表示設定
表示設定
目次 目次




第五十一話:賢者と風の契約:中立派の登用

ー/ー



 新体制の発表から四日後、居城を調和の座に戻して七日目の朝。

 玉座の間は、四日前の熱狂的な人事が嘘のように静謐な空気に包まれていた。ヒカルは玉座に座り、学術顧問の任を受けた最古の賢者(エルダー・ソフス)を前にしていた。ソフスの隣には、純白の調和聖女ルーナと無垢なる浄化使アウラが、知識の論理を護る盾のように控えている。

 ソフスは古代の知識の重さを背負うかのように、恭しくも厳格な態度でヒカルを見つめた。彼の瞳は鋭く、容赦がない。

「盟約の王よ。貴方の『優しさが最強の力』という哲学が、真の知の力に耐えうるか、私は未だに確信を得ていません」

 ソフスは、ヒカルが最も求めた知識の門を、厳しく閉ざしたままだった。

 ヒカルは玉座から身を乗り出し、ソフスの瞳を真っ直ぐに見つめた。

「古王の力は、知識を破壊と支配のために使いました。古代の遺物は兵器と化し、その結果、竜族の歴史は分断され、絶滅の危機を迎えた。貴方が守ってきた知は、なぜその時、その破綻を止められなかったのですか?」

 ヒカルの問いに、ソフスの表情が初めて動揺した。

「それは…………知の力は、常に孤独を強いられる。破壊に加担しない知は、ただの傍観者に過ぎなかった」
 
 ヒカルは、ここぞとばかりに自分の哲学をソフスにぶつけた。

「だが、私の掲げる優しさは、愛と絆という『自発的な献身』を生み出し、これをユニゾンという『非線形な力の増幅』へと昇華させる。知識は、破壊ではなく創造と復興のためにある。私は、その知の力を、愛という論理で守護する」

 ヒカルの揺るぎない覚悟と哲学の重さを前に、ソフスは深々と頭を下げた。

「いやはやお若いのに見事な哲学です。私の孤立した知識は、貴方の愛の論理をもって、初めて世界を救う力となると確信しました。このソフス、【学術顧問】として、王の哲学に全てを捧げましょう」

 アウラは静かに、ソフスとの知性の愛の競争に刺激され、自身の「王の知識の独占」という使命を新たにする。

 それ以上に、ヒカルはソフスという知を配下に迎え入れたことに大いに安堵した。彼は、中立派も旧古王派からも一目置かれるこの国の叡智そのものだったからだ。アクアやルーナ、そしてヴァルキリアからも、ソフスの眼中にかなうということが、この盟約軍の正当性の証明になる、と言われていたのだ。





 賢者ソフスの登用が終わると、玉座の間には、物流・貿易次長の任を受けた放浪の運び屋(ウィンド・ランナー)が呼び込まれた。

 彼はフランクな態度でヒカルの前に立った。
 隣には疾風の遊撃竜姫セフィラと空虚の斥候王ゼファーが控えている。

「やあ、団長さん。ソフスという最高の知識と、ギルティアという最高の財源を手に入れた。君の王国は、私が提供する人間社会との通商ルートと兵站輸送で、安泰だろう」

 放浪の運び屋(ウィンド・ランナー)は、王国の明るい見通しを立ててみせながら、ヒカルを揺さぶった。

「だが、そのあとはどうするつもりなんだい?君の優しさで、竜族の国内統一はできた。だが、その先にいるのは、人間社会の腐敗と、魔王軍の脅威だ。このままじゃ、君の優しさは、巨大な戦争の前に、いつか折れてしまう。その優しさで、仇敵カインのいる人間社会に、どう立ち向かうつもりなんだい?」

 ヒカルは即答できなかった。

 彼の脳裏には、仇敵カインの冷酷な笑みと、リリアを失った悲劇がフラッシュバックする。王としての覚悟が、静かに試されていた。

「君の答えを待っているぜ、ヒカル王よ。正式な答えを待っている」

 放浪の運び屋(ウィンド・ランナー)の言葉は、ヒカルの心に重くのしかかる。

 その瞬間、ヒカルの「絆の共感者」の異能が、セフィラとゼファーの心の波を捉えた。彼らの愛の音色は、「王の覚悟の揺らぎ」というノイズに動揺し、軍全体の士気に関わることを示唆していた。

