音が鳴らないように丁寧に窓鍵を回す。二枚の戸窓の真ん中にいる音色は、ゆっくりとカ―テンとの間を片方の端までカニ歩きで移動する。あまりカーテンに触れないよう、カーテンを揺らしてしまわないように……。
指が取手に届いた。願わくはこのテラス戸のレールと戸車が『カラカラ』等、音のならないタイプを祈ってゆっくり開くまでだ。
テラス戸をゆ~っくり時間をかけて力を込めていき、力の感触が、戸が開きだすのを感じ取りながら、光ほどの隙間が開いた。音はならない、良し、このまま少しずつ開いて行こう、そう思った矢先だった。
一陣の風が開いた隙間から流れ込んだ……カーテンを大きく捲り上げる程の風……。
「あっ…………」
音色は思わず声が漏れ出る、そして部屋の中の二人も顔を向ける。ばっちり視線が当たる……思わず音色は会釈した。
◆◇◆◇
「英語、中国、韓国、フランス、スペイン、ロシア、ドイツ語は話せるのでどうか売り飛ばすのなら、せめて言葉の通じる国でお願いいたします……」
音色は二人の前で正座をして懇願する。
「はぁ?」
「一体何をおっしゃっているのですか?」
「え? じゃあ売り飛ばされるんじゃないなら、殺されちゃうの、私? お願いします、まだ27年しか生きてないんです、助けてください」