第38話:ユウキの特別な日

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 その日は、森野悠希の誕生日だった。

 朝、ユウキが目を覚ますと、ベッドサイドには、可愛らしい小ぶりの花束が置かれていた。

 花束には、手書きのメッセージカードが添えられている。

「誕生日おめでとう。君に、最高の誕生日をプレゼントするよ」

 ユウキは、そのメッセージを何度も読み返し、思わず頬を緩めた。昨夜の出来事以来、アキの不器用ながらも真剣な想いが、ユウキの心を温かく満たしていた。



 出勤の時間になっても、アキは、いつもよりソワソワしている。

 ユウキが身支度を整えている間も、何度もスマホを確認したり、時計を気にしたりしている。ユウキは、そんなアキの姿を微笑ましく見つめていた。

「アキくん、大丈夫だよ。まだ時間あるよ」

 ユウキがそう言うと、アキは、少しだけ照れたように笑った。

「…いや、その、今日は…、ユウキの誕生日だから、早めに会社に行こうと思って…」

 アキの言葉に、ユウキは、思わず声を上げて笑った。

「ふふ、アキくん、ソワソワしすぎだよ!でも、ありがとう。すごく嬉しい」

 二人は、いつものように電車に乗り、駅に着くと、改札を抜け、それぞれの職場へと向かおうとした。しかし、アキは、ユウキの手を握ったまま、立ち止まった。

「…ユウキ、今日は、エレベーターで行こう」

 アキは、そう言って、ユウキを軌道エレベーターの地上駅へと促した。ユウキは、アキの言葉に、少しだけ驚いた表情を浮かべる。地上駅は、普段、観光客でごった返している。地元住民である二人が、わざわざここを通ることはなかった。

 ユウキは、アキの意図を測りかねながらも、彼の隣を歩く。

 エレベーターの入り口で、ユウキは、慣れた手つきで従業員用カードをスキャンしようとした。その瞬間、ルナが慌ててユウキの隣に駆け寄ってきた。

「あら、ユウキさん、おはようございます!なんだか、お顔が赤いです…熱っぽいですよ」

 ルナは、そう言って、ユウキの額に手を当てた。

「え?うそ…別に、そんなことないよ…」

 ユウキは、慌ててルナの腕を掴んだ。その隙に、アキはユウキのカードをそっとポケットにしまう。ルナは、ユウキににっこりと微笑む。

「ユウキさん、今日はゆっくり休んでください!サトウさんにも、私が伝えておきましたから!」

「え…?そうなの?」

 ユウキは、目を丸くした。ルナの言葉に、アキは、深く頷いた。

「ああ、ユウキの仕事は、ルナが代わってくれることになった。だから、心配しなくていい」

 アキの言葉に、ユウキはまだ状況を把握しきれていなかった。そんなユウキの隣に、ベテランコンシェルジュのサトウさんが、いつもの笑顔でやってきた。

「森野さん、今日はいいお天気ですから、ゆっくりお過ごしください。体調が優れないときは、無理をしないのが一番ですからね」

 サトウさんは、そう言って、二人に深々と頭を下げた。

 アキは、サトウさんの優しい気遣いに、深く頭を下げた。

 その時、サトウさんは、アキに向かって、こっそりと親指を立て、小さく「頑張って」と唇を動かした。アキは、そのエールに、心の中で強く頷いた。

 二人は、一般客とは別の、特別なエレベーターへと案内された。エレベーターの中は、静かで、二人だけの空間だった。

「…アキくん、どこに行くの?」

 ユウキがそう尋ねると、アキは、何も言わずに、ただユウキの手を強く握りしめた。ユウキは、アキの手に込められた強い想いに、胸がドキドキと高鳴るのを感じた。

 エレベーターは、地上を離れ、ぐんぐんと上昇していく。

 窓の外には、高層ビル群が、まるでジオラマのように小さくなっていく。ユウキは、この光景に、何度見ても感動してしまう。

 やがて、エレベーターは、最上階の展望台へと到着した。展望台のドアが開くと、そこには、満天の星空が広がっていた。



 展望台のドアが開くと、そこには、満天の星空が広がっていた。

 だがしかし、それは、窓の外に広がる本物の星空ではなかった。

 展望台の窓ガラス全体が、まるで巨大なスクリーンのように輝き、そこに映し出されていたのは、アキが密かに開発していた、プラネタリウムのプログラムだった。

「アキくん…これ…」

 ユウキは、信じられないといった顔で、アキの顔を見つめた。アキは、そんなユウキの隣で、少しだけ照れくさそうに笑った。

「…リズに、協力してもらったんだ」

 アキは、そう言って、ユウキの手を強く握りしめた。

 ユウキは、窓に映し出された星空を、じっと見つめた。そこには、地球からは見えないはずの、南十字星や、天の川が、まるで本物のように輝いている。

 それは、ユウキが幼い頃、火星のコロニーで見た、故郷の星空を完璧に再現したプログラムだったのだ。

 ユウキは、静かに涙を流した。
 その涙は、美しさに感動する涙でもあり、アキの深い愛情に触れた涙でもあった。

「…綺麗だね…アキくん」

「…ああ。ユウキ、ごめん。俺…言葉が下手だから、うまく言えなくて」

 アキは、そう言って、ユウキの涙を、そっと指で拭った。

「初めてお前に会った高校の時、俺は自分の名前が嫌いだった。父親と同じ名前で、ずっとコンプレックスだった。でも、お前が俺の名前を見て、『陽』の字を見て、『秋みたいだね』って笑ってくれた時、俺は初めて、自分の名前を好きになれたんだ」

