第2話 黒く染め上がる時
ー/ー 誕生日を翌日に控えた日の朝、クロナはちょっとした違和感を持って目を覚ます。
(なんだか、体が重いですね。昨夜、ちょっとはしゃぎすぎてしまいましたかね。明日は教会に行かないといけませんのに……。今日は無理をしないでおきましょう)
少しだるい感じがしながらも、クロナは聖女としての自覚からか、自分の世話をしているブラナにもその違和感を感じさせないようにしている。
いつものように支度をして、家族と一緒に食事を食べたクロナは、兄のシュヴァルツと共に学園へと向かっていったのだった。
「ふむ。外の天気がなんとなく悪いな」
「そうですね。今にも降りそうな空色ですね」
クロナたちが学園に向かった後から、どういうわけか空には重たそうな雲が広がり始めていた。
それはまるで、何かしらよからぬことが起きるのではないかと、警告しているようにも思えた。
「……私も城での仕事に出かけるが、その前に教会に寄ってみることにするよ」
「分かりました。私はいつものように家で仕事しておりますので、お気を付けて行ってきて下さいませ」
「うむ、すまぬな。杞憂で済むといいな、ノワールよ」
「……はい」
クロナの両親は、言い知れぬ不安を抱きながらもいつものように生活を送ることにする。
しかし、子爵が教会にたどり着く頃には、空の雲は真っ黒を通り越してどす黒く染まり切っていた。
「なんて嫌な空模様だ。ひとまず司祭様にお話を伺わねば」
教会へとたどり着いた子爵は、入口付近にいた神官に声をかける。
「すまない。司祭様にお会いできるだろうか」
「申し訳ございません。明日からの儀式に備え、司祭様は入念な準備を行っております。何人たりとも合わせるな、そのように仰せつかっておりますゆえ、いくら聖女様のお父君であっても会わせるわけには参りません」
子爵は司祭への面会を拒否されてしまう。
「おや、どうかされましたかな、コークロッチヌス子爵殿」
「こ、これは司祭様」
思わぬ司祭の登場に、神官はびっくりして慌てて頭を下げている。
「私に何かお話でも?」
「はい。あまり時間は取らせません。少々よろしいでしょうか」
司祭はにっこりと微笑むと、くるりと振り返る。
「こちらへどうぞ」
そうとだけ言うと、自室に向かって歩き出した。
「ありがとうございます」
子爵はお礼を言うと、司祭の後ろをついていった。
司祭の部屋に移動すると、子爵は向かい合って座る。
しばらく無言のままでいると、司祭から言葉を投げかけてきた。
「この空模様、気になりますよな」
「はい。明日はいよいよ娘を教会に送り出さなければならないというのに、その日を前にこのような空になっているので、どうしても気になってしまったのです。もしかしたら、娘は歓迎されていないのではないかと」
子爵は不安を吐露している。
子爵の話を聞いて、司祭は心を痛めているようだ。
「そんなことはありませんよ。この国は聖女様の存在に支えられている国です。その聖女様を拒むなどどうしてあり得るというのですか。心配は要りません。儀式までにはきれいに晴れ渡りますよ」
司祭はにこやかに子爵に話し掛けている。
それでも心配でたまらない子爵ではあったが、司祭に気にしすぎてはダメだと諭されると、ようやく落ち着いて教会から去っていった。
だが、あまりにも不安視する子爵の姿に、司祭も何か引っかかりを覚えてしまう。
「長い歴史の中でも、聖女をお迎えする前にこのような天気になるのは初めてです。神よ、どうか我らに加護をお授け下さい」
司祭は祈りを捧げると、翌日の儀式の準備を再開させたのだった。
ところが、昼を過ぎても天気は一向回復する気配を見せない。それどころか、クロナたちが学園から帰る頃になると、大粒の雨まで降り出す始末である。
帰ってきたクロナの様子を見て、さらに不安は募っていくというもの。
「まあ、クロナ、大丈夫なの?!」
母親が驚くのも無理はない。クロナは青ざめた顔をして、苦しそうにしているのだから。
「まあ、こんな状態では儀式どころではないわ。とはいえ、聖女の儀式を延期だなんて、無理な話だわ。ブラナ、早くクロナを休ませてあげて!」
「はい、承知致しました。お嬢様、大丈夫ですか。今、私がベッドまでお運びしますから」
ぐったりとした様子のクロナを抱えて、ブラナはクロナの部屋へと向かっていく。
昨日はあれだけ元気だったというのに、母親はとても信じられないといった表情でその後ろ姿を見送った。
「一体、何が起きようとしているの?」
クロナの体調のこともだが、大雨が降り始めた外の様子に嫌な予感は膨らんでいく。
その後、子爵や兄シュヴァルツも帰ってきたのだが、雨は一向にやむ気配を見せなかった。
一体何が起きようとしているのか、子爵たちは胸騒ぎのする夜を過ごすこととなったのだ。
「う……ん……」
真夜中のこと、クロナは目を覚ます。
(あれっ。私、眠ってしまっていたのですね)
昨日感じた体の重さなどはすっかりとなくなっており、クロナの意識はとてもはっきりしている。
外からは雨の降り続く音が聞こえてきている。
(ちょっとお手洗いにでも行きましょうか)
クロナは体を起こして、部屋を出ていこうとする。
その時だった。
ズシャーンッ!!
