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逆噴射なしでの着陸

ー/ー



 滑走路が近づいてきた。
 俺は300人以上の命を預かっている。

 操縦桿を持つ手がふるえる。

 副機長にフラップの指示を出す。
 高速の時にフラップを出すと破損してしまうので速度制限(VFE)がある。

「フラップ15」

「スピードチェック フラップ15」

「フラップ25」

「スピードチェック フラップ25」

 維持してきた速度と高度を、ここで一気に落としていく。

 対地接近警報装置(GPWS)が機体の高度を音声で流してくれる。
 計器を見なくても高度が分かるよう、GPWSが音声で高度を読み上げてくれるのだ。

GPWS「500……シンクレイト(降下率異常)! シンクレイト!」

 降下率が過大であるため、対地接近警報装置(GPWS)に警告されてしまう。こればかりは仕方ない。

GPWS「200…… アプローチング(接近中) ミニマム(着陸決心高度)

ランウェイ(滑走路) インサイト(視認)

GPWS「ミニマム(着陸決心高度)


 俺は発声する。

コンティニュー(着陸続行)

 ゴーアラウンドは不可能。
 着陸の一択だ。

 副機長が応える。

「ラジャー」


GPWS「100……50……30……20……10……5……」

 ガツン!!

 強い振動が機体に伝わる。

 逆噴射は使えない。
 そのため、いつもより強めに滑走路に車輪をぶつけることで、運動エネルギーを地上へと分散させたのだ。

「スピードブレーキ アップ」

 翼からスポイラーが立ち上がる。
 空気抵抗を使うことでブレーキをかけるのだ。
 タイヤのブレーキも作動させるが、果たしてこの速度を抑えられるだろうか。
 摩擦熱で発火する可能性もある。

 速度は落ちていく。
 止まってくれ……
 オーバーランだけは絶対に避けたい。


 ……速度80……速度60……


 …………止まった。


 滑走路の端になってしまったが、なんとか止めることができた!

 管制から無線が入る。

『ナイスランディング! エマージェンシービークル(緊急車両) スタンバイ』

「サンキュー」

 サイレンを鳴らしながら、消防車がどんどん集まってくる。

 逆噴射なしの着陸を行ったのだ。
 タイヤのブレーキにかなりの負担がかかったはず。
 発火している可能性もある。
 今、消防隊が火災の有無を点検してくれている。


 俺はキャビンにアナウンスした。

「当機は羽田空港に着陸しました」

 こころなしか、キャビンから拍手や喝采の声が聞こえてきたような気がする。
 俺はアナウンスを続ける。

「姿勢は元に戻して大丈夫です。ただいま、消防隊が火災の有無を点検しております。点検が終わり次第、当機は駐機場に移動予定です。今しばらくお待ちください」

 俺にはまだやるべきことがある。

「パーキングブレーキ セット」

 スロットル横にあるレバーを引く。

「セット」

「スピードブレーキレバー ダウン」

「ダウン」

 この後、爆発などがおきて緊急脱出することになった場合、スポイラーが展開していると翼の上から脱出する乗客の邪魔になってしまうため、収納する。

「フラップレバー 40」

「フラップ 40」

 これも同じような理由だ。
 前方と後方にある非常口は開けると脱出用シューターが出てくるが、主翼の上に脱出する非常口にはシューターがついていない。
 なので、主翼から乗客が地上に降りる滑り台代わりにするために、フラップの角度を最大限に下げておく。

