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@30話

ー/ー





 廊下を話しながら歩いている声がする。間髪入れずに恭吾は教室前方、黒板のやや右上の連続秒針タイプで静穏のアナログ丸形掛け時計を確認する。時計の針は8時05分を指している。


 


「優香ちゃんだ」


 


 優香はいつも決まってこの時間に登校する。A組の後ろのドアを急いで開けて廊下に飛び出る恭吾。時巻も後に続いた。


 


「ま、俺も教室に戻るよ」


 


 廊下に出ると時巻は恭吾にそう告げる。時巻は優香と同じB組だ。


 時巻の言葉はまるで耳に入っていないであろう恭吾は、直視しないように優香を感じている。


 


 こっちを向いて手を振る優香。恭吾は思わず、自分から離れようとしている時巻の腕を取る。


 


「お、おい……」


「おはよ」


「おはよう来栖さん」


 


 三人の言葉が被る。


 


 優香はそのまま教室の中、廊下という中立地帯からA組とは治外法権のB組、届かない場所へと消えていく。


 


「ほら、な、な、俺が頑張ってるのを知って手を振ってくれた」


 


 そう喜び続けて、彼女のいなくなったB組の入り口から彼の視線は固まったままだ。


 まるでまだ優香の残像があるかのように未練を振りまく。


 


 時巻はそんな恭吾を思いやって『良かったな!』と笑顔を向ける。


 


 


(時巻……俺にそんな顔を向けるなよ……)


 


 恭吾の心は溶かされる……塩3gと塩5gをそれぞれ100mlの水に溶かした時の食塩水の濃度を求める数学の問題、その塩ように……。


 


 


 


 時巻に惚れてしまいそうになっている自分に気付いて我に返る、慌ててさっきの優香ちゃんを霊視する。


 


「俺には見えるんだよ……優香ちゃんの地縛霊が」


「いや、それは失礼でしょ」


 


 笑いながら教室へ向かおうと一歩を踏み出した時巻が、その足を止める。


 


「そういえばその優香ちゃんのことだけど……」


 


 恭吾もその言葉で立ち止まる。


 


 


「何か?」


「優香ちゃんのパンツを見たって……ニャンピースだってさ、優香ちゃんらしい淡いピンク色がそそる~って、それも噂になってるよ」


 


 


「優香ちゃん、ニャンピース好きじゃないって聞いてたのに意外だね」


 そう言って時巻は笑った。


 


(その通りだ。おかしいな……俺の調べでも優香ちゃんはニャンピースに興味なしだったんだけどな……隠れニャンピース派だったのか……?)


 


 恭吾は自分のリサーチ不足を呪うのだった。




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 廊下を話しながら歩いている声がする。間髪入れずに恭吾は教室前方、黒板のやや右上の連続秒針タイプで静穏のアナログ丸形掛け時計を確認する。時計の針は8時05分を指している。
「優香ちゃんだ」
 優香はいつも決まってこの時間に登校する。A組の後ろのドアを急いで開けて廊下に飛び出る恭吾。時巻も後に続いた。
「ま、俺も教室に戻るよ」
 廊下に出ると時巻は恭吾にそう告げる。時巻は優香と同じB組だ。
 時巻の言葉はまるで耳に入っていないであろう恭吾は、直視しないように優香を感じている。
 こっちを向いて手を振る優香。恭吾は思わず、自分から離れようとしている時巻の腕を取る。
「お、おい……」
「おはよ」
「おはよう来栖さん」
 三人の言葉が被る。
 優香はそのまま教室の中、廊下という中立地帯からA組とは治外法権のB組、届かない場所へと消えていく。
「ほら、な、な、俺が頑張ってるのを知って手を振ってくれた」
 そう喜び続けて、彼女のいなくなったB組の入り口から彼の視線は固まったままだ。
 まるでまだ優香の残像があるかのように未練を振りまく。
 時巻はそんな恭吾を思いやって『良かったな!』と笑顔を向ける。
(時巻……俺にそんな顔を向けるなよ……)
 恭吾の心は溶かされる……塩3gと塩5gをそれぞれ100mlの水に溶かした時の食塩水の濃度を求める数学の問題、その塩ように……。
 時巻に惚れてしまいそうになっている自分に気付いて我に返る、慌ててさっきの優香ちゃんを霊視する。
「俺には見えるんだよ……優香ちゃんの地縛霊が」
「いや、それは失礼でしょ」
 笑いながら教室へ向かおうと一歩を踏み出した時巻が、その足を止める。
「そういえばその優香ちゃんのことだけど……」
 恭吾もその言葉で立ち止まる。
「何か?」
「優香ちゃんのパンツを見たって……ニャンピースだってさ、優香ちゃんらしい淡いピンク色がそそる~って、それも噂になってるよ」
「優香ちゃん、ニャンピース好きじゃないって聞いてたのに意外だね」
 そう言って時巻は笑った。
(その通りだ。おかしいな……俺の調べでも優香ちゃんはニャンピースに興味なしだったんだけどな……隠れニャンピース派だったのか……?)
 恭吾は自分のリサーチ不足を呪うのだった。