ep31 魔法とは

ー/ー



 俺はふたりの話に目を丸くする。そんな中だ。

『みなさま。そろそろよろしいでしょうか』

〔謎の声〕が語りかけてきた。しかも俺にだけではない。パトリスとロバータにもだ。ふたりの反応ですぐにそうだとわかった。

「そ、その声は!」
「貴女は!」

 驚く二人を視界に入れながら、俺は〔謎の声〕に話しかける。

「全員に聞こえているんだな」

『みなさまにお届けしております』

 俺は二人と視線を交わし合うと〔謎の声〕に向かい水を向けた。

「で、今度はなんだ?」

〔謎の声〕はひと息の間を置いてから、喋り始めた。

『おそらくは今、貴方達は、何もかもが理解し難く思っていることでしょう。ですが、これらすべては〔縁起〕です。これは〔結果〕であり、未来の事物への〔原因〕でもあります』

「……だからなんなんだ? さっぱりわからんぞ?」

『クロー様。すぐに街へ向かいなさい』

「街?」

『すでにお気づきでしょう? 街にもあの連中はいます』

「俺に、戦えと?」

『貴方の求める意味が、そこにあります』

「……」

『最後の選択です』

「!」

『神の呪いに侵されし魔導剣士、クロー・ラキアードよ。死にゆく時を待つのみか? 意味を見い出し生き切るか? さあ、どうしますか?』

 窓の向こうに見える空には、街の方から上がる煙が見える。俺はしばらく考えると、右手に握られた剣をじっと見つめた。どういうわけか、血は洗われ、魔導剣は元の綺麗な銀色に戻っている。
 俺は悟る。剣なのか、自分にもなのか、それはわからない。ただ、自分は今、特別な力を手にしているということを。
 次の瞬間、俺はもう踏み出していた。

「パトリス。ロバータ。俺、行ってくるよ」

 街に向かって駆ける。風上から煙が流れてくる。脳裏にミックやナオミたちのことが浮かんでくる。俺は街に向かって走りながら謎の声に尋ねた。 

『街の様子がどうなっているのか、わかるのか?』

『あの連中に襲われています』

『具体的にどんな状況なんだ?』

『そこまではわかりません。ワタクシがわかるのは漂うスピリトゥスの流れだけです』

『スピリ…トゥス?』

『明らかな害意を持った部外者に侵犯された状態であることは間違いありません』

『なあ』

『はい?』

『さっきさ。ドレッドの奴がパトリスの首を掴んで燃やしたんだけど……あれはやっぱり魔法なのか?』

『はい。何か気になるのですか?』

『ロバータの魔法は言葉を唱えて発動させていた。けど、ヤツのはなにも唱えていなかったから』

『それは、無言魔術と有言魔術の違いですね』

『魔法にも二種類あるってことか?』

『有言魔術は、詠唱して発動させる、魔法のもっともオーソドックスな形態です。一般的に〔魔法〕といった場合はこちらを指します。一方、無言魔術は、魔法および魔力を技に昇華させたものと言って良いでしょう。独自の無言魔術は、固有技能(アビリティ)とも呼ばれます。さらに、生まれつきの能力に基づいた無言魔術は、特殊技能(スペシャリティ)と呼ばれます』

『それ、マニュアルとかってないんすか……』

『ありますよ。貴方が今、持っています』

『魔導書のことか?』

『はい』

『ちょっと意外だな』

『なぜです?』

『だって今の話って、おそらく魔法に関しては基本的なことなんじゃないのか? あんな危なそうな連中が欲しているんなら、もっとヤバそうな内容なのかと思っていたから』

『もちろん、魔導書にはそれ以外にも魔法についての様々な内容が記載されています。それに、そもそもです。魔法に関する文献は、現在のこの世界では焚書ですから。なので、たとえ基本的な内容だけだったとしても、ある者達にとっては喉から手が出るほど欲しいものなのです』

