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第19話:ユウキの秘密とアキの想い(前編)

ー/ー



 それは、二人が軌道エレベーター運営会社に入社して、初めての週末だった。

 二人は、会社の近くにある展望台付きのカフェで、遅めの朝食をとっていた。

 窓の外には、都会の景色が広がり、その遥か向こうには、夜明けの空を貫くように、軌道エレベーターが静かに佇んでいるのが見えた。

「アキくん、見て見て!このカフェ、先輩から教えてもらった、すごく眺めのいいカフェなんだよ!」

 ユウキは、楽しそうにアキに話しかけた。

「へえ、すごいな。…どうりで、いつもよりエレベーターが大きく見えるわけだ」

 アキは、そう言って、窓の外の軌道エレベーターをじっと見つめた。

「でしょ?このカフェ、先輩もオススメしてくれててね。ここのパンケーキが、絶品なんだって!」

 ユウキは、そう言って、アキにメニューを差し出した。アキは、パンケーキという言葉に、少しだけ戸惑ったような表情を浮かべた。

「…パンケーキ…か。俺は、コーヒーだけでいいや」

 アキは、そう言って、パンケーキを食べるのを躊躇した。
 アキは、甘いものが苦手なわけではないが、パンケーキを食べるという行為が、少しだけ気恥ずかしかったのだ。

「えー!ダメだよ!せっかく来たんだから、一緒に食べようよ!」

 ユウキは、アキの言葉に、少しだけ頬を膨らませた。

「ねぇ、アキくん。私、昨日、初めてコンシェルジュの制服を着て、研修に行ったんだ。鏡の前で、何度もポーズとっちゃった」

 ユウキは、そう言って、スマートフォンを取り出し、アキに何枚かの写真を見せた。制服を着て、満面の笑みを浮かべるユウキの姿。敬礼をしたり、ピースをしたり、少し照れたように微笑んでいたり。

「ね、どう?似合ってる?」

 ユウキがそう尋ねると、アキは、ほんの少しだけ照れたように、視線を逸らし、小さく呟いた。

「…とても、似合ってた」

 アキのその言葉に、ユウキは満面の笑みを浮かべた。

 二人は、それぞれの研修について、楽しそうに話し始めた。

 ユウキは、接客マナーやエレベーターの基本知識を学んだことを語り、アキは、運行管理室でのシミュレーション演習(えんしゅう)について、熱心に語った。

「ユウキは、色々な人と話せて楽しそうだな」

「うん!みんな、宇宙に夢を持っていて、話してるだけで、こっちまでワクワクしてくるんだ」

 ユウキは、そう言って、キラキラと瞳を輝かせた。しかし、その輝きは、一瞬だけ、陰りを見せた。ユウキは、窓の外の軌道エレベーターに、じっと視線を向けた。

「そういえば、アキくんは、どんな研修をしてるの?」

 ユウキが尋ねると、アキは、少しだけ顔を輝かせた。自分の専門分野の話ができることが、嬉しかったのだ。

「ああ。今は、エレベーターの制御(せいぎょ)システムについて、シミュレーション演習(えんしゅう)をしている。天候(てんこう)宇宙(うちゅう)のデブリ《ごみ》に対応(たいおう)するための、プログラミング《ぷろぐらみんぐ》とか…」