雷の音が響き渡り、部屋の中が一時的に明るくなる。
そして、その光のせいでクロナは信じられないものを見てしまう。
「な、なに、これ……」
クロナは姿見の中に、頭から伸びる何かを見てしまったのだった。
(なんだか、体が重いですね。昨夜、ちょっとはしゃぎすぎてしまいましたかね。明日は教会に行かないといけませんのに……。今日は無理をしないでおきましょう)
少しだるい感じがしながらも、クロナは聖女としての自覚からか、自分の世話をしているブラナにもその違和感を感じさせないようにしている。
いつものように支度をして、家族と一緒に食事を食べたクロナは、兄のシュヴァルツと共に学園へと向かっていったのだった。
「ふむ。外の天気がなんとなく悪いな」
「そうですね。今にも降りそうな空色ですね」
クロナたちが学園に向かった後から、どういうわけか空には重たそうな雲が広がり始めていた。
それはまるで、何かしらよからぬことが起きるのではないかと、警告しているようにも思えた。
「……私も城での仕事に出かけるが、その前に教会に寄ってみることにするよ」
「分かりました。私はいつものように家で仕事しておりますので、お気を付けて行ってきて下さいませ」
「うむ、すまぬな。杞憂で済むといいな、ノワールよ」
「……はい」
クロナの両親は、言い知れぬ不安を抱きながらもいつものように生活を送ることにする。
しかし、子爵が教会にたどり着く頃には、空の雲は真っ黒を通り越してどす黒く染まり切っていた。
「なんて嫌な空模様だ。ひとまず司祭様にお話を伺わねば」
教会へとたどり着いた子爵は、入口付近にいた神官に声をかける。
「すまない。司祭様にお会いできるだろうか」
「申し訳ございません。明日からの儀式に備え、司祭様は入念な準備を行っております。何人たりとも合わせるな、そのように仰せつかっておりますゆえ、いくら聖女様のお父君であっても会わせるわけには参りません」
子爵は司祭への面会を拒否されてしまう。
「おや、どうかされましたかな、コークロッチヌス子爵殿」
「こ、これは司祭様」
思わぬ司祭の登場に、神官はびっくりして慌てて頭を下げている。
「私に何かお話でも?」
「はい。あまり時間は取らせません。少々よろしいでしょうか」
司祭はにっこりと微笑むと、くるりと振り返る。
「こちらへどうぞ」
そうとだけ言うと、自室に向かって歩き出した。
「ありがとうございます」
子爵はお礼を言うと、司祭の後ろをついていった。
司祭の部屋に移動すると、子爵は向かい合って座る。
しばらく無言のままでいると、司祭から言葉を投げかけてきた。
「この空模様、気になりますよな」
「はい。明日はいよいよ娘を教会に送り出さなければならないというのに、その日を前にこのような空になっているので、どうしても気になってしまったのです。もしかしたら、娘は歓迎されていないのではないかと」
子爵は不安を吐露している。
子爵の話を聞いて、司祭は心を痛めているようだ。
「そんなことはありませんよ。この国は聖女様の存在に支えられている国です。その聖女様を拒むなどどうしてあり得るというのですか。心配は要りません。儀式までにはきれいに晴れ渡りますよ」
司祭はにこやかに子爵に話し掛けている。
それでも心配でたまらない子爵ではあったが、司祭に気にしすぎてはダメだと諭されると、ようやく落ち着いて教会から去っていった。
だが、あまりにも不安視する子爵の姿に、司祭も何か引っかかりを覚えてしまう。
「長い歴史の中でも、聖女をお迎えする前にこのような天気になるのは初めてです。神よ、どうか我らに加護をお授け下さい」
司祭は祈りを捧げると、翌日の儀式の準備を再開させたのだった。
ところが、昼を過ぎても天気は一向回復する気配を見せない。それどころか、クロナたちが学園から帰る頃になると、大粒の雨まで降り出す始末である。
帰ってきたクロナの様子を見て、さらに不安は募っていくというもの。
「まあ、クロナ、大丈夫なの?!」
母親が驚くのも無理はない。クロナは青ざめた顔をして、苦しそうにしているのだから。
「まあ、こんな状態では儀式どころではないわ。とはいえ、聖女の儀式を延期だなんて、無理な話だわ。ブラナ、早くクロナを休ませてあげて!」
「はい、承知致しました。お嬢様、大丈夫ですか。今、私がベッドまでお運びしますから」
ぐったりとした様子のクロナを抱えて、ブラナはクロナの部屋へと向かっていく。
昨日はあれだけ元気だったというのに、母親はとても信じられないといった表情でその後ろ姿を見送った。
「一体、何が起きようとしているの?」
クロナの体調のこともだが、大雨が降り始めた外の様子に嫌な予感は膨らんでいく。
その後、子爵や兄シュヴァルツも帰ってきたのだが、雨は一向にやむ気配を見せなかった。
一体何が起きようとしているのか、子爵たちは胸騒ぎのする夜を過ごすこととなったのだ。
「う……ん……」
真夜中のこと、クロナは目を覚ます。
(あれっ。私、眠ってしまっていたのですね)
昨日感じた体の重さなどはすっかりとなくなっており、クロナの意識はとてもはっきりしている。
外からは雨の降り続く音が聞こえてきている。
(ちょっとお手洗いにでも行きましょうか)
クロナは体を起こして、部屋を出ていこうとする。
その時だった。
ズシャーンッ!!
雷の音が響き渡り、部屋の中が一時的に明るくなる。
そして、その光のせいでクロナは信じられないものを見てしまう。
「な、なに、これ……」
クロナは姿見の中に、頭から伸びる何かを見てしまったのだった。
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