@43話 愛するということ
ー/ー
2月1日、金曜日。あれから2週間が経過していた。
快晴、冷たい風を押し開いて走る自転車は、乾燥した空気で肌を切り裂いていくのを感じさせる。
頻繁にリップクリームを塗っている男も増えたが、恭吾はリップクリームなど軟弱なことはしない。
陰気でモブキャラタイプでお洒落には程遠いが、今井もリップクリーム愛好家だ。
学校に着いた恭吾が、乾いた唇を舐めると痛みが走る、ガサついて少し切れているようだ。
今日も良い日になりそうだ。
(おかしい……今井の動きに不自然が見当たらなかった。二つの犯行で満足したのか? いや後7日ないし10日の内に動くはず……)
登校してくる今井を見て恭吾は焦ってきた。もうすぐバレンタインデー、今井が動くなら照準をその日に合わせてくる、その前にアクションがあるはずだと睨んでいたのに。
リップクリームを塗り、上下の唇を合わせて馴染ませる今井の姿を見て、恭吾は何故だかムカついてきた。
昼休み、恭吾は決心してB組の教室前方、開いている扉の前をウロウロする。
今日はよく冷えている。その2月の寒さを嫌ったB組の誰かが開いたままのドアを徐に閉める。
「あ! ああぁぁぁぁ~」
恭吾にはどうすることもできない……カラカラと小気味の良い音を立てながら閉まっていくスライドドア。
一目でも優香ちゃんを見たかったのに……と、天照大神を隔てる直前、足の甲一つ分の隙間を残して天岩戸は光を残した。
「あ、ゴメン。俺出るから」
そこから出てきたのは女神ではなく、時巻だった。時巻は扉を閉めていた誰かに向かって愛想よくそう言うと、恭吾の前に姿を現す。
「どうした? 恭吾」
時巻は他クラスの中に入っていけない恭吾を知っていて、出て来てくれたのだ。恭吾の会いたい本命は時巻であった。
時巻の姿を見て明らかにホッとする恭吾。時巻は恭吾にだけ優しさや気遣いをしている訳ではない。誰にでもそれができる男だ。
逆に周りの人たちからは、やや癖のある恭吾が時巻の優しさに漬け込んでいるように思われている。しかし本人たちはお互いを理解しあっていた。
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学校に着いた恭吾が、乾いた唇を舐めると痛みが走る、ガサついて少し切れているようだ。
今日も良い日になりそうだ。
(おかしい……今井の動きに不自然が見当たらなかった。二つの犯行で満足したのか? いや後7日ないし10日の内に動くはず……)
登校してくる今井を見て恭吾は焦ってきた。もうすぐバレンタインデー、今井が動くなら照準をその日に合わせてくる、その前にアクションがあるはずだと睨んでいたのに。
リップクリームを塗り、上下の唇を合わせて馴染ませる今井の姿を見て、恭吾は何故だかムカついてきた。
昼休み、恭吾は決心してB組の教室前方、開いている扉の前をウロウロする。
今日はよく冷えている。その2月の寒さを嫌ったB組の誰かが開いたままのドアを徐に閉める。
「あ! ああぁぁぁぁ~」
恭吾にはどうすることもできない……カラカラと小気味の良い音を立てながら閉まっていくスライドドア。
一目でも優香ちゃんを見たかったのに……と、天照大神を隔てる直前、足の甲一つ分の隙間を残して天岩戸は光を残した。
「あ、ゴメン。俺出るから」
そこから出てきたのは女神ではなく、時巻だった。時巻は扉を閉めていた誰かに向かって愛想よくそう言うと、恭吾の前に姿を現す。
「どうした? 恭吾」
時巻は他クラスの中に入っていけない恭吾を知っていて、出て来てくれたのだ。恭吾の会いたい本命は時巻であった。
時巻の姿を見て明らかにホッとする恭吾。時巻は恭吾にだけ優しさや気遣いをしている訳ではない。誰にでもそれができる男だ。
逆に周りの人たちからは、やや癖のある恭吾が時巻の優しさに漬け込んでいるように思われている。しかし本人たちはお互いを理解しあっていた。