『そうなのか? パトリスからそんな話はまったく聞いていなかったなぁ。そもそも魔法のマの字も聞いていなかったし。元魔導師のロバータもいるのに』

『何か理由があるのでしょう。それは彼らから直接聞いてみるのが良いかと』

『あと、俺の力、というか剣の力? これは何なんだ? 無言魔術的な何かなのか?』

『それはもっと……深いものです。さて、お喋りはここまでです。まもなくスピリトゥスの乱れが生じているポイントにさしかかります。敵は近いですよ』


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 俺はふたりの話に目を丸くする。そんな中だ。
『みなさま。そろそろよろしいでしょうか』
〔謎の声〕が語りかけてきた。しかも俺にだけではない。パトリスとロバータにもだ。ふたりの反応ですぐにそうだとわかった。
「そ、その声は!」
「貴女は!」
 驚く二人を視界に入れながら、俺は〔謎の声〕に話しかける。
「全員に聞こえているんだな」
『みなさまにお届けしております』
 俺は二人と視線を交わし合うと〔謎の声〕に向かい水を向けた。
「で、今度はなんだ?」
〔謎の声〕はひと息の間を置いてから、喋り始めた。
『おそらくは今、貴方達は、何もかもが理解し難く思っていることでしょう。ですが、これらすべては〔縁起〕です。これは〔結果〕であり、未来の事物への〔原因〕でもあります』
「……だからなんなんだ? さっぱりわからんぞ?」
『クロー様。すぐに街へ向かいなさい』
「街?」
『すでにお気づきでしょう? 街にもあの連中はいます』
「俺に、戦えと?」
『貴方の求める意味が、そこにあります』
「……」
『最後の選択です』
「!」
『神の呪いに侵されし魔導剣士、クロー・ラキアードよ。死にゆく時を待つのみか? 意味を見い出し生き切るか? さあ、どうしますか?』
 窓の向こうに見える空には、街の方から上がる煙が見える。俺はしばらく考えると、右手に握られた剣をじっと見つめた。どういうわけか、血は洗われ、魔導剣は元の綺麗な銀色に戻っている。
 俺は悟る。剣なのか、自分にもなのか、それはわからない。ただ、自分は今、特別な力を手にしているということを。
 次の瞬間、俺はもう踏み出していた。
「パトリス。ロバータ。俺、行ってくるよ」
 街に向かって駆ける。風上から煙が流れてくる。脳裏にミックやナオミたちのことが浮かんでくる。俺は街に向かって走りながら謎の声に尋ねた。 
『街の様子がどうなっているのか、わかるのか?』
『あの連中に襲われています』
『具体的にどんな状況なんだ?』
『そこまではわかりません。ワタクシがわかるのは漂うスピリトゥスの流れだけです』
『スピリ…トゥス?』
『明らかな害意を持った部外者に侵犯された状態であることは間違いありません』
『なあ』
『はい?』
『さっきさ。ドレッドの奴がパトリスの首を掴んで燃やしたんだけど……あれはやっぱり魔法なのか?』
『はい。何か気になるのですか?』
『ロバータの魔法は言葉を唱えて発動させていた。けど、ヤツのはなにも唱えていなかったから』
『それは、無言魔術と有言魔術の違いですね』
『魔法にも二種類あるってことか?』
『有言魔術は、詠唱して発動させる、魔法のもっともオーソドックスな形態です。一般的に〔魔法〕といった場合はこちらを指します。一方、無言魔術は、魔法および魔力を技に昇華させたものと言って良いでしょう。独自の無言魔術は、固有技能(アビリティ)とも呼ばれます。さらに、生まれつきの能力に基づいた無言魔術は、特殊技能(スペシャリティ)と呼ばれます』
『それ、マニュアルとかってないんすか……』
『ありますよ。貴方が今、持っています』
『魔導書のことか?』
『はい』
『ちょっと意外だな』
『なぜです?』
『だって今の話って、おそらく魔法に関しては基本的なことなんじゃないのか? あんな危なそうな連中が欲しているんなら、もっとヤバそうな内容なのかと思っていたから』
『もちろん、魔導書にはそれ以外にも魔法についての様々な内容が記載されています。それに、そもそもです。魔法に関する文献は、現在のこの世界では焚書ですから。なので、たとえ基本的な内容だけだったとしても、ある者達にとっては喉から手が出るほど欲しいものなのです』
『そうなのか? パトリスからそんな話はまったく聞いていなかったなぁ。そもそも魔法のマの字も聞いていなかったし。元魔導師のロバータもいるのに』
『何か理由があるのでしょう。それは彼らから直接聞いてみるのが良いかと』
『あと、俺の力、というか剣の力? これは何なんだ? 無言魔術的な何かなのか?』
『それはもっと……深いものです。さて、お喋りはここまでです。まもなくスピリトゥスの乱れが生じているポイントにさしかかります。敵は近いですよ』