第18話

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ここはウエス国の森の中。ではなく、エルドランド王国。

勇者エル王子、"竜殺し"の異名を持つオークの戦士ガルム、大魔法使いハック、ヒーラー(回復士)のアンの4人は、王の前でエルドランド国王と謁見していた。

「我が息子エルと、その仲間達よ。この国には、魔王ミカエルの驚異が迫っておる。命運は、お前たちにかかっている。よろしく頼んだぞ。」
「解りました。父上。必ずや、魔王を封印して参ります。」

勇者エルたち4人は、魔王討伐の旅に出る前に、壮行会をすることにした。
【エルフの店】と言う、首都エルドでも珍しい、店員が全員エルフと言う酒場だ。

エルたちは席に着いて、ビールで乾杯をした。フルーティーで苦味が少ないビールだ。

「エル。魔王との戦いの前だ。飲み過ぎるなよ。」
ハックは、エルを嗜めるように言う。
「俺は、関係なく呑んで食うけどな!」
ガルムは、豪快にビールを飲み干すと、骨付き肉を頬張った。
「ガルムも飲み過ぎないで。介抱するのは、ハックと私なんだから。」
アンが少し呆れながら言う。
「魔王ミカエル。黒い闇に包まれた恐ろしい姿をしていると聞く。みんな、気を抜くなよ。」
エルが真顔で言った。
「アンの封印の秘術があれば、大丈夫。必要なものは、揃ってる。」
ハックが頷き言う。

「ところで、エルとアンは、結婚しないのか?」
ガルムが言うと、エルが盛大に噴き出した。
「魔王を封印するまではお預けね。」
アンが顔を赤らめて言う。
「ケジメは付けるつもりだ。」
エルも赤くなって言った。

4人は、夜遅くまで、お酒を楽しみ、
エルとハックが酔い潰れてしまった。

アンは、ガルムに気になっていたことを聞いた。
「ガルム、あなたは転生者だって言うのは、本当なの?」
「ああ、俺は、もう何十回も転生してる。」
ガルムが疲れた顔をして言った。
「私は異世界転移者。翻訳スキルなんてものが与えられたけど、役に立たない。私は時々、何のためにこの世界に来たのか分からなくなるの。」
アンが悲しそうな顔で言う。
「アンには君にしか出来ない仕事があるじゃないか。魔王ミカエルを封印する。」
ガルムは続ける。
「俺は何回も転生してる。でも、その意味はさっぱり分からない。もう、諦めてるよ。でも、生きて行くしかないんだ。」
アンが頷いた。
「私は、魔王ミカエルを封印する。その後のことは、その時に考えるわ。ガルム、ありがとう。」

エルとハックを宿屋まで連れて行き、翌朝、ガルムたちは魔王討伐に旅だった。







「う....ん。アン、エル!」

フィーネは夢を見ていたようだ。
「また、あの時の夢か」

フィーネは体を起こすと、魔法で紅茶を淹れた。
その紅茶を一口飲む。

「あの後も、色々あったわね。魔神が現れたりとか、ゴブリンの弟子も居たっけ。」
フィーネの頭に様々な記憶の映像が現れては消えて行く。

イブとスザクは、熟睡している。

「ちょっと、頭の整理をするかな?」
フィーネは、露天風呂に向かった。
更衣室で服を脱ぎ、広い湯船に入る。

「気持ちが良い....」

ふと、湯船の底に目が行った。

何か大きな鍵のようなものが沈んでいる。
「コレは何かしら?」
手が触れた瞬間、嫌な予感が虫唾のように走った。
両手で持ち上げると、悪魔のような装飾がされた、大きな鍵だった。
「何処の鍵だろう?」
とりあえず、鍵を置いて、また湯船に浸かった。

「あの遺跡のどこかの鍵とか?」
新しい冒険の気配がする。
「いえ、もう冒険は懲り懲り。」
フィーネはお湯に頭まで浸かった。

しかし、何か嫌な予感を感じるフィーネであった。





その夜。

いつも通り、テーブルを囲んで、賑やかな食事だ。
フィーネ、リリィ、モック、ドンキー、イブ、スザク。
いつの間にか、人数も増えた。

「でも、のんびりは譲れないわよ。」
フィーネの意思は硬い。


「ねえ、イブ。お風呂から、こんな鍵が出てきたんだけど、何か分かる?」
フィーネがイブに鍵を見せた。
「うーん、深淵の鍵に似てるけど、分からないな。」
「イブでも分からないか....」


「モック待てー!」
「お兄ちゃん、待つキキー!」
「待たないキー!」
リリィとドンキーとモックが、追いかけっこを、始めた。

フィーネとイブとスザクは、ロッキングチェアに座って、紅茶をすすっている。

空には満天の星空。いつも通りののんびりした食後のひと時。

フィーネは、のんびりと冒険の間で、珍しく心が揺れていた。
ガルムの記憶がそうさせるのだろうか?


