幸いにもコタローの怪我はそれほど大したことなかった……と思う。家にあった包帯と湿布使い果たしちゃったけど、無保険でお金持ってかれるより遥かにマシかもね。ほら、コタローって絶対に保険証持ってなさそうだし。
とはいえ絶対安静なのは変わりない。あくまで俺から見て、大丈夫かなと感じただけだから。ジンもそうだよなと相槌打ってたし。
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「僕、どのくらい気を失ってました?」
ほっぺたと鼻に大きな絆創膏を貼ったコタローが目を覚ましたのは、その翌日だった。大きないびきかいてたからちょっと焦ったけど。
「えっと、一日ちょいかな」俺がそう答えると、コタローは布団を握りしめて静かに泣いていた。
「……負けたんですね、僕」
小さな肩が震えている。俺はなにもいうことができず、ただ黙ってぎゅっと抱きしめることしかできなかった。
そして、お互いなにも喋らないまま食事した。
こんなに黙々とメシ食うなんて初めてだ。全然味がしなくって、食べてる気分ゼロ。
「誰にやられたんだ?」とこっちが口を開いても、コタローは首を左右に振って「それは言えません」って頑なに言おうとしない。
つまり……負けたってことが屈辱だったのかな。
そして「タケル、僕……」と言ってコタローが立ちあがろうとした時だった。突然短いうめき声をあげて、つま先を押さえたんだ。
倒れそうになったコタローの肩を支えると、あいつのおでこには脂汗がすっげ浮かんでた。
「痛っ……」
そういえば手当てした時、コタローの右足の親指の爪が剥がれてたんだっけ。そこだけ入念に手当てしたのだけは覚えてる。
けど、こんなに腫れ上がってたっけ……? むしろ今の方がずっと悪化してるような感じすらある。
「だ、大丈夫……です。石につまづいちゃっただけですから」
コタローは俺に無理やり笑顔で答えてたけど、明らかに無理してるって感じ。
「コタロー……やっぱ病院行こうぜ、めっちゃ腫れてるし」
「これ以上タケルに迷惑かけたくないです、こんなの大したことないですから」
親指を使わずに俺の肩を借りてよろよろと立ち上がることはできた。けど問題はそれだけじゃなかったんだ。
俺も気づくのが遅れてた。そう、コタローがいつも肌身離さず持っていた刀だ。
「そういや、鵼斬りどっか行っちゃってねーか?」
その瞬間、コタローの口元が何か言いかけてたんだ。
「俺、探してくる」
「いえ、その……」
「おそらく草むらに置きっぱなしにしたんじゃね? コタローまだ歩くの痛そうだし、俺が……」
「奪われました」
言葉が詰まった。俺も、コタローも。
「鵼斬りは、敵に奪われました……」