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ー/ー 冷たい床の上でわたしは動けずにいる。痛い。寒い。そんな感覚も次第に消え去り、辺りにはただ闇が広がる。
永遠に続くかのような漆黒の世界。それはあるとき急に終わりを告げる。最初は音。どこか遠くから聞こえるような微かな金属音と誰かの笑い声。次に匂い。温かくて少し土っぽい、何かを焼いたみたいな香り。
動けずにいたはずのわたしの体は、気が付くとどこか柔らかいものの上に座っている。目に光を感じ、やがて視界が広がる。
「うまい、うまいよぉ」
「渚、ちょっとがっつきすぎよ。もう少し落ち着いて食べなさい」
「えー。だってすごく美味しいんだもん、このパエリア。雪乃、食べないの? だったら、もーらいっ」
「あ、ちょっと! 食べないなんて言ってないでしょう? 大体、まだ自分の皿に残ってるじゃない。なんで人の皿から取るのよ」
テーブルの向かいに座っているのは渚と雪乃。二人のやりとりを見て、わたしの隣に座る美夕がくすくすと控えめな笑い声を上げる。
テーブルの上にはサラダやポットパイ、ローストビーフにピザ、そしてパエリアと色とりどりの料理。視線を上に向けると動物や星、ハートの形を模したガーランドにスマイルバルーン。レターバナーが形作るのは「HAPPY BIRTHDAY MITSUKI」の文字。
そう。今日は美夕の誕生日。それをみんなで祝おうと、渚と雪乃と一緒に美夕の家に集まった。高校生にもなってお誕生日会なんてちょっと子どもっぽいような気もするけれど、べつに年齢制限があるわけでもないし、友だちの誕生日を盛大に祝うのは悪いことじゃない。
隣の美夕に目をやると、視線に気づいた美夕がわたしに向かってにっこりと微笑んだ。今日、美夕は十六歳になった。美夕にとって十六回目の誕生日。わたしにとっては二十回、三十回目の誕生日かもしれない。
正確な回数はわからない。けれど今日、この時間をわたしはもう何度も繰り返している。理由も不明。でも、そのトリガーとなる出来事だけははっきりしている。
視線を美夕から、渚、雪乃と順に向ける。五感を完全に取り戻した今、友人たちの顔がクリアに見える。おっとりと、物を頬張りながら、少し困ったように。種類は違えど、それぞれに笑顔を浮かべる三人の友人たち。
そして、今日――
この中の誰かに、わたしは殺される。
永遠に続くかのような漆黒の世界。それはあるとき急に終わりを告げる。最初は音。どこか遠くから聞こえるような微かな金属音と誰かの笑い声。次に匂い。温かくて少し土っぽい、何かを焼いたみたいな香り。
動けずにいたはずのわたしの体は、気が付くとどこか柔らかいものの上に座っている。目に光を感じ、やがて視界が広がる。
「うまい、うまいよぉ」
「渚、ちょっとがっつきすぎよ。もう少し落ち着いて食べなさい」
「えー。だってすごく美味しいんだもん、このパエリア。雪乃、食べないの? だったら、もーらいっ」
「あ、ちょっと! 食べないなんて言ってないでしょう? 大体、まだ自分の皿に残ってるじゃない。なんで人の皿から取るのよ」
テーブルの向かいに座っているのは渚と雪乃。二人のやりとりを見て、わたしの隣に座る美夕がくすくすと控えめな笑い声を上げる。
テーブルの上にはサラダやポットパイ、ローストビーフにピザ、そしてパエリアと色とりどりの料理。視線を上に向けると動物や星、ハートの形を模したガーランドにスマイルバルーン。レターバナーが形作るのは「HAPPY BIRTHDAY MITSUKI」の文字。
そう。今日は美夕の誕生日。それをみんなで祝おうと、渚と雪乃と一緒に美夕の家に集まった。高校生にもなってお誕生日会なんてちょっと子どもっぽいような気もするけれど、べつに年齢制限があるわけでもないし、友だちの誕生日を盛大に祝うのは悪いことじゃない。
隣の美夕に目をやると、視線に気づいた美夕がわたしに向かってにっこりと微笑んだ。今日、美夕は十六歳になった。美夕にとって十六回目の誕生日。わたしにとっては二十回、三十回目の誕生日かもしれない。
正確な回数はわからない。けれど今日、この時間をわたしはもう何度も繰り返している。理由も不明。でも、そのトリガーとなる出来事だけははっきりしている。
視線を美夕から、渚、雪乃と順に向ける。五感を完全に取り戻した今、友人たちの顔がクリアに見える。おっとりと、物を頬張りながら、少し困ったように。種類は違えど、それぞれに笑顔を浮かべる三人の友人たち。
そして、今日――
この中の誰かに、わたしは殺される。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
冷たい床の上でわたしは動けずにいる。痛い。寒い。そんな感覚も次第に消え去り、辺りにはただ闇が広がる。
永遠に続くかのような漆黒の世界。それはあるとき急に終わりを告げる。最初は音。どこか遠くから聞こえるような微かな金属音と誰かの笑い声。次に匂い。温かくて少し土っぽい、何かを焼いたみたいな香り。
動けずにいたはずのわたしの体は、気が付くとどこか柔らかいものの上に座っている。目に光を感じ、やがて視界が広がる。
「うまい、うまいよぉ」
「|渚《なぎさ》、ちょっとがっつきすぎよ。もう少し落ち着いて食べなさい」
「えー。だってすごく美味しいんだもん、このパエリア。|雪乃《ゆきの》、食べないの? だったら、もーらいっ」
「あ、ちょっと! 食べないなんて言ってないでしょう? 大体、まだ自分の皿に残ってるじゃない。なんで人の皿から取るのよ」
テーブルの向かいに座っているのは渚と雪乃。二人のやりとりを見て、わたしの隣に座る|美夕《みゆ》がくすくすと控えめな笑い声を上げる。
テーブルの上にはサラダやポットパイ、ローストビーフにピザ、そしてパエリアと色とりどりの料理。視線を上に向けると動物や星、ハートの形を模したガーランドにスマイルバルーン。レターバナーが形作るのは「HAPPY BIRTHDAY MITSUKI」の文字。
そう。今日は美夕の誕生日。それをみんなで祝おうと、渚と雪乃と一緒に美夕の家に集まった。高校生にもなってお誕生日会なんてちょっと子どもっぽいような気もするけれど、べつに年齢制限があるわけでもないし、友だちの誕生日を盛大に祝うのは悪いことじゃない。
隣の美夕に目をやると、視線に気づいた美夕がわたしに向かってにっこりと微笑んだ。今日、美夕は十六歳になった。美夕にとって十六回目の誕生日。わたしにとっては二十回、三十回目の誕生日かもしれない。
正確な回数はわからない。けれど今日、この時間をわたしはもう何度も繰り返している。理由も不明。でも、そのトリガーとなる出来事だけははっきりしている。
視線を美夕から、渚、雪乃と順に向ける。五感を完全に取り戻した今、友人たちの顔がクリアに見える。おっとりと、物を頬張りながら、少し困ったように。種類は違えど、それぞれに笑顔を浮かべる三人の友人たち。
そして、今日――
この中の誰かに、わたしは殺される。
永遠に続くかのような漆黒の世界。それはあるとき急に終わりを告げる。最初は音。どこか遠くから聞こえるような微かな金属音と誰かの笑い声。次に匂い。温かくて少し土っぽい、何かを焼いたみたいな香り。
動けずにいたはずのわたしの体は、気が付くとどこか柔らかいものの上に座っている。目に光を感じ、やがて視界が広がる。
「うまい、うまいよぉ」
「|渚《なぎさ》、ちょっとがっつきすぎよ。もう少し落ち着いて食べなさい」
「えー。だってすごく美味しいんだもん、このパエリア。|雪乃《ゆきの》、食べないの? だったら、もーらいっ」
「あ、ちょっと! 食べないなんて言ってないでしょう? 大体、まだ自分の皿に残ってるじゃない。なんで人の皿から取るのよ」
テーブルの向かいに座っているのは渚と雪乃。二人のやりとりを見て、わたしの隣に座る|美夕《みゆ》がくすくすと控えめな笑い声を上げる。
テーブルの上にはサラダやポットパイ、ローストビーフにピザ、そしてパエリアと色とりどりの料理。視線を上に向けると動物や星、ハートの形を模したガーランドにスマイルバルーン。レターバナーが形作るのは「HAPPY BIRTHDAY MITSUKI」の文字。
そう。今日は美夕の誕生日。それをみんなで祝おうと、渚と雪乃と一緒に美夕の家に集まった。高校生にもなってお誕生日会なんてちょっと子どもっぽいような気もするけれど、べつに年齢制限があるわけでもないし、友だちの誕生日を盛大に祝うのは悪いことじゃない。
隣の美夕に目をやると、視線に気づいた美夕がわたしに向かってにっこりと微笑んだ。今日、美夕は十六歳になった。美夕にとって十六回目の誕生日。わたしにとっては二十回、三十回目の誕生日かもしれない。
正確な回数はわからない。けれど今日、この時間をわたしはもう何度も繰り返している。理由も不明。でも、そのトリガーとなる出来事だけははっきりしている。
視線を美夕から、渚、雪乃と順に向ける。五感を完全に取り戻した今、友人たちの顔がクリアに見える。おっとりと、物を頬張りながら、少し困ったように。種類は違えど、それぞれに笑顔を浮かべる三人の友人たち。
そして、今日――
この中の誰かに、わたしは殺される。