「そうだ、舞羽ちゃん。藤稜のエースはこの、成瀬十葉。障害馬術じゃ、女王だね」
「……」
「舞羽ちゃんも中々なもんだけど、十葉は『小股が切れ上がる』っていうのかな……使い方合ってるのかな? ま、十葉の美脚も相当なもんだ。ははは」
「何言ってるのよ、もう~恥ずかしい……」
みんなの視線が一斉に十葉の脚に集まる。そして見比べるように舞羽……これは立派なセクハラだ。
「な、なんだ、威張ってるわりにはエースじゃないのか……飛越、怖いんだろ」
年長者の隼人が慌てて視線と話を逸らす。今までの仕返しとばかりに、バカにした口調で攻め込む。
しかし颯志はそんなことは意に介さない。別に隼人をバカにしている訳でもない、余裕がある。
「自分は総合馬術のライダー目指しているんで。クロスカントリーでは水濠障害だってあるんですよ? むしろ得意ですよ。あ、舞羽ちゃんカッコいいって思った?」
「颯志っ!!」
「そ、それじゃ、また、後で……怪物君」
「こっちも遊馬でお願いしたいな、マイスター」
「あ、またね~舞羽ちゃ~ん」
「颯志ぃ~」
舞羽ら三人は、登場したときの凛々しさは消え失せ、子供のように泣き出しそうな十葉の声と共に、遠ざかっていく二人を見送った。
「ったく、何だありゃ?! しっかり監督しやがれってんだ」
舞羽へのアプローチを目の当たりにして、露骨に嫌な顔をする隼人。それを横目に苦笑いする遊馬。そんな遊馬に、去り行く颯志の言葉が風に運ばれて届いた。
「な、十葉。遊馬ってムッツリだな。結構、十葉の脚、見てたぞ」