「ねえ、遺跡に行って、この鍵の正体を確かめない?」
フィーネが言うと、
「フィーネがそんなこと言うなんて、珍しい。」
イブが驚いて言う。
「この装飾....なんか見たことあるような気がする....」
スザクが考え込んだ。胸の奥に引っかかるものを感じていた。

「難しいことは分からないけど、兎に角、調べてみよう。」
「わかったわ。私も協力する」
スザクが言った。
「そうとなれば、ぼくも協力しよう。」
イブも言う。

フィーネは、珍しくのんびりと新しい冒険との葛藤に心が揺れ動くのだった。








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ここはウエス国の森の中。ではなく、エルドランド王国。
勇者エル王子、"竜殺し"の異名を持つオークの戦士ガルム、大魔法使いハック、ヒーラー(回復士)のアンの4人は、王の前でエルドランド国王と謁見していた。
「我が息子エルと、その仲間達よ。この国には、魔王ミカエルの驚異が迫っておる。命運は、お前たちにかかっている。よろしく頼んだぞ。」
「解りました。父上。必ずや、魔王を封印して参ります。」
勇者エルたち4人は、魔王討伐の旅に出る前に、壮行会をすることにした。
【エルフの店】と言う、首都エルドでも珍しい、店員が全員エルフと言う酒場だ。
エルたちは席に着いて、ビールで乾杯をした。フルーティーで苦味が少ないビールだ。
「エル。魔王との戦いの前だ。飲み過ぎるなよ。」
ハックは、エルを嗜めるように言う。
「俺は、関係なく呑んで食うけどな!」
ガルムは、豪快にビールを飲み干すと、骨付き肉を頬張った。
「ガルムも飲み過ぎないで。介抱するのは、ハックと私なんだから。」
アンが少し呆れながら言う。
「魔王ミカエル。黒い闇に包まれた恐ろしい姿をしていると聞く。みんな、気を抜くなよ。」
エルが真顔で言った。
「アンの封印の秘術があれば、大丈夫。必要なものは、揃ってる。」
ハックが頷き言う。
「ところで、エルとアンは、結婚しないのか?」
ガルムが言うと、エルが盛大に噴き出した。
「魔王を封印するまではお預けね。」
アンが顔を赤らめて言う。
「ケジメは付けるつもりだ。」
エルも赤くなって言った。
4人は、夜遅くまで、お酒を楽しみ、
エルとハックが酔い潰れてしまった。
アンは、ガルムに気になっていたことを聞いた。
「ガルム、あなたは転生者だって言うのは、本当なの?」
「ああ、俺は、もう何十回も転生してる。」
ガルムが疲れた顔をして言った。
「私は異世界転移者。翻訳スキルなんてものが与えられたけど、役に立たない。私は時々、何のためにこの世界に来たのか分からなくなるの。」
アンが悲しそうな顔で言う。
「アンには君にしか出来ない仕事があるじゃないか。魔王ミカエルを封印する。」
ガルムは続ける。
「俺は何回も転生してる。でも、その意味はさっぱり分からない。もう、諦めてるよ。でも、生きて行くしかないんだ。」
アンが頷いた。
「私は、魔王ミカエルを封印する。その後のことは、その時に考えるわ。ガルム、ありがとう。」
エルとハックを宿屋まで連れて行き、翌朝、ガルムたちは魔王討伐に旅だった。
「う....ん。アン、エル!」
フィーネは夢を見ていたようだ。
「また、あの時の夢か」
フィーネは体を起こすと、魔法で紅茶を淹れた。
その紅茶を一口飲む。
「あの後も、色々あったわね。魔神が現れたりとか、ゴブリンの弟子も居たっけ。」
フィーネの頭に様々な記憶の映像が現れては消えて行く。
イブとスザクは、熟睡している。
「ちょっと、頭の整理をするかな?」
フィーネは、露天風呂に向かった。
更衣室で服を脱ぎ、広い湯船に入る。
「気持ちが良い....」
ふと、湯船の底に目が行った。
何か大きな鍵のようなものが沈んでいる。
「コレは何かしら?」
手が触れた瞬間、嫌な予感が虫唾のように走った。
両手で持ち上げると、悪魔のような装飾がされた、大きな鍵だった。
「何処の鍵だろう?」
とりあえず、鍵を置いて、また湯船に浸かった。
「あの遺跡のどこかの鍵とか?」
新しい冒険の気配がする。
「いえ、もう冒険は懲り懲り。」
フィーネはお湯に頭まで浸かった。
しかし、何か嫌な予感を感じるフィーネであった。
その夜。
いつも通り、テーブルを囲んで、賑やかな食事だ。
フィーネ、リリィ、モック、ドンキー、イブ、スザク。
いつの間にか、人数も増えた。
「でも、のんびりは譲れないわよ。」
フィーネの意思は硬い。
「ねえ、イブ。お風呂から、こんな鍵が出てきたんだけど、何か分かる?」
フィーネがイブに鍵を見せた。
「うーん、深淵の鍵に似てるけど、分からないな。」
「イブでも分からないか....」
「モック待てー!」
「お兄ちゃん、待つキキー!」
「待たないキー!」
リリィとドンキーとモックが、追いかけっこを、始めた。
フィーネとイブとスザクは、ロッキングチェアに座って、紅茶をすすっている。
空には満天の星空。いつも通りののんびりした食後のひと時。
フィーネは、のんびりと冒険の間で、珍しく心が揺れていた。
ガルムの記憶がそうさせるのだろうか?
「ねえ、遺跡に行って、この鍵の正体を確かめない?」
フィーネが言うと、
「フィーネがそんなこと言うなんて、珍しい。」
イブが驚いて言う。
「この装飾....なんか見たことあるような気がする....」
スザクが考え込んだ。胸の奥に引っかかるものを感じていた。
「難しいことは分からないけど、兎に角、調べてみよう。」
「わかったわ。私も協力する」
スザクが言った。
「そうとなれば、ぼくも協力しよう。」
イブも言う。
フィーネは、珍しくのんびりと新しい冒険との葛藤に心が揺れ動くのだった。