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第六十六話:五元ユニゾンの試練と聖女の最終防衛線

ー/ー



 ドラゴンスレイヤー教団との初戦勝利から、僅か2週間。

 盟約軍は、帝都に近づくための最後の要衝となる広大な平原に布陣した。ヒカルの「戦場の視覚化」の異能が捉えた敵の戦力は、前回とは比べ物にならない規模となっていた。

(……ドラゴンスレイヤー教団の聖騎士団とDSW(対竜特化兵器(Dragon Specialized Weapons)魔導砲部隊2万に帝国正規軍の増援が15万。総勢で17万以上の大軍勢か……)

 ヒカルは自らが率いる盟約軍約3,160体、そしてリヒター総帥が送ってくれた辺境連合軍の先遣隊約5,000名という、圧倒的な劣勢に直面していた。

 いくら竜の兵士が一人ひとりが人間にすれば数十人から数百人の戦力であったとしても、数的にはまだまだ不利なのだ。

「ヒカル様。顔色が優れません。どうぞ、このお茶を」

 リリアが王室メイド服の姿で、優しく薬草茶を差し出した。彼女の隣には、メイド隊のルナリス(闇)とテラナ(土)が、身辺警護として控えている。

「リリア。この絶望的な兵力差を見て、恐怖を覚えない王がいると思うか」
「王妃(ひめ)様方の愛の力を信じてください。そして、王室メイド隊の献身も」

 盟約軍の中央司令部には、六龍姫全員が集結していた。

 蒼玉の理性竜姫アクアが、緻密な論理で戦略を分析する。

「王よ。敵の兵力は圧倒的ですが、DSW(対竜特化兵器)の配置は、前回の失敗を教訓に分散されています。ならば、一点集中のユニゾンブレスは、論理的に非効率と断言せざるを得ませんわ」
「そうだな、アクア。ではどう出るべきと考える?」
「我々が採るべきは、五元ユニゾンによる局地的な『絶対支配圏』の構築ではないか、と。広範囲の兵力を無力化しつつ、聖女アリアの結界の核を叩く必要があります」

 紅蓮の激情竜姫レヴィアは、戦場を見て、炎を燃やした。

「フン。17万の人間など、私たち六龍の敵ではないわ!王よ、私の炎に貴方の愛を全て注ぎ、一瞬で殲滅を命じてくれ! 今度こそ、私の炎の愛が最強だと証明するわ!」

(レヴィアの感情値:独占欲90%/戦闘意欲100%。MVPの雪辱を果たす気だな。この意気込みは使うしかあるまい……)


 その時、ヒカルの「戦場の視覚化」に、敵軍の中央から放たれる眩い光の魔力が映し出された。

 ドラゴンスレイヤー教団の聖騎士団と帝国正規軍を従えた中央の陣営に、一際優雅で高潔な美しさを放つ女性が現れた。銀と白の神官服に身を包み、プラチナブロンドの髪は光を帯びている。彼女の静かな立ち居振る舞いは、憎悪に満ちた戦場の空気を一瞬で神聖なものへと変えた。

 聖女アリアだ。

 彼女は、慈愛に満ちた微笑みを浮かべながら、ヒカルの軍団を見据えたが、その瞳の奥には、竜族への純粋な「憎悪の使命」が宿っていた。

「竜の王、ヒカルよ。貴様は、人類の希望を裏切った残滓に過ぎない。貴様の偽りの優しさを、私の高潔な信仰の光で断罪する!」

 アリアが静かに祈りを捧げると、全人類軍の兵士たちの信仰心が、巨大なエネルギーの結界へと変化した。

 純粋な憎悪と信仰心を核とする、究極の光の防御結界だ。

「全軍、進め!」

 聖女アリアの一言で、17万の大軍勢が、光の結界を盾として盟約軍へと圧をかけてきた。

 ◇◆◇◆◇

 聖女アリアの結界の強固さに、ヒカルは五元ユニゾンの発動を決意するに至った。

「アクア! 俺は決めたぞ! 五元ユニゾン『五元絶対支配圏』の発動準備だ。憎悪の結界を、愛の調律で上書きする!」

 蒼玉の理性竜姫アクアは、眼鏡を押し上げ、冷静ながらも情熱を帯びた声で応じた。

「御意、王よ! 結界の防御構成を、全属性ユニゾンで論理的に崩壊させます!」

 その時、闇の特務機関長ヴァルキリアが、冷徹な光を宿した瞳でヒカルを見据えた。

「契約者。私は参加しなくて良いのか? 私の闇の力は、結界を構成する憎悪の核を内部から腐敗させることができる」

 ヴァルキリアは、あくまで論理的な貢献を主張したが、その声には、愛の競争から外れることへの不満が滲んでいた。

「フン。妹たちの愛の熱狂を、私の孤高が傍観する必要などない。一気に殲滅すべきではないのか?」

 ヒカルは、ヴァルキリアのプライドと愛の形を理解し、静かに答えた。

「ヴァルキリア。貴女の闇は、この戦場の光属性とは相容れない。貴女の役割は、闇の矛として、全軍を護衛することだ」
「ふむ、護衛と言われるか……」
「そうだ。五元ユニゾンが崩壊した時、闇の力こそが、全軍の最後の防衛線となる。貴女の孤高の忠誠を、王の命令として、最後の切り札として温存してくれ」
「なるほど。さすがは契約者。保険を作ることで、敵により強い絶望感を与えるつもりなのだな。ふふふ、その役目、任されよう!」

