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SCENE006 準備は整った

ー/ー



(明かりよ、ともれ!)

 僕は豆電球くらいの光を想像して魔法を使う。
 ところが、僕の手のひらの上では、うんともすんともといった感じで、まったく何の変化も起きなかった。
 やっぱり、元人間じゃそううまくいかないのかな。
 僕が諦めようとした時だった。

「えっ?」

 ぱあっと手のひらの上が明るくなっていた。
 どうやら、初めて使ったせいで遅れて効果が発生したみたいだった。

「うそうそっ、今光るの?!」

 思わず慌ててしまう。

「ふむ……。初めて魔法を使ったがゆえに、魔力の放出が遅れてしまったようですな。それで、今さらながらに光ったということでしょう」

 バトラーは僕の手のひらの光を見て、冷静に分析しているようだった。

「そ、そうなんだ。これって、僕が人間だったことも関係しているのかな」

「大いにあるでしょうな。マナに不慣れな状態で魔法を初めて使ったのですから。予測不能なことが起きても、仕方がないというものでしょう」

「そ、そこまで言っちゃうの……?」

「当然です。プリンセスを一人前に育て上げるのも、このバトラーの役目なのですからな」

 バトラーは胸を張って、はっきりと言い切っていた。
 なんにしても、僕はレベル1の情けないラミアプリンセスということで確定みたいだ。

「ご心配なされるな。このバトラーがいる限り、プリンセスを落ちこぼれなどと言わせませんぞ。さあ、配信とやらはひとまずお預けにして、この我がビシバシと魔法の特訓をして差し上げましょう」

「お、お手柔らかに、お願いします……」

 僕はびくびくとしながらバトラーに頭を下げて、魔法の特訓を頼んだのだった。

 どのくらい時間が経ったのだろうか。

「ひい、はあ、はあ……」

 僕の息は完全に上がっていた。

「今日はこのくらいにしておきましょう。ですが、さすがはプリンセス。半日ほどぶっ続けで魔法を使って倒れなかったのは素晴らしいです。魔法の初心者であれば、数時間と持たずに倒れていますからな」

「え、ええっ……」

 どうやら僕は、かなりめちゃくちゃなことをさせられていたようだった。
 でも、それだけ僕の中のマナの量が多いということなのだろう。なんだか、ちょっと自信がついた気がする。

「さあ、ゆっくりお休みください。使い切った上で休めば、その分、体内のマナの量が増えますからね」

「分かったよ。それじゃ休ませてもらうね」

「はい。ご安心してお休み下さい。見張りは私が行っておりますので」

 僕はバトラーの言葉を信じて、ダンジョンの小部屋の壁に寄りかかるようにして眠る。
 眠りながら僕は、外では僕のことはどうなっているのかが気になってしまった。少なくとも行方不明扱いにはなっているだろうと思う。
 お父さん、お母さん、友人たち。きっとみんな心配しているだろうな。僕はそんなことを思いながら、うとうととしながら意識を失った。

 僕は目を覚ます。
 眠い目をこすりながら、周りを見渡す。ほとんど何も見えないので、思わず首をこてんと傾けてしまう。
 起き上がろうとするも、足に力が入らない。というか、足に違和感を感じる。

「あっ、今の僕はラミアなんだっけか……」

 寝ぼけていたせいで、自分がモンスター化したことを忘れていたようだ。
 一人で照れながら、ダンジョンの小部屋からのっそりと外に出ていく。

「おお、目を覚まされましたか、プリンセス」

「うん、おはよう、バトラー」

 目をこすっていた僕は、つい大きなあくびをしてしまう。

「やはり、昨日の疲れがかなり残っているようですな。今日のところはやめておきましょうか」

「うん、何を?」

「魔法の特訓です。昨日やりすぎてしまいましたので、我としても反省をしていたところです」

 僕は思い出した。そういえば、昨日は自分の体内のマナを扱うことから、簡単な魔法を使うことまで、いろんな特訓をしていたんだった。

「うん、大丈夫だよ。それよりも、あれをやってみたいな」

「あれとは?」

「配信だよ」

 僕はそう言うと、小部屋に戻って配信用のドローンを引っ張り出してくる。
 スイッチを入れると、ぱたぱたとしながら宙に浮かび上がる。

「ほう、マナもないのに飛ぶとはすごいですな」

「うん、これは電気って力で動いてるんだ。だからか、あまり連続して飛ばせないんだけどね。中学生のお小遣いじゃ知れてるんだよ」

「よく分かりませんなぁ」

 どうやらバトラーは人間社会にはかなり疎いようだった。モンスターだし仕方ないかな。
 とりあえず僕は、ドローンのカメラと自分の視界を同期させる魔法を使うことにする。特訓の中でバトラーはイメージが大事だといっていたんだ。きっと今の僕ならできると思う。

