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○ファイ視点◯3話前小話

ー/ー



カイルが急に叫んでびっくりしたな。
ちょっと先走ったり責任を負いすぎるとこもあるけど
いつも周りを見ているし、変なことはしないのに。


うちがしっかりしなきゃ。


◇◆◇

うちの朝は鏡の前で笑顔を作ることから始まる。

「うん!今日も”大丈夫な笑顔”だ。」

うちはこの孤児院の中で一番お姉さんだから、
みんなが苦しくてもうちだけは笑ってみんなを支えてあげるんだ。

うちが崩れたら、あとの子たちも連鎖みたいに泣き出してしまいそうで。

…みんないつか壊れてしまいそうだから。


――――

うちらの日常は

①孤児院での編み物100個をみんなで協力して終わらせる。

朝に太陽が昇ると同時に始まってだいたい夕方に太陽が沈むまでかかるかな。
これはうちが早起きしているだけだからみんなは8時くらいから始めているよ。
大変だから、少しでも数が減るようにってね。

先生に怒鳴られないように、息を潜めて針を動かす。
指に針が刺さっても、顔に出しちゃいけない。
先生の目が、ずっとこっちを見てるから。


もし「手、止まってるぞ」って言われたら次はぎゅっと口を結ぶ。
 じゃないと、床に頭をぶつけちゃうからね。


②昨日作ってあった分を歳の幼い子と大人と取引が大丈夫な子で市に売りに行く。

やっぱり売れないと意味がないし、
幼い子が孤児院にいたままだと先生に泣いてばかりで
うるさいってぶたれるかもしれないから。


こんな感じだ。

先生がごきげんだと、
1日1回のご飯にふわふわの温かいパンをくれるんだ。

これが楽しみだったな。
でも、数に限りがあるからみんなで分け合って食べるんだ。
これがまたもっと美味しくなる魔法だよ?