 アキは、そう言って、運行管理室の専門用語を交えながら、研修内容を説明し始めた。

 ユウキは、最初こそ真剣にアキの話を聞いていたが、だんだんと、その顔が曇っていった。

「うーん…デブリ…?プログラミング…?なんか、頭から(けむり)が出そうだ…」

 ユウキは、そう言って、両手で頭を(かか)えた。アキは、ユウキのコミカルな反応に、思わずクスリと笑った。

「…まぁ、ユウキの仕事とは、全然違うからな」

「そうだよね。私には、宇宙に夢を持つ人と話す方が、ずっと楽しいや」

 ユウキは、そう言って、窓の外の軌道エレベーターに、じっと視線を向けた。

「でも…私、アキくんみたいに、宇宙に行けないから…」

 ユウキがそう呟くと、アキは、ユウキの言葉に、ハッとした表情を浮かべた。

 アキは、ユウキが幼い頃、宇宙飛行士を夢見ていたが、ある理由からその道を諦めたことを知っていた。しかし、その詳しい事情は、聞いたことがなかった。

「…ユウキ」

 アキが、心配そうにユウキの名を呼ぶ。ユウキは、アキに顔を向けず、静かに、そして、少しだけ震える声で語り始めた。

「アキくん…私ね…小さい頃、事故に遭ったの。宇宙船の事故に…」

 ユウキの言葉に、アキは何も言えなかった。
 ユウキの瞳には、あの日の悲しい記憶が、蘇っているようだった。






みんなのリアクション

 それは、二人が軌道エレベーター運営会社に入社して、初めての週末だった。
 二人は、会社の近くにある展望台付きのカフェで、遅めの朝食をとっていた。
 窓の外には、都会の景色が広がり、その遥か向こうには、夜明けの空を貫くように、軌道エレベーターが静かに佇んでいるのが見えた。
「アキくん、見て見て!このカフェ、先輩から教えてもらった、すごく眺めのいいカフェなんだよ!」
 ユウキは、楽しそうにアキに話しかけた。
「へえ、すごいな。…どうりで、いつもよりエレベーターが大きく見えるわけだ」
 アキは、そう言って、窓の外の軌道エレベーターをじっと見つめた。
「でしょ?このカフェ、先輩もオススメしてくれててね。ここのパンケーキが、絶品なんだって!」
 ユウキは、そう言って、アキにメニューを差し出した。アキは、パンケーキという言葉に、少しだけ戸惑ったような表情を浮かべた。
「…パンケーキ…か。俺は、コーヒーだけでいいや」
 アキは、そう言って、パンケーキを食べるのを躊躇した。
 アキは、甘いものが苦手なわけではないが、パンケーキを食べるという行為が、少しだけ気恥ずかしかったのだ。
「えー!ダメだよ!せっかく来たんだから、一緒に食べようよ!」
 ユウキは、アキの言葉に、少しだけ頬を膨らませた。
「ねぇ、アキくん。私、昨日、初めてコンシェルジュの制服を着て、研修に行ったんだ。鏡の前で、何度もポーズとっちゃった」
 ユウキは、そう言って、スマートフォンを取り出し、アキに何枚かの写真を見せた。制服を着て、満面の笑みを浮かべるユウキの姿。敬礼をしたり、ピースをしたり、少し照れたように微笑んでいたり。
「ね、どう?似合ってる?」
 ユウキがそう尋ねると、アキは、ほんの少しだけ照れたように、視線を逸らし、小さく呟いた。
「…とても、似合ってた」
 アキのその言葉に、ユウキは満面の笑みを浮かべた。
 二人は、それぞれの研修について、楽しそうに話し始めた。
 ユウキは、接客マナーやエレベーターの基本知識を学んだことを語り、アキは、運行管理室でのシミュレーション演習《えんしゅう》について、熱心に語った。
「ユウキは、色々な人と話せて楽しそうだな」
「うん!みんな、宇宙に夢を持っていて、話してるだけで、こっちまでワクワクしてくるんだ」
 ユウキは、そう言って、キラキラと瞳を輝かせた。しかし、その輝きは、一瞬だけ、陰りを見せた。ユウキは、窓の外の軌道エレベーターに、じっと視線を向けた。
「そういえば、アキくんは、どんな研修をしてるの?」
 ユウキが尋ねると、アキは、少しだけ顔を輝かせた。自分の専門分野の話ができることが、嬉しかったのだ。
「ああ。今は、エレベーターの制御《せいぎょ》システムについて、シミュレーション演習《えんしゅう》をしている。天候《てんこう》や宇宙《うちゅう》のデブリ《ごみ》に対応《たいおう》するための、プログラミング《ぷろぐらみんぐ》とか…」
 アキは、そう言って、運行管理室の専門用語を交えながら、研修内容を説明し始めた。
 ユウキは、最初こそ真剣にアキの話を聞いていたが、だんだんと、その顔が曇っていった。
「うーん…デブリ…?プログラミング…?なんか、頭から煙《けむり》が出そうだ…」
 ユウキは、そう言って、両手で頭を抱《かか》えた。アキは、ユウキのコミカルな反応に、思わずクスリと笑った。
「…まぁ、ユウキの仕事とは、全然違うからな」
「そうだよね。私には、宇宙に夢を持つ人と話す方が、ずっと楽しいや」
 ユウキは、そう言って、窓の外の軌道エレベーターに、じっと視線を向けた。
「でも…私、アキくんみたいに、宇宙に行けないから…」
 ユウキがそう呟くと、アキは、ユウキの言葉に、ハッとした表情を浮かべた。
 アキは、ユウキが幼い頃、宇宙飛行士を夢見ていたが、ある理由からその道を諦めたことを知っていた。しかし、その詳しい事情は、聞いたことがなかった。
「…ユウキ」
 アキが、心配そうにユウキの名を呼ぶ。ユウキは、アキに顔を向けず、静かに、そして、少しだけ震える声で語り始めた。
「アキくん…私ね…小さい頃、事故に遭ったの。宇宙船の事故に…」
 ユウキの言葉に、アキは何も言えなかった。
 ユウキの瞳には、あの日の悲しい記憶が、蘇っているようだった。