりは避けたいとブラナは考えている。
ならば、どうにかしてシュヴァルツの戦意だけを削げないか。真剣に考えるブラナである。
「ぼーっとしているなら、こちらから行くぞ!」
ブラナ目がけてシュヴァルツが攻撃を仕掛けてくる。
「マジックアロー!」
挨拶といわんばかりに魔法を飛ばしてくる。だが、これの意図をブラナはすぐに見破っていた。
「カウンターシールド!」
「なにっ!?」
ブラナも魔法を展開する。盾のようなものが現れたかと思えば、シュヴァルツの放った魔法が盾で跳ね返されていた。
「くそっ!」
驚いたシュヴァルツだったが、魔法を剣で斬り裂いて無効化していた。
「俺の魔法を反射してくるとはな。さすが暗殺者は汚いな!」
「なんとでも言いなさい。任務遂行が第一なのですから、方法などどうでもいいのですよ。私の今の任務はお嬢様を守ること。そのためなら、坊ちゃま相手でも手加減はなしです!」
「魔性に堕ちたくせに偉そうな! 俺の剣の錆にしてくれる!」
「やれるものならどうぞ」
剣を両手で握って、シュヴァルツはブラナへと突撃していく。
シュヴァルツが繰り出す剣による攻撃を、ブラナは冷静に捌いていく。しかも、受け止めるのではなく受け流すようにして攻撃を躱しているのだ。
「くそっ、なんで当たらないんだ」
「坊ちゃまとは場数が違いますからね。これが経験の差というものです、よく覚えておいて下さい」
「魔族のくせに、くそがっ!」
シュヴァルツは思い切り振りかぶって、全力でブラナへと剣を振り下ろす。
あまりにも冷静さを欠いた大きな一撃に、ブラナは呆れてものも言えなかった。
ガキーン!
大きな金属音が響き渡り、剣が宙を舞っている。
ザクッとシュヴァルツの後方の地面へと突き刺さり、シュヴァルツののど元にはブラナの短剣が突きつけられていた。
「さあ、終わりですよ、坊ちゃま。このまま死ぬか、おとなしく引き揚げるか、好きな方を選ばせてあげましょう」
「くっ……」
冷たく鋭い目を向けられ、シュヴァルツの頬を冷たい汗が伝うのだった。
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アサシンスパイダーすらも斬り裂いてきたシュヴァルツの剣も、さすがに元暗殺者であるブラナには通じていない。その上、アサシンスパイダーの力を得たブラナは、以前よりも不思議な動きをできるようになっていた。
「はあっ!」
「この程度の糸などで、俺の動きを止められると思うな。バーニングファイア!」
クロナがクモの体から糸を吐き出すも、シュヴァルツの魔法によって焼き払われてしまう。
「ちっ、なりたての体では、思うように力が使えませんね。それにさすが坊ちゃま、力の使い方がうまい」
「ふん。俺を誰だと思っているんだ。お前すら敵わなかった子爵の息子だぞ?」
着地を決めるブラナに対し、シュヴァルツは挑発するかのように吐き捨てる。どうやら、シュヴァルツもブラナの過去を知っているようである。
しかし、そんなことを言われても、今のブラナには焦りはない。むしろ、冷静になれていた。
「旦那様は旦那様、坊ちゃまは坊ちゃまです。そして、坊ちゃまはまだ未熟です」
「何がいいたい」
ブラナの言葉に、シュヴァルツは眉をひそめる。どうやらカチンと来たようだ。
「まだ十三歳の坊ちゃまは、私の敵ではないと言っているのです」
「ほざけっ!」
シュヴァルツが襲い掛かってくる。クロナは思わず顔を手で覆ってしまうが、ブラナは余裕でシュヴァルツの攻撃を避けていた。
「心臓を一突きするつもりだったようですね。動きも普通の方よりも速い。ですが、坊ちゃまの癖を把握していれば、この程度の攻撃、たやすく避けられます」
