ep23 変化
ー/ー
【8】
夜中にパトリスと一緒に帰宅した日以降、俺は変わったらしい。
あれからも数回、家でパーティーを開いた。俺はほとんど酒も飲まず、あくまでも主催者としての責任で参加しているような塩梅だった。いつものアソビ仲間とは距離を置き、女の子たちともあまり話さなかった。そんな俺を見て、ミックとナオミは奇妙に思ったようだ。
「どうしたクロー?」
「げんき、ないの?」
しかし俺はテキトーにやり過ごした。
「なんでもないよ。眠いだけだよ」
そのようなやりとりを何度か繰り返すうちに、アイツらはもう何も言って来なくなった。アイツらには良くも悪くもこだわりがない。
「一緒にアソんでいた人間が一緒にアソばなくなった」
それだけのことなんだと思う。俺の中で、それを寂しく思う気持ちがないわけでもなかったが、それを行動に移すだけの意志も感情もそこにはなかった。
パーティーが終わると、俺はいつも率先して片付けをやった。
「クローさま。わたしがやりますから」とメイドのロバータが寄ってきても、俺はお構いなしに手を動かした。その時、ロバータとパトリスが意味ありげに微笑み合ったので、俺はなんとなく落ち着かなくなってふたりに視線をぶつけた。
「な、なんだよ?」
「いえ、べつに」
「なんでもありません」
ふたりはなんだか嬉しそうだった。
俺は片付けをしながら思った。考えてみれば、自分で片付けるのは初めてだなと。今までずっと、やってもらっていたんだなと。彼らに対して、感謝と申し訳なさが込み上げた。
本当は……。
もうパーティー自体、取りやめようとも考えていた。しかしそれを口にするとパトリスに釘を刺されてしまったのだ。
「ぼっちゃま。やむを得ない理由もなく手前勝手に中止にするのはよろしくありませんよ。人に迷惑をかけ、自らの信用を失うだけです」
本音ではパトリスも、もうあんなパーティーを家で開くのは嫌だったはず。これ以上俺にあんなパーティーに参加してほしくもなかっただろう。だが、こういうことは感情の問題ではない。こんなことでも、主催者として最低限の責任は果たさなければならないということ。なので「すでに決まっていたパーティーだけは責任を持って開催した」というわけだ。
正直、メンドクサイなぁと思った。だけど俺を想ってそう進言してくれたパトリスの気持ちが、俺は素直に嬉しかった。
やがて予定していたすべてのパーティーが終わり……。
俺はひとり、二階の自室でボ〜ッとしていた。窓際のイスに座り、ガラス越しに曇り空を眺めて。
「生きるって、なんだろう……」
結局はそれだった。途方もない問いかけだけど、根本的なこと。
「俺は、ただ……」
残りわずかな人生に、意味が欲しかった。
元の世界にいた頃から振り返れば、後悔なんて腐るほどある。生ゴミのように腐って腐って積み重なった後悔からは、鼻をつんざくような自己嫌悪の悪臭が漂っている。
「せめて、納得して、死にたい……」
でも、そのやり方が、わからない。そもそも、ひたすら中途半端に生きてきた俺みたいなクロヤローが、今さらそんなことを求めるなんておこがましいだろう。わかっている。けど、それでも、なにか、できないのだろうか。
そんな時。
窓越しの空の向こうに、ゆらゆらと煙が立ちこめているのが目に映る。風向きのせいか、何処からこちらの方へ流れてきているようだ。俺は椅子に沈みながら、なにを思うでもなくボンヤリと眺め続けた。
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あれからも数回、家でパーティーを開いた。俺はほとんど酒も飲まず、あくまでも主催者としての責任で参加しているような塩梅だった。いつものアソビ仲間とは距離を置き、女の子たちともあまり話さなかった。そんな俺を見て、ミックとナオミは奇妙に思ったようだ。
「どうしたクロー?」
「げんき、ないの?」
しかし俺はテキトーにやり過ごした。
「なんでもないよ。眠いだけだよ」
そのようなやりとりを何度か繰り返すうちに、アイツらはもう何も言って来なくなった。アイツらには良くも悪くもこだわりがない。
「一緒にアソんでいた人間が一緒にアソばなくなった」
それだけのことなんだと思う。俺の中で、それを寂しく思う気持ちがないわけでもなかったが、それを行動に移すだけの意志も感情もそこにはなかった。
パーティーが終わると、俺はいつも率先して片付けをやった。
「クローさま。わたしがやりますから」とメイドのロバータが寄ってきても、俺はお構いなしに手を動かした。その時、ロバータとパトリスが意味ありげに微笑み合ったので、俺はなんとなく落ち着かなくなってふたりに視線をぶつけた。
「な、なんだよ?」
「いえ、べつに」
「なんでもありません」
ふたりはなんだか嬉しそうだった。
俺は片付けをしながら思った。考えてみれば、自分で片付けるのは初めてだなと。今までずっと、やってもらっていたんだなと。彼らに対して、感謝と申し訳なさが込み上げた。
本当は……。
もうパーティー自体、取りやめようとも考えていた。しかしそれを口にするとパトリスに釘を刺されてしまったのだ。
「ぼっちゃま。やむを得ない理由もなく手前勝手に中止にするのはよろしくありませんよ。人に迷惑をかけ、自らの信用を失うだけです」
本音ではパトリスも、もうあんなパーティーを家で開くのは嫌だったはず。これ以上俺にあんなパーティーに参加してほしくもなかっただろう。だが、こういうことは感情の問題ではない。こんなことでも、主催者として最低限の責任は果たさなければならないということ。なので「すでに決まっていたパーティーだけは責任を持って開催した」というわけだ。
正直、メンドクサイなぁと思った。だけど俺を想ってそう進言してくれたパトリスの気持ちが、俺は素直に嬉しかった。
やがて予定していたすべてのパーティーが終わり……。
俺はひとり、二階の自室でボ〜ッとしていた。窓際のイスに座り、ガラス越しに曇り空を眺めて。
「生きるって、なんだろう……」
結局はそれだった。途方もない問いかけだけど、根本的なこと。
「俺は、ただ……」
残りわずかな人生に、意味が欲しかった。
元の世界にいた頃から振り返れば、後悔なんて腐るほどある。生ゴミのように腐って腐って積み重なった後悔からは、鼻をつんざくような自己嫌悪の悪臭が漂っている。
「せめて、納得して、死にたい……」
でも、そのやり方が、わからない。そもそも、ひたすら中途半端に生きてきた俺みたいなクロヤローが、今さらそんなことを求めるなんておこがましいだろう。わかっている。けど、それでも、なにか、できないのだろうか。
そんな時。
窓越しの空の向こうに、ゆらゆらと煙が立ちこめているのが目に映る。風向きのせいか、何処からこちらの方へ流れてきているようだ。俺は椅子に沈みながら、なにを思うでもなくボンヤリと眺め続けた。