 管制から無線が入る。

『ソリスピエアライン2025 安全を確認。これより、トーイングカーで牽引します』

「ラジャー」

 パーキングブレーキを解除する。
 ソリスピエアライン2025便は牽引されて駐機場に到着した。

 CAは業務連絡放送を行う。

「業務連絡です。客室乗務員はドアモードをディスアームドに変更してください」

 俺はキャビンに最後のアナウンスをする。

「皆様、当機は羽田空港に到着しました。この度は大変不安な思いをさせてしまい、また、目的地に到着できず、誠に申し訳ございませんでした」




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みんなのリアクション

 滑走路が近づいてきた。
 俺は300人以上の命を預かっている。
 操縦桿を持つ手がふるえる。
 副機長にフラップの指示を出す。
 高速の時にフラップを出すと破損してしまうので|速度制限《VFE》がある。
「フラップ15」
「スピードチェック フラップ15」
「フラップ25」
「スピードチェック フラップ25」
 維持してきた速度と高度を、ここで一気に落としていく。
 |対地接近警報装置《GPWS》が機体の高度を音声で流してくれる。
 計器を見なくても高度が分かるよう、GPWSが音声で高度を読み上げてくれるのだ。
GPWS「500……|シンクレイト《降下率異常》! シンクレイト!」
 降下率が過大であるため、|対地接近警報装置《GPWS》に警告されてしまう。こればかりは仕方ない。
GPWS「200…… |アプローチング《接近中》 |ミニマム《着陸決心高度》」
「|ランウェイ《滑走路》 |インサイト《視認》」
GPWS「|ミニマム《着陸決心高度》」
 俺は発声する。
「|コンティニュー《着陸続行》」
 ゴーアラウンドは不可能。
 着陸の一択だ。
 副機長が応える。
「ラジャー」
GPWS「100……50……30……20……10……5……」
 ガツン!!
 強い振動が機体に伝わる。
 逆噴射は使えない。
 そのため、いつもより強めに滑走路に車輪をぶつけることで、運動エネルギーを地上へと分散させたのだ。
「スピードブレーキ アップ」
 翼からスポイラーが立ち上がる。
 空気抵抗を使うことでブレーキをかけるのだ。
 タイヤのブレーキも作動させるが、果たしてこの速度を抑えられるだろうか。
 摩擦熱で発火する可能性もある。
 速度は落ちていく。
 止まってくれ……
 オーバーランだけは絶対に避けたい。
 ……速度80……速度60……
 …………止まった。
 滑走路の端になってしまったが、なんとか止めることができた!
 管制から無線が入る。
『ナイスランディング! |エマージェンシービークル《緊急車両》 スタンバイ』
「サンキュー」
 サイレンを鳴らしながら、消防車がどんどん集まってくる。
 逆噴射なしの着陸を行ったのだ。
 タイヤのブレーキにかなりの負担がかかったはず。
 発火している可能性もある。
 今、消防隊が火災の有無を点検してくれている。
 俺はキャビンにアナウンスした。
「当機は羽田空港に着陸しました」
 こころなしか、キャビンから拍手や喝采の声が聞こえてきたような気がする。
 俺はアナウンスを続ける。
「姿勢は元に戻して大丈夫です。ただいま、消防隊が火災の有無を点検しております。点検が終わり次第、当機は駐機場に移動予定です。今しばらくお待ちください」
 俺にはまだやるべきことがある。
「パーキングブレーキ セット」
 スロットル横にあるレバーを引く。
「セット」
「スピードブレーキレバー ダウン」
「ダウン」
 この後、爆発などがおきて緊急脱出することになった場合、スポイラーが展開していると翼の上から脱出する乗客の邪魔になってしまうため、収納する。
「フラップレバー 40」
「フラップ 40」
 これも同じような理由だ。
 前方と後方にある非常口は開けると脱出用シューターが出てくるが、主翼の上に脱出する非常口にはシューターがついていない。
 なので、主翼から乗客が地上に降りる滑り台代わりにするために、フラップの角度を最大限に下げておく。
 管制から無線が入る。
『ソリスピエアライン2025 安全を確認。これより、トーイングカーで牽引します』
「ラジャー」
 パーキングブレーキを解除する。
 ソリスピエアライン2025便は牽引されて駐機場に到着した。
 CAは業務連絡放送を行う。
「業務連絡です。客室乗務員はドアモードをディスアームドに変更してください」
 俺はキャビンに最後のアナウンスをする。
「皆様、当機は羽田空港に到着しました。この度は大変不安な思いをさせてしまい、また、目的地に到着できず、誠に申し訳ございませんでした」