「ところで……」
恭吾が振り返る。
「聞きたいことが二つある」
松岡を見る恭吾の目には敵意はない。松岡は怒られた飼い犬のようにシュンとしたまま黙っている。恭吾は構わず続ける。
「1月15日火曜日と2月1日金曜日の放課後、生徒会室を覗いていたのは君かい?」
答える気がないのか、思い出しているのか松岡は暫く黙っていた。
「1月は知らない」
「……分かった」
噓を言っているようには感じられない。質問を変える。
「二つ目……松岡……お前どうして恋実を狙ったんだ? あの感じだと『優香ちゃん』絡みじゃない、よな?」
もはや狂気は消えている。遊びに行こうとしたところへ、農作業の手伝いを言いつけられた時と同じように、おとなしくなっている。
「……ゆうか、ってどっちの?」
恐る恐る口を開く。
「可愛い方に決まってるだろ!」
「俺、華咲さんしか興味ないし……」
そこの返しは紫電一閃。松岡の譲れないところなのであろう。
「ご、ごめんなさい……普通のお友達……同級生、でお願いします」
女性の『ごめんなさい』とは意外とオールマイティだと気付かされる。返事に戸惑う恋実の気持ちを柔らかく、きっぱりと意志を示す。
「三つ目に……恋実のサドルに結んであった紐だか……」
恭吾が話し出した時、誰もが思った……。自分で『三つ目』って言ってるじゃないか、と。
何事も無かったように話を続ける恭吾。
「どうやってラケットのガットを手に入れた?」
「ガット?」
「そうだ。貴様、時巻に罪を着せようと企んだはずだ!」
「あれは普通の農作業用の誘引紐だけど?!」
松岡の言葉に嘘はない。雰囲気で分かる。
「オーマイガット!!」
誰もが言葉を失った……。