 ヴァルキリアは、ヒカルの論理と、自分の力が王の最後の命綱であるという事実に満足し、静かに頷いた。

 この緊迫した状況で、ヒカルは王室メイド隊の献身を感じていた。

(そう言えば、メイド隊の戦闘力の確認していなかった……!)

 ヒカルは、メイド隊の顔触れを再度、戦場の視覚化で透視する。その数値に、ヒカルは驚愕した。

(テラナ(土)、戦闘能力数値BPI250。ルナリス(闇)、BPI220。な、なんと、六天将アウラのBPI200を超える者もいる! 当然、竜族一般兵のBPI50を遥かに凌駕している。これは、六天将クラスに匹敵する超精鋭だ)

 ヒカルは、王妃(ひめ)たちの愛の激情だけでなく、裏側を支える組織の強靭さに心から感銘を受けた。王妃(ひめ)たちの愛の競争が、王の命を護る強固な盾を築いていたのだ。

(彼女たちは、経験や地位の問題で六天将にはなれなかったが、実力は副官候補。俺の護衛という名誉が、次世代の戦力を育む場となるのか)

 メイド隊のテラナ(土)は、ヒカルの足元に強固な防御魔力を流し込み、その強靭さを示した。

「主(あるじ)の足場は、このテラナが揺るがせません」

 ルナリス(闇)は、暗殺の予兆を探るため、司令部の影に潜んでいる。

「王の影に潜む穢れは、私の暗器術が逃しません」

 リリアは静かに、ヒカルの背後に控え、彼の肉体的な消耗を最小限に抑えている。

(リリアの献身、そしてメイド隊の組織的な安寧の護衛。これが、王妃(ひめ)たちの愛の激情を、戦場の力へと変える土台となる)

