帰りの挨拶が済むと一目散に生徒会室へと向かう恭吾。しかし廊下は走らない。右側通行だ。
今まではそんなルールはテキトーにしていたがここ最近は守っている。それは行政である恋実に申し訳ないのと、裁く側の自分がルールを守らない訳にはいかないからだ。
「失礼します」
何故か職員室に入るかの如く正してしまう。
慌てた様子を見せないよう息を整えて入室する。息を整える? しかし走ってはいない。
緊張? 期待? 弾む胸の正体は何だ? 何を慌てていた? そう優香ちゃんに関する新しい何か有力な情報を得たのかと、心躍らせているだけだ。
恭吾は言い訳じみたことを思う。
「どうしたの? 改まっちゃって……?」
珍しい態度に違和感を覚えるも可笑しくって微笑む。そんな恋実に何故か隠すように思考をめぐらす、自覚できない何かを隠すために……。
「は、花……そういえば花が無くなっているな」
「は? いつの話してるのよ……」
(飾った時には気付かずに、なくなった時に言うなんて……)
呆れてみるも、人間の本質はそうなのかもしれない。今まであったものがなくなることで分かる事……。