アビス殲滅部隊は、ノワールが提供した情報をもとに、アークライトから半日をかけてアビスの本拠地へと向かっていた。
彼らは、アビスが築いた結界を突破するため、ノワールのハッキング能力を頼りにしていた。
「ノワール、頼むぞ」
ユウキの声に、ノワールはコックピットの中で静かに頷く。
彼女は、アビスの結界を構成する魔力の流れを解析し、その弱点を探っていく。
「ふん、この程度の結界、私に言わせれば単なる魔力の固まりね。…よし、この部分だ!」
ノワールの指示に従い、アストレイアが結界の一部にエネルギーを集中させる。
次の瞬間、結界に亀裂が走り、やがて光の扉が開かれた。
「よし、今だ!突入するぞ!」
ユウキの叫び声に、ヴァルキリー、そして竜騎士中隊のメンバーたちが後に続いた。
アビス本拠地の内部は、予想通り、禍々しい雰囲気に満ちていた。
薄暗い通路には、不気味な模様が刻まれ、奥からは、機械の駆動音が聞こえてくる。
「ユウキ、罠よ!左右からくるわ!」
リアが叫ぶ。その声に、ユウキはアストレイアを操り、左右から迫り来るワイヤーを間一髪で避ける。
「罠だらけだな……!」
ディオンがそう呟いた瞬間、足元の地面が崩れ落ち、無数の幻晶機が待ち構える巨大な空間に落下した。
「クロノス・タイプXが大量にいる!」
ルナが絶望的な声を上げる。
彼らの目の前には、不気味な赤い光を放つ無数のクロノス・タイプXが、待ち伏せしていた。
「これは…!ファントムの部隊か!」
ヴァルキリーが叫んだ。
その時、空間の奥から、二つの人影が姿を現す。
「ふふふ…よく来たな、ユウキ。そして…裏切り者よ」
不気味な笑い声と共に、ファントムが姿を現す。
彼は、クロノス・タイプXをさらに改良した、禍々しいオーラを放つ新型機体に乗っていた。
そして、彼の隣には、幻晶機に乗っていないにもかかわらず、その圧倒的な魔力で空間を歪ませているカオスが立っていた。
「…お前たちに、この世界の未来を語る資格はない」
カオスは、不気味な笑みを浮かべ、ユウキに語りかける。
ヴァルキリーは、カオスとファントムの言葉に、静かに、しかし強い決意を滲ませて答えた。
「ファントム!お前の相手は、この私だ!」
ヴァルキリーは、そう叫ぶと、ヴァルハラを駆り、ファントムへと突撃していった。
「ヴァルキリー…!貴様…!」
ファントムは、信じられないという表情で、ヴァルキリーを見つめていた。
ユウキは、カオスとの対決をヴァルキリーに任せ、無数のクロノス・タイプXとの戦闘に集中する。
「リア、無人機の動きを解析してくれ!」
ユウキが叫ぶと、リアはコックピット内のモニターを高速で叩き、無人機の動きを解析していく。
「ユウキ!無人機の動きは、まるでコンピューターのプログラムのようよ!動きに規則性があるわ!」
リアの言葉に、ユウキはハッとした。彼は、ゲームで培った「パターン読み」の能力を最大限に活かし、無人機の動きを先読みして、次々と撃墜していく。
ノワールは、ユウキたちの戦闘を支援するため、自身のハッキング能力を使い、無人機のシステムを掌握していく。
彼女のハッキングは、無人機の動きを鈍らせ、ユウキたちが戦闘を有利に進めるための大きな手助けとなった。
「ふん、この程度のプログラム、私に言わせれば単なる魔力の固まりね」
ノワールは、不敵な笑みを浮かべ、無人機を次々と掌握していく。
一方、アビス本拠地の中心部では、ヴァルキリーとファントムの激しい戦いが繰り広げられていた。
帝国最強の騎士の実力、さらに伝説機の力をもってしても、ファントムの実力は桁違いであった。
「くっ…!これが…アビスの最高幹部の力か…!」
ヴァルキリーは、ファントムの攻撃を避けながら、必死に反撃を試みる。
その時、ヴァルハラのコアが激しい光を放ち、ヴァルキリーの脳裏に、故郷の風景が鮮明に蘇った。
「故郷…私は…故郷を守れなかった…!でも…!この世界は…!この世界は、私が守る!」
ヴァルキリーの瞳に、強い決意が宿った。彼女は、ヴァルハラの力を最大限に引き出し、ファントムへと突撃していく。
◇◆◇◆◇
出撃後、アークライト上空では、セシリアの指揮の下、帝国軍の猛攻が始まっていた。地平線を埋め尽くすほどの帝国軍の幻晶機が、轟音を立てて進軍してくる。
「全幻晶機部隊、迎撃態勢!カイト大尉、マーリン隊長、迎撃をお願いします!」
セシリアの指示が、アークライト全体に響き渡る。その声は、かつて『鉄血の乙女』と呼ばれた猛将のそれだった。
「了解!」
「お任せください!」
カイトとマーリンは、バハムートとオケアノスを駆り、アークライトの防衛ラインに布陣した。
地平線を埋め尽くすほどの帝国軍の幻晶機が、轟音を立てて進軍してくる。
その先頭には、禍々しいオーラを放つクロノス・タイプXをさらに改良した新型機体がいた。
「あれは…ファントムの部隊…!」
カイトが叫んだ。ファントムの部隊は、クロノス・タイプXをさらに改良した、禍々しいオーラを放つ新型機体に乗っていた。
「カイト殿、オケアノスの力で奴らの進軍を遅らせます!バハムートの力で、地を固めてください!」
マーリンは、そう言うとオケアノスを操り、周囲の水の魔力を凝縮させて巨大な水の壁を創り出す。水の壁は、帝国軍の進軍を阻む。
カイトは、バハムートの力を解放する。
大地の魔力が、バハムートの全身を駆け巡り、地面が激しく揺れ動く。
バハムートの足元から、巨大な岩石が隆起し、次々と水の壁に沿って巨大な岩盤を形成していく。それは、まるで動く要塞のようだった。
セシリアの指揮の下、自由同盟軍の迎撃部隊も奮戦する。
訓練された幻晶機乗りたちが、一糸乱れぬ連携で帝国軍のクロノス・タイプXを迎え撃つ。セシリアは、作戦室のモニターに映し出される膨大な情報を瞬時に処理し、的確な指示を各部隊へと送る。
「第一小隊、右翼に回り込め!第二小隊、バハムートの援護に回れ!第三小隊、クロノスの連携を分断しろ!」
彼女の指示は、まるで精密に計算されたチェスのようだった。帝国軍の猛攻は、セシリアの卓越した指揮と、カイト、マーリンの圧倒的な力によって、徐々に鈍っていく。
「ふふふ…見事だ、セシリア、引退したと思っていたのだがな。だが、貴様の指揮も、伝説機の力も、我が主の力の前には無力…!」
ファントムの部下が、嘲笑うように叫んだ。
その声は、セシリアの心を揺さぶる。
「黙れ…!私の弟を愚弄するな!」
セシリアの瞳に、復讐の炎が燃え盛る。彼女は、通信機のボタンを強く押し、新たな指示を下す。
「カイト大尉、マーリン殿!敵の司令官機を特定しました!一気に叩いてください!」
セシリアの言葉に、カイトとマーリンは、静かに頷いた。
「了解!」
「お任せください!」
バハムートとオケアノスが、一斉に敵の司令官機へと突撃する。
二つの伝説機から放たれる、圧倒的な光と水の魔力が、敵の司令官機を飲み込んでいく。