ep33 エールハウス
ー/ー
「あっ! あの……!」
不意に片方の女性が俺の顔を見て何かを思い出したような挙動を見せた。
「クローさん、ですよね?」
「そうだけど……君は?」
「わ、わたし、ナオミに連れられてクローさんの屋敷のパーティーに一度だけ参加したことがあって」
「そうなの? 俺はその、君のこと…」
「いいんです! それより大変なんです!」
「ああ。街がヤツらに襲われて…」
「ナオミが!」
「えっ?」
「クローさんはナオミとは仲良いんですよね!? ナオミがヤツらに攫われてしまったんです!」
「!」
「早く助けないと、きっとヒドイ目にあわされる!」
「そいつらはどこに?」
「たぶん……」
彼女の話を聞き終えたと同時に、俺は飛び出した。
風を切って、前へ前へと走る。途中、仮面のヤツらに複数遭遇する。が、俺には関係ない。
「ぎゃあっ!」
すべて一閃のもと斬り伏せていった。俺の快足は止まらない。
「ぜんぜんイケる…….!」
今の俺には〔特別な力〕がある。くわえて街のこの付近は俺にとって馴染み深いもの。したがって敵の位置も捕捉しやすい。
「これなら、すぐに着けるぞ!」
走行はぐんぐん加速していった。
ほどなくして、目指していた場所へ到着する。そこは街一番の酒場〔エールハウス〕。
「まさか、またここに来るなんてな……」
周辺を見まわした。辺り一帯は、ヤツらが暴れたせいで荒れ散らかっている。
「ひどいな……」
生きている間にはもうこの場所まで来ることはないと思っていた。特に思い入れもなかった。だが、理不尽に蹂躙された形跡を目の当たりにして、きわめて不快な気分に襲われた。
「ヤツら……」
許せない。
これは今はじめて感じたわけじゃない。荒らされた街の姿を目にした時、倒れている街の人達を見た時、女の子達が襲われそうになっていた時、すでに感じていたんだ。
正義感? 俺なんかにそんなものが? わからない。ただ……戦う力を得た俺は、剣を強く握りしめる。
『この力を、使わなければならない……』
入口のドアを開ける。
バカ正直に正面から酒場へと足を踏み入れる。特別な力を得たといっても、俺は百戦錬磨の戦士じゃない。変な小細工をせず、この力を信じて、真正面からいった方がいい気がした。
「ん?」
「なんだおまえ?」
「街の人間か?」
「剣? 剣士?」
店内には、仮面のヤツらがうようよしていた。ヤツらは警戒するというより、しれっと入店してきた俺を、奇妙な目でジロジロと見てきた。
店内を見渡す。床には倒れた男達が何人も転がっていて、その間を縫うように器物の破片がバラバラと散らばっている。壁には衝突や殴打の痕が散見され、バーカウンターの奥の酒は、ヤツらにボトルごと取り放題取られ閑散としている。
さらに、不快感をいっそう増幅させる光景が俺を待ち受けていた。
「おいおい。もっと飲めよ。酒好きなんだろ?」
「い、いや…」
仮面のヤツらは、酒をかっ喰らいながら、怯える街の女を無理矢理かわいがっている。
ここ半年間、俺は女のコたちと散々アソんできた。毎日のようにパーティーを開いては飲んで抱いての甚だ愚かな日々だったと思う。だけど今、目の前で行われているものは、それとはまったく異質のものだ。著しく醜悪なものだ。
俺はギリギリと剣を握りしめて、理性を保とうと努める。
『ヘタに暴れると、女の子たちが危険だ…….』
そんな中、店の奥の方から知っている声が俺の耳へ届いた。
「やだ! はなして!」
「チッ。可愛いツラして生意気なオンナだなオイ」
予想はしていた。それでも思わず俺は声を上げる。
「ナオミ!?」
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不意に片方の女性が俺の顔を見て何かを思い出したような挙動を見せた。
「クローさん、ですよね?」
「そうだけど……君は?」
「わ、わたし、ナオミに連れられてクローさんの屋敷のパーティーに一度だけ参加したことがあって」
「そうなの? 俺はその、君のこと…」
「いいんです! それより大変なんです!」
「ああ。街がヤツらに襲われて…」
「ナオミが!」
「えっ?」
「クローさんはナオミとは仲良いんですよね!? ナオミがヤツらに攫われてしまったんです!」
「!」
「早く助けないと、きっとヒドイ目にあわされる!」
「そいつらはどこに?」
「たぶん……」
彼女の話を聞き終えたと同時に、俺は飛び出した。
風を切って、前へ前へと走る。途中、仮面のヤツらに複数遭遇する。が、俺には関係ない。
「ぎゃあっ!」
すべて一閃のもと斬り伏せていった。俺の快足は止まらない。
「ぜんぜんイケる…….!」
今の俺には〔特別な力〕がある。くわえて街のこの付近は俺にとって馴染み深いもの。したがって敵の位置も捕捉しやすい。
「これなら、すぐに着けるぞ!」
走行はぐんぐん加速していった。
ほどなくして、目指していた場所へ到着する。そこは街一番の酒場〔エールハウス〕。
「まさか、またここに来るなんてな……」
周辺を見まわした。辺り一帯は、ヤツらが暴れたせいで荒れ散らかっている。
「ひどいな……」
生きている間にはもうこの場所まで来ることはないと思っていた。特に思い入れもなかった。だが、理不尽に蹂躙された形跡を目の当たりにして、きわめて不快な気分に襲われた。
「ヤツら……」
許せない。
これは今はじめて感じたわけじゃない。荒らされた街の姿を目にした時、倒れている街の人達を見た時、女の子達が襲われそうになっていた時、すでに感じていたんだ。
正義感? 俺なんかにそんなものが? わからない。ただ……戦う力を得た俺は、剣を強く握りしめる。
『この力を、使わなければならない……』
入口のドアを開ける。
バカ正直に正面から酒場へと足を踏み入れる。特別な力を得たといっても、俺は百戦錬磨の戦士じゃない。変な小細工をせず、この力を信じて、真正面からいった方がいい気がした。
「ん?」
「なんだおまえ?」
「街の人間か?」
「剣? 剣士?」
店内には、仮面のヤツらがうようよしていた。ヤツらは警戒するというより、しれっと入店してきた俺を、奇妙な目でジロジロと見てきた。
店内を見渡す。床には倒れた男達が何人も転がっていて、その間を縫うように器物の破片がバラバラと散らばっている。壁には衝突や殴打の痕が散見され、バーカウンターの奥の酒は、ヤツらにボトルごと取り放題取られ閑散としている。
さらに、不快感をいっそう増幅させる光景が俺を待ち受けていた。
「おいおい。もっと飲めよ。酒好きなんだろ?」
「い、いや…」
仮面のヤツらは、酒をかっ喰らいながら、怯える街の女を無理矢理かわいがっている。
ここ半年間、俺は女のコたちと散々アソんできた。毎日のようにパーティーを開いては飲んで抱いての甚だ愚かな日々だったと思う。だけど今、目の前で行われているものは、それとはまったく異質のものだ。著しく醜悪なものだ。
俺はギリギリと剣を握りしめて、理性を保とうと努める。
『ヘタに暴れると、女の子たちが危険だ…….』
そんな中、店の奥の方から知っている声が俺の耳へ届いた。
「やだ! はなして!」
「チッ。可愛いツラして生意気なオンナだなオイ」
予想はしていた。それでも思わず俺は声を上げる。
「ナオミ!?」