 アキは、窓に映し出された星空を見上げながら、ゆっくりと語り始めた。

「大学の図書館で、一緒に就職活動をしていた時、俺は運行管理者の志望動機がうまく書けなくて、悩んでた。でも、お前が『アキくんが頑張った分だけ、たくさんの人の夢が宇宙に届くんだよ!』って、俺の夢を自分の夢みたいに語ってくれた。あの言葉が、今でも、俺の仕事の原動力になってる」

 ユウキは、アキの言葉に、胸が熱くなるのを感じた。

「…そして、お前は、エレベーターを、ただの大きな建物じゃなくて、たくさんの人の夢を乗せた『船』だって教えてくれた。俺は、その『船』を守る仕事に、誇りを持てるようになったんだ」

 アキは、そこで一度言葉を切り、ユウキの瞳を真っ直ぐに見つめた。

「ユウキ、お前は、俺にたくさんのことを教えてくれた。俺の人生を、光で満たしてくれた。俺は、お前が宇宙に行けなくても、お前を連れていく。俺が、お前の宇宙になる」

 アキは、ポケットから、小さな箱を取り出した。箱の中には、軌道エレベーターの素材で作られた、光り輝く指輪が入っていた。





「…俺と、結婚してくれないか」





 アキの言葉に、ユウキは、もう声も出せないほど号泣していた。

 アキの不器用で、真剣な想いが、ユウキの心を揺さぶっていた。

「…はい…!アキくん…!喜んで…!」

 ユウキは、そう言って、アキに抱きついた。
 アキは、ユウキを優しく抱きしめ、二人は、宇宙の絶景に包まれながら、温かいキスを交わした。





 その夜、ユウキとアキは、エレベーターに乗って、二人で宇宙へ旅立つことを決意した。

 ユウキは、アキの存在が、自分にとっての宇宙なのだと実感した。アキは、ユウキの瞳に映る星空を見て、彼女のトラウマが完全に消えたことを確信した。




 二人の愛は、この瞬間、永遠を誓ったのだった。





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 その日は、森野悠希の誕生日だった。
 朝、ユウキが目を覚ますと、ベッドサイドには、可愛らしい小ぶりの花束が置かれていた。
 花束には、手書きのメッセージカードが添えられている。
「誕生日おめでとう。君に、最高の誕生日をプレゼントするよ」
 ユウキは、そのメッセージを何度も読み返し、思わず頬を緩めた。昨夜の出来事以来、アキの不器用ながらも真剣な想いが、ユウキの心を温かく満たしていた。
 出勤の時間になっても、アキは、いつもよりソワソワしている。
 ユウキが身支度を整えている間も、何度もスマホを確認したり、時計を気にしたりしている。ユウキは、そんなアキの姿を微笑ましく見つめていた。
「アキくん、大丈夫だよ。まだ時間あるよ」
 ユウキがそう言うと、アキは、少しだけ照れたように笑った。
「…いや、その、今日は…、ユウキの誕生日だから、早めに会社に行こうと思って…」
 アキの言葉に、ユウキは、思わず声を上げて笑った。
「ふふ、アキくん、ソワソワしすぎだよ!でも、ありがとう。すごく嬉しい」
 二人は、いつものように電車に乗り、駅に着くと、改札を抜け、それぞれの職場へと向かおうとした。しかし、アキは、ユウキの手を握ったまま、立ち止まった。
「…ユウキ、今日は、エレベーターで行こう」
 アキは、そう言って、ユウキを軌道エレベーターの地上駅へと促した。ユウキは、アキの言葉に、少しだけ驚いた表情を浮かべる。地上駅は、普段、観光客でごった返している。地元住民である二人が、わざわざここを通ることはなかった。
 ユウキは、アキの意図を測りかねながらも、彼の隣を歩く。
 エレベーターの入り口で、ユウキは、慣れた手つきで従業員用カードをスキャンしようとした。その瞬間、ルナが慌ててユウキの隣に駆け寄ってきた。
「あら、ユウキさん、おはようございます!なんだか、お顔が赤いです…熱っぽいですよ」
 ルナは、そう言って、ユウキの額に手を当てた。
「え?うそ…別に、そんなことないよ…」
 ユウキは、慌ててルナの腕を掴んだ。その隙に、アキはユウキのカードをそっとポケットにしまう。ルナは、ユウキににっこりと微笑む。
「ユウキさん、今日はゆっくり休んでください!サトウさんにも、私が伝えておきましたから!」
「え…?そうなの?」
 ユウキは、目を丸くした。ルナの言葉に、アキは、深く頷いた。
「ああ、ユウキの仕事は、ルナが代わってくれることになった。だから、心配しなくていい」
