@49話 無心
ー/ー
音色の仕事は一颯の『パートナー』である。そのためのマナーと一颯を支えるための秘書的な業務を夜光と瑞稀から学ぶ。
業務的な秘書は夜光。生活・外交的な秘書を瑞稀が教える。そういう生活がしばらくの間続いていた。音色も少しずつ理解し始め、慣れたとまで言えないまでも、身体がそのリズムに適応しだして笑顔も増えて来ていた。疲れることも和らいできていた。
そして数ヶ月が過ぎた。
契約社員としての音色の給料は銀行振込額24万円。以前の給料より少しいい。しかも家賃・光熱費などの支払いは特別社員寮扱いで3万円という破格。以前より音色の生活は借金さえなければ潤うはずであった。
食費も一颯の分も作ったりするので、逆に一颯から頂いたりする。
音色は普段、酒もたばこもギャンブルもやらない。支出はお昼ご飯(基本は弁当を作っている)や時々買う飲み物程度で済んでいた。
できる限り弁済への費用に充てる。そんな楽しみもないような暮らしのように見えて、その実、一颯や瑞稀が間間、連れ出してくれるので、以前よりも満たされた暮らしを送れていた。
(後は如何にしてお金を騙し取るか、ね)
この数ヶ月である一定の信用は得られたはず。音色の中で機は熟していた。音色がまず考えたのは、『ポンジスキーム』、これは詐欺の王道とも言える金融・投資詐欺である。
詐欺師チャールズ・ポンジの名に由来する詐欺で、出資者から新たに集めたお金を、以前からの出資者に『配当金』などと偽って渡すことで、あたかも資金運用によって利益が生まれ、その利益を出資者に配当しているかのように装い、次の出資者への実績と信頼を経ていくねずみ講方式。スピルバーグなども騙された有名詐欺である。
「ね、一颯さん。いい投資話があるんだけど」
「へーどんな?」
「お金を運用して増やし、増えた分を配当として出資者に還元するんだって。しかも元本保証」
「元本保証はすごいね、一体どんな事業をしてるんだい?」
「うーん……良く分かんない」
「銀行でさえ元本は1千万円しか守られないのに、一事業者が元本保証を謳ってる時点でおかしいよ。俺は投資を募りながら、金融庁に登録がない業者の勧誘には応じない。音色もそんな甘い話には気を付けた方がいいよ」
作戦失敗だった。
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業務的な秘書は夜光。生活・外交的な秘書を瑞稀が教える。そういう生活がしばらくの間続いていた。音色も少しずつ理解し始め、慣れたとまで言えないまでも、身体がそのリズムに適応しだして笑顔も増えて来ていた。疲れることも和らいできていた。
そして数ヶ月が過ぎた。
契約社員としての音色の給料は銀行振込額24万円。以前の給料より少しいい。しかも家賃・光熱費などの支払いは特別社員寮扱いで3万円という破格。以前より音色の生活は|借金《●●》さえなければ潤うはずであった。
食費も一颯の分も作ったりするので、逆に一颯から頂いたりする。
音色は普段、酒もたばこもギャンブルもやらない。支出はお昼ご飯(基本は弁当を作っている)や時々買う飲み物程度で済んでいた。
できる限り弁済への費用に充てる。そんな楽しみもないような暮らしのように見えて、その実、一颯や瑞稀が間間、連れ出してくれるので、以前よりも満たされた暮らしを送れていた。
(後は如何にしてお金を騙し取るか、ね)
この数ヶ月である一定の信用は得られたはず。音色の中で機は熟していた。音色がまず考えたのは、『ポンジスキーム』、これは詐欺の王道とも言える金融・投資詐欺である。
詐欺師チャールズ・ポンジの名に由来する詐欺で、出資者から新たに集めたお金を、以前からの出資者に『配当金』などと偽って渡すことで、あたかも資金運用によって利益が生まれ、その利益を出資者に配当しているかのように装い、次の出資者への実績と信頼を経ていくねずみ講方式。スピルバーグなども騙された有名詐欺である。
「ね、一颯さん。いい投資話があるんだけど」
「へーどんな?」
「お金を運用して増やし、増えた分を配当として出資者に還元するんだって。しかも元本保証」
「|元本保証《それ》はすごいね、一体どんな事業をしてるんだい?」
「うーん……良く分かんない」
「銀行でさえ元本は1千万円しか守られないのに、一事業者が元本保証を謳ってる時点でおかしいよ。俺は投資を募りながら、金融庁に登録がない業者の勧誘には応じない。音色もそんな甘い話には気を付けた方がいいよ」
作戦失敗だった。