音色は黙って聞いていたが、最後の方は理解が難しかった。音色の印象では『BBAはだめだ』『適当に女を見繕う』から非道な奴らという認識に変わった。
そしてもしかしたら
(私もそのために拉致られた? どこかに売り飛ばされてしまうかもしれない)
そう恐怖した。
(隠れていてよかった……奴らに見つかる前に逃げ出さないと……)
音色の心配が的中する、彼らは再び話を戻し、音色のを探し始めた。
「トイレにしてはおかしいですね」
「飲み過ぎて下痢なのかも?」
「それにしても物音ひとつしないというのは……?」
この部屋はトイレもシャワールームも備えついてある。音色がホテルと勘違いする道理はある。
音色は思案する。窓際からでは部屋の出口へと向かうには部屋を反対側まで突き抜けなくてはならない。つまりは彼らの側を通り過ぎる。捕まらずにドアまで辿り着く、それは不可能だ。
幸いここは大きな窓だ。最早窓ではなく掃き出し戸と言うべき、人が自由に行き来できるほどの大きさだ。まずカーテンに隠れたまま鍵を開ける。そして勢いよく開けて外へと出て逃げ去るか、こっそり戸を開け気付かれないままいなくなるか……
後者の方がリスクが低い。外を見た感じここは1Fのようだが、窓の外はウッドデッキが広がっていてその先が定かではない。お隣さんの家などが近くにある生活音が感じられない。だいぶ郊外からも離れたところまで連れて来られてしまったのであろうか?
お金もないのでここを脱出した後のことも不安になってくる。昨日の酒のせいか、緊張からなのか、喉が水を欲する。
音色はゆっくりと手を鍵に伸ばした。