 アキの言葉に、ユウキはまだ状況を把握しきれていなかった。そんなユウキの隣に、ベテランコンシェルジュのサトウさんが、いつもの笑顔でやってきた。
「森野さん、今日はいいお天気ですから、ゆっくりお過ごしください。体調が優れないときは、無理をしないのが一番ですからね」
 サトウさんは、そう言って、二人に深々と頭を下げた。
 アキは、サトウさんの優しい気遣いに、深く頭を下げた。
 その時、サトウさんは、アキに向かって、こっそりと親指を立て、小さく「頑張って」と唇を動かした。アキは、そのエールに、心の中で強く頷いた。
 二人は、一般客とは別の、特別なエレベーターへと案内された。エレベーターの中は、静かで、二人だけの空間だった。
「…アキくん、どこに行くの?」
 ユウキがそう尋ねると、アキは、何も言わずに、ただユウキの手を強く握りしめた。ユウキは、アキの手に込められた強い想いに、胸がドキドキと高鳴るのを感じた。
 エレベーターは、地上を離れ、ぐんぐんと上昇していく。
 窓の外には、高層ビル群が、まるでジオラマのように小さくなっていく。ユウキは、この光景に、何度見ても感動してしまう。
 やがて、エレベーターは、最上階の展望台へと到着した。展望台のドアが開くと、そこには、満天の星空が広がっていた。
 展望台のドアが開くと、そこには、満天の星空が広がっていた。
 だがしかし、それは、窓の外に広がる本物の星空ではなかった。
 展望台の窓ガラス全体が、まるで巨大なスクリーンのように輝き、そこに映し出されていたのは、アキが密かに開発していた、プラネタリウムのプログラムだった。
「アキくん…これ…」
 ユウキは、信じられないといった顔で、アキの顔を見つめた。アキは、そんなユウキの隣で、少しだけ照れくさそうに笑った。
「…リズに、協力してもらったんだ」
 アキは、そう言って、ユウキの手を強く握りしめた。
 ユウキは、窓に映し出された星空を、じっと見つめた。そこには、地球からは見えないはずの、南十字星や、天の川が、まるで本物のように輝いている。
 それは、ユウキが幼い頃、火星のコロニーで見た、故郷の星空を完璧に再現したプログラムだったのだ。
 ユウキは、静かに涙を流した。
 その涙は、美しさに感動する涙でもあり、アキの深い愛情に触れた涙でもあった。
「…綺麗だね…アキくん」
「…ああ。ユウキ、ごめん。俺…言葉が下手だから、うまく言えなくて」
 アキは、そう言って、ユウキの涙を、そっと指で拭った。
「初めてお前に会った高校の時、俺は自分の名前が嫌いだった。父親と同じ名前で、ずっとコンプレックスだった。でも、お前が俺の名前を見て、『陽』の字を見て、『秋みたいだね』って笑ってくれた時、俺は初めて、自分の名前を好きになれたんだ」
 アキは、窓に映し出された星空を見上げながら、ゆっくりと語り始めた。
「大学の図書館で、一緒に就職活動をしていた時、俺は運行管理者の志望動機がうまく書けなくて、悩んでた。でも、お前が『アキくんが頑張った分だけ、たくさんの人の夢が宇宙に届くんだよ!』って、俺の夢を自分の夢みたいに語ってくれた。あの言葉が、今でも、俺の仕事の原動力になってる」
 ユウキは、アキの言葉に、胸が熱くなるのを感じた。
「…そして、お前は、エレベーターを、ただの大きな建物じゃなくて、たくさんの人の夢を乗せた『船』だって教えてくれた。俺は、その『船』を守る仕事に、誇りを持てるようになったんだ」
 アキは、そこで一度言葉を切り、ユウキの瞳を真っ直ぐに見つめた。
「ユウキ、お前は、俺にたくさんのことを教えてくれた。俺の人生を、光で満たしてくれた。俺は、お前が宇宙に行けなくても、お前を連れていく。俺が、お前の宇宙になる」
 アキは、ポケットから、小さな箱を取り出した。箱の中には、軌道エレベーターの素材で作られた、光り輝く指輪が入っていた。
「…俺と、結婚してくれないか」
 アキの言葉に、ユウキは、もう声も出せないほど号泣していた。
 アキの不器用で、真剣な想いが、ユウキの心を揺さぶっていた。
「…はい…!アキくん…!喜んで…!」
 ユウキは、そう言って、アキに抱きついた。
 アキは、ユウキを優しく抱きしめ、二人は、宇宙の絶景に包まれながら、温かいキスを交わした。
 その夜、ユウキとアキは、エレベーターに乗って、二人で宇宙へ旅立つことを決意した。
 ユウキは、アキの存在が、自分にとっての宇宙なのだと実感した。アキは、ユウキの瞳に映る星空を見て、彼女のトラウマが完全に消えたことを確信した。
 二人の愛は、この瞬間、永遠を誓ったのだった。