「むむむむ……」

 僕は集中して、ドローンに向けて魔法を使う。

「えいっ!」

 思い切って僕が叫ぶと、目の前にドローンが撮影している光景が映し出された。なんか思ってたのと違う!

「わわわっ、まるで液晶モニターみたいなことになってる!」

 長方形の空間の中に、僕の姿が映っている。こうやって見てみると、思ったより僕って美人じゃないかなって思うな。
 って、なに自分に見とれてるんだろう。

「おやおや、これは面白い魔法になりましたな。しかもこれは、純粋なマナのせいか、このどろーんなるものには認識できていないようです」

 バトラーの言う通りだ。よく見ると、僕とドローンとの間にこの映像が挟まっているのに、映像の中には映像が映し出されていない。つまり、機械には認識できないものというわけのようだった。
 僕がじっと映像を見ていると、何か文字が書かれているのが見えた。

「なんだろ、これ……」

 気になってぽちっと手で触れてみると、なんと配信メニューが飛び出してきたのだ。
 なんだか楽しくなってきた僕は、あれこれいろいろといじってみる。

「プリンセス、どうかされましたかな?」

 バトラーが心配そうに聞いてくるので、僕はにっこりと微笑んで答える。

「喜んでよ、バトラー。なんかね、僕の配信ができそうなんだよ」

「おお、それは素晴らしい。早速行いましょうぞ、プリンセス」

 探索者としてデビューはできなかったけど、どうやら僕は配信者としてはデビューできるみたい。
 僕は何度となく深呼吸をして、配信に向けて気持ちを落ち着かせるのだった。