本音を少し言うと、こんな過酷な”地獄”が続けば
だんだん、みんな壊れていきそうで怖かったんだ。

小さな幸せがあればいい。
みんなと入れればそれでいい。

カイルが「ここを出ていこう。そのほうがみんなにとっていいはずだ。」
 ―そう言い出すまでずっと思っていた。

カイルは考えなしに意見を言う人ではないし、
うちより全体を見ているとわかっていたから、

「うん。そうしたほうがみんなにとっていいかもね。
 ここにいると、きっと、みんな壊れてしまうと思う。」

と思わず、嘘と本音を混ぜて答えてしまった。

孤児院から出ていくことは簡単で出れたことの嬉しさ
それと同時に不安がうちのココロの中を渦巻いていた。

これで良かったのかな…。

―初めにたどり着いた村での夜―

「うちだけは泣いちゃだめ」って思ってたのに…

星を見ていたら、ひとすじだけ、勝手に涙が落ちた。

「……やだなぁ。なんでこんなときにさ」って、ごまかしたけど

隠していた本音や今更孤児院での生活の辛かったことが溢れてきて
その日はみんなにバレないようにこっそりと泣いた。


孤児院に入ってから泣いたことなんて1回もなかったのに
涙なんて忘れてたはずなのに。

それからはただ明るい未来だけを信じてカイルたちと
村にいってはお手伝いを続け、
今の村にたどり着いた。

◇◆◇

話し合いのあと、

うちはまだどう答えて良かったのか分かっていなかったけど

みんなが安心して幸せに暮らせるなら
それ以上望まないし、十分だ。

この先何があろうともうちはみんなのために動いていくから。
その近道になっていたらいいな。


「…うちは、笑うことしかできないけど、
 今日、ルチナがちょっとだけ微笑んだ。
 いつも刺すような目をしてたあの子が、ふっと、ね。

……うちは、その笑顔や誰かの笑顔を守るためにここにいるのかもしれない。」


だから、明日も、これからもずっとみんなの前では笑えますようにと
お星さまに願って眠りについた。





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カイルが急に叫んでびっくりしたな。
ちょっと先走ったり責任を負いすぎるとこもあるけど
いつも周りを見ているし、変なことはしないのに。
うちがしっかりしなきゃ。
◇◆◇
うちの朝は鏡の前で笑顔を作ることから始まる。
「うん!今日も”大丈夫な笑顔”だ。」
うちはこの孤児院の中で一番お姉さんだから、
みんなが苦しくてもうちだけは笑ってみんなを支えてあげるんだ。
うちが崩れたら、あとの子たちも連鎖みたいに泣き出してしまいそうで。
…みんないつか壊れてしまいそうだから。
――――
うちらの日常は
①孤児院での編み物100個をみんなで協力して終わらせる。
朝に太陽が昇ると同時に始まってだいたい夕方に太陽が沈むまでかかるかな。
これはうちが早起きしているだけだからみんなは8時くらいから始めているよ。
大変だから、少しでも数が減るようにってね。
先生に怒鳴られないように、息を潜めて針を動かす。
指に針が刺さっても、顔に出しちゃいけない。
先生の目が、ずっとこっちを見てるから。
もし「手、止まってるぞ」って言われたら次はぎゅっと口を結ぶ。
 じゃないと、床に頭をぶつけちゃうからね。
②昨日作ってあった分を歳の幼い子と大人と取引が大丈夫な子で市に売りに行く。
やっぱり売れないと意味がないし、
幼い子が孤児院にいたままだと先生に泣いてばかりで
うるさいってぶたれるかもしれないから。
こんな感じだ。
先生がごきげんだと、
1日1回のご飯にふわふわの温かいパンをくれるんだ。
これが楽しみだったな。
でも、数に限りがあるからみんなで分け合って食べるんだ。
これがまたもっと美味しくなる魔法だよ?
本音を少し言うと、こんな過酷な”地獄”が続けば
だんだん、みんな壊れていきそうで怖かったんだ。
小さな幸せがあればいい。
みんなと入れればそれでいい。
カイルが「ここを出ていこう。そのほうがみんなにとっていいはずだ。」
 ―そう言い出すまでずっと思っていた。
カイルは考えなしに意見を言う人ではないし、
うちより全体を見ているとわかっていたから、
「うん。そうしたほうがみんなにとっていいかもね。
 ここにいると、きっと、みんな壊れてしまうと思う。」
と思わず、嘘と本音を混ぜて答えてしまった。
孤児院から出ていくことは簡単で出れたことの嬉しさ
それと同時に不安がうちのココロの中を渦巻いていた。
これで良かったのかな…。
―初めにたどり着いた村での夜―
「うちだけは泣いちゃだめ」って思ってたのに…
星を見ていたら、ひとすじだけ、勝手に涙が落ちた。
「……やだなぁ。なんでこんなときにさ」って、ごまかしたけど
隠していた本音や今更孤児院での生活の辛かったことが溢れてきて
その日はみんなにバレないようにこっそりと泣いた。
孤児院に入ってから泣いたことなんて1回もなかったのに
涙なんて忘れてたはずなのに。
それからはただ明るい未来だけを信じてカイルたちと
村にいってはお手伝いを続け、
今の村にたどり着いた。
◇◆◇
話し合いのあと、
うちはまだどう答えて良かったのか分かっていなかったけど
みんなが安心して幸せに暮らせるなら
それ以上望まないし、十分だ。
この先何があろうともうちはみんなのために動いていくから。
その近道になっていたらいいな。
「…うちは、笑うことしかできないけど、
 今日、ルチナがちょっとだけ微笑んだ。
 いつも刺すような目をしてたあの子が、ふっと、ね。
……うちは、その笑顔や誰かの笑顔を守るためにここにいるのかもしれない。」
だから、明日も、これからもずっとみんなの前では笑えますようにと
お星さまに願って眠りについた。