第11話:コロニー出身の同僚と地上グルメ(前編)
ー/ー その日の業務が終わり、森野悠希は、同僚のルナ=ヴァレンタインと、軌道エレベーターの地上駅を出た。
ルナは、月のコロニー「ルナステーション」出身で、地球の重力に慣れていないため、一歩一歩が、まるで鉛の塊を運ぶかのように、重く、不安定だった。
「ルナ、大丈夫?無理しないでね」
ユウキは、ルナの手を引いて、心配そうに声をかけた。
「はい、ユウキさん!でも、体がなんだか、ズーンと重くて…これが、地球の…重力…!」
ルナは、そう言って、まるで新しい挑戦を見つけたかのように、嬉しそうに笑った。その無邪気な笑顔に、ユウキの心は和んだ。
「ルナ、今日は、とっておきの場所に案内してあげる」
ユウキは、ルナを、地上駅から少し離れた、昔ながらの商店街へと連れて行った。路地裏から漂ってくる香ばしい匂い。賑やかな人々の声。
それらは、ルナの故郷である月のコロニーにはない、地球ならではの光景だった。
「すごい…これが、地球の商店街…!」
ルナは、まるで探検家のように、キョロキョロと周りを見渡した。
「ここに来たら、これを食べないと、始まらないよ!」
ユウキは、ルナの手を引いて、一軒のたこ焼き屋の前に立ち止まった。鉄板の上で、丸い生地が、クルクルと回っている。
「これが…タコヤキ…ですか?」
ルナは、不思議そうな顔で、たこ焼きを見つめた。
彼女の故郷では、食料はすべて、栄養バランスの取れた宇宙食として、チューブや固形ブロックで供給されていた。たこ焼きのような、熱くて丸い食べ物は、彼女にとって、未知との遭遇だった。
「そうだよ!とっても美味しいんだから!」
ユウキは、焼きたてのたこ焼きを、ルナに差し出した。ルナは、たこ焼きを箸で持ち上げようとするが、地球の重力に慣れていないためか、上手くつかめない。たこ焼きは、不自然に跳ね、ルナの手から滑り落ちそうになる。
「あっ…!」
ルナは、慌てて、たこ焼きを追いかける。しかし、その時、背後から、冷やりとした声が響いた。
「おい、相変わらず不器用だな、ルナ」
そこに立っていたのは、アキの同僚である、運行管理者のカイ=カーターだった。火星出身で、口は悪いが、根は仲間思いの青年だ。
「カイ!」
ルナは、カイの姿に気づき、嬉しそうに声を上げた。
「なんだ、お前も来てたのか」
カイは、ルナの失敗を面白そうに眺めながら、不機嫌そうな顔で言った。二人は、会社の食堂などで顔を合わせることが多く、いつも軽口を叩き合う仲だった。
「地球の食べ物なんて、栄養も偏ってるし、不衛生だろ。コロニーのほうがおいしいに決まってる」
カイは、そう言いながら、たこ焼きを落としそうになっているルナの様子をちらりと見た。口とは裏腹に、カイは、ルナのことを気にしているようだった。
「ひどいですよ、カイ!このたこ焼き、ちゃんと美味しいんですから!…ああ、でも、やっぱり上手く持てません…!」
ルナは、たこ焼きと格闘しながら、不満げにカイに訴えかける。カイは、そんなルナの様子を、フッと鼻で笑った。
カイは、そう言って、ルナの手にあったたこ焼きを、素早く箸で掴むと、ひょい、と自分の口に運んだ。ルナは、あっけにとられて、カイの顔をじっと見つめる。
「ほら、やっぱり美味しくないだろ?」
カイは、そう言って、たこ焼きをユウキに返した。しかし、その口元は、ほんの少しだけ緩んでいた。ルナは、カイの行動の裏にある優しさに気づき、嬉しそうに微笑んだ。
「カイさん、ありがとうございます!」
「な、なんだよ…別に、お前のためにやったわけじゃ…」
カイは、顔を赤らめながら、そっぽを向いた。ルナは、カイの不器用な優しさに、くすりと笑った。
「ユウキさん!カイさんって、本当に優しいんですね!」
ルナは、ユウキにそう言って、カイをからかった。カイは、さらに顔を真っ赤にして、ルナに「うるせぇ!」と怒鳴りつけた。
ユウキは、そんな二人のやり取りを微笑ましく見守っていた。
カイは、口は悪いが、根は仲間思いだということが、ルナの純粋な眼差しを通して、ユウキにも伝わってきた。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
