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第三部・第4章〜三大配信者 芦宮高校最大の決戦〜①

ー/ー



 6月20日(月)

 〜黄瀬壮馬(きせそうま)の見解〜

 前日にバドミントン部と吹奏楽部の活動のようすを撮影し終えたボクは、心地よい疲労感を覚えながら、週明けを迎えた。

 午前中は、市内の体育館でバドミントン部の新人戦の撮影、午後には、吹奏楽部の練習風景の撮影というハードスケジュールでだったけど、ボクだけでなく、文芸部のみんなも高いモチベーションを保って活動ができていたんじゃないかと思う。

 週明け、登校して教室に着いてすぐ、文芸部の部長さんに、

「昨日は、お疲れさまでした。結構タイトなスケジュールだったんじゃないかと思うけど、天竹(あまたけ)さんもみんなも、体調は大丈夫?」

と、声をかけると、彼女は笑顔を見せて、こんな風に答えてくれた。

「はい! たしかに、これまでの文芸部の活動内容とは正反対の体力勝負でしたけど……昨日は、みんな楽しんでいたみたいですよ。撮影が終わってしまうのが寂しい、という声が聞こえてきましたから」
 
 正確に言うと、まだ、来週末の吹奏楽部の卒業生との演奏会に同行する撮影が残っているので、すべての活動が終わってしまったわけではないんだけど……。
 文芸部のみんなと一緒に活動するのは、その吹奏楽部演奏会の撮影を残すのみだ。

「そっか……今回は、大変なことも多かったけど……もう、みんなで活動する機会が少ないんだな、って思うと、なんだか名残惜しい気がするね……」

 ボクが、そう返答すると、天竹(あまたけ)さんも同じように感じているのか、同意するようにうなずいて、

「そうですね……私たち文芸部にとっては、とても新鮮な経験でしたし……普段から、こんな活動をしている黄瀬くんたちは、あらためてスゴいんだな、と感じました」

と、感想を述べる。

「いや、他の部員や先輩たちはともかく、ボクも他のクラブとの渉外(しょうがい)交渉は、苦手分野だったから……天竹(あまたけ)さんや、文芸部のみんながいなかったら、こんなに多くのクラブの取材なんて、とてもできなかったと思うよ」

 ボクが恐縮しながら返答すると、文芸部の代表者さんは、

「そうであったとしても、黄瀬くんが、私たちの取材に必ず同席してくれたのは事実ですから……このあと、私たちにできることは少ないかも知れませんけど、なにか困ったことなどがあれば、遠慮せずに声をかけてください! 文芸部は、いつでも協力しますから!」

と、力強い言葉を返してくれた。

 その言葉だけでも、ボクは十分に勇気をもらった気持ちになる。
 動画を提出するまでの残り期間の関係上、吹奏楽部の演奏会を撮影する前に、これまで撮影した映像の編集を進めておかなければならないので、今日の放課後から、ボクは、その作業に入るつもりだ。
 
 天竹さんの席から、自分の席に戻ると、

「壮馬たちは、クラブ取材は終わったのか?」

先週末に行われた最後の連絡会で、お互いのグループの近況について、確認しあった竜司がたずねてきた。

「金曜日に話したとおり、ほとんどはね……あとは、吹奏楽部の演奏会のようすを撮影するだけだよ」

 ようやく、肩の荷が下りる寸前のところまで来たので、前日のハードスケジュールのことを思い出しながら、苦笑して返事をすると、

「そうか……オレたちは、このあともクラブ訪問の連続だ……やっぱり、モモカとふたりで、二十近くのクラブを取材するのは無茶だったな……」

と、友人は自嘲気味な笑顔を見せる。
 すると、ボクらの会話に割り込んでくる生徒がいた。

「だから、協力するクラブの数は、少なくすれば良かったのに……クロ、ちょっと、顔色が悪いよ?」

 教室後方の席に座るボクと竜司の会話に割って入ってくるような存在は、クラスにそう多くない。
 声の主は、予想どおり白草さんだった。

「シロと違って、こっちは、組織票を固めなきゃいけないからな……当初の予定では、提携したクラブの部員数だけで、三分の一の票を獲得できると見込んでいたんだが……やっぱり、そう上手くはいかないもんだな……」

「竜司たちは、手を広げすぎたんだよ……ボクらは、六人がかりで竜司たちの半分くらいのクラブを取材するのが、やっとだったんだから」

 友人の言葉に返答すると、またも、白草さんが割って入り、嬉々として語る。

「そうそう! 少数精鋭で、ジックリ作り込んだ動画の方が、たくさんの人に見てもらえるよ? 宣伝期間もタップリと取れるしね……そうだ! このコンテストが終わったら、動画をバズらせるコツをクロにも教えてあげる!」

 いつもどおりの自信に満ちた発言。
 どうやら、彼女は、今回の『PR動画コンテスト』で、自分たちが敗れる可能性があるということを微塵(みじん)も考えていないようだ。
 
 しかも、こうした上から目線の言動に、男子が、どんなふうに感じるか、まったく考慮していないようだ。
 
 たしかに、彼女は、一◯◯万人以上のフォロワーを有するインフルエンサーかも知れないけど、ボクらにだって、広報部で活動してきた意地というものがある。
 いつまでも、好きなように言われっぱなしというのも面白くはない。
 
