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第2楽章〜アダージョ〜⑤

ー/ー



 同日 午前10時〜

 〜佐倉桃華の想い〜

「それじゃ、赤ペンでチェックを入れた、ココとココとココ……それから、最後のところも修正して。あと、さっき言った映像の修正もあるから、忘れないでね」

「は、はい……わかりました。すぐに修正に取り掛かります」

「そう……1年生としては、貴方も宮野さんも本当に良くがんばってくれたと思うけど……修正作業は一人でも大丈夫? なんなら、3年生のみんなにも声をかけましょうか?」

「いえ、大丈夫です! 先輩方に迷惑は掛けられませんから……すぐに、放送室に戻って作業に入ります」

「そう……わかったわ。今日は、下校時間になる夕方まで、ここにいるつもりだから、遠慮なく相談に来なさい」

 この日の朝、夏休み中の学校に登校したワタシは、すぐに図書室にいる鳳花(ほうか)部長の元を訪ねて、自分と宮野さんが主体になって作成した高校野球の開会式に関連する取材記録を確認してもらった。

 鳳花先輩は、ワタシが尊敬する部長らしく、いつものとおりに、落ち着き払ったようすで淡々と映像や取材日誌に目を通していた。

 自分たちでは、完璧に近い内容のものが仕上がった、と自負していたんだけど……。

 そうした、若さと経験不足からくる自信は、ものの見事に砕かれ、部長からは映像と文章をあわせて、10ヵ所以上のダメ出しをされて、ワタシの心は折れそうになっていた。

 ただ、ここで、へこんでいる場合ではないし、3年生の先輩たちにチカラを貸してもらう……ということは自分にとっては、()()であり、()()であるような気がする。

 自分でも厄介な性格をしているな、と自覚しつつ、修正作業を独力でやり遂げようと心に誓って、編集作業の場にしている放送室に戻る。
 
(さあ、早く修正作業を終えないと……)

 そう決意したものの、予想以上に多かった修正依頼の数を考えると、いますぐに、映像編集のやり直しや文章の修正作業に入る、というところまでには気分転換できていなかった。

(作業に入る前に合宿所周辺の場所をもう一回、確認しておこう)

 作業のモチベーションアップのために、ノートPCを開いたワタシは、明日の午後に訪れる予定の白咲青少年の家の周辺施設の情報を検索する。

 前日も調べておいたけど、気になるのは、やっぱり、白咲海岸の風景だ。吹奏楽部の合宿所から歩いて十数分の場所にあるこの場所は、インターネット上にも、たくさんの画像情報があり、晴れた日の夕暮れは、さぞかし美しい光景が見られるだろう、と期待が高まる。

(はあ……こんな場所で好きな人と夕陽を見られたら、幸せだろうなぁ……)

 今朝の晴れ渡った空を思い出しつつ、その青空が夕焼け色に染まっていく光景を想像しながら、ワタシはため息をつく。

(「晴天を誉めるなら夕暮れを待て」と歌ってたのは、誰だっけ?)

 そんなことを考えながら、無意識に楽曲のタイトルを検索し、YourTubeで曲を再生させる。

 そうして、気分転換を終えたワタシは、修正作業に取り掛かる。

 まずは、映像の修正作業だ。まず、鳳花部長から、修正指示があった箇所にマーカーを打っていく。修正が完了したら別の色に変えて、作業漏れを防ぐのだ。まだ、きぃセンパイほど素早く作業を行えるわけじゃないけど、ショートカットキーなどを活用して、少しでも早く作業を終えられるように工夫する。

 先輩から映像の修正を指示された箇所は、全部で6つ。

 ・カット・トリミングの調整は、指定されたシーンの長さの変更や、不要な部分の削除などを行う。

 ・テロップ(字幕)の修正では、誤字脱字の修正、文字のフォントや表示タイミング、デザインの変更を行った。

 ・BGM&効果音(SE)の調整では、楽曲の変更や音量のバランス調整、効果音の追加・削除・変更を実施。

 ・映像&画像の差し替えおよび追加では、指定された静止画や動画素材への差し替え、新しい素材の挿入を行う。

 ・色調補正やエフェクトの調整では、映像の色味や明るさを変更し、トランジションと呼ばれる画面切り替え効果や各種のエフェクトを見直す。

 ・音声の調整では、ナレーションや会話の音量や音質の調整を行い、可能な限りノイズ除去を実施した。

 淡々と作業を進めながら、これだけの内容を素早く仕上げて、鳳花部長から、ほとんどダメ出しをされない、きぃセンパイのスキルの高さを思い出して、また、ため息が漏れる。

 それでも――――――。

(これだけ、がんばったら、くろセンパイは誉めてくれるかな?)

 そんなことが頭をよぎって、ほおが緩みそうになる自分を諌めた。

 普段、誰かに誉められても、さして感情を動かされないワタシだけど、鳳花部長や、きぃセンパイ、そして、くろセンパイなど、自分にとって尊敬すべき先輩たちからいただく称賛の言葉は、広報部での自分の活動に対する大きなモチベーションアップの要因になっていた。

(特に、キレイな夕陽が見える海岸で、くろセンパイに誉めてもらえたら……)

 目の前の作業と、くろセンパイと一緒に目にするかも知れない景色のことで頭がいっぱいになっていたワタシは、宮野さんと彼女を誘ったいけすかない上級生が、どこで撮影を行い、どこの宿泊施設に泊まるのか確認していないことをすっかり忘れていた。

