第27話 重い体
ー/ー「ねぇ、あんた」
沙夜子はその細い腕をしっかりと組んだ。
「なんでしょうか?」
「紙都の足取り、なんか危なっかしくない?」
蓮はちらりと沙夜子の様子をうかがい、戦場に目を向けた。
紙都は足元からはたまた頭上から襲い来る根を紙一重でかわし続けている。わずかながら前に進んでいるようにも見えたが、紙都の目線を見ると次から次へと伸ばされる根だけしか見ていないことに気がつく。つまり、それは余裕がないということ。
「あいつ、全然ダメじゃないすか! だから止めたのに!!」
沙夜子はポケットから懐中電灯を取り出して灯りをつけた。数メートル離れた紙都の足元を光のスポットが照らす。土ぼこりが舞う中よく凝視して見ると、赤い物がポタポタと落ちているのが見える。それは紙都が動く度に落下速度を上げていた。
「血だ」
蓮が重苦しそうに呟いた。その横で沙夜子も静かにうなずく。
「どうします!? やっぱ、なんとか止めに入ってみんなで逃げましょう。俺行きます!」
「待って!」
「さすがに待てねーっすよ! 紙都が死んでしまう!!」
蓮は声を荒げた。友達が危険な状態なのに悠長に構えている沙夜子に苛立っているのだろう。焦る気持ちは沙夜子も同じだった。
「紙都!!」
沙夜子の呼び掛けにほんの一瞬紙都は声の主に顔を向けた。しかし、すぐに絶え間ない攻撃の嵐に晒される。
「ダメだ!! 俺、もう待てねーっす!!」
蓮は威勢よく声を上げながら紙都に向かって突進していった。紙都の目前に迫った根がピタリと止まり、標的をより単純な獲物に変えた。
「そうだ! こっちへ来やがれ!!」
立ち止まり、両手を広げた犬山に向かって下からも上からも鋭く尖った根が嬉しそうに動き出した。
「馬鹿! 早く離れなさい!! 死ぬわよ!」
死ぬつもりはなかった。蓮はギリギリまで狂った根を引き付けその一撃をかわし、紙都を引きずってでも逃げるつもりだった。それくらいの身体能力を持ち合わせている算段もあった。ところが──。
「!? 足が動かな・・・・・・!」
足元に目をやると両の足に何重もの根ががっしりと巻き付いていた。
「ヤッベ!! どうすっ──」
土ぼこりが吹き上がった。淡い円状の光はその先を通ることができず、沙夜子の目では犬山の無事を確認することができない。ただ、何かに根が続けざまに突き刺さる音は聞こえていた。
懐中電灯を持つ手が震える。それを抑えるためにもう片方の手を添えて両手でグリップを握り締めた。
それでもわずかに揺れる光の先は少しずつ晴れていった。根は地面に突き刺さっている。しかし、そこには予想された紅い惨状は何もなかった。
「お前、何してんだ!」
「紙都!」
左前方にライトを移す。地面に転がっている二人の姿がそこにあった。
蓮は地面に手をついて立ち上がった。
「いっつ・・・・・・何ってお前を助けようと思って」
「大丈夫だ、俺は」
「大丈夫ねーだろ! そんな血塗れな体で」
紙都は刀に付いた土を払うと、樹木子に向かって一歩足を進めた。
「『真相を知りたければ樹木子に聞け』」
「は?」
「おそらく、この事件の真相を知る鍵だ」
それだけを呟くと、紙都は再び根を集め始めた化物に走り始めた。
沙夜子はその細い腕をしっかりと組んだ。
「なんでしょうか?」
「紙都の足取り、なんか危なっかしくない?」
蓮はちらりと沙夜子の様子をうかがい、戦場に目を向けた。
紙都は足元からはたまた頭上から襲い来る根を紙一重でかわし続けている。わずかながら前に進んでいるようにも見えたが、紙都の目線を見ると次から次へと伸ばされる根だけしか見ていないことに気がつく。つまり、それは余裕がないということ。
「あいつ、全然ダメじゃないすか! だから止めたのに!!」
沙夜子はポケットから懐中電灯を取り出して灯りをつけた。数メートル離れた紙都の足元を光のスポットが照らす。土ぼこりが舞う中よく凝視して見ると、赤い物がポタポタと落ちているのが見える。それは紙都が動く度に落下速度を上げていた。
「血だ」
蓮が重苦しそうに呟いた。その横で沙夜子も静かにうなずく。
「どうします!? やっぱ、なんとか止めに入ってみんなで逃げましょう。俺行きます!」
「待って!」
「さすがに待てねーっすよ! 紙都が死んでしまう!!」
蓮は声を荒げた。友達が危険な状態なのに悠長に構えている沙夜子に苛立っているのだろう。焦る気持ちは沙夜子も同じだった。
「紙都!!」
沙夜子の呼び掛けにほんの一瞬紙都は声の主に顔を向けた。しかし、すぐに絶え間ない攻撃の嵐に晒される。
「ダメだ!! 俺、もう待てねーっす!!」
蓮は威勢よく声を上げながら紙都に向かって突進していった。紙都の目前に迫った根がピタリと止まり、標的をより単純な獲物に変えた。
「そうだ! こっちへ来やがれ!!」
立ち止まり、両手を広げた犬山に向かって下からも上からも鋭く尖った根が嬉しそうに動き出した。
「馬鹿! 早く離れなさい!! 死ぬわよ!」
死ぬつもりはなかった。蓮はギリギリまで狂った根を引き付けその一撃をかわし、紙都を引きずってでも逃げるつもりだった。それくらいの身体能力を持ち合わせている算段もあった。ところが──。
「!? 足が動かな・・・・・・!」
足元に目をやると両の足に何重もの根ががっしりと巻き付いていた。
「ヤッベ!! どうすっ──」
土ぼこりが吹き上がった。淡い円状の光はその先を通ることができず、沙夜子の目では犬山の無事を確認することができない。ただ、何かに根が続けざまに突き刺さる音は聞こえていた。
懐中電灯を持つ手が震える。それを抑えるためにもう片方の手を添えて両手でグリップを握り締めた。
それでもわずかに揺れる光の先は少しずつ晴れていった。根は地面に突き刺さっている。しかし、そこには予想された紅い惨状は何もなかった。
「お前、何してんだ!」
「紙都!」
左前方にライトを移す。地面に転がっている二人の姿がそこにあった。
蓮は地面に手をついて立ち上がった。
「いっつ・・・・・・何ってお前を助けようと思って」
「大丈夫だ、俺は」
「大丈夫ねーだろ! そんな血塗れな体で」
紙都は刀に付いた土を払うと、樹木子に向かって一歩足を進めた。
「『真相を知りたければ樹木子に聞け』」
「は?」
「おそらく、この事件の真相を知る鍵だ」
それだけを呟くと、紙都は再び根を集め始めた化物に走り始めた。
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