 疾風の遊撃竜姫セフィラは、放浪の運び屋(ウィンド・ランナー)に言い返す。

「団長(ヒカル)は、最高の冒険を続けるさ!彼の優しさが、世界を支配するんだ!」

 空虚の斥候王ゼファーは、セフィラの言葉を補強する。

「王よ、セフィラ様の言う通りです。貴方の優しさの哲学は、仇敵カインという最大の非合理を討つことでしか、世界に証明できません」

 セフィラとゼファーの切実な動揺は、玉座の間にいる六龍姫や六天将にも瞬時に伝播した。

 紅蓮の激情竜姫レヴィアの炎は、ヒカルの迷いに「嫉妬と怒り」の炎を燃やし、蒼玉の理性竜姫アクアは、戦略盤の前に立ち、「論理的な結論を出せ」と沈黙の圧力をかけた。

 ヒカルは、妻たちの愛のすべてが、「人間社会への介入」という一つの答えを求めていることを痛感した。

放浪の運び屋(ウィンド・ランナー)。お前の問いは、王の最終的な義務だ。お前が提供する物流の生命線は、その義務を果たすための絶対的な基盤となる」

 セフィラは歓喜の声を上げ、契約成功の報酬としてヒカルとの高速空中デートを独占。ヒカルの王としての覚悟の揺らぎを、自由な愛で吹き飛ばそうとする。




 最後に、ヒカルは全ての軍団と官僚を見渡し、王としての最終的な目標を改めて宣言した。

「お前たちの愛が勝ち取ったこの国は、力と優しさが共存する理想郷として復興させる。その第一歩として、法務、行政、財務、物流、諜報、そして文化という、六つの柱を早急に完成させる」

「私の使命は、人間と竜が真に共存できる世界を創造することだ。その復興という名の王の義務が、優しさが最強の力であることを、世界に証明する!」

 この宣言により、新王国の復興という巨大な目標が、六龍姫と六天将の愛の競争の舞台となった。ヒカルの開戦への最終的な決意は、次の第53話に持ち越されることとなった。

【第52話へ続く】



スタンプを贈って作者を応援しよう!



みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 新体制の発表から四日後、居城を調和の座に戻して七日目の朝。
 玉座の間は、四日前の熱狂的な人事が嘘のように静謐な空気に包まれていた。ヒカルは玉座に座り、学術顧問の任を受けた|最古の賢者《エルダー・ソフス》を前にしていた。ソフスの隣には、純白の調和聖女ルーナと無垢なる浄化使アウラが、知識の論理を護る盾のように控えている。
 ソフスは古代の知識の重さを背負うかのように、恭しくも厳格な態度でヒカルを見つめた。彼の瞳は鋭く、容赦がない。
「盟約の王よ。貴方の『優しさが最強の力』という哲学が、真の知の力に耐えうるか、私は未だに確信を得ていません」
 ソフスは、ヒカルが最も求めた知識の門を、厳しく閉ざしたままだった。
 ヒカルは玉座から身を乗り出し、ソフスの瞳を真っ直ぐに見つめた。
「古王の力は、知識を破壊と支配のために使いました。古代の遺物は兵器と化し、その結果、竜族の歴史は分断され、絶滅の危機を迎えた。貴方が守ってきた知は、なぜその時、その破綻を止められなかったのですか?」
 ヒカルの問いに、ソフスの表情が初めて動揺した。
「それは…………知の力は、常に孤独を強いられる。破壊に加担しない知は、ただの傍観者に過ぎなかった」
 ヒカルは、ここぞとばかりに自分の哲学をソフスにぶつけた。
「だが、私の掲げる優しさは、愛と絆という『自発的な献身』を生み出し、これをユニゾンという『非線形な力の増幅』へと昇華させる。知識は、破壊ではなく創造と復興のためにある。私は、その知の力を、愛という論理で守護する」
 ヒカルの揺るぎない覚悟と哲学の重さを前に、ソフスは深々と頭を下げた。
「いやはやお若いのに見事な哲学です。私の孤立した知識は、貴方の愛の論理をもって、初めて世界を救う力となると確信しました。このソフス、【学術顧問】として、王の哲学に全てを捧げましょう」
 アウラは静かに、ソフスとの知性の愛の競争に刺激され、自身の「王の知識の独占」という使命を新たにする。
 それ以上に、ヒカルはソフスという知を配下に迎え入れたことに大いに安堵した。彼は、中立派も旧古王派からも一目置かれるこの国の叡智そのものだったからだ。アクアやルーナ、そしてヴァルキリアからも、ソフスの眼中にかなうということが、この盟約軍の正当性の証明になる、と言われていたのだ。
 賢者ソフスの登用が終わると、玉座の間には、物流・貿易次長の任を受けた|放浪の運び屋《ウィンド・ランナー》が呼び込まれた。
 彼はフランクな態度でヒカルの前に立った。
 隣には疾風の遊撃竜姫セフィラと空虚の斥候王ゼファーが控えている。
「やあ、団長さん。ソフスという最高の知識と、ギルティアという最高の財源を手に入れた。君の王国は、私が提供する人間社会との通商ルートと兵站輸送で、安泰だろう」
 |放浪の運び屋《ウィンド・ランナー》は、王国の明るい見通しを立ててみせながら、ヒカルを揺さぶった。
「だが、そのあとはどうするつもりなんだい?君の優しさで、竜族の国内統一はできた。だが、その先にいるのは、人間社会の腐敗と、魔王軍の脅威だ。このままじゃ、君の優しさは、巨大な戦争の前に、いつか折れてしまう。その優しさで、仇敵カインのいる人間社会に、どう立ち向かうつもりなんだい?」
 ヒカルは即答できなかった。
 彼の脳裏には、仇敵カインの冷酷な笑みと、リリアを失った悲劇がフラッシュバックする。王としての覚悟が、静かに試されていた。
「君の答えを待っているぜ、ヒカル王よ。正式な答えを待っている」
 |放浪の運び屋《ウィンド・ランナー》の言葉は、ヒカルの心に重くのしかかる。
 その瞬間、ヒカルの「絆の共感者」の異能が、セフィラとゼファーの心の波を捉えた。彼らの愛の音色は、「王の覚悟の揺らぎ」というノイズに動揺し、軍全体の士気に関わることを示唆していた。
 疾風の遊撃竜姫セフィラは、|放浪の運び屋《ウィンド・ランナー》に言い返す。
「団長(ヒカル)は、最高の冒険を続けるさ!彼の優しさが、世界を支配するんだ!」
 空虚の斥候王ゼファーは、セフィラの言葉を補強する。
「王よ、セフィラ様の言う通りです。貴方の優しさの哲学は、仇敵カインという最大の非合理を討つことでしか、世界に証明できません」
 セフィラとゼファーの切実な動揺は、玉座の間にいる六龍姫や六天将にも瞬時に伝播した。
 紅蓮の激情竜姫レヴィアの炎は、ヒカルの迷いに「嫉妬と怒り」の炎を燃やし、蒼玉の理性竜姫アクアは、戦略盤の前に立ち、「論理的な結論を出せ」と沈黙の圧力をかけた。
 ヒカルは、妻たちの愛のすべてが、「人間社会への介入」という一つの答えを求めていることを痛感した。
「|放浪の運び屋《ウィンド・ランナー》。お前の問いは、王の最終的な義務だ。お前が提供する物流の生命線は、その義務を果たすための絶対的な基盤となる」
 セフィラは歓喜の声を上げ、契約成功の報酬としてヒカルとの高速空中デートを独占。ヒカルの王としての覚悟の揺らぎを、自由な愛で吹き飛ばそうとする。
 最後に、ヒカルは全ての軍団と官僚を見渡し、王としての最終的な目標を改めて宣言した。
「お前たちの愛が勝ち取ったこの国は、力と優しさが共存する理想郷として復興させる。その第一歩として、法務、行政、財務、物流、諜報、そして文化という、六つの柱を早急に完成させる」
「私の使命は、人間と竜が真に共存できる世界を創造することだ。その復興という名の王の義務が、優しさが最強の力であることを、世界に証明する!」
 この宣言により、新王国の復興という巨大な目標が、六龍姫と六天将の愛の競争の舞台となった。ヒカルの開戦への最終的な決意は、次の第53話に持ち越されることとなった。
【第52話へ続く】