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008

ー/ー



「頼むよ~自分でも調べてみようと思ったんだけど、なんか警察が見張ってるみたいでさ~あんまり派手に動けないんだよ~」

「それはつまり、数凪さんがいなくなった夕山四季さんの居場所を知ってる、と警察の方に思われているということですか?」

「う、うん。そう。だと思う……多分」

「ちょっと! ホントに知らないんですよね!? 四季の居場所」
「知らねーって! 知ってたらお前らに頼まねーよ!」

「では見張られていることに何か問題が? むしろ警察の方に協力したほうが早く四季さんが見つかるのではないですか?」

 雪枝が指摘すると、数凪は渋い顔をして一瞬沈黙した。

「だって……四季は多分隠れたくてどっかに隠れてんだろうからさ……こう、大っぴらに見つかっちゃったらかわいそうじゃん」

 雪枝の瞳孔が開き心無しか虹彩が輝いて見える。高揚した猫のようだ、と葉子は思った。

「わかりました。受けましょう」

 ふう、と一息ついて、わりとあっさり雪枝は頷いた。何となくこうなるだろうな、と思っていたのでSNOWメンバーの反論もない。

「あの、ギャランティーの方は……」
「金取るのかよ?!」 

 なりと数凪のやりとりを聞いて葉子と沙希がケタケタ笑い始めた。

「まあそれなりに手間もかかりますから……」

 なりはツンとすました顔をしている。

「乙女からも相談料貰ったの?」
「個人のプライバシーに属することなのでお答え出来かねます」
「しゅ、守秘義務ってやつ?」

 再び二人が笑い始める。

「おい! 本当のこと言えよ!」

 まあまあ、と雪枝が宥めに入ると、ようやく数凪は自分がからかわれていたと気付き、小さく舌打ちした。

 一息ついて真面目な顔になり、
「いや、なんつうかさ、金出したくないってんじゃないんだけどさ、なんか嫌じゃん? こう、プロの探偵とかに頼むんならともかく……金銭やりとりすると他人行儀っつうか……困った時はお互い助け合う、みたいな関係の方がよくない?」

「や、それは……」

 反射的に反論しかけた葉子を、雪枝は静かに制した。

「確かに一理ありますね。そういう関係性、いいと思います。家族的で」
「そう! そうそう。いいよな! 家族的! 仲間って感じで」

「ではこうしませんか? もし私たちが数凪さんの納得いく形でこの事件を調査出来れば、私たちのお願いを何でも三つ聞いてください」

 数凪の表情が固くなった。

「三つ……三つかあ……」

「もちろん〝一億円ください〟とかそういうことは言いませんよ。私たちが困った時に助けてもらえたら、と……。身内のやりとりっぽくて微笑ましくないですか?」

「み、三つは多くない?」

「私たち全員で当たらないといけないし、それくらいは……」 
「本業の探偵さん雇うと結構かかりますよ」
「拘束時間が……」

「う~ん、ここで引いちゃうのはちょっとダサいかな~って」

 最後のは葉子である。

「お望みの結果にならなければ、なかったことにしていただいてかまいませんので」
「後輩にここまで言わせてしまう先輩とは……」

「うるせーっ!」

 とうとう数凪は癇癪を起した。

「わかった。いいよいいよ! 三つのお願い聞くよ! 四季を見つけてくれたら」

「一応録音したけど」 
 伊代が片手で持ったスマホをすっと肩の上にかかげた。

「そこまでしなくても……数凪さんのことは信頼してますから」

「じゃあ消す?」
「いえ、残しておいてください」

 雪枝は即答した。

「なんか悪魔と取引したみたいな気分……」

 数凪は、なんとなくだが何かマズい約束をしてしまったような気がしていた。


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「頼むよ~自分でも調べてみようと思ったんだけど、なんか警察が見張ってるみたいでさ~あんまり派手に動けないんだよ~」
「それはつまり、数凪さんがいなくなった夕山四季さんの居場所を知ってる、と警察の方に思われているということですか?」
「う、うん。そう。だと思う……多分」
「ちょっと! ホントに知らないんですよね!? 四季の居場所」
「知らねーって! 知ってたらお前らに頼まねーよ!」
「では見張られていることに何か問題が? むしろ警察の方に協力したほうが早く四季さんが見つかるのではないですか?」
 雪枝が指摘すると、数凪は渋い顔をして一瞬沈黙した。
「だって……四季は多分隠れたくてどっかに隠れてんだろうからさ……こう、大っぴらに見つかっちゃったらかわいそうじゃん」
 雪枝の瞳孔が開き心無しか虹彩が輝いて見える。高揚した猫のようだ、と葉子は思った。
「わかりました。受けましょう」
 ふう、と一息ついて、わりとあっさり雪枝は頷いた。何となくこうなるだろうな、と思っていたのでSNOWメンバーの反論もない。
「あの、ギャランティーの方は……」
「金取るのかよ?!」 
 なりと数凪のやりとりを聞いて葉子と沙希がケタケタ笑い始めた。
「まあそれなりに手間もかかりますから……」
 なりはツンとすました顔をしている。
「乙女からも相談料貰ったの?」
「個人のプライバシーに属することなのでお答え出来かねます」
「しゅ、守秘義務ってやつ?」
 再び二人が笑い始める。
「おい! 本当のこと言えよ!」
 まあまあ、と雪枝が宥めに入ると、ようやく数凪は自分がからかわれていたと気付き、小さく舌打ちした。
 一息ついて真面目な顔になり、
「いや、なんつうかさ、金出したくないってんじゃないんだけどさ、なんか嫌じゃん? こう、プロの探偵とかに頼むんならともかく……金銭やりとりすると他人行儀っつうか……困った時はお互い助け合う、みたいな関係の方がよくない?」
「や、それは……」
 反射的に反論しかけた葉子を、雪枝は静かに制した。
「確かに一理ありますね。そういう関係性、いいと思います。家族的で」
「そう! そうそう。いいよな! 家族的! 仲間って感じで」
「ではこうしませんか? もし私たちが数凪さんの納得いく形でこの事件を調査出来れば、私たちのお願いを何でも三つ聞いてください」
 数凪の表情が固くなった。
「三つ……三つかあ……」
「もちろん〝一億円ください〟とかそういうことは言いませんよ。私たちが困った時に助けてもらえたら、と……。身内のやりとりっぽくて微笑ましくないですか?」
「み、三つは多くない?」
「私たち全員で当たらないといけないし、それくらいは……」 
「本業の探偵さん雇うと結構かかりますよ」
「拘束時間が……」
「う~ん、ここで引いちゃうのはちょっとダサいかな~って」
 最後のは葉子である。
「お望みの結果にならなければ、なかったことにしていただいてかまいませんので」
「後輩にここまで言わせてしまう先輩とは……」
「うるせーっ!」
 とうとう数凪は癇癪を起した。
「わかった。いいよいいよ! 三つのお願い聞くよ! 四季を見つけてくれたら」
「一応録音したけど」 
 伊代が片手で持ったスマホをすっと肩の上にかかげた。
「そこまでしなくても……数凪さんのことは信頼してますから」
「じゃあ消す?」
「いえ、残しておいてください」
 雪枝は即答した。
「なんか悪魔と取引したみたいな気分……」
 数凪は、なんとなくだが何かマズい約束をしてしまったような気がしていた。