 聖女アリアの憎悪の結界と、王の五元ユニゾンが、今、帝都の平原で正面衝突する。

【第67話へ続く】



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 ドラゴンスレイヤー教団との初戦勝利から、僅か2週間。
 盟約軍は、帝都に近づくための最後の要衝となる広大な平原に布陣した。ヒカルの「戦場の視覚化」の異能が捉えた敵の戦力は、前回とは比べ物にならない規模となっていた。
(……ドラゴンスレイヤー教団の聖騎士団とDSW(対竜特化兵器(Dragon Specialized Weapons)魔導砲部隊2万に帝国正規軍の増援が15万。総勢で17万以上の大軍勢か……)
 ヒカルは自らが率いる盟約軍約3,160体、そしてリヒター総帥が送ってくれた辺境連合軍の先遣隊約5,000名という、圧倒的な劣勢に直面していた。
 いくら竜の兵士が一人ひとりが人間にすれば数十人から数百人の戦力であったとしても、数的にはまだまだ不利なのだ。
「ヒカル様。顔色が優れません。どうぞ、このお茶を」
 リリアが王室メイド服の姿で、優しく薬草茶を差し出した。彼女の隣には、メイド隊のルナリス(闇)とテラナ(土)が、身辺警護として控えている。
「リリア。この絶望的な兵力差を見て、恐怖を覚えない王がいると思うか」
「王妃《ひめ》様方の愛の力を信じてください。そして、王室メイド隊の献身も」
 盟約軍の中央司令部には、六龍姫全員が集結していた。
 蒼玉の理性竜姫アクアが、緻密な論理で戦略を分析する。
「王よ。敵の兵力は圧倒的ですが、DSW(対竜特化兵器)の配置は、前回の失敗を教訓に分散されています。ならば、一点集中のユニゾンブレスは、論理的に非効率と断言せざるを得ませんわ」
「そうだな、アクア。ではどう出るべきと考える?」
「我々が採るべきは、五元ユニゾンによる局地的な『絶対支配圏』の構築ではないか、と。広範囲の兵力を無力化しつつ、聖女アリアの結界の核を叩く必要があります」
 紅蓮の激情竜姫レヴィアは、戦場を見て、炎を燃やした。
「フン。17万の人間など、私たち六龍の敵ではないわ!王よ、私の炎に貴方の愛を全て注ぎ、一瞬で殲滅を命じてくれ! 今度こそ、私の炎の愛が最強だと証明するわ!」
(レヴィアの感情値:独占欲90%/戦闘意欲100%。MVPの雪辱を果たす気だな。この意気込みは使うしかあるまい……)
 その時、ヒカルの「戦場の視覚化」に、敵軍の中央から放たれる眩い光の魔力が映し出された。
 ドラゴンスレイヤー教団の聖騎士団と帝国正規軍を従えた中央の陣営に、一際優雅で高潔な美しさを放つ女性が現れた。銀と白の神官服に身を包み、プラチナブロンドの髪は光を帯びている。彼女の静かな立ち居振る舞いは、憎悪に満ちた戦場の空気を一瞬で神聖なものへと変えた。
 聖女アリアだ。
 彼女は、慈愛に満ちた微笑みを浮かべながら、ヒカルの軍団を見据えたが、その瞳の奥には、竜族への純粋な「憎悪の使命」が宿っていた。
「竜の王、ヒカルよ。貴様は、人類の希望を裏切った残滓に過ぎない。貴様の偽りの優しさを、私の高潔な信仰の光で断罪する!」
 アリアが静かに祈りを捧げると、全人類軍の兵士たちの信仰心が、巨大なエネルギーの結界へと変化した。
 純粋な憎悪と信仰心を核とする、究極の光の防御結界だ。
「全軍、進め!」
 聖女アリアの一言で、17万の大軍勢が、光の結界を盾として盟約軍へと圧をかけてきた。
 ◇◆◇◆◇
 聖女アリアの結界の強固さに、ヒカルは五元ユニゾンの発動を決意するに至った。
「アクア! 俺は決めたぞ! 五元ユニゾン『五元絶対支配圏』の発動準備だ。憎悪の結界を、愛の調律で上書きする!」
 蒼玉の理性竜姫アクアは、眼鏡を押し上げ、冷静ながらも情熱を帯びた声で応じた。
「御意、王よ! 結界の防御構成を、全属性ユニゾンで論理的に崩壊させます!」
 その時、闇の特務機関長ヴァルキリアが、冷徹な光を宿した瞳でヒカルを見据えた。
「契約者。私は参加しなくて良いのか? 私の闇の力は、結界を構成する憎悪の核を内部から腐敗させることができる」
 ヴァルキリアは、あくまで論理的な貢献を主張したが、その声には、愛の競争から外れることへの不満が滲んでいた。
「フン。妹たちの愛の熱狂を、私の孤高が傍観する必要などない。一気に殲滅すべきではないのか?」
 ヒカルは、ヴァルキリアのプライドと愛の形を理解し、静かに答えた。
「ヴァルキリア。貴女の闇は、この戦場の光属性とは相容れない。貴女の役割は、闇の矛として、全軍を護衛することだ」
「ふむ、護衛と言われるか……」
「そうだ。五元ユニゾンが崩壊した時、闇の力こそが、全軍の最後の防衛線となる。貴女の孤高の忠誠を、王の命令として、最後の切り札として温存してくれ」
「なるほど。さすがは契約者。保険を作ることで、敵により強い絶望感を与えるつもりなのだな。ふふふ、その役目、任されよう!」
 ヴァルキリアは、ヒカルの論理と、自分の力が王の最後の命綱であるという事実に満足し、静かに頷いた。
 この緊迫した状況で、ヒカルは王室メイド隊の献身を感じていた。
(そう言えば、メイド隊の戦闘力の確認していなかった……!)
 ヒカルは、メイド隊の顔触れを再度、戦場の視覚化で透視する。その数値に、ヒカルは驚愕した。
(テラナ(土)、戦闘能力数値BPI250。ルナリス(闇)、BPI220。な、なんと、六天将アウラのBPI200を超える者もいる! 当然、竜族一般兵のBPI50を遥かに凌駕している。これは、六天将クラスに匹敵する超精鋭だ)
 ヒカルは、王妃《ひめ》たちの愛の激情だけでなく、裏側を支える組織の強靭さに心から感銘を受けた。王妃《ひめ》たちの愛の競争が、王の命を護る強固な盾を築いていたのだ。
(彼女たちは、経験や地位の問題で六天将にはなれなかったが、実力は副官候補。俺の護衛という名誉が、次世代の戦力を育む場となるのか)
 メイド隊のテラナ(土)は、ヒカルの足元に強固な防御魔力を流し込み、その強靭さを示した。
「主《あるじ》の足場は、このテラナが揺るがせません」
 ルナリス(闇)は、暗殺の予兆を探るため、司令部の影に潜んでいる。
「王の影に潜む穢れは、私の暗器術が逃しません」
 リリアは静かに、ヒカルの背後に控え、彼の肉体的な消耗を最小限に抑えている。
(リリアの献身、そしてメイド隊の組織的な安寧の護衛。これが、王妃《ひめ》たちの愛の激情を、戦場の力へと変える土台となる)
 聖女アリアの憎悪の結界と、王の五元ユニゾンが、今、帝都の平原で正面衝突する。
【第67話へ続く】