その日の業務が終わり、森野悠希は、同僚のルナ=ヴァレンタインと、軌道エレベーターの地上駅を出た。
ルナは、月のコロニー「ルナステーション」出身で、地球の重力に慣れていないため、一歩一歩が、まるで鉛の塊を運ぶかのように、重く、不安定だった。
「ルナ、大丈夫?無理しないでね」
ユウキは、ルナの手を引いて、心配そうに声をかけた。
「はい、ユウキさん!でも、体がなんだか、ズーンと重くて…これが、地球の…重力…!」
ルナは、そう言って、まるで新しい挑戦を見つけたかのように、嬉しそうに笑った。その無邪気な笑顔に、ユウキの心は和んだ。
「ルナ、今日は、とっておきの場所に案内してあげる」
ユウキは、ルナを、地上駅から少し離れた、昔ながらの商店街へと連れて行った。路地裏から漂ってくる香ばしい匂い。賑やかな人々の声。
それらは、ルナの故郷である月のコロニーにはない、地球ならではの光景だった。
「すごい…これが、地球の商店街…!」
ルナは、まるで探検家のように、キョロキョロと周りを見渡した。
「ここに来たら、これを食べないと、始まらないよ!」
ユウキは、ルナの手を引いて、一軒のたこ焼き屋の前に立ち止まった。鉄板の上で、丸い生地が、クルクルと回っている。
「これが…タコヤキ…ですか?」
ルナは、不思議そうな顔で、たこ焼きを見つめた。
彼女の故郷では、食料はすべて、栄養バランスの取れた宇宙食として、チューブや固形ブロックで供給されていた。たこ焼きのような、熱くて丸い食べ物は、彼女にとって、未知との遭遇だった。
「そうだよ!とっても美味しいんだから!」
ユウキは、焼きたてのたこ焼きを、ルナに差し出した。ルナは、たこ焼きを箸で持ち上げようとするが、地球の重力に慣れていないためか、上手くつかめない。たこ焼きは、不自然に跳ね、ルナの手から滑り落ちそうになる。
「あっ…!」
ルナは、慌てて、たこ焼きを追いかける。しかし、その時、背後から、冷やりとした声が響いた。
「おい、相変わらず不器用だな、ルナ」
そこに立っていたのは、アキの同僚である、運行管理者のカイ=カーターだった。火星出身で、口は悪いが、根は仲間思いの青年だ。
「カイ!」
ルナは、カイの姿に気づき、嬉しそうに声を上げた。
「なんだ、お前も来てたのか」
カイは、ルナの失敗を面白そうに眺めながら、不機嫌そうな顔で言った。二人は、会社の食堂などで顔を合わせることが多く、いつも軽口を叩き合う仲だった。
「地球の食べ物なんて、栄養も偏ってるし、不衛生だろ。コロニーのほうがおいしいに決まってる」
カイは、そう言いながら、たこ焼きを落としそうになっているルナの様子をちらりと見た。口とは裏腹に、カイは、ルナのことを気にしているようだった。
「ひどいですよ、カイ!このたこ焼き、ちゃんと美味しいんですから!…ああ、でも、やっぱり上手く持てません…!」
ルナは、たこ焼きと格闘しながら、不満げにカイに訴えかける。カイは、そんなルナの様子を、フッと鼻で笑った。
カイは、そう言って、ルナの手にあったたこ焼きを、素早く箸で掴むと、ひょい、と自分の口に運んだ。ルナは、あっけにとられて、カイの顔をじっと見つめる。
「ほら、やっぱり美味しくないだろ?」
カイは、そう言って、たこ焼きをユウキに返した。しかし、その口元は、ほんの少しだけ緩んでいた。ルナは、カイの行動の裏にある優しさに気づき、嬉しそうに微笑んだ。
「カイさん、ありがとうございます!」
「な、なんだよ…別に、お前のためにやったわけじゃ…」
カイは、顔を赤らめながら、そっぽを向いた。ルナは、カイの不器用な優しさに、くすりと笑った。
「ユウキさん!カイさんって、本当に優しいんですね!」
ルナは、ユウキにそう言って、カイをからかった。カイは、さらに顔を真っ赤にして、ルナに「うるせぇ!」と怒鳴りつけた。
ユウキは、そんな二人のやり取りを微笑ましく見守っていた。
カイは、口は悪いが、根は仲間思いだということが、ルナの純粋な眼差しを通して、ユウキにも伝わってきた。