@39話 賭け
ー/ー
帰りの車中。
「社長、申し訳ありませんでした」
事情を知った瑞稀は一颯に謝る。音色も合わせて謝罪する。
道路は思ったよりも混んでいる。信号に捕まる回数も多い。しかしながら、
ゆっくり進む方が話すには好都合らしく、二人はリラックスしている。
隣の車線ではトラックがイラついてクラクションを派手に鳴らしている。音色もクラクションのように、大声で吐き散らせたのなら少しは気が晴れるかもと思う。
「音色さんは悪くありません、寧ろよくやってくれました。これは私のミスです。申し訳ありませんでした」
「瑞稀、音色さん、問題ない。お咎めなしだ、逆にあの魅力的なお嬢さんは誰かって? いろんな人に聞かれたよ」
嘘だ……音色は瞬時にそう思った。一颯が二人に責任を感じさせないよう気遣った方便だ。一颯が誰かと話をしていて、音色の方へと視線を向けられた場面が何度かあった記憶はあるけれど、その当てられた面差しからは賛辞が述べられているようには思えなかったからだ。
二人の情けに音色は居た堪れなくなる。トラックのクラクションが耳に障り出す。それと同時に、渋滞を抜けてスピードを上げたのなら、嫌な気持ちを置き去りにできるような気がして、トラックの運転手の気持ちが少し理解できた。
「それで社長……どうでしょうか……?」
「そうだな……今日は彼女のポテンシャルに頼った結果だ」
「おっしゃる通りです」
音色の頭に『?』が浮かぶ。自分の話をしているようにも思えるし、違う話のようにも思える。
「だからまだ瑞稀の手腕を見ていない。賭けは続行だ。それに……」
「ありがとうございます。『それに』とは?」
「それに、俺も楽しみだ」
「ありがとうございます。必ず期待に応えます」
瑞稀はそう答えながらも心の奥底では、
(きっと一颯も、彼女の魅力に気づいたのだろう……もしかしたら特別な感情も……)
そんな風に感じ取っていた。急に瑞稀は進まない車に苛立ちを覚えた。
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「社長、申し訳ありませんでした」
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道路は思ったよりも混んでいる。信号に捕まる回数も多い。しかしながら、
ゆっくり進む方が話すには好都合らしく、二人はリラックスしている。
隣の車線ではトラックがイラついてクラクションを派手に鳴らしている。音色もクラクションのように、大声で吐き散らせたのなら少しは気が晴れるかもと思う。
「音色さんは悪くありません、寧ろよくやってくれました。これは私のミスです。申し訳ありませんでした」
「瑞稀、音色さん、問題ない。お咎めなしだ、逆にあの魅力的なお嬢さんは誰かって? いろんな人に聞かれたよ」
嘘だ……音色は瞬時にそう思った。一颯が二人に責任を感じさせないよう気遣った方便だ。一颯が誰かと話をしていて、音色の方へと視線を向けられた場面が何度かあった記憶はあるけれど、その当てられた面差しからは賛辞が述べられているようには思えなかったからだ。
二人の情けに音色は居た堪れなくなる。トラックのクラクションが耳に障り出す。それと同時に、渋滞を抜けてスピードを上げたのなら、嫌な気持ちを置き去りにできるような気がして、トラックの運転手の気持ちが少し理解できた。
「それで社長……どうでしょうか……?」
「そうだな……今日は彼女のポテンシャルに頼った結果だ」
「おっしゃる通りです」
音色の頭に『?』が浮かぶ。自分の話をしているようにも思えるし、違う話のようにも思える。
「だからまだ瑞稀の手腕を見ていない。賭けは続行だ。それに……」
「ありがとうございます。『それに』とは?」
「それに、俺も楽しみだ」
「ありがとうございます。必ず期待に応えます」
瑞稀はそう答えながらも心の奥底では、
(きっと一颯も、彼女の魅力に気づいたのだろう……もしかしたら特別な感情も……)
そんな風に感じ取っていた。急に瑞稀は進まない車に苛立ちを覚えた。