 いまの段階でも、白草さんを憎からず想っているだろう竜司がどう感じているかはわからないけど……。
 ボクは、密かに、打倒・白草四葉の気持ちを新たにした。


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 6月20日(月)
 〜|黄瀬壮馬《きせそうま》の見解〜
 前日にバドミントン部と吹奏楽部の活動のようすを撮影し終えたボクは、心地よい疲労感を覚えながら、週明けを迎えた。
 午前中は、市内の体育館でバドミントン部の新人戦の撮影、午後には、吹奏楽部の練習風景の撮影というハードスケジュールでだったけど、ボクだけでなく、文芸部のみんなも高いモチベーションを保って活動ができていたんじゃないかと思う。
 週明け、登校して教室に着いてすぐ、文芸部の部長さんに、
「昨日は、お疲れさまでした。結構タイトなスケジュールだったんじゃないかと思うけど、|天竹《あまたけ》さんもみんなも、体調は大丈夫?」
と、声をかけると、彼女は笑顔を見せて、こんな風に答えてくれた。
「はい! たしかに、これまでの文芸部の活動内容とは正反対の体力勝負でしたけど……昨日は、みんな楽しんでいたみたいですよ。撮影が終わってしまうのが寂しい、という声が聞こえてきましたから」
 正確に言うと、まだ、来週末の吹奏楽部の卒業生との演奏会に同行する撮影が残っているので、すべての活動が終わってしまったわけではないんだけど……。
 文芸部のみんなと一緒に活動するのは、その吹奏楽部演奏会の撮影を残すのみだ。
「そっか……今回は、大変なことも多かったけど……もう、みんなで活動する機会が少ないんだな、って思うと、なんだか名残惜しい気がするね……」
 ボクが、そう返答すると、|天竹《あまたけ》さんも同じように感じているのか、同意するようにうなずいて、
「そうですね……私たち文芸部にとっては、とても新鮮な経験でしたし……普段から、こんな活動をしている黄瀬くんたちは、あらためてスゴいんだな、と感じました」
と、感想を述べる。
「いや、他の部員や先輩たちはともかく、ボクも他のクラブとの|渉外《しょうがい》交渉は、苦手分野だったから……|天竹《あまたけ》さんや、文芸部のみんながいなかったら、こんなに多くのクラブの取材なんて、とてもできなかったと思うよ」
 ボクが恐縮しながら返答すると、文芸部の代表者さんは、
「そうであったとしても、黄瀬くんが、私たちの取材に必ず同席してくれたのは事実ですから……このあと、私たちにできることは少ないかも知れませんけど、なにか困ったことなどがあれば、遠慮せずに声をかけてください! 文芸部は、いつでも協力しますから!」
と、力強い言葉を返してくれた。
 その言葉だけでも、ボクは十分に勇気をもらった気持ちになる。
 動画を提出するまでの残り期間の関係上、吹奏楽部の演奏会を撮影する前に、これまで撮影した映像の編集を進めておかなければならないので、今日の放課後から、ボクは、その作業に入るつもりだ。
 天竹さんの席から、自分の席に戻ると、
「壮馬たちは、クラブ取材は終わったのか?」
先週末に行われた最後の連絡会で、お互いのグループの近況について、確認しあった竜司がたずねてきた。
「金曜日に話したとおり、ほとんどはね……あとは、吹奏楽部の演奏会のようすを撮影するだけだよ」
 ようやく、肩の荷が下りる寸前のところまで来たので、前日のハードスケジュールのことを思い出しながら、苦笑して返事をすると、
「そうか……オレたちは、このあともクラブ訪問の連続だ……やっぱり、モモカとふたりで、二十近くのクラブを取材するのは無茶だったな……」
と、友人は自嘲気味な笑顔を見せる。
 すると、ボクらの会話に割り込んでくる生徒がいた。
「だから、協力するクラブの数は、少なくすれば良かったのに……クロ、ちょっと、顔色が悪いよ?」
 教室後方の席に座るボクと竜司の会話に割って入ってくるような存在は、クラスにそう多くない。
 声の主は、予想どおり白草さんだった。
「シロと違って、こっちは、組織票を固めなきゃいけないからな……当初の予定では、提携したクラブの部員数だけで、三分の一の票を獲得できると見込んでいたんだが……やっぱり、そう上手くはいかないもんだな……」
「竜司たちは、手を広げすぎたんだよ……ボクらは、六人がかりで竜司たちの半分くらいのクラブを取材するのが、やっとだったんだから」
 友人の言葉に返答すると、またも、白草さんが割って入り、嬉々として語る。
「そうそう! 少数精鋭で、ジックリ作り込んだ動画の方が、たくさんの人に見てもらえるよ? 宣伝期間もタップリと取れるしね……そうだ! このコンテストが終わったら、動画をバズらせるコツをクロにも教えてあげる!」
 いつもどおりの自信に満ちた発言。
 どうやら、彼女は、今回の『PR動画コンテスト』で、自分たちが敗れる可能性があるということを|微塵《みじん》も考えていないようだ。
 しかも、こうした上から目線の言動に、男子が、どんなふうに感じるか、まったく考慮していないようだ。
 たしかに、彼女は、一◯◯万人以上のフォロワーを有するインフルエンサーかも知れないけど、ボクらにだって、広報部で活動してきた意地というものがある。
 いつまでも、好きなように言われっぱなしというのも面白くはない。
 いまの段階でも、白草さんを憎からず想っているだろう竜司がどう感じているかはわからないけど……。
 ボクは、密かに、打倒・白草四葉の気持ちを新たにした。