「くそっ! たまたま運がよかっただけだろうが!」
ブラナに冷静に分析されている状況に、シュヴァルツの顔が段々と怒りに満ちていく。
その顔を見ながら、ブラナは実に憐れみを含んだ表情を向けている。
「なんだ、その顔は……」
ブラナの表情に、シュヴァルツがますます怒りを募らせていく。
ところが、そんな状況にもブラナは冷静だった。
「やれやれ。怒りに支配されるというのが幼いと言っているんですよ。まったく、旦那様の跡取りがこれでは、コークロッチヌス子爵家の未来はお暗いですね」
「何を言いやがる! 守護者たるコークロッチヌス子爵家に対してその言い分。お前はここで殺してやる」
「やれるものなら、やってみればいいのですよ。ええ、やれるものならね」
シュヴァルツが激昂して言い放つと、ブラナも負けじと挑発を返す。売り言葉に買い言葉とは、まさにこういうことだろう。
シュヴァルツは怒りをにじませながらブラナを睨み、ブラナの方は楽しそうに笑みを浮かべながらシュヴァルツを見ている。
口ではシュヴァルツを挑発しながらも、ブラナはとても楽しんでいるようである。
しかし、後ろでは自分たちを心配そうに見つめているクロナがいる。それゆえに、戦うことは楽しいものの、シュヴァルツをどうするかということでブラナは悩んでいる。
シュヴァルツを殺すようなことになると、世話になっているコークロッチヌス子爵家に仇を返すことになるし、なによりクロナが大きなショックを受けてしまう。そればかりは避けたいとブラナは考えている。
ならば、どうにかしてシュヴァルツの戦意だけを削げないか。真剣に考えるブラナである。
「ぼーっとしているなら、こちらから行くぞ!」
ブラナ目がけてシュヴァルツが攻撃を仕掛けてくる。
「マジックアロー!」
挨拶といわんばかりに魔法を飛ばしてくる。だが、これの意図をブラナはすぐに見破っていた。
「カウンターシールド!」
「なにっ!?」
ブラナも魔法を展開する。盾のようなものが現れたかと思えば、シュヴァルツの放った魔法が盾で跳ね返されていた。
「くそっ!」
驚いたシュヴァルツだったが、魔法を剣で斬り裂いて無効化していた。
「俺の魔法を反射してくるとはな。さすが暗殺者は汚いな!」
「なんとでも言いなさい。任務遂行が第一なのですから、方法などどうでもいいのですよ。私の今の任務はお嬢様を守ること。そのためなら、坊ちゃま相手でも手加減はなしです!」
「魔性に堕ちたくせに偉そうな! 俺の剣の錆にしてくれる!」
「やれるものならどうぞ」
剣を両手で握って、シュヴァルツはブラナへと突撃していく。
シュヴァルツが繰り出す剣による攻撃を、ブラナは冷静に捌いていく。しかも、受け止めるのではなく受け流すようにして攻撃を躱しているのだ。
「くそっ、なんで当たらないんだ」
「坊ちゃまとは場数が違いますからね。これが経験の差というものです、よく覚えておいて下さい」
「魔族のくせに、くそがっ!」
シュヴァルツは思い切り振りかぶって、全力でブラナへと剣を振り下ろす。
あまりにも冷静さを欠いた大きな一撃に、ブラナは呆れてものも言えなかった。
ガキーン!
大きな金属音が響き渡り、剣が宙を舞っている。
ザクッとシュヴァルツの後方の地面へと突き刺さり、シュヴァルツののど元にはブラナの短剣が突きつけられていた。
「さあ、終わりですよ、坊ちゃま。このまま死ぬか、おとなしく引き揚げるか、好きな方を選ばせてあげましょう」
「くっ……」
冷たく鋭い目を向けられ、シュヴァルツの頬を冷たい汗が伝うのだった。