 そして、結局、すべての修正作業を終えて、鳳花部長から作業完了のお墨付きをもらったのは、もう夕方に近い時間帯だった。


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 同日 午前10時〜
 〜佐倉桃華の想い〜
「それじゃ、赤ペンでチェックを入れた、ココとココとココ……それから、最後のところも修正して。あと、さっき言った映像の修正もあるから、忘れないでね」
「は、はい……わかりました。すぐに修正に取り掛かります」
「そう……1年生としては、貴方も宮野さんも本当に良くがんばってくれたと思うけど……修正作業は一人でも大丈夫? なんなら、3年生のみんなにも声をかけましょうか?」
「いえ、大丈夫です! 先輩方に迷惑は掛けられませんから……すぐに、放送室に戻って作業に入ります」
「そう……わかったわ。今日は、下校時間になる夕方まで、ここにいるつもりだから、遠慮なく相談に来なさい」
 この日の朝、夏休み中の学校に登校したワタシは、すぐに図書室にいる|鳳花《ほうか》部長の元を訪ねて、自分と宮野さんが主体になって作成した高校野球の開会式に関連する取材記録を確認してもらった。
 鳳花先輩は、ワタシが尊敬する部長らしく、いつものとおりに、落ち着き払ったようすで淡々と映像や取材日誌に目を通していた。
 自分たちでは、完璧に近い内容のものが仕上がった、と自負していたんだけど……。
 そうした、若さと経験不足からくる自信は、ものの見事に砕かれ、部長からは映像と文章をあわせて、10ヵ所以上のダメ出しをされて、ワタシの心は折れそうになっていた。
 ただ、ここで、へこんでいる場合ではないし、3年生の先輩たちにチカラを貸してもらう……ということは自分にとっては、|甘《・》|え《・》であり、|負《・》|け《・》であるような気がする。
 自分でも厄介な性格をしているな、と自覚しつつ、修正作業を独力でやり遂げようと心に誓って、編集作業の場にしている放送室に戻る。
(さあ、早く修正作業を終えないと……)
 そう決意したものの、予想以上に多かった修正依頼の数を考えると、いますぐに、映像編集のやり直しや文章の修正作業に入る、というところまでには気分転換できていなかった。
(作業に入る前に合宿所周辺の場所をもう一回、確認しておこう)
 作業のモチベーションアップのために、ノートPCを開いたワタシは、明日の午後に訪れる予定の白咲青少年の家の周辺施設の情報を検索する。
 前日も調べておいたけど、気になるのは、やっぱり、白咲海岸の風景だ。吹奏楽部の合宿所から歩いて十数分の場所にあるこの場所は、インターネット上にも、たくさんの画像情報があり、晴れた日の夕暮れは、さぞかし美しい光景が見られるだろう、と期待が高まる。
(はあ……こんな場所で好きな人と夕陽を見られたら、幸せだろうなぁ……)
 今朝の晴れ渡った空を思い出しつつ、その青空が夕焼け色に染まっていく光景を想像しながら、ワタシはため息をつく。
(「晴天を誉めるなら夕暮れを待て」と歌ってたのは、誰だっけ?)
 そんなことを考えながら、無意識に楽曲のタイトルを検索し、YourTubeで曲を再生させる。
 そうして、気分転換を終えたワタシは、修正作業に取り掛かる。
 まずは、映像の修正作業だ。まず、鳳花部長から、修正指示があった箇所にマーカーを打っていく。修正が完了したら別の色に変えて、作業漏れを防ぐのだ。まだ、きぃセンパイほど素早く作業を行えるわけじゃないけど、ショートカットキーなどを活用して、少しでも早く作業を終えられるように工夫する。
 先輩から映像の修正を指示された箇所は、全部で6つ。
 ・カット・トリミングの調整は、指定されたシーンの長さの変更や、不要な部分の削除などを行う。
 ・テロップ(字幕)の修正では、誤字脱字の修正、文字のフォントや表示タイミング、デザインの変更を行った。
 ・BGM&効果音(SE)の調整では、楽曲の変更や音量のバランス調整、効果音の追加・削除・変更を実施。
 ・映像&画像の差し替えおよび追加では、指定された静止画や動画素材への差し替え、新しい素材の挿入を行う。
 ・色調補正やエフェクトの調整では、映像の色味や明るさを変更し、トランジションと呼ばれる画面切り替え効果や各種のエフェクトを見直す。
 ・音声の調整では、ナレーションや会話の音量や音質の調整を行い、可能な限りノイズ除去を実施した。
 淡々と作業を進めながら、これだけの内容を素早く仕上げて、鳳花部長から、ほとんどダメ出しをされない、きぃセンパイのスキルの高さを思い出して、また、ため息が漏れる。
 それでも――――――。
(これだけ、がんばったら、くろセンパイは誉めてくれるかな?)
 そんなことが頭をよぎって、ほおが緩みそうになる自分を諌めた。
 普段、誰かに誉められても、さして感情を動かされないワタシだけど、鳳花部長や、きぃセンパイ、そして、くろセンパイなど、自分にとって尊敬すべき先輩たちからいただく称賛の言葉は、広報部での自分の活動に対する大きなモチベーションアップの要因になっていた。
(特に、キレイな夕陽が見える海岸で、くろセンパイに誉めてもらえたら……)
 目の前の作業と、くろセンパイと一緒に目にするかも知れない景色のことで頭がいっぱいになっていたワタシは、宮野さんと彼女を誘ったいけすかない上級生が、どこで撮影を行い、どこの宿泊施設に泊まるのか確認していないことをすっかり忘れていた。
 そして、結局、すべての修正作業を終えて、鳳花部長から作業完了のお墨付きをもらったのは、もう夕方に近い時間帯だった。