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次のエピソードへ進む SCENE007 初めての配信


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(明かりよ、ともれ!)
 僕は豆電球くらいの光を想像して魔法を使う。
 ところが、僕の手のひらの上では、うんともすんともといった感じで、まったく何の変化も起きなかった。
 やっぱり、元人間じゃそううまくいかないのかな。
 僕が諦めようとした時だった。
「えっ?」
 ぱあっと手のひらの上が明るくなっていた。
 どうやら、初めて使ったせいで遅れて効果が発生したみたいだった。
「うそうそっ、今光るの?!」
 思わず慌ててしまう。
「ふむ……。初めて魔法を使ったがゆえに、魔力の放出が遅れてしまったようですな。それで、今さらながらに光ったということでしょう」
 バトラーは僕の手のひらの光を見て、冷静に分析しているようだった。
「そ、そうなんだ。これって、僕が人間だったことも関係しているのかな」
「大いにあるでしょうな。マナに不慣れな状態で魔法を初めて使ったのですから。予測不能なことが起きても、仕方がないというものでしょう」
「そ、そこまで言っちゃうの……?」
「当然です。プリンセスを一人前に育て上げるのも、このバトラーの役目なのですからな」
 バトラーは胸を張って、はっきりと言い切っていた。
 なんにしても、僕はレベル1の情けないラミアプリンセスということで確定みたいだ。
「ご心配なされるな。このバトラーがいる限り、プリンセスを落ちこぼれなどと言わせませんぞ。さあ、配信とやらはひとまずお預けにして、この我がビシバシと魔法の特訓をして差し上げましょう」
「お、お手柔らかに、お願いします……」
 僕はびくびくとしながらバトラーに頭を下げて、魔法の特訓を頼んだのだった。
 どのくらい時間が経ったのだろうか。
「ひい、はあ、はあ……」
 僕の息は完全に上がっていた。
「今日はこのくらいにしておきましょう。ですが、さすがはプリンセス。半日ほどぶっ続けで魔法を使って倒れなかったのは素晴らしいです。魔法の初心者であれば、数時間と持たずに倒れていますからな」
「え、ええっ……」
 どうやら僕は、かなりめちゃくちゃなことをさせられていたようだった。
 でも、それだけ僕の中のマナの量が多いということなのだろう。なんだか、ちょっと自信がついた気がする。
「さあ、ゆっくりお休みください。使い切った上で休めば、その分、体内のマナの量が増えますからね」
「分かったよ。それじゃ休ませてもらうね」
「はい。ご安心してお休み下さい。見張りは私が行っておりますので」
 僕はバトラーの言葉を信じて、ダンジョンの小部屋の壁に寄りかかるようにして眠る。
 眠りながら僕は、外では僕のことはどうなっているのかが気になってしまった。少なくとも行方不明扱いにはなっているだろうと思う。
 お父さん、お母さん、友人たち。きっとみんな心配しているだろうな。僕はそんなことを思いながら、うとうととしながら意識を失った。
 僕は目を覚ます。
 眠い目をこすりながら、周りを見渡す。ほとんど何も見えないので、思わず首をこてんと傾けてしまう。
 起き上がろうとするも、足に力が入らない。というか、足に違和感を感じる。
「あっ、今の僕はラミアなんだっけか……」
 寝ぼけていたせいで、自分がモンスター化したことを忘れていたようだ。
 一人で照れながら、ダンジョンの小部屋からのっそりと外に出ていく。
「おお、目を覚まされましたか、プリンセス」
「うん、おはよう、バトラー」
 目をこすっていた僕は、つい大きなあくびをしてしまう。
「やはり、昨日の疲れがかなり残っているようですな。今日のところはやめておきましょうか」
「うん、何を?」
「魔法の特訓です。昨日やりすぎてしまいましたので、我としても反省をしていたところです」
 僕は思い出した。そういえば、昨日は自分の体内のマナを扱うことから、簡単な魔法を使うことまで、いろんな特訓をしていたんだった。
「うん、大丈夫だよ。それよりも、あれをやってみたいな」
「あれとは?」
「配信だよ」
 僕はそう言うと、小部屋に戻って配信用のドローンを引っ張り出してくる。
 スイッチを入れると、ぱたぱたとしながら宙に浮かび上がる。
「ほう、マナもないのに飛ぶとはすごいですな」
「うん、これは電気って力で動いてるんだ。だからか、あまり連続して飛ばせないんだけどね。中学生のお小遣いじゃ知れてるんだよ」
「よく分かりませんなぁ」
 どうやらバトラーは人間社会にはかなり疎いようだった。モンスターだし仕方ないかな。
 とりあえず僕は、ドローンのカメラと自分の視界を同期させる魔法を使うことにする。特訓の中でバトラーはイメージが大事だといっていたんだ。きっと今の僕ならできると思う。
「むむむむ……」
 僕は集中して、ドローンに向けて魔法を使う。
「えいっ!」
 思い切って僕が叫ぶと、目の前にドローンが撮影している光景が映し出された。なんか思ってたのと違う!
「わわわっ、まるで液晶モニターみたいなことになってる!」
 長方形の空間の中に、僕の姿が映っている。こうやって見てみると、思ったより僕って美人じゃないかなって思うな。
 って、なに自分に見とれてるんだろう。
「おやおや、これは面白い魔法になりましたな。しかもこれは、純粋なマナのせいか、このどろーんなるものには認識できていないようです」
 バトラーの言う通りだ。よく見ると、僕とドローンとの間にこの映像が挟まっているのに、映像の中には映像が映し出されていない。つまり、機械には認識できないものというわけのようだった。
 僕がじっと映像を見ていると、何か文字が書かれているのが見えた。
「なんだろ、これ……」
 気になってぽちっと手で触れてみると、なんと配信メニューが飛び出してきたのだ。
 なんだか楽しくなってきた僕は、あれこれいろいろといじってみる。
「プリンセス、どうかされましたかな?」
 バトラーが心配そうに聞いてくるので、僕はにっこりと微笑んで答える。
「喜んでよ、バトラー。なんかね、僕の配信ができそうなんだよ」
「おお、それは素晴らしい。早速行いましょうぞ、プリンセス」
 探索者としてデビューはできなかったけど、どうやら僕は配信者としてはデビューできるみたい。
 僕は何度となく深呼吸をして、配信に向けて気持